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    少女:小さい頃、図形の証明とか得意だったけど、数式がいっぱい出るようになって数学が嫌いになった、って人、結構いますよね?

    禁煙:ええ。

    少女:前に数式は、自然言語(ことば)より簡潔に表せる表現手段なんだ、

    問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers 問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

    って禁煙さん言ってたけど、それって数式で楽になるって話ですよね?

    禁煙:あまり楽になる感じがしない?

    少女:数学で楽できたことなんてないです。

    禁煙:そうかしら。でも確かに学校だと、大変な方のやり方を教えないものね。

    少女:大変な方?

    禁煙:比較の対象がないと、どれくらい楽になったのか分かりにくいでしょ?

    少女:それはそうかもしれないけど・・・。

    禁煙:じゃあ、方程式のことは一旦忘れて、それ以前のやり方でやってみましょう。

    少女:それって薪を割ってお風呂を沸かすみたいな?

    禁煙:古風だからって、そう捨てたものじゃないのよ。学校だと他にやることが多すぎて、こんなのは回り道だって嫌われちゃうけれど。学校の数学が、整備された観光地から観光地へと渡っていくバスツアーなのだとしたら、私たちはロバに乗ってぶらぶら進みましょう。

    少女:お尻が痛くなりそうです。……まさか、つるかめ算とか?

    禁煙:期待にはこたえてあげたいけど、もう少し使い出があるかもしれないわ。

    少女:って旅人算?

    禁煙:ニコル・オレーム(c.1325-1382)って人の図を使いましょう。

    270px-Oresme.jpg


    この人は、量の関係を2次元の図で表した最初の人だと言われているわ。横軸、オレームさんに言わせると「経度」に時間を、縦軸(オレームは「緯度」という)にその時々の量を、表すの。

    Oresme_Graph.png


    少女:それってグラフの元祖ですか?

    禁煙:ええ。温度の変化なんかもグラフに描いているのだけれど、特筆すべきは、縦(「緯度」)に速度、横(「経度」)に時間を表現して、面積で距離を表したことね。運動という動的(ダイナミック)なものを、静的(スタティック)なものの代表のように思われていた平面図形に結びつけたこと、そしてこの表現法を介して運動を量的な関係として把握したのが画期的だったの。

    少女:すみません。運動をグラフで表すのって当たり前すぎて、感動が共有できないです。

    禁煙:今も、あたり前に思ってもらえるならオレームさんだって満足だと思うわ。けれど、せっかくなのでお話でおしまいにせずに、実際に使ってみましょう。

    【問題1】

     太郎君は午前8時に、毎分60mで歩いて家から学校へ向かった。寝坊した次郎君は午前8時15分に毎分150mの自転車で家を出発した。次郎君は、太郎君を途中で追い越し、太郎君よりも9分早く学校へ着いた。
    (1)次郎君が太郎君に追いついたのは何時何分か?
    (2)家から学校までの距離は何kmか?



    禁煙:太郎が進んだ距離を水色の長方形の面積で、次郎が進んだ距離をピンクの長方形の面積で表すことにするわね。


    (1)次郎君が太郎君に追いついたのは何時何分か?

    禁煙:次郎君が太郎君に追いついた時、二人が進んだ距離は等しいから?

    少女:水色の長方形とピンクの長方形が距離を表すんだから、同じ面積になったらいいんですか?

    禁煙:ええ、そうね。次郎君は太郎君より15分後にスタートしたので、15分だけずらしてピンクの長方形を描いたわ。

    oituki0.png


    少女:重なってますね。

    禁煙:重なっている部分は同じ面積なのは当然よね? だから、重なっていない部分の面積が同じになればいいの。


    水色の重なっていない部分の面積は60×15=900
    ピンクの重なっていない部分の面積は(150−60)☓?分=90×?

    900÷90=10分

    15分と10分だから、

    答)8時25分に次郎君が太郎君に追いついた。


    (2)家から学校までの距離は何kmか?

    学校までの距離は等しいから、水色の長方形とピンクの長方形は同じ面積になるはず。
    次郎は15分後にスタートしたので、15分だけずらしてピンクの長方形を描いた。
    また次郎は太郎よりも9分早くついているから、水色の長方形は9分だけ横に長い。

    oituki1.png

    水色の長方形とピンクの長方形は同じ面積になるためには、重なっていない部分の面積が同じになればよいから、
    水色の重なっていない部分の面積60×15+60×9=1440
    ピンクの重なっていない部分の面積(150−60)☓?分=90×?
    1440÷90=16分。

    次郎は分速150mで16分走って学校に着いたのだから、学校までの距離は
    150×16=2400m
    答え)2.4km


    少女:いきなり旅人算! でもこれ、案外分かりやすいかも。

    禁煙:ちなみに今の問題を方程式で解いてみると


    (1)次郎君が太郎君に追いついたのは何時何分か?
    t分後の進んだ距離
    太郎 60t
    次郎 150(t-15)

    60t=150(t-15)
    t=25
    (答え)8時25分


    (2)家から学校までの距離は何kmか?
    次郎がx分走ってで学校についたとすると、学校までの距離は150x。
    同じ距離を太郎は15+x+9分かけて着いたから

    60(15+x+9)=150x
    x=16
    学校までの距離は150×16=2400
    (答え)2.4km


    少女:うーん。確かに方程式で解くほうがコンパクトですけど。でも、方程式の何が分かりにくいかって、何をxと置くかを自分で決めないといけないじゃないですか。旅人算とか○○算って、どのパターンかが分かれば、どの数とどの数を掛けたり割ったりすればいいか、やることが全部決まるのがいいんです。

    禁煙:方程式の方が汎用性は高いけれど、その分ユーザーが考えなくてはならない部分も多いってことかしら。

    少女:こんなこと言うと、暗記算数の弊害とかって怒られそうだけど。

    禁煙:いつもどんな感じなの?

    少女:文章題の中で分からなそうなのが出てきたらx、y、z・・・と全部未知数としておいてしまって、文字が多すぎて困ったりとか。仕方なくあとから、変数の間の関係をつかって文字を減らすんですけど。

    禁煙:今の太郎次郎の問題だと、

       速度   追いついたとき      学校に着いたとき
    ================================================================
    太郎 90m/分  それまでに進んだ距離? それまでに進んだ距離?
            かかった時間?     かかった時間?
    次郎 150m/分  それまでに進んだ距離? それまでに進んだ距離?
            かかった時間?     かかった時間?

    分からないことって全部で8つあるけど、どれをxと置けばいいか分からなくて困る、全部を文字式で置こうとして困るって感じ?

    少女:そうです。さすがに8つ全部を置こうとはしませんけど。オレーム図は、分からないのがどれかに関係なく、縦軸は速度、横軸は時間って決まってるから分かりやすく思えるのかも。

    禁煙:そうね。オレーム図は、距離や速度や時間なんかの、変数の間の関係を整理してつかまえるためのツールなの。言葉だけで関係を追いかけるよりは、ずっとマシなやり方ね。つまりこれも、自然言語(ことば)より簡潔に表せる表現手段なの。方程式より自由度は低いけど、その分何をすればいいかが分かりやすいかもしれない。

    少女:うーん。

    禁煙:捕まえた後は、どの長方形と長方形が同じかを確認して、その関係を使って分からない変数を求めていくの。

    少女:じゃあ、オレーム図で整理した後、方程式を立てればいいんですか?

    禁煙:ええ、それもいいわね。方程式を立てるコツは、イコールの左右では別のものを配置できるようにすることね。いつもイコールという訳ではないけれど、イコールになる場合だってある。そして方程式を解くことは、イコールが成立するのはどんな場合なのかを見つけること。今の問題だと、(1)は、t秒後に太郎君の進んだ距離と、同じくt秒後に次郎君が進んだ距離という、二つの別のものをイコールの左右に配置したわね。t秒後に太郎君の進んだ距離と、同じくt秒後に次郎君が進んだ距離は、大抵は違うけれど、太郎君に次郎君が追いついた瞬間にはイコール。これがどんな場合かと言えば、太郎君が出発して24分後、というのが、その答えね。

    少女:えーと(2)だと、太郎君が学校まで進んだ距離と、次郎君が学校まで進んだ距離は、同じだってことですね。

    禁煙:何をxにするかをいきなり考えるというより、何と何をイコールで結ぶかからスタートして、遡って何がxになるかを考える方がやりやすいかもしれないわね。

    少女:何と何をイコールで結ぶかを考えるのに、オレーム図は使えるんだ。

    禁煙:では、もうひとつ問題。


    【問題2】
     ある牧場では、300頭の牛を放牧すると10日で草がなくなり、600頭だと4日で草がなくなります。では、500頭の牛なら何日放牧できるでしょう。ただし、牛はみな1日に食べる草の量は同じで、草は毎日、一定の割合でのびるとします。
     
     
    少女:まさかのニュートン算!? えーと、牛一頭が一日に食べる草の量をxとして、草が一日に伸びる量をyとすると、あー放牧はじめた日の草の量も分からないからzとおくと、300頭の牛を放牧すると10日で草がなくなるんだから

    (300×10)x=z+10y・・・(1)

    600頭だと4日で草がなくなるんだから

    (600×4)x=z+4y・・・(2)

    あと500頭で食べつくす日数が分からないからwとおくと

    500wx=z+wy・・・(3)

    式が3本なのに分からない変数が4つもあります。どうしよう?

    禁煙:いつも、どういうことになって困っているのか、よく分かったわ(x=1と代入するか、xを残したまま解いてwを求めてもいいのだけど)。せっかくなのでオレーム図を使うことにして、これを追いつき旅人算として解いてみましょうか。草が伸びていくかわりに、草君がスタートしてゆっくり歩いてる。それを牛300頭が追いかけていくの。

    少女:恐ろしい光景です。

    禁煙:横軸は日数でいいわね。問題は縦軸だけど、今回は草が減る(増える)速度なので、縦軸に牛の頭数を書きましょう。

    少女:300頭×10日(青色の四角)と、600頭×4日(赤色の四角)の長方形を描くんですね。

    禁煙:ええ。

    少女:これ、ダメです。300頭×10日=3000と、600×4=2400で長方形の大きさが違うから、さっきみたいなこと、できません。

    newton-p1.png



    禁煙:日数が経過した分、草が伸びている(草君が先へ進んでいる)のだからおかしくないわ。

    少女:だったら、どことどこの長方形が等しいとしたらいいんでしょう?

    禁煙:牛君たちが食べる草は、元々生えていた分と、食べ始めてから伸びた分があるわね。牛君たちが食べ始めてから伸びた分をあらわすもうひとつ長方形を重ねて書きましょう。

    少女:どうやって?

    禁煙:牛君がちょうどx頭いたら食べきれるペースで草が伸びると考えるの。300頭でも10日あれば食べきれたのだから、そのペースは200頭から100頭か50頭かわからないけれど、300頭よりは少ないわね。

    少女:じゃあ、300頭の長方形よりも低い長方形(縁なしのグリーンの長方形)を書きます。


    newton-p2.png



    禁煙:こうしておけば、食べ始めてから伸びた分はおいておいて、元々生えていた草の分だけを比べれば、300頭で10日かかった分と600頭で4日かかった分は同じはずよね?

    少女:え?え?

    禁煙:つまり縁なしのグリーンの長方形よりも、上の部分で、水色の長方形とピンクの長方形の面積が等しいの。もちろん水色とピンクが重なっている部分は、さっきと同じで、省いてもいいわね。

    水色の長方形の重なってない部分の面積=(300ーx)×(10−4)
    ピンクの長方形の重なってない部分の面積=(600−300)×4

    (600−300)×4=(300ーx)×(10−4)
    1200=6(300−x)
    1200=1800−600x
     600x=600
        x=100

    少女:結局、簡単な方程式が残りましたね。この100って、草君でしたっけ?

    禁煙:うん。草は、牛100頭がいたらちょうど食べきれるくらいのペースで生えていくのね。最後に牛500頭いたら、何日で食べつくすかを知りたいから?

    少女:さっきと同じようなオレーム図を書けばいいんですか? 500頭でy日で食べつくすとしてパープルの長方形を書きました。これも重なってないところが等しいでいいんですよね。


    newton-p3.png



    (500-300)× y=(300-100)×(10-y)
    200y=200(10-y)
    200y=2000-200y
    400y=2000
    y=5

    (答)5日

    少女:5日です。

    禁煙:ええ。そのとおり。

    少女:オレームさんの図は他にも使えるんですか?

    禁煙:もちろん。たとえば横軸に今みたいに匹数、縦軸に足の本数を取れば、つるかめ算だって解けるわ。

    turukame.png


    亀の足の合計を表す長方形(黄色の四角)に、鶴の足の合計を表す長方形(青の四角)をくっつけて書く。
    「つるとかめが合わせて9ひきいます。足の数は合わせて26本です。つるとかめはそれぞれ何びきいますか。」だと、
    点線で書いた大きな四角は4本×9匹で36本。問題の数は26本だから、欠けている部分が36−26=10本。これの縦は2だから、2×5=10で、鶴が5匹、亀が4匹。




    少女:いや、それはいいです。

    禁煙:大人の都合を少しだけ漏らせば、横軸に今みたいに匹数、縦軸に1匹増えるたびに何本足が増えるか(足の増加率)をとると考えれば、オレーム図を介して、悪名高きつるかめ算も、ニュートンの流率・流量に、つまるところ微分積分につながる訳。

    少女:それはどっちからも怒りを買う気がします。

    禁煙:更に言えば、さっきの旅人算は、ずっと同じ速度で進む問題だったけれど、オレームさんの図は速度が変わる問題も扱えるの。実際、オレームは落下する物体の運動なんかをこの図であつかってるわ。

    少女:どうするんですか?

    禁煙:一定の割合で速度が高くなるから、グラフは斜めになるわね。ここでも面積が進んだ距離に該当するから、今度は三角形や台形の面積が分かればいいわけ。最初止まっていた(速度ゼロ)物体が、3秒後地面に落ちたとき速度は秒速29.4mだったなら、進んだ距離は次のような三角形の面積で表せるから、29.4×3÷2=44.1mということになる。

    oresme2.png


    少女:あ、三角形か。そうか。

    禁煙:面積を求める求積法は、今までは図形や土地みたいな止まったものを測るだけだけだったのが、オレーム図という表現を介して、運動を量的に把握するのに使えるツールになっていく。この後、ガリレオやデカルトの登場まで200年近く捨て置かれるアイデアだけれど。アルキメデスの取り付し法の近代バージョンを開いたケプラーやカバリエリはもちろん偉いけれど、オレームのこのアイデアがないと、求積法はきっとニュートンにつながらなかった。だから、微分方程式のルーツをたどるなら、多分、ここが水源のその先の、雨雲ひとつかも。せっかくだから、このまま微分や積分の話をしましょうか? それとも1次方程式を図形で解いたから、次は2次方程式?

    少女:いや、今日はもう、お腹いっぱいです。







    少女:証明問題が一番苦手です。答を見ても、なんでこれで証明したことになるのか、全然ピンと来ないし。

    禁煙:確かに苦手な人が多いみたいね。

    少女:解く問題だったら、とにかく答を出すところまでたどり着けばいいと分かるんで努力もしようがあるけど、証明ってどこからはじめてどこへ向かえばいいのか、それさえよく分からないです。あと、当たり前の事をわざわざ証明して、余計難しくしてるんじゃないかって思うこともあります。

    禁煙:そうねえ。多分、前に話したことが関係してくるかしら。数学のことばと自然言語の話。


    問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers 問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

    少女:数学の言葉で書かれたものを、普通の言葉に翻訳しちゃうから、かえって分からなくなるっていうんですよね?

    禁煙:当たり前の事をなんで証明するんだ、っていうのだけれど、ひとつの理由は、数学のことばの内だけで決着をつけたい、というのがあるの。

    少女:それって、どういう?

    禁煙:言い換えれば、数学の言葉で書いてある内容を、自然言語に翻訳したり、日常生活で培った感覚に置き換えて「当たり前」って思えたとしても、それは数学の証明の代わりにはならないってことね。もちろん理解や発見の助けになることもあるから翻訳を否定するわけではないけれど、翻訳でわかったとしても、数学のことは数学で、って話なの。

    少女:ということは、私の数学語レベルが未熟だから証明が分からないってことですか?

    禁煙:深刻に取るとそうだけど、見方を変えるとね、証明の読み書きを練習するのが数学語をマスターする近道とも言えるわね。

    少女:うえ。

    禁煙:もうひとつ、証明が分かりにくいのは、省略が多いから。プロの論文はもちろん、これから勉強する人が学ぶ教科書に載ってる証明も、そうなの。簡潔を尊ぶ文化ってこともあるけど、(まず値段、そしてページ数を決めるところから始める出版企画のせいで)すべてを丁寧に書くには紙面に限りがあるって大人の事情もあるかも。

    少女:せめて教科書ぐらい、省略なく書いてくれてもいいじゃないですか?

    禁煙:じゃあ、それにつきあってもらおうかしら。ただ先に弁護をしておくと、証明というのは、地図というより、「3つ目の信号を左に曲がって2ブロック行って右へ曲がる」というような道順の説明なの。それは道を間違えないための最小限の情報であって、たとえば指示のないところは、「まっすぐ進む」(証明だと、自明の式変形を行う)だと自分で補って読まなきゃならない。目的地に着くのが第一だから、道の途中でどんな花が咲いているかとか詳しく語られても、みんながみんな喜ぶわけではないでしょう? あるいは「右足と左足を交互に前に出して進む」みたいに噛み砕いて詳しく説明できるけれど、そうすることで分かりやすくなるかといえば微妙だと思わない?

    少女:必要最小限の方がいいってことですか?

    禁煙:その途中にどんなものがあるか、周囲がどうなっているか、今どっち向きに進んでいるのか、何のためにそちらに向かっているのかといったことは、証明自体は、ほとんど何も語らない。それを知るにはまず、道順に従って自分で歩いてみなくてはね。そうやって足りない情報を自分で補いつつ読むというのが、トレーニング的意義も含めた、数学書を読むということなの。

    少女:分からないこともないですけど、それが敷居を高くしてるってこと、ないですか?

    禁煙:「やさしく書いた」と自賛する理工書は「(そのために)証明を省いた」と言ってはばからないけれど。ただ数学語にも、基本構文みたいなものがあって、それを知っておくと、証明の読み書きが楽になるかもね。

    少女:背理法とか数学的帰納法とかですか?

    禁煙:うん、それもあるけれど。

    少女:試行錯誤(法)とか、無しですよ。

    禁煙:ふふ。まずはS+V(主語+動詞)にあたるような、ほんとの基本からね。あまりに当然に(そして多くは無意識に)用いられるので、ほとんどの人がわざわざ名前をつけてみようと思わないほど当たり前なものだけれど。

    少女:名前はまだない?

    禁煙:一応「前進後退法 forward-backward method」ってつけた人がいるけれど。

    少女:その前進とか後退って何ですか?

    禁煙:数学の命題って「AならばB」みたいな形をしているでしょ?Aを仮定、Bを結論と呼ぶと、仮定から結論へ向かっていくのが、ここでいう「前進」ね。逆に、結論から仮定へさかのぼるのが「後退」。

    少女:「AならばB」を証明するんだから、仮定から結論へ向かって前進あるのみ、なんじゃ?

    禁煙:完成品の証明はそうなってることが多いわね。でも「確かにそうすれば結論に至るけれど、なんでそんなこと思いつくの?」ということはない?

    少女:あります。

    禁煙:ひとつのヒントがこれね。結論から迎えに行ってあげた方が、簡単に証明できることって多いの。迷路でも、ゴールからスタートへ向けて辿った方が易しいことってない?

    少女:うーん、どうだろう?

    禁煙:仮定から結論に近づく(前進過程)のと、結論から仮定に近づく(後退過程)のを、両方やるから前進後退法ね。

    zenshin_koutai.png


    禁煙:山の両側からトンネルを掘るみたいだけれど、つながったら、仮定から結論へ一直線みたいに証明の完成品は書くの。もちろん〈道順〉みたいに簡略した形でね。



    少女:証明って書いてあるとおり、仮定から結論へ当然進んでるものだと思ってました。

    禁煙:文章だって冒頭から結末への順序で書くとは限らないでしょ?

    少女:ええっ、そうなんですか?

    禁煙:……数学の証明の場合、結論からさかのぼるように考えるメリットは、仮定よりも結論の方がシンプルでクリアなことね。証明に必要になる仮定の方は、たくさん必要だったり、すべて与えられず自分で探して来なくてはならなかったりするけど。

    少女:そりゃ何を証明するかぐらいはっきりしてないと困ります。

    禁煙:テスト問題だとまだ与えられる仮定が多いけど、それでも証明に使う定義や定理を自分で持ち込むことが多いわね。これが自分で見つけた定理を証明することになると、原理的にはだけど、これまで人類が証明したすべての定理を使ってもいいのだもの。もちろんどのあたりのことを使えばいいか、証明する人は見当をつけているけれどね。

    少女:証明問題って確かにどこから始めたらいいか分かりづらいです。じゃあ結論からさかのぼるとして、具体的にどうするんですか?

    禁煙:パターン・プラクティス(型稽古)しやすいようにフレーズ化しておくと「これを証明するためには、何が言えればよいか?」と自問自答するのを繰り返すことになるわ。

    少女:繰り返すんですか?

    禁煙:1ステップさかのぼるだけで、結論から仮定に至れれば言うことないけれど、そういうのって証明し甲斐がない問題じゃないかしら?

    少女:繰り返して、できるだけ仮定に近づけるんですね。

    禁煙:ええ、大抵は途中でそれ以上さかのぼるのが難しくなるけれど、その時点での到達点は、最初の結論よりは証明しやすくなっているはず。もちろん、そうなるように遡るのだけれどね。簡単な例でやってみましょうか?


    【問題】

    right_triangle.png

    直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4 ならば,三角形XYZ は二等辺三角形であることを証明せよ。


    少女:ええと、結論からさかのぼるところから始めればいいんですよね?

    禁煙:まず、仮定と結論が何なのか、確かめましょう。

    少女:「AならばB」で、Aが仮定、Bが結論ですよね。「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4」が仮定で、「三角形XYZ は二等辺三角形である」が結論でいいですか?

    禁煙:ええ、そのとおり。では結論から遡りましょうか。

    少女:さっきのフレーズですね。ええと「これを証明するためには、何が言えればよいか?」。今の結論を当てはめると、“三角形XYZ は二等辺三角形である”を証明するためには、なにが言えればよいか?
    禁煙:なにが言えればいいのかしら?

    少女:んー、ベタですけど、二等辺三角形なんだから、二つの辺が等しいことが言えればいいんじゃ?

    禁煙:そうね。この問題で言うと?

    少女:ええと、斜辺以外の辺ですよね。

    禁煙:今だと直角の2辺の長さがx,yだから?

    少女:x=yですよね。

    禁煙:ええ、これで1ステップ進んだ訳。結論B「三角形XYZ は二等辺三角形である」を証明するためには、B1「x=y」が言えればいいわけね。

    少女:そのB1って何ですか?

    禁煙:結論をBにしちゃったから、そこから1ステップさかのぼった印をつけたの。さて続けましょうか?

    少女:もう一度「これを証明するためには、何が言えればよいか?」ですね。今は、B1「x=y」を証明するためには、何が言えればよいか?・・・いきなり詰まりました。

    禁煙:他にやれることがないか探しましょうか。前進後退法なんだから、結論から遡る方が詰まったら
    少女:前進する・・・仮定から進む方ですか?

    禁煙:こちらもフレーズ化しておきましょうか? 「これが成り立つならば、どんなことが言えるか?」。実はこの問題の仮定A「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4」には、二つの主張が入っているわね。A1「三角形XYZが直角三角形」であることと、A2「三角形XYZの面積がz2/4」なこと。

    少女:あ、そうか。

    禁煙:A1とA2、それぞれについて「これが成り立つならば、どんなことが言えるか?」を自問自答してみましょうか。

    少女:えーと、A1「三角形XYZが直角三角形」が成り立つならば、どんなことが言えるか?・・・どんなことが言えますか?角Zが90度とか?

    禁煙:いろいろあるけれど、今私たちが目指しているのは、B1「x=y」だということを思い出して。これは辺の長さについての主張だから、そこに合流しようと思えば、仮定から進む(前進過程)でも、辺の長さについて何か言えることがないか探すべきよね。直角三角形で辺の長さについて何か言えないかしら?

    少女:・・・ピタゴラスの定理、ですか? あれって辺の長さの間の関係ですよね。

    禁煙:ええ。どうなるかしら。

    少女:「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがz」ですよね。だったらx2+y2=z2じゃないですか。

    禁煙:A1から一歩進んだからこれをA11にしましょうか。A11「x2+y2=z2。これでB1とつながった?

    少女:いえ、まだです。

    禁煙:そうね。まだ使ってない仮定があるわ。

    少女:A2「三角形XYZの面積がz2/4」が成り立つならば、どんなことが言えるか?・・・で、辺の長さに関することですよね。

    禁煙:辺の長さをつかって、面積を表したらどうかしら?

    少女:あ、そうか。直角三角形だから、底辺も高さも辺の長さがそのまま使えますよね。底辺×高さ÷2で面積はxy/2?

    禁煙:そう、A2「三角形XYZの面積がz2/4」が成り立つとしているから?

    少女:xy/2とz2/4が等しいんですね?

    禁煙:そう。これをA21にしましょうか。今の段階でどこまで来ているかまとめてみると

    A11「x2+y2=z2
    A21「xy/2=z2/4」
    B1「x=y」


    少女:みんな式の形になってきましたね。ここからどうしましょう?

    禁煙:A11とA21からB1にたどり着きたいのよね? B1にはxとyが出てくるけどzは出てこないわね。

    少女:だったらA11とA21からzを消せばいいのかな?……もう両方合わせて使っていいですよね。まずA21の両辺を4倍して
    A22「2xy=z2
    これをA11に代入します。

    禁煙:結果はA3とラベルをつけておきましょう。

    少女:はい。

    A3「x2+y2=2xy」
    まで来ました。

    禁煙:x2+y2=2xyで2xyを移行してA31「x2+y2-2xy=0」。これを因数分解すると、A32「(x-y)2=0」よね。

    少女:ああ、だったらA33「x-y=0」になるから、ふう、やっとB1「x=y」にたどり着いた。結論側と仮定側から掘っていたトンネルがつながりました。……これで自分としては証明できた気がするんですけど、証明はもっと簡潔に書くべきなんですよね?道順だけ?

    禁煙:そうねえ。ラベルをつけたところを、今度は過程から結論の順に並べてみてはどうかしら?

    少女:えーと、こうですか?


    仮定A「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4」
    A1「三角形XYZが直角三角形」
    A11「x2+y2=z2
    A2「三角形XYZの面積がz2/4」
    A21「xy/2=z2/4」
    A22「2xy=z2
    A3「x2+y2=2xy」 (A11とA22から)
    A31「x2+y2-2xy=0」
    A32「(x-y)2=0」
    A33「x-y=0」
    B1「x=y」

    結論B「三角形XYZ は二等辺三角形である」

    禁煙:今回はとても詳しく、普通は無意識でやってしまうところも、声に出してやってみたのだけれど。〈道順〉として落とせないのは「どこで曲がるか」よね? 逆に「まっすぐ進める」ところ、たとえば計算の途中過程なんかは省略していいと思うわ。

    少女:今ので言うと因数分解とかは省略できるのかな? A22からA33までごそっと削りましょうか?

    禁煙:それでもいいけど、その中で何か一つだけ残すとしたら?

    少女:「曲がり角」を間違えなきゃいいんだから、A32があったら間違えなさそうです。

    禁煙:すると、こんな風になるかしら。


    (証明)
    仮定の(A1)三角形XYZが直角三角形から(A11)x2+y2=z2・・・(式1)
    同じく仮定の(A2)三角形XYZの面積がz2/4から(A21)xy/2=z2/4・・・(式2)
    式1に式2を代入して整理すると
    (A32)(x-y)2=0
    となり、これより(B1)x=yとなり、(B)三角形XYZ は二等辺三角形であることが証明できた。



    (A1)(A11)・・・(B1)(B)みたいなのは、私たちがわかりやすいようにつけたラベルだから証明には書かなくてもよいでしょうね。ラベルを消すかわりに、指し示したい式にだけ(式1)(式2)とつけたわ。

    少女:なんか証明っぽくなりましたね。

    禁煙:というより証明そのものよ。

    少女:自分だけでやってトンネルが貫通できるかどうか分かりませんけど、とりあえず何から手をつければいいかは分かった気がします。

    禁煙:簡単な問題だから、いちいち手順を踏むまでのことはないかもしれないけれど、証明をつくるときの舞台裏も知ってもらいたくて詳しくやってみたの。

    少女:毎回、こんなに丁寧にしなくちゃいけませんか?

    禁煙:証明を苦手に思う人は、簡単すぎるくらいの問題を、フォームを確認するつもりで、こんな風にしつこくステップを踏んでみるといいかも。何を考えるべきか、そして考えたことのうち、何を書いて何を省略するか、考えられるようになると、人が書いた省略の多い証明も、自分で補完しながら読めるようになるから。

    proof-process.jpg




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     以前「教科書は教えてくれないけれど知らないと教科書が読めない学習語リスト」という記事を書いた。
     
    教科書は教えてくれないけれど知らないと教科書が読めない学習語リスト 読書猿Classic: between / beyond readers 教科書は教えてくれないけれど知らないと教科書が読めない学習語リスト 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

     専門用語は、教科書の中で説明してあるし、専門辞書を引くこともできる。
     けれども、教科書や専門辞書の説明の中には、特に説明なく使われる言葉がある。
     前の記事では、これを〈学習語〉と呼んだ。
     〈学習語〉は、(とくに子どもたちが交わす)日常の話し言葉には登場しにくい抽象語などが含まれている。
     教科書や専門辞書の説明は、そうした〈学習語〉を知っていることが前提になっている。
     知っていないと、日々の学習でつまずき、後れを取ることになってしまう。
     
     今回取り上げるのは、〈学習語〉と似ているが、もう少しやっかいな言葉たちである。
     〈学習語〉は、そうはいっても一般語であって、国語辞典で意味を確認することができる。
     しかし例えば次のような言葉は、言葉としては一般語なので、専門辞典に載っていないが、その用法は国語辞典がカバーする範囲を超えている。

    置換を互換の積で表したとき、その互換の数の偶奇は一意的に決まる。

      → 置換を互換の積で表したとき、その互換の数の偶奇は、ただ一通りに決まる。
     
     国語辞典には「一意」は、

    (1)ひとつの考え。また同じ考え。
    (2)(副詞的に)一つの事に精神を集中するさま。ひたすら。

    とある。もちろんこれでは意味が通らない。
     実は、広辞苑には第4版以降、

    (3)(unique) ただ1通りに定められること。「一意的な解」

    という意味・用法が追加されている。他には

    任意
    (3)(「任意の」の形で) 論理学・数学などで無作為に選ばせること。「平面上の任意の一点」

    などが記載されている。

     実はこうした数学に現れる形容詞・副詞はまだ注意が払われている方だ。
     たとえば『数学ビギナーズ・マニュアル』は、第2章を当てて、こうした数学に独特の言い回しを取り上げ解説している。
     

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     しかし、やはりそれ自体は一般語なのだが、特別な意味・用例で用いられ、しかし改めて取り上げられることが少ない、次のような動詞がある。

     定理1より定理2が従う

     国語辞典には「従う」について、(1)後について行く、(2)さからわない、(3)従事する、たずさわる、といった意味・用法が出ているが、これだけでは理解しがたい。

     全文検索できる日本語の数学辞典で検索すると、この「~より/~から/~ならば・・・が従う」なるフレーズは頻出する。『岩波数学辞典 第4版』では97箇所で使われていた。


     これは英語だと「follow from~」の直訳に由来する気がするが、接続詞化した「従って」が担う役割との関連も指摘される。つまり
     
     AよりBが従う。
     Aである。従ってBが成り立つ。

     

     (2)は(1)から直ちに従う。
     (1)である。従って、直ちに(2)が証明できる。

     

     つまり、「従う」は、数学では論理的導出関係を示すために用いられる。
     論理的導出関係を示す言葉には、(日本語でも英語でも)他にもあるため、日語ー欧語で対応付けがある訳ではない。
     たとえば
     
     The Dirichlet's theorem follows from our next theorem.

    は、「ディリクレの定理は、次の定理より従う」とも「ディリクレの定理は、次の定理から導かれる」とも「ディリクレの定理は、次の定理から得られる」とも訳すことができる。
     多くの場合、数学の文献に現れる「従う」を「導かれる」「得られる」に取り替えても(場合によっては取り替えた方が)意味が分かるだろう。

     そんな訳で、以下では同種の表現をグループ分けして示すことにした。


     方言学では、「本をなおす」(しまう、片付ける)、「手袋を着る」(はめる)など、共通語 と形が同じでありながら意味・用法に地域的な違いが見られるものを〈気付かない方言〉と呼ぶ。

     以下、改めて説明されることが少なく、数学の文献や教科書/辞書などで、当然のように用いられるが、日常的・一般的な意味・用法と異なる、数学における〈気付かない方言〉を取り上げた。
     なんとなく意味が取れるか、あるいは分からなくてもなんとかなるものが多いが、「特徴づける」のように、頻繁に使われるが(『岩波数学辞典 第4版』には282箇所あった)、慣れないと意味が取りづらいものもある。

     網羅的なものでは全くないが、数学の本を読む一助になれば幸いである。



    (論理的導出関係)

    *従う

     命題 3.1.2 から(Pm:Sm)の有限性が従う

      → 命題 3.1.2 から、(Pm:Sm)の有限性が、論理的に導き出される


    *得る

      q(x)に同じ議論を適用することにより、次の定理を得る

      → 既述の方法を q(x)に適用すれば次の定理が論証される


    *与える

     Yの元に対して、1≦|N(a)|が成り立つ。これは|a| ≧ c1-nt与える

      → 第 1 の不等式1≦|N(a)|から、第 2 の不等式|a| ≧ c1-nt妥当性が導かれる


    *導く

     ~からn+1の場合が導かれる

      →(このままで解るが、あえて言い直すなら)
        結論として(論理的に)引き出される、論理的帰結として結論される


    *出る

     (1)より(2)の完全性がでる

      →(1)より(2)の完全性が証明される
     


    (大小関係)

    *おさえる

    X は 3 で上から押さえられる

     → X < 3


     { an }n∈N の挙動を上下から押える

      → anがどのような値をとって変化するか、その変化の範囲を不等号でしめす。たとえばL < an < G。


    *評価する

      X は G で上から評価される

      → X  < G

     この式の第 3 項はηα ≦ (M1 + M2)Tr(B1) と押えられ、結局Tr(B1) ≦ M1 + C Tr(B2)のように評価される

      → この式の第 3 項はηα ≦ (M1 + M2)Tr(B1) と不等式で示され、結局Tr(B1) ≦ M1 + C Tr(B2)のように不等式で示される





    (設定・定義づけなど)

    *置く

     c=2-1(a+b)とおけば

      → c=2-1(a+b)と設定すれば


     e=min(b,(b2-a)/3δ)とおけば

      →e=min(b,(b2-a)/3δ)と定義すれば



     方程式(2)は,u=t{u( · , t),ut( · , t)} と置けば、次のようにかける

      →方程式(2)は,u=t{u( · , t),ut( · , t)} と定義すれば、次のようにかける



    *取る

     いま任意のx<bを取れば

      → いま任意のx<bを選べば

     両辺の実部を取れば

      →両辺の実部を取り出せば



    *特徴づける

     性質Pは、Aを特徴づける

      → Pという性質を持つものはAに限られる。
       

     数ある順序体の中で実数体を特徴づけるものが連続の公理である。

      → 連続の公理を満たす順序体は、数ある順序体の中でも実数体だけである。


     1がAの上限であるとは次の(a)(b)で特徴づけられる

      →1が上限であるための必要十分条件は(a)(b)である。



    (その他)
    *言う

     ~が言えれば、fは微分可能である。

      →~が証明できれば、fは微分可能である。



    *閉じる
     全ての自然数のなす集合Nは足し算について閉じている

      → 自然数同士の足し算の結果は必ず自然数になる。




    (参考文献)
    ・佐藤文広(1994)『これだけは知っておきたい数学ビギナーズマニュアル』(日本評論社)
    ・片野 善一郎 (2003) 『数学用語と記号ものがたり』(裳華房)


    数学用語と記号ものがたり数学用語と記号ものがたり
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    片野 善一郎

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    ・佐藤宏孝 (2005) 「数学における専門日本語語彙の分類--留学生への数学教育の立場から」専門日本語教育研究 (7), 13-20.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2009). 「数学における動詞「従う」の意味・用法--「気づかない」専門日本語語彙の研究に向けて」東京外国語大学留学生日本語教育センタ-論集 (35), 17-29.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2010).「数学における動詞「おく」の意味・用法:「気づかない」専門日本語語彙(2)」東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 (36), 45-55.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2011).「数学における動詞「得る」の意味・用法:「気づかない」専門日本語語彙(3)」東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 (37), 1-13.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2012).「数学における動詞「おさえる」の意味・用法:「気づかない」専門日本語語彙(4)」東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 (38), 57-72.