地方議会が行っている情報公開すら、国会がやらないという理由が分からない。
号泣した兵庫県議による不自然な使い方が発覚して以来、地方議会の政務活動費の使途にあらためて厳しい目が向けられている。
その一方、極めて不透明な手当が国会議員にはある。歳費のほかに毎月100万円が支払われる文書通信交通滞在費だ。領収書の提出も使途公開も義務づけられていない。
原資は国民が納めた税金であり、使途公開は当たり前である。各政党はまず地方議会と同水準の情報公開に早急に踏み切るべきだ。
文書通信交通滞在費は政治活動の報告を郵送する郵便代や電話代のほか、出張などの交通費に充てる経費である。使途の公開義務はなく、余っても返す必要もない。「交通」と文言が付いているが、国会議員が地元との行き来に要する交通費としては、別途にJRの無料パスなどが支給されている。
維新の党の橋下徹共同代表は、所属議員に使途公開を求める考えを表明した。他党にも公開に前向きな議員がいる。国会で大きなうねりとなることを期待したい。
文書通信交通滞在費に関しては、当時の綿貫民輔衆院議長の委嘱を受けた衆院改革に関する調査会(瀬島龍三会長)が2001年、「実費弁償的なものであり、議員活動に必要不可欠であるものの、領収書等を付した使途の報告書の提出を義務付け、報告書を閲覧に供するべきである」と答申している。
この提言を国会が放置し続けることは納税者を軽視した対応と言わざるを得ない。
地方議会の政務活動費に関しても、報告書の支出先の個人名が墨塗りとなっている部分が多いなど、透明性に課題も残っている。それでも領収書などが公開されるため、第三者の厳しい目にさらされ、使途のあり方が議論となった結果、次第に改善してきた経緯がある。
これに対し、国会の文書通信交通滞在費は何に使われているかさえ分からない。選挙資金として貯蓄しても、海外投資に充てても第三者はチェックできない。従って年間1200万円という金額の妥当性も判断が付かない。
後ろめたい支出がないのであれば、堂々と公開しても差し支えないはずだ。
【神奈川新聞】