前のテナントの設備を活かすケースもある!
__今回のエイベックス・マネジメント様(以降敬称略)のオフィスは、防音設備のスタジオや、食堂として利用していたキッチンルームなどの施設がありましたが、せっかくの設備を、原状回復のために壊してしまうのは、環境や資源の観点から考えると、もったいないですよね。
ひろみそう、もったいない。日本の賃貸借の最大の問題点は、オーナーの承諾なしではサブリースができない事なんだよ。だからオーナーが儲かるし、スクラップ&ビルドになるんだ(原状回復)。SDGsとは程遠い現実だよね。
でも確かに、すべて撤去してスケルトンの状態にすることもあるけど、場合によっては活かせるものは活かしていくケースもある。キッチンルームなんかは、飲食業が再利用するケースも多いし、防音設備も一部は再利用される可能性もある。
__入居後に、借り手が取り付けた設備、たとえば、役員専用エレベーターなどがある場合は、撤去しない方が次のテナントが魅力的に感じるかもしれないですよね。
ひろみそうだね。その場合は、原状回復費を支払わずに、管理会社がそのまま引き取るという形になるケースもある。本来は、設備を取りつけるときに、撤去時にどうするのかを、話し合っておくべきだね。
__今は、すべて3Dグラフィックで、オフィスの完成イメージを作れます。だから、必ずしもスケルトンにしなくても、お客さんに見せることができるんですよね。
ひろみだからこそ、管理会社は、ぎりぎりまで原状回復工事はせずに、活かせるもの活かしたい。工事の費用や負担を減らしつつ、物件に付加価値をプラスできるかもしれないからね。そんな理由もあって、本音では、絶対に自分たちで原状回復工事をやりたいはずなんだ。
原状回復費の大幅減額で、ついに最終決着!
__さて、前回、管理会社からの反撃で、アスベストの調査・除去や原状回復工事をどちらが行うかが問題となりました。
ひろみまず、アスベスト問題については、無駄な交渉で時間をかけたくなかったので、スリーエー・コーポレーションが業者に早々に依頼した。ビルの躯体部分にも、後から設置した建材部分にも、アスベストは一切使用されていないことを証明し、その報告書を管理会社に提出した。
__まさか、この短期間でアスベスト調査報告書を出してくるとは思わなかったようで、管理会社もあっけにとられていましたね。さらに、原状回復工事も、同じように、いつでもスリーエー・コーポレーションが取り掛かれる準備があることをつきつけました。ついに、管理会社を土俵際に追い詰めました。
ひろみとはいえは、実際にこちらが工事をするとなれば、工事期間も短い中で行うことになる。大幅減額はできるが、工事責任も発生するため、リスクの高い賭けでもあった。できるなら、この案件に関しては、管理会社に任せたかったのが本音だ。
__ぎりぎりのせめぎ合いの中、原状回復工事については、管理会社の指定業者が行うことで決着。そして最終的に、原状回復費は9500万円となり、5350万円の大幅ダウンに成功しました。