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ミホノブルボン。 無敗で皐月賞と日本ダービーを制し、菊花賞ではライスシャワーの2着に敗れるも、努力でスタミナ不足を克服した稀代の名ウマ娘と言われる存在だ。
これはそんな彼女と担当トレーナーである俺の、何の変哲もない、日常の一コマだーーーーー
「…へっくしゅん!…うーん、完全に拗らせちゃったなぁ…。」 季節の変わり目、ブルボンのトレーナーである俺は体調を崩し家で寝込んでいた。 学園近くの古い安アパートの部屋には旧型で不調気味の空調のみ。唐突に訪れた寒波に日々の忙しさで対応出来ず、薄手の毛布1枚羽織って徹夜に近い状態でパソコンに向かえば風邪も引くというものだろう。
「自分はブルボンに体調管理しろーなんて言っときながら、この体たらくだからなぁ…。」 熱でぼーっとする頭の中でも、真っ先に考えるのは担当ウマ娘のこと。 今日のトレーニングはライスシャワーのトレーナーに一緒に見てもらっているはずだ。
もともとレースで鎬を削りあっていたライスシャワーだが、プライベートではブルボンの友達である。 感情表現が苦手なブルボンの良き理解者となってくれており、トレーナー同士も仲がいいのだ。 今回も連絡を入れたところ、二つ返事で引き受けてくれた。 今度お礼の品を持っていかなくては…などと考えていると、また頭痛がひどくなってきた。
「いかんいかん、とりあえず安静にしなくちゃな…。」 ガンガン痛みが響く頭を鎮め、目を閉じて無理やりにでも寝ようとする。
………どのくらい時間が経っただろうか。寝ていたのか、起きていたのか、うなされていたのか、それすらもおぼつかない。 物音が聞こえた気がして、ふと目を開くと……
「…マスターの起床を確認。おはようございます、マスター。」 俺の担当ウマ娘、ミホノブルボンが俺の部屋にいた。 「ブルボン…?どうして俺の部屋に君がいるんだ?」 「本日のトレーニングは完了しました。トレーニング後にライスさんのトレーナー、コードネーム『お兄さま』からの提案によりマスターの看病に参りました。お部屋の鍵は大家さんに事情をお話しして、お借りしました。」
本来であれば風邪を移してはいけないだろうと帰らせるところなのだが、正直とてもありがたかった。 「あぁ、来てくれてありがとう。」 「周辺に食事の形跡なし。マスター、本日何かしら食物を摂取されましたか?」 「冷蔵庫の中に食べられそうなものがなくてな…。こういうときに食事の適当さを反省させられるよ。」 「そうでしたか…。やはり『お兄さま』の仰る通りでした。」
そういうとブルボンは手に持ったビニール袋からタッパーを取り出した。 「学園のキッチンをお借りして作ってきました。栄養バランスも高いと思うので是非召し上がってください。」 中に入っていたのはとき卵と大根の入ったおじやだった。 「おぉ…美味そうだ。ありがとう、いただきます。」 おじやはとても美味しかった。 なんというか母親の作ったような懐かしさを感じさせる味だった。
その後もブルボンは汗を拭いてくれたり額に濡れタオルをかけてくれたり、甲斐甲斐しく看病してくれた。
「ありがとう、ブルボン。だいぶ楽になったよ。」 「マスターの顔色の良化を確認。発汗も少なくなっています。ですが風邪は治りかけが肝要です。油断はなさらないでください。」 「ははっ、ありがとう。ブルボンも遅くならないうちに帰るんだぞ?」 「了解しました。寮の門限までには失礼します。ですがそれまではマスターの看病をさせていただきます。時間になれば勝手に帰りますので、マスターはお気になさらずお休みください。」
こういったやり取りも慣れたものだが、やはり少し事務的というか、ブルボンが感情表現が苦手なことは理解しているのだが、 (体が弱っているからか、少し寂しく感じてしまうな…。) そんなことを思いながら、俺はゆっくりと眠りに落ちていった…。
「………いーん、きゅいーん、ずどどどど…。」 謎の声でふと目を覚ます。 目を細く開けるとブルボンが俺の飾っていたロボットのプラモデルを手にしていた。
「かっしゅーん。ずきゅーん、ばきゅーん…。」 それを動かしながらライフルの発射音などの擬音を口にしている…いわゆるブンドドをしていた。 「ぶおん!じゃきん、じゃきん、しゅーん…ぶっぴがぁ……!」 ブルボンと目が合った。
「………ステータス『羞恥』を確認。………マスター、おはようございます。」 「………うん、おはよう。」 「………。」 「………。」 気まずい沈黙が流れる。
耐えかねたかのようにブルボンが頭を下げた。 「マスターに謝罪いたします。マスターの私物を勝手に手に取り、あまつさえ遊んでしまいました。申し訳ありません。」 「あぁ…いや、それはいいんだけどさ…。」 正直珍しい姿を見られて嬉しい気すらした。
「…ブルボンも知ってるのか?そのアニメ。」 「…!…はい。お父さんと一緒に見ていました。」 「おぉ、そっか!面白かったよなぁ、起動駿馬伝ウマダムSilence!」 「はい、大変興味深い内容だったと記録しています。」
「ライバルのウマダムゴーアが2度の敗北を経て強化されて帰ってきてな!…よし、ブルボン!ゴーア取ってくれ!」 「は、はい。マスター、こちらに。」 「ははっ、なんか懐かしいなぁ。よーし…。」
「キュイーン!シュワン、ブォンブォン!」 「!……きゅーん!しゃきん、しゃきーん!」 「…俺はエリートで、お前は落ちこぼれのはずだった!サイレンス!お前のせいで俺はプライドも、仲間も、輝かしい未来さえも失った!!」 「…僕とて守りたいもののため戦うだけだ!そのためならば何度でも君と戦おう!」 「キュオオォ…!ブォン!バシュウウウ!!」 「きゅいいぃ…!がきぃん!ばきゅーん!ばきゅーん!」 「俺はここで負ける訳にはいかんのだ!この…ベルモントの地で負ける訳には!バシュウウウン!!!」 「ゴーアァ!…きゅいぃん…!ぶっぴがぁん!!!」
2人で遊んでいたら気がついたら日も沈みかけていて、昔作ったきりホコリをかぶっていたプラモデル達もどこか輝いて見えた。 目いっぱいブンドドを楽しんだブルボンは今まで見たことがないほど生き生きとした表情をしていた。 「……あっははは!!ブルボン!名演技じゃないか!!」 「…恐縮です。お恥ずかしいところをお見せしました。」 さっきまでの体の気だるさや熱っぽさなどすっかり忘れていた。
「…っと!ブルボン、時間大丈夫か?」 「…っ!門限まで残り時間僅か。マスター、申し訳ないですが大家さんに鍵の返却をお願いします。一刻を争うのでこれで失礼します。」 そういうが早いかブルボンは一礼すると玄関からトップスピードで帰って行った。 「おっと…!ブルボーーン!!!今日はありがとうなーーー!!!」 猛スピードで寮へ駆けていくブルボンに俺は大きく手を振った。
翌日、すっかり完治した俺はライスのトレーナーにお礼を言い、ブルボンのトレーニングに復帰した。 表面上はいつもと変わらないブルボンだが、先日見た意外な一面。 少し彼女を知れた気がした1日だった。
今回はほんわかした感じで書いてみたいと思いました。
ブルボンの口調とかはなかなかに再現性が難しい…。
でも彼女にしかない魅力のようなものを出せればいいな、と思います。
駄文ですがお楽しみいただければ幸いです。