アルミナ(読み)あるみな(英語表記)alumina

翻訳|alumina

日本大百科全書(ニッポニカ)「アルミナ」の解説

アルミナ
あるみな
alumina

酸化アルミニウムの工業的、鉱物学的名称で、酸素、ケイ素に次いで地殻中に多く存在するアルミニウムのもっとも安定で普通の存在形態である。

[阿座上竹四]

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化学式はAl2O3で、分子量は101.96であるが、加熱による変態がある。ボーキサイト、水酸化アルミニウムなどを500℃に加熱すると、脱水してまずγ(ガンマ)アルミナとなり、さらに1000℃以上に加熱するとα(アルファ)アルミナが得られる。γアルミナは結晶構造が粗く、水をよく吸収し、両性化合物であるため、酸、アルカリのいずれにも溶解しやすい。活性アルミナもγ型であるが、非結晶性多孔質で表面積が非常に大きいので吸着力が強い。天然に産するコランダム(鋼玉(こうぎょく))はαアルミナで、これに酸化クロムCr2O3を0.2%くらい含むものがルビー(紅玉)、また酸化チタンTiO2と酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3をそれぞれ0.1~0.2%含むものがサファイア(青玉)で、いずれも不純ながら透明である。これらは鉱物中ではダイヤモンドに次いで硬く、モース硬度は9である。αアルミナは密な結晶構造をもつため硬く、融点2050℃、密度4.0、水に不溶で酸にも溶けにくい。高温で融解すると耐熱性を著しく増す。

[阿座上竹四]

製法目次を見る

アルミニウムの鉱石は種類が多く、アルミナの製法も多様であるが、代表的なものはボーキサイトを原料としたバイヤー法である。これは1888年オーストリアのバイヤーK. J. Bayerの考案によるもので、アルミニウム鉱石をまずカ性ソーダに溶解してアルミン酸ソーダNaAlO2とし、不要な鉄やケイ酸は残渣(ざんさ)(赤泥)に残す。溶解液から赤泥を分離したのち、析出槽で種子として水酸化アルミニウム結晶を加え、水酸化アルミニウムを析出させる。ついでこれを流動焼成炉で焼成して純度の高いαアルミナとする。

[阿座上竹四]

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工業的にもっとも多量に用いられるのは、バイヤー法で製造したアルミナをアルミニウム製錬の原料として使用するものである。吸着能力の大きい活性アルミナは脱水剤や脱色剤、クロマトグラフの吸着剤などに用いられる。天然産コランダムは金剛砂(こんごうしゃ)ともよばれ、不純な人造物(アランダム)とともに研削・研磨剤に用いる。ルビーやサファイアは宝石としての用途のほか、人工的にも製造され、時計の軸受や線引き用ダイスとして使われるほか、レーザーにも用いられる。アルミナはまた耐熱セラミックスの一つとして耐熱容器・器具材料として用いられるほか、広く耐火・耐熱工業材料として使用される。そのほか加工技術の進歩によりアルミナファイバー、アルミナバイト、透明アルミナなどもつくられるようになった。さらに陽極酸化皮膜はその多孔性を利用して種々の物質を充填(じゅうてん)し、電気、光学、磁性、潤滑、触媒、調湿、印刷など多様な機能的用途が開けつつある。

[阿座上竹四]

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百科事典マイペディア「アルミナ」の解説

アルミナ

化学式はAl2O3酸化アルミニウムの俗称。天然にはルビーサファイアコランダムなどとして産する。工業的にはボーキサイトからバイヤー法によりつくる。アルミニウムの電解精錬用原料とするほか,人造宝石,研磨材アルミナ磁器,吸着剤などに使用。脱水・解離反応の触媒となるほか,金属触媒の担体としても有用。ファインセラミックスとして加工したものは,硬度・耐熱性にすぐれている。
→関連項目アルミニウムエレクトロセラミックス接触分解セラミック工具セラミックス断熱煉瓦ニューセラミックス

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知恵蔵「アルミナ」の解説

アルミナ

酸化アルミニウムのこと。資源的に豊富な天然ボーキサイトから抽出精製する。高融点で化学的に安定かつ高い熱伝導性と電気絶縁性を持つため、ファインセラミックスのもっとも基本的な素材として、絶縁碍子(がいし)、IC基板、研磨剤、人工歯材など広い応用がある。ルビーやサファイアも着色不純金属元素を含んだアルミナ単結晶の一種

(徳田昌則 東北大学名誉教授 / 2007年)

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精選版 日本国語大辞典「アルミナ」の解説

アルミナ

〘名〙 (alumina)⸨アリュミナ⸩ アルミニウムの酸化物。アルミニウムの製造原料。耐火剤、研磨剤、吸着剤、触媒、耐食性磁器などに用いられる。礬土(ばんど)。酸化アルミニウム。
※西洋雑誌‐一(1867)新銀并にアリュミニウムと名くる金属の説「元来アリュミニウムはアリュミナの元質にして」

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栄養・生化学辞典「アルミナ」の解説

アルミナ

 酸化アルミニウムAl2O3 (mw101.96).吸着剤,乾燥剤などとして使う.またニューセラミックスの原料になる.

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世界大百科事典 第2版「アルミナ」の解説

アルミナ【alumina】

アルミニウムの酸化物Al2O3で,酸化アルミニウムともいう。α型(三方晶系),β型(六方晶系),γ型(等軸晶系)があり,高温ではα型が安定である。工業的には,ボーキサイトなどのアルミナ鉱石から,1888年にオーストリアのバイヤーKarl Josef Bayerによって発明されたバイヤー法により製造するのが普通である。天然のアルミナ結晶にはコランダム(鋼玉)があり,その純粋で美しく着色したルビーやサファイアなどは宝石に使われる。

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世界大百科事典内のアルミナの言及

【酸化アルミニウム】より

…化学式Al2O3。アルミナという慣用名が広く使われている。いくつかの変態が存在するが,すべて白色の固体で水に難溶である。…

※「アルミナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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