INTERVIEW / 06
Dave Landa (2014年中途入社)
Trinity College-Hartford
Kintone Corporation CEO
2014年の米国立ち上げを社長の山田と共に行い米国におけるkintoneの拡販に大きく貢献。
Kintone Corporation入社前は100以上の団体が所属する肥満や健康促進のための数あるプログラムを支援する非営利団体のPHIT Americaにおいて資金調達やプロジェクトマネジメントなどを行う。また、Electric Runのアジアにおけるビジネスの立ち上げや戦略的事業の開発と共にアジア圏でのイベントの開催や各国とのパートナシップを構築。現在はサイボウズ株式会社の米国子会社であるKintone CorporationのCEOとして米国の経営全般を担っている。
kintoneで、世界中のチームワークに変化を与えよう
日本国内においては徐々にその知名度を高めてきたサイボウズ。しかし私たちが目指すのは世界No.1。2014年より販売を開始した米国では文化に依存しない製品であるkintoneのみを販売している。今回はサイボウズの知名度が全くない米国子会社Kintone CorporationでCEOを務めるDaveから現在のkintone販売の手ごたえや難しさ、今後の事業展開や日本本社とのコネクトについて聞いた。
サイボウズという一風変わった日本企業と出会ったわけ
中江:Daveさん、サイボウズへの入社の経緯を教えていただけますか?
Dave(Kintone Corporation CEO):Kintone Corporationはサイボウズの米国子会社で、サンフランシスコにオフィスがあります。私が入社したのは、まさにサイボウズが米国進出をしようとしていた3年ちょっと前。いまはKintone Corporationの社長を務める山田理さんが、私が2004年からソフトウェア業界にいてアジア太平洋事業に長い経験があるのを知って、連絡をくれたんです。kintoneを試してみて、すぐに恋に落ちましたね。サイボウズという先進的で面白い会社にもすっかり魅了されて、サイボウズの米国進出に協力したいと思いました。決心は早かったですよ……山田さんから連絡をもらった2ヶ月後にはCOOとして一緒に働いていましたからね。
中江:どうしてそんなに決断が早かったんですか?
Dave:まず製品の魅力ですね。私はプログラマではありませんが、山田さんと話しkintoneを試してみて、わずか30分後にはkintoneがいかにクールなプラットフォームであるかがわかりました。私がkintoneで試作したアプリケーションはライブでパワフルで、私の頭の中のイメージを実行してくれるソリューションだったんです。
中江:当時のkintoneは米国ではまず誰も知らない製品でした。不安はありませんでしたか?
Dave:kintoneはサイボウズらしいグローバリゼーションの精神で構築されているんですよ。多様な国の多様な人々の力を引き出すようにデザインされていて、それぞれの特有なデザインやユーザエクスペリエンスの期待にちゃんと応えてくれる。機能もわかりやすく直感的だし、「日本限定のソフトウェアだ」という感じはしなかったですね。米国の市場にも十分にニーズがあると確信しました。あとはもう発進するだけだったんです。
中江:サイボウズの社風も気に入られたとおっしゃいましたね。
Dave:そうです、素晴らしさに感激しました。サイボウズを初めて訪れたのは確かサイボウズカンファレンスのイベントだったのですが、活気にあふれて多様性にも富んでいるのを感じました。ジェンダーへの取り組みにもかなり驚かされましたね。多くのテクノロジー系の会社は男性に支配されているのが常ですから。サイボウズは世間に製品も愛され、社風も共感を集めている。とても感心しました。
中江:現在はDaveさんがKintone CorporationのCEOであり、米国事業を率いておられますね。
Dave:2年間COOとして働き、システムやオペレーションなど米国で成功できる組織づくりもしながら営業とマーケティングに専念しました。2017年のはじめに山田さんとの権限移譲を開始しました。山田さんは米国だけでなく、オーストラリアや中国・台湾・ベトナムなどもカバーするようになったんです。現在、山田さんはサイボウズの米国子会社のExecutive Vice President です。
kintone、米国市場へ
中江:kintoneを使っているのは、どんな企業ですか? 彼らの反応は?
Dave:大手の宇宙開発に関わる団体から小さな家族経営の会社まで、広い範囲の企業が使ってくれています。kintoneは面白いプラットフォームなので、どんな業種のどんな問題も解決してくれるんですよ。どんな組織・業界でもね。
顧客の反応はおしなべて「これはすごい!」といったものばかりですね。私が初めてkintoneを試してみた時と同様、皆さんすぐに製品の価値を理解してくださいます。問題解決をしてくれて、チームワークも良くしてくれて、情報を一目で一望できるわかりやすさがあり、報告・分析も簡単。コストパフォーマンスも良く、超パワフルなツールです。kintoneは、「プログラミングなしのソリューション革命」の最前線にいるんです。プログラミングなしで、誰でも洗練されたアプリケーションを作れますよ、という新しい概念なんです。たくさんの人や企業が使ってくれればくれるほど、そのアイデアも広まり受け入れられていきます。最近、アメリカの著名なITリサーチ会社の調査レポートでこの分野における大きな成長を指摘していましたがその通りで、いま注目を集めています。
中江:西海岸には巨大なIT企業が居ならびますが、どう戦いますか?
Dave:この「プログラミングなし」というアイデアに向かってすでにあらゆる方向からあらゆるライバルたちが押し寄せていますね。ほとんどが以前から存在する会社で、開発会社やプロのプログラマ向けに、いわば古いソリューションをアプリケーション開発のために提供してきた会社ばかりです。でも私たちは規模が小さく地域限定的な動きができますから、彼らよりもっと機敏です。kintoneは誰でもひとりでアプリケーションを作れるという、ビジネスーユーザー視線に立ったものなんです。
中江:競合はどこの会社ですか?
Dave:Salesforceです。彼らは超大手です。他の競合はQuickBase、これは大手Intuitの系列ですね。PODIOも競合ですが、これもまだCitrixの傘下です。大手の傘下だと、我々とはまた別の経営方針やアプローチにならざるを得ない。私たちは小さくて素早い、だから市場にのみフォーカスできるんです。それが私たちの強みです。
中江:kintoneのようなオープンAPIは、市場の新たな潮流でしょうか。
Dave:オープンAPIのおかげで、ユーザーが自分たちで付加機能を作ることができるんです。拡張機能やカスタマイズ、ビジュアルを変えることもできます。プログラマはkintoneのエコシステムに参加して、その一部になることができる。もちろんユーザーには月額の利用料がかかります。
中江:日本のセールスやマーケティングチームとはどのように連携しているのですか?
Dave:自分たちで提唱していることを自ら実践して、米国ではいつもkintoneを使い、国内のコミュニケーションだけでなく日本とのやり取りにも活用しています。そもそも何もかもが太平洋の両岸を繋ぐやり取りですからね。東京とサンフランシスコの時差は半日、こっちが昼ならあちらは夜です。特にアプリケーションの共同作業になると、場所に関係なく一つのチームとして、辛抱強くデジタルでやり取りを続ける必要があります。
中江:米国でのビジネスを拡大するにあたって、日本のサイボウズへ要望することはありますか?
Dave:サイボウズの開発とカスタマイズチームには、経験的なアドバイスや営業サポート、知見やリソースなど、しょっちゅう協力を求めています。日本側は米国よりもはるかに大きな顧客基盤を持ち、製品視点でカスタマーの問題解決をした経験も豊富。だからいつも大いに頼っているんです。
中江:kintoneの販売にあたって、難しいことはありますか?
Dave:米国はそもそも世界一競争の激しいソフトウェアマーケットですから、それ自体がチャレンジですね。kintoneは日本では高い評価を獲得していますが、米国では基本的にほぼ無名です。知名度を上げるための投資が必要ですから、ラジオ広告やバス広告を打ったり、有名なITカンファレンスに出展したりします。2017年末には私たち自身でkintoneカンファレンスをサンフランシスコで開催しました。
中江:いまサンフランシスコで、10人中何人がkintoneを知っているでしょうか?
Dave:10人中2人、いやひとりかな?でも数年前の知名度に比べたらウェブサイトのアクセス数が3倍に伸びたり、広告を出すことで大きく変わりましたね。
ベイエリア(サンフランシスコ湾岸地域)のワークライフバランスについて
中江:Kintone Corporationへ転職した理由は何ですか?
Dave:もうベイエリアへ戻ろうと思ったんです。前職では一年の半分は海外生活でしたから、家族と一緒にいたくて。CEOに就任して、日本へは一年に数回来る必要があるけれど、でも出張は楽しいです。サイボウズ社長の青野さんが提唱するワークライフバランスには大賛成。私としても、転職はちょうどいいタイミングだったのだと思います。
中江:皆さんの普段のワークスタイルは?
Dave:現在オフィスはサンフランシスコに2ヶ所あるんですが、私たちのワークスタイルはとてもフレキシブル。ある日は家で、翌日は街中のオフィスで、なんて感じです。選択した場所が便利で効率的で生産的である限り、どこで仕事をしてもいいんですよ。みんなが一つの効率的なチームとなっていてコミュニケーションも豊かで、外向的。問われるべきは仕事が完成しているかどうかですから、遅くまでオフィスにい続けなくていいんです。
いまの時代、転職回数の多い人ってどうなんでしょう?
中江:米国では新しいキャリアを求めてあちこち転職するのが常識ですけれど、そういうジョブホッパーについてどう思いますか?
Dave:私は彼らに対して悪くは思っていませんよ。むしろ正しいと思います。スキルやキャリアや収入を上げていくのですからね、常に進化しているわけでしょう。頻繁に転職するのが米国、特にベイエリアの現実ですから。新しい人々や新しいスキルに出会いたいのですよね。ベイエリアでは新しい職を見つけるのも簡単です。転職し続ける動機もさまざまですよ。もしある人が、特にその状況が悪いわけでもないのに辞めようとしているとすると、それは彼が組織やリーダーの経営に何か合わないのかもしれない。それなら不幸なままそこで身動き取れなくなるよりも、新しい会社に移るほうがいいですよね。リーダーというのは、なるべく一貫性を保つべきです。長い間仕事をしていると知恵がつく。その知恵が社員を助けるのですからね。ベイエリアのリーダーは、転職という形で人が辞めていく可能性を織り込み、従業員やステークホルダーの視点から物事を考えるべきです。従業員がその役職で成長し学べるよう、彼らのキャリアパスと会社のニーズを揃えていかないと、従業員は成長のために会社を辞めることになってしまう。そうならないようにするのが、社員ときちんと繋がった、知的なリーダーシップですよ。私も、自分のチームがみんな学び、実力を伸ばし、会社に何らかの貢献をできるようにしていかねばならない。それが経営やリーダーシップの大きな部分を占めていると思います。
中江:サイボウズはいまさまざまな支援制度や方針などで、社員に優しい会社としてよく知られています。でも以前は28%という高い離職率に苦しんだ時代もありました。28%という割合は米国でも高いほうですか?
Dave:それは米国でもかなり高いですよ。サイボウズは当時本当に大変だったでしょうね。
中江:サイボウズは日本の企業にしてはユニークな方針を持っています。このことは皆さんの日本文化観に何か変化をもたらしましたか?
Dave:新鮮でしたよ。私はアジア各地、ほとんどは中国の地域で仕事をしてきましたが、彼らは極端にトップダウンでオーナー経営者が実権を握る組織でした。でもサイボウズはそれとは違い、例えばみんな多部署の予算を勘ぐる必要もなく知っている。透明性は、どの会社も頑張って手にすべきものです。それにサイボウズの社風は確実に私の日本企業観を変えましたね。Cybozu Daysで青野さんのLGBTに関するスピーチを聞きました。他の経営者に、そんなことをできる人がいますか? ベイエリアの私たちはリベラルで進歩的だと自負しているけれど、あのスピーチは衝撃的でした。会社のカンファレンスで社のリーダーがあんな心を震わせるスピーチをするなんて、信じられないほど素晴らしいことです。
Dave:そうですね、好奇心と学ぶ意欲と経験。米国では、kintoneはこれから描き入れる巨大なキャンバスのようなものです。それは日本のサイボウズでも同じですね。みんなが新しいことをさまざまな方法で試すことができる。
Dave:私たちは拡大のためにどんどん人材を採用しています。Kintone Corporationにはいま43人の社員がいて、大きなチームです。始めた当初から考えれば、ずいぶん大きな組織になりました。サイボウズの一部として、私たちも「世界中のチームをよくする」という同じミッションを共有しています。kintone社は世界最大の市場の中にいるので、野心的な成長プランを練っていますよ。kintoneを世界的に成長させるなんて、ワクワクしますね。
中江:サイボウズのUSにおける活動にワクワクしました!今後ともよろしくお願いします。
*インタビュー内容は取材時点のものです。ご了承ください。