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晴天の休日、私はトレーナーのもとへ歩を進める。 今日はトレーナーとデート・・・待ち合わせ場は、彼の自宅。
───どういう反応、するかな。
普段はモード系のコーデで彼を引っ張っていくことが多い。けれど、今日は甘辛系を身に纏う・・・理由は、このほうが甘えやすいかもしれない・・・そう思ったからだ。
───妙に恥ずかしい。
彼の家へ着く・・・玄関前で、やけに鼓動が早くなる。普段ならもう少し、大人しいのだが・・・慣れない格好をしているから、だろうか。 顔が熱いまま、インターホンを鳴らす。
「よぉ、トレーナー。来たよ」
『おはよう、シリウス。ちょっと待っててくれ、今行くから』
スピーカーから聞こえる、彼の声・・・心臓が飛び跳ねる。 そわそわする・・・少しすると、扉が開かれてトレーナーが現れた。相変わらず、私服も良いセンスだと思う。
「待たせたな・・・・・・」
私の姿を見た途端、彼の口が止まる。 あまり、似合わなかっただろうか・・・
「ど・・・どうした」
「・・・・・・可愛い・・・」
彼の口から零れる、いちばん聞きたかった言葉。
「か、かわいい?ぁ、あの・・・その・・・あ、ありがとう・・・・・・気合い入れてきた甲斐が、あったな・・・」
嬉しさと気恥しさで、なかなか言葉が出ないけど・・・まずは、これで良い。次は・・・
「トレーナー・・・今日は、その、なんだ・・・」
───しくじった、まさかここまで恥ずかしくなるとは・・・なにやってんだ、私は。
甘えたいと、素直に言えない。普段はこんなの平気、なのに・・・・・・
「どうした、シリウス」
「えっ!?あぁ、悪いね・・・・・・なんだか恥ずかしくなっちまって・・・・・・きょ、今日はな・・・・・・あの・・・・・・」
───ええい、私としたことが・・・甘えたいって、言うんだよ・・・
しどろもどろになっていると、なにかを察したのか・・・彼が私の腰に手を回し、耳元で囁く。
「俺に・・・どうして欲しい?言ってごらん」
普段私が仕掛けている側なのに、今はやり返されている。 それに、良い声でそんな事言われたら・・・・・・おかしくなってしまう。
「・・・・・・・・・甘えたい」
「・・・・・・良いよ、いつでも・・・甘えて」
「・・・・・・うん」
少しだけハグをした後、腕を組んで歩く。 本当に、イイ男と巡り会えたなと・・・心から思った。
◆
場所は移り、近場の水族館へ。 普段はあまり行かないのだが、この機会にということで、入ることにした。 平日ゆえ、客足はまばらだが・・・二人きりをより満喫できるので問題は無い。
「へぇ・・・・・・なかなか広いね、ここ」
「ああ、いろいろと思い出があるし・・・・レトロな雰囲気もあるからな。好きなんだ」
「そうか・・・アンタにとって思い出の場所に、私も一緒に居れるのは・・・嬉しいね」
「そっか・・・俺も、嬉しいよ。お前さんと来れて」
彼が微笑み、私の髪を撫でる。
「ぁ・・・・・・・・・」
どうして・・・撫でられるだけで、こんな・・・彼しか考えられなくなるのか。
「・・・撫でて・・・・もう少し、だけ」
「うん・・・良いよ」
彼に撫でられてから・・・水棲生物が展示されるスペースへ向かった。
「意外といるな・・・カップルっぽいの」
「だな・・・」
まばらとはいえ、カップルと思われる人がいる・・・同じように、私たちは水族館を楽しむ。
彼に引っ張られながら、魚やペンギンを見たり、ゴーカートやロボット型の乗り物で、子供のようにはしゃぐ。
昼間はフードコートでお互いに好きなものを食べる・・・トレーナーは醤油のラーメンで、私は塩のラーメン。 カップルよろしく、相手に自分の食事を食べさせる・・・つまり”はい、あーん”というものをやってみたり・・・・・・冷静になって考えると堂々とやりすぎたかな、と恥ずかしくなった。 まぁ、楽しかったから良いが。
昼食後は、ペンギンのショーを見たり、幾多の遊具に乗り・・・・・・あっという間に、夕方。
「あぁ、もうこんな時間か・・・じゃあ、帰ろうか」
「そうだな・・・帰ろうぜ」
外泊許可は取っていて、この後も彼の家でゆっくりできるのだけれど・・・切ないといえばいいのか、なぜかそんな気持ちになる。できるなら、もっと隣にいたい・・・
「なぁ、トレーナー・・・これからも、一緒にいれるよな」
「大丈夫さ・・・一緒にいる」
彼の”大丈夫”という言葉を耳にして、安心するが・・・・もうひとつ、
「そっか・・・なら、良かった・・・・・・でも、ひとつ・・・頼みがある」
「頼み・・・」
「・・・わ、私が卒業したら・・・・・・一緒に、住みたい。アンタの、家で・・・・・・」
「───」
同棲を持ちかけると、彼が黙ってしまった。 よく見ると、耳まで赤くなっているので・・・断られるかという不安はない。
「トレーナー・・・」
「・・・卒業したら、おいで・・・俺は、待ってる」
「ふふっ・・・ありがとう・・・・・・世話になるよ。だから、待っててくれ」
◇
夜・・・・・・今日は、彼の家に泊まる。 玄関の靴置き場で抱きしめ、唇を重ねる。最初は軽く、次第に深く・・・
「ん・・・・・・とれーなー・・・」
「シリウス・・・・・・」
熱っぽくなって、唇を押し付けるように、もっと激しくなってゆく・・・
暫くして、夕食・・・・・トレーナーの手料理。 料理の腕はなかなかのもので、どれも美味しい・・・
入浴後は、上はトレーナーのものを着る・・・要は”彼シャツ”と言うべきか、そういうものだ。 着たい、と言った時・・・彼はさすがに動揺したが、上目遣いでねだると、着させてくれた。 どうも、私のそういう顔には弱いらしい・・・ギャップで、だろうが・・・彼の心が、じわじわと私で染められているのを実感して、胸が躍った。
「・・・・・・トレーナー、今日は楽しめたかい?」
ベッドの中・・・抱き合いながら、今日を振り返る。
「ああ、楽しめたさ・・・それに、お前さんのギャップでやられちまった」
「そっか・・・けどさ・・・・・・今日のコーデじゃなくても、甘えていいかい?」
「良いさ、どんなコーデでも・・・甘えてくれな」
「うん・・・・・・幸せもんだな、私・・・アンタと組めて、良かった」
「俺も、お前さんのおかげで楽しいし・・・幸せだ」
お互いの額をこつんと合わせ、微笑む。
「このまま・・・寝ようか。良い夢、見れそうだ」
「うん・・・・・・夢の中でも、アンタに会いたい」
「俺も、会いたいよ」
「楽しみだね・・・・・・おやすみ、トレーナー。愛してるよ」
「おやすみ、シリウス・・・愛してる」
軽く口づけて、眠る・・・今日はぐっすり寝れそうな気がする。
夢では・・・夜の海岸でトレーナーと寄り添っていた。 ふたりきりの、穏やかな世界・・・目が覚めるまで、彼と海を眺めていた。
シリウス視点です