2016年07月06日

「GUNNER」てつまよしとう著。

 てつまよしとう先生は、私が第一回文学フリマ金沢のときに隣のブースに座っていたプロの作家である。その後、御縁があって無刀会のメンバーがてつま先生の小説講座を受講することになった。最近は、私もその小説講座に出ているが、その御縁で先生の著書を読む機会を得られた。この作品は、第二回えんため大賞佳作受賞作品である。
 あらすじは以下の通り。
 東京都警察航空機動隊の沢村と川井は、ある日現金輸送車襲撃事件の発生を受けて、逃走する犯人をヘリで追跡し、銃撃戦の後捕らえる。押収された銃を調べると、ロット番号が似通っていて、同一工場で同一時期に作られたものであることが判明する。さらに、怪しいロシア客船「ゴールドシチ・ロシア」が、税関のデーターベースから割り出される。沢村と川井は、日本に寄港中のゴールドシチ・ロシアに、招待客として潜入することに成功する。その中で、証拠を摑もうと沢村は積み荷を漁るが、なかなかめぼしいものが出てこない。そこで、沢村はかつて米国のデルタでともに警備の特訓を受けたときの同期生、ヴィーエに出逢う。それで、捜索は中断されて船から帰るが、その途中客船側の組織メンバーに襲撃され、それを迎え撃って警察送りにする。ともに捕らえられた川井と沢村は、大笠原諸島へ左遷される。
 その赴任先で、航空機動隊の第二班を任じられ、上空から密輸船などの不審船の警備に当たらせられる。そんなある日、二人はある不審船を発見する。その船に停船を宣告するが無視するので追跡していると、船から戦闘ヘリが出てきた。川井と沢村の乗るヘリとは格段と性能差があって、あっという間にヘリは撃墜される。相手方のヘリにはヴィーエが乗っていた。
 島へ帰ると、整備士の吉田が倉庫からセスナを持ち出し、孫娘に整備させて川井に渡す。川井はセスナの飛行訓練を元海軍軍人の吉田手ずから受け、沢村は遠距離ライフルの射撃練習をする。そして、川井が帰ってきてすぐに、ふたたび以前の不審船を迎え撃ちに行く。しかし、そこでもヴィーエの乗るヘリが立ちはだかったが、特訓の所為かあってヘリは撃墜させることが出来た。しかし、船からミサイルが発射され、その打撃を受けてセスナは海上に墜ちる。
 すると、的組織は沖の鳥島を沈めるといって、核ミサイル発射の脅しを描けてきた。海上保安庁の巡視艇にも映らないステルス鑑で、沢村達はレーダー無しで新たに調達された高性能ヘリで探索する。なかなか見付からなかったが、客船に乗っていたヴィーエの打ったメールで、沢村は不審船の現在位置を知る。そして、ゴールドシ・ロシアが航行しているのに出逢う。沢村は海上自衛隊などに連絡を取るが、なかなか出動しない。そこで、沢村はバイクに乗ってヘリから船へ飛び乗る。
 船の中では、ヴィーエが既に、核ミサイル発射を阻止しようと動いていた。それと同期して沢村も船長以下の悪党を追い詰めていく。そして、ミサイル発射の手前で船を沈めることに成功し、沖の鳥島沈没作戦を阻止することが出来る。
 蓋を開ければ、ヴィーエはロシアの警察のスパイであり、銃器密輸の犯罪組織を摘発するための、日ロ共同戦線だった。……。
 だいたいは以上のような話だが、マニアには垂涎かも知れない銃器の固有名や部品名、飛行機やヘリの種類の名前など、横文字英記号が多いのには少々疲れた。しかし、そういう細かいことを覗けば、特にクライマックスの戦闘シーンなど、さながら映画を見るかのような臨場感の溢れる描写は、一読の価値があるものだろう。
 てつま先生は、講座で物語にはストーリーとドラマが必要だと仰るが、その登場人物の感情変化たるドラマが随所に鏤められていて、読むものを飽きさせないエンターテイメント小説の代表作と言ってもいい作品だと思った。
 北陸出身の方は特に、「GUNNER」お勧めです。
posted by Pearsword at 06:24| 富山 ☀| Comment(0) | 文藝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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