pixivは2021年5月31日付けでプライバシーポリシーを改定しました。
スカイ「釣れませんね〜…」
トレーナー「釣れないね〜…」
トレーニングがお休みの日。
私はトレーナーさんと山の渓流で釣りをしに来た。
じゃんじゃん釣りあげるだけじゃなくて、今日は焼いて調理して食べるところまでやってみようって話をしていた。
色々とアウトドアの調理道具とか、休憩用のテントまで持って来たんだけど。
二人とも開始から1時間以上は経つのに一匹も釣れていない。
トレーナー「いつもはこんなこと無いのにな。スカイとやってると、素人の自分でさえ短時間で釣れるのに…」
スカイ「うーん。釣りスポット選びに関してはセイちゃん自信あるんだけどなぁ…。」
釣れないどころか食いついて来ない……というより、お魚の気配が無い?
こんなこと初めてだなぁ。
スカイ「よし。ちょーっと場所変えましょう。ここからもう少し上流に行ってみませんか?」
トレーナー「了解。じゃあ荷物持つね」
あぐらをやめてひざを立てて踏ん張り、立ち上がろうとする。
スカイ「っ、あ!」
しまった。
足をついた岩が、思いのほか苔でぬめる。
やばっ!これは背中から川に落ちるやつじゃん。
でもまぁ…もうどうしようもないかなぁ。
スカイ「あ〜れ〜」
なんて冗談言いながら。
完全諦めモードのセイちゃんは潔くドボンするのでしたーー
トレーナー「スカイ‼︎‼︎」
スカイ「えっ」
と思ったら、トレーナーさんがダッシュでこっち来て、私の腕を掴んだ。
そのまま私は岩場に放られて、バランスを崩したトレーナーさんは私の代わりにドボンした。
トレーナー「うわっぷ‼︎‼︎」バシャア‼︎‼︎
スカイ「トレーナーさん‼︎」
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パチパチ、パチパチ。
煙を立たせながら揺らめく炎にそこらで拾い集めた木の枝をくべる。
枝をポールがわりにして、焚き火の近くにトレーナーさんのびしょ濡れの服を干した。当の本人は下着のみの裸で、持って来ていた新聞紙を背中に掛けて火にあたっている。
スカイ「……ごめんね〜トレーナーさん。身代わりになって貰っちゃって」
トレーナー「ヘクシ!…んーん。スカイが落ちなくて良かったよ」
スカイ「お、またそんなキザなこと言っちゃって。ぴろぴろぴ〜ん、好感度が上がっちゃいました〜。」
トレーナー「はは、やった。」
まぁウソなんですが。
好感度なんてとっくの昔に最高値。天井きちゃってるんですよ。
全くこの人は…どれだけ私を好きにさせるつもりなんだか。
絶対言わないけど。
スカイ「…でも案の定びっちょびちょになっちゃって。これ、焚き火にあてても時間かかりますよ?着替えも持って来てないし。」
トレーナー「このまま待つよ。幸い気温は暖かいし、遅くとも夕方前までには乾くと思う。」
スカイ「それまでパンイチですか」
トレーナー「…新聞紙も掛けてるよ」
スカイ「年頃の女の子の前で」
トレーナー「う゛…それは申し訳ない」
スカイ「あはは〜、冗談。気にしませんよパンイチくらい。」
まぁそれもウソなんですが。
トレーナーさんのパンイチ姿、必死こいて目に焼き付けようとしてるんですが。
助けて貰っといてアレだけど、私としては超ラッキーな展開ですよ。
トレーナー「それより、お腹空いてないか?バタバタしてて昼になっちゃったけど。」
スカイ「そーですねー(新聞ジャマだなぁ)」
トレーナー「魚は釣れなかったから、持ってきた食材だけで何か作ろうか」
スカイ「そーしましょー(え?その格好で料理?何それサイコー)」
トレーナー「じゃ、とりあえず米炊いちゃうな」
スカイ「隙見て写メ撮ろう(りょーかーい)」
トレーナー「……ん?」
スカイ「なんでもないでーす」
あっぶな、つい欲望が。
でも一応スマホを取り出してカメラを用意しておく。
トレーナー「……違う。そうじゃなくて。」
スカイ「?」
トレーナー「まさか……いや、どう見てもアレは……」
トレーナーさんの様子がおかしい。
私じゃなくて、私の…背後を見てる?
何か珍しいモノでもあったのかな。
そう思って振り返ってみると、川の向こう岸には黒茶色の大きな塊があった。
スカイ「(何あれ。……岩じゃあないよね。だってモサモサしてるし)」
ていうか、ちょっと動いてない?
トレーナー「スカイ、ゆっくりだ。ゆっくりここから逃げるぞ」
先程までとは打って変わって、トレーナーさんが極度の緊張状態にあることが、彼の顔を見ずともウマ娘の嗅覚で察知できた。
スカイ「(そっか。あれ生き物だ)」
あの黒茶色のはーー間違いなく、熊だ。
スカイ「目を離さずに、ゆっくり後ろ歩き…でしたっけ。熊の対処法。」
トレーナー「ああ。確かそれであってる筈だ。」
熊が立った。
でっか…タテヨコに満遍なく、ヒトより圧倒的に大きい。
トレーナー「でも、いざとなったらそんなことーー」
また四つん這いになったと思ったら、勢いよく駆け出した!
トレーナー「ーー言ってられない‼︎走れ‼︎‼︎」
かけ声で、全力で走ってその場から離れる。
熊はザバザバと川の水をかき分けてこちらへ向かってくる。
水深が浅いせいか、かなりの速さで渡ろうとしてる。
スカイ「やばやばやばやば‼︎ホントにやばくないトレーナーさん‼︎⁉︎」
トレーナー「兎に角逃げろ‼︎あそこ、ちょっと崖になってるとこから上に登れ‼︎平地を走っても追いつかれそうだ‼︎」
スカイ「おっけ‼︎」
急ぎ、一段高いところへ上がろうとするが、ちょうど私の背丈ではよじ登るのが難しい。
するとトレーナーさんが手で私の踵をささえて、下から押し上げてくれる。登った後はすぐさま私も手を貸して、彼を引き揚げた。
トレーナー「ハァ、ハァッ…熊は…⁉︎」
川を渡り切って、焚き火の近くに置き去りにした私たちの荷物を物色していた。
スカイ「……よかったぁ。荷物に夢中みたい」
トレーナー「よし、今のうちに急いで山を下ろう。あれは後日回収すれば良い。」
スカイ「そだね。行こっ」
開けてない獣道を進む。
生い茂る草木が肌にチクチク当たって痛い。
でも、前を歩いてくれるトレーナーさんのほうがほぼ全裸だし、絶対痛いし。これくらいは今は我慢しないと。
スカイ「(山降りた時に熊じゃなくてトレーナーさんが通報されちゃわないよう、ちゃんと言い訳考えとかなくちゃね)」
スカイ「(あ、焚き火そのまんまだけど大丈夫かな?川沿いだし山火事になることもないか。)」
スカイ「(折角のトレーナーさんとの楽しい時間がとんだ逃走劇に…。)」
あれこれと考えながら進んでいると、ふと違和感を覚えた。
スカイ「(あれ?そういや私のスマホ…)」
さっきまで手に持っていた。ポケットにも入っていない。
スカイ「ま さ か……!」
トレーナー「スカイ。もうちょっと進めば開けた場所に出られるよ」
トレーナー「……スカイ?」
後ろを振り返れば、そこには誰も居なかった。
熊「ブルルル…」
私達が持ってきた米とか野菜とかを漁ってる。きっと腹を満たすことが目的で来たんだろう。
なら私のことなんて大して気にも止めない筈。今のうちにーー
スカイ「ーーあった!」ボソッ
焚き火の傍、砂利のうえにポツンと放置されたスマートフォンを屈んで拾い上げる。
やっぱり。さっき熊が現れた時に焦ってその場に落としてたんだ。
スカイ「(よしよし。そいじゃさっさとずらかりましょうか)」
目的は達成。トレーナーさんのもとへ戻ろうと考えたその瞬間、
うなじに野生臭い鼻息があたるのを感じた。
スカイ「(や…ば……)」
すぐ背後に熊が居る。
荒い呼吸と小さくうなり声を発しながら。
ミシミシと砂利が鳴り、どんどん膨らむ大きな影が、屈んでいる私をすっぽりと覆ってしまった。
恐る恐る後ろに目をやれば、熊は二足で立ち上がってジッと私を見下ろしていた。
ああ。
私、今から熊に殺されちゃうんだ。
あの図太い腕で押さえつけられて、爪や牙で引きちぎられるんだ。
そんな想像をしてしまえば、もう足が空くんで動けない。悲鳴だってあげられない。
怖い、怖い…怖い、怖いよ。
お母さん、お父さん、キング、スペちゃん、グラスちゃん、エル、ーー。
スカイ「……たすけて……とれーなー……」
トレーナー「スカイ‼︎‼︎」
彼は私の名前を叫びながら、私と熊の間に割って入ってきた。
焚き火で燃えている枝を数本取り出して、熊に突き出してみせる。
トレーナー「食べ物なら好きにしろ。この子にはこれ以上近づくな…‼︎」
熊とトレーナーさんが睨み合う。
脅すためには火も小さく弱い。実際、熊も怯む様子は無い。
それでもトレーナーさんは私の前に立ち続ける。走ってきて汗だくのその背中から、私を必死で守ろうとしてくれているのが伝わってくる。
熊「……ブルルル…」
熊は再び四つん這いになる。
私も彼もギクリとしたが、熊はそのままのそのそと荷物の方へ移動して、食料の入ったビニールを噛んで拾う。
結局、口にビニールをぶら下げて、そのまま私達の方を振り向くこともなく川の下流の方へ歩いて行った。
……た、助かった……?
スカイ「……はぁぁぁ〜〜」
ドッと、緊張状態から解放された。
スカイ「危なかった〜〜……トレーナーさんありがとね、助けに来てくれて。」
トレーナー「……熊がいるのに、なんでここに戻ってきたんだ?」
スカイ「あ〜、ごめんね突然いなくなっちゃって。これ、落としちゃった携帯だけ拾おうと思って」
立って、彼に携帯を見せる。
スカイ「トレーナーさんのお陰でこの通り無事でしたよ。私も、携帯も。いや〜、これには大事な写真とかいっぱい入ってるからねぇ。熊に壊されたらどうしようかと
パァン‼︎‼︎‼︎
爆ぜるような音と一緒に視界が大きく揺れて変化する。
スカイ「……え……」
何をされたのかわからなくて、暫くの間放心してしまう。時間が経つにつれ、左の頬にじわじわと痛みが広がっていく。
トレーナーさんに……叩かれ…た?
トレーナー「……」
スカイ「え……あの…トレーナーさん?」
未だかつて見たことのない彼の表情。
さっきの熊よりもずっと怖い、鋭い目付きで私を見下ろしていた。
激しい怒りの感情が向けられている。
スカイ「……と、トレーナー、さん?……」
トレーナー「死んでしまうとは考えなかったのか‼︎‼︎‼︎」
スカイ「っ」
トレーナー「携帯を取りに戻った‼︎⁉︎ふざけるな‼︎‼︎‼︎君は今、自分の命をみすみす捨てるところだったんだぞ‼︎‼︎‼︎」
トレーナー「いくら大事だろうと‼︎‼︎それは命より重いものなのか‼︎‼︎⁉︎これから先の人生を失くすことと、天秤にかけてもか‼︎‼︎‼︎」
トレーナー「それだけじゃない‼︎残される家族は‼︎⁉︎友人は‼︎‼︎悲しませてしまうとは考えなかったのか‼︎‼︎⁉︎」
スカイ「……とれっ、な……」
トレーナー「……スカイがなくなったら、俺だって……‼︎」
スカイ「!」
トレーナー「……二度とこんな真似はするな‼︎‼︎‼︎今後もし同じようなことをしたら、その時は君のトレーナーを辞めさせてもらう‼︎‼︎‼︎」
スカイ「そ、そんな…!」
トレーナーさんがそんなことを言うなんて。
いや、違う。そんなことを言わせてしまう程に、私の軽率な行動は彼を怒らせてしまったんだ。
普段から温厚で優しい彼を、私はこんなにも激昂させてしまった。
その事実で私の胸は凄く苦しくなって、ポロポロ涙が溢れてくる。
スカイ「……め……さい…ごめっ、なざい…‼︎」
スカイ「…ごめんなざい……ひっく…ひっ…ぅう…」
彼の前でみっともなく顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。
こんなにも涙を流すのは何年振りだろう。
トレーナーさんは凄く怒っていたにも関わらず、今はもう私の頭を撫でて慰めてくれている。
そんな優しさが、より一層さっきまでの私を後悔させてーー涙を溢れさせてしまう。
同時に、手で撫でて貰うだけじゃ足りなくなって、トレーナーさんの胸元に頭を押し付けた。彼は拒絶せずに、そのまま抱き寄せて泣かせてくれる。
こんな時でも彼の優しさを貪欲に求めてしまうなんて……私は本当、つくづくあさましい女だ。
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スカイ「そりゃ命に比べたら…だけどさ。大事なものは入ってたんですよ」
スカイ「お母さんお父さんとの思い出の写真とか、友達との楽しい写真とか。」
スカイ「あとは……トレーナーさんと過ごした、この何年かの写真とか…いっぱい」
スカイ「今日みたいに釣りした時とか、お買い物に出掛けた時のとか、合宿のお祭り、クリスマス…ほかにもたくさん」
トレーナー「……」
空は既にオレンジ色。
暗くなってしまう前に下山するべく、熊に持ち去られなかった分の荷物をまとめながら私達は話していた。
泣き過ぎて瞼がひりひり痛い。腫れてる気がする…帰ったらみんなに驚かれそうだなぁ。
トレーナー「……家族との写真は別として、友人たちなら後からいくらでも提供してくれれだろう。」
トレーナー「勿論自分だって。…それでも足りなくなった分は、また一緒に撮っていけば良いんだからさ」
スカイ「…そうだよね。バ鹿だなぁ私…」
スカイ「……服、乾いたみたいだよ」
散々焚き火にあてられていたトレーナーさんの衣類。
枝から外してみればすっかり水気は無くなっていた。
スカイ「はい、どうぞ」
トレーナー「ありがとう。あぁ、やっと着れる」
トレーナー「よっ…と……っ!痛っ…」
彼は袖を通すと身体を少しだけ震わせた。
スカイ「トレーナーさん?」
トレーナー「……何でもないよ」
スカイ「…ウソだ。どっか怪我したんじゃないの」
トレーナー「……」
スカイ「もしかして、私を庇った時に熊にやられたとか」
トレーナー「いやいや!そういうのじゃなくてな」
トレーナー「最初熊から逃げて茂みを進んだ時に、堅い草木で所々肌が擦りむかれちゃって…ほぼ裸だったから。でも、怪我とも呼べないくらいの擦り傷だから大丈夫だよ」
スカイ「確か応急手当ての道具も持ってきてましたよね?そのなかに塗り薬も」
トレーナー「いやちょっとピリピリするだけだから…」
スカイ「トレーナーさん。普段私の軽い怪我でも絶対見過ごさないですよね。自分のは放っとくんですか?」
トレーナー「…ぐうの音も出ない…」
スカイ「…薬あった。ハイ、服脱いでください。塗ってあげますから」
トレーナー「え⁉︎ それは流石に…自分でやるよ」
スカイ「脱いで」
またもやパンイチにさせたトレーナーさんを立たせて、私は薬を怪我に塗っていった。
スカイ「背中も擦れてるとこありますね」
容器から薬を指ですくい、彼の傷を撫でるように塗布していく。
私の指が触れるたび、ビクッと反応するのが少し面白くてーー彼の身体を支配しているような錯覚に陥ってしまう。
トレーナー「…っ…な、なあ。やっぱり自分でやった方が…」
スカイ「はい次、こっち向いて。前の方を塗りますよ」
無視して、今度は彼の身体を私へと向けさせる。
胸元と…脇腹、おへその辺り…やはり前面は傷が多い。
向き合って薬を付けていると、彼の身体に触れているという実感が強くなって、恥ずかしさとが込み上げてきてしまう。
でもそれ以上に、トレーナーさんがピクピクしながら顔を赤くして我慢している様子が堪らなく可愛くて。
私はわざと指の動きを艶かしくさせる。
スカイ「どーですか?セイちゃんの治療は。上手いもんでしょ」
トレーナー「…あ、ああ。うん。良い感じ」
スカイ「ここにも傷が…えいっ」
傷から傷へ、指をつつーっと滑らせる。
トレーナー「うわ!ちょ…スカイ⁉︎」
…良い反応。ゾクゾクしてきた。
私も気分が上がってきて、大胆な物言いをしてしまう。
スカイ「どうしました?お顔赤いですよ」もしかして、セイちゃんの指で感じちゃってます?にゃはっ」
トレーナー「…っ、は?感じるって…」
スカイ「ですからー…現役JCで、あなたの担当バである可愛い娘に、身体をいじられて、ちょびっとえっちな感じになってないかなーって?」
トレーナー「⁉︎」
スカイ「良いんですよ〜もっと声出しちゃっても。ほら、ほら」
トレーナー「……っ!…っ⁉︎…ちょ、やめ…」
爪先でツンツン、指の腹でクリクリ。
大好きな彼が凄く反応してくれてる。
スカイ「……はぁ……はぁ…」
やばい…なんか体温上がってきた…
心臓もドキドキする…。
スカイ「…さっきはよくも裸で抱きしめてくれちゃいましたね。年頃の女の子ってわかってます?」
トレーナー「だってそれはスカイが」
スカイ「んっ…言い訳する人には、おしおきですよぉ…えいっ」
こんなところに傷なんか無いけれど。
追加で薬をすくって、ヌルヌルにした中指で彼の左の乳首を引っ掻いた。
トレーナー「〜〜ッ‼︎⁉︎」
声も出ないくらい刺激的なのかな?
かりかり、かりかり…。
トレーナー「……っ、終わり!終わりだ!もういいよ、ありがとう!」
バッと離れて、さっさと服を着ようとしてしまう。
スカイ「あーあ、残念。折角楽し…く……」
その刹那、彼の下着が明らかに膨らんでいることに気がついてしまった。
スカイ「え……」
あれ…も、もしかして…。
私トレーナーさんのこと、ぼっ……させちゃったって、こと?
途端に血の気が引いて、冷静さが戻ってくる。
うわ…うわうわうわ、うわわわ‼︎
私今、ノリで凄いことやらかしてない⁉︎
これじゃ痴女じゃんか‼︎
スカイ「ご…ごめん…セイちゃん調子乗っちゃった」
トレーナー「…そういうノリはほどほどにしなさい」
スカイ「はい…」
こればっかりは本当に反省します…。
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山を降りて、停めてあったトレーナーさんの車に乗って帰路につく。
辺りはすっかり暗くなった。
街灯やお店や、住宅の明かりが車内を照らし、前から後ろへ通り過ぎていく。
心地良い揺れが眠気を誘うけど、折角トレーナーさんとのお出かけなんだから、最後まで起きていたい。
それでもやっぱり眠たくて、頬杖をついてうつらうつらとしていると、トレーナーさんが話しかけてきた。
トレーナー「寮にまっすぐ行く前に学園の方に寄り道していいか?」
スカイ「ほえ?…あー、うん。別に良いよ。どしたの?」
トレーナー「書類の忘れ物。ついさっき思い出したんだ」
スカイ「ふーん…」
学園の駐車場に車を停める。
トレーナー「ごめんな。ちょっとだけ待ってて、すぐ戻る。」
スカイ「はーい」
バタンッ
寮はここから少し離れた場所にあるが、ウマ娘の足なら余裕で歩いていける。
それでもトレーナーさんはお出掛けの最後は必ず私を寮まで送ってくれるし、私もこの幸福な時間が少しでも長く続いて欲しいから、あえて「歩いて帰るよ」とは言わなかった。
スカイ「ふぁぁ…」
今のうちに眠気を覚ましちゃおう。
スカイ「そう言えばトレーナーさんの車って、何回か乗ってるけど物色してみたことってないよねぇ」
スカイ「トレーナーさんの居ぬ間に…セイちゃんチェーックぅ」
早速、手前の収納ボックスを開けてみる。
おわー。ちょっとグチャグチャじゃない?
CD、飴、カロリーメイト、ポケットティッシュ、クシャクシャの書類等など…。
このカロリーメイト賞味期限切れてない?
CDは…私の知らない曲っぽい。外人さんのかな。
スカイ「まぁいいや。試しにかけちゃおー」
カバーから出してプレーヤーにセット。
音量もちょい上げて〜。
『〜♪』
スカイ「……ジャズってやつ?トレーナーさんにしては中々洒落てるね」
他に面白いものないかなぁ…あ。
ボックスのなかでは大きくスペースをとっていたCDを取り出したから、奥の方にも何かがあるのを発見した。
スカイ「この箱なんだろ…まさかタバコ?」
いや、トレーナーさんは確か吸えない系男子のはず。
街灯だけじゃ暗くてよく見えない。
車内のライトもつけちゃお…。
パチッ
スカイ「……え……」
スカイ「これ、って……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ガチャッ
トレーナー「お待たせ、スカイ」
バタン
〜♪
トレーナー「…お。このCDかけてたんだな。スカイからしたらちょっと渋いかもだけど、結構名の知れた曲なんだよ」
スカイ「……」
トレーナー「……どうした?もしかして、眠い?」
スカイ「……」
頬杖をついて外を眺めたまま、私はわざとトレーナーさんを無視する。
トレーナー「…スカイ?」
トレーナー「ごめん、思いの外待たせちゃったかな。怒ってる?」
スカイ「……別に。怒ってないよ」
トレーナー「? ならどうして」
スカイ「トレーナーさんってさ、彼女居るの?」
トレーナー「…いや、居ないけど」
スカイ「じゃあ少なくともそういう関係性にある女が居るってわけね」
トレーナー「そういう関係?」
スカイ「…はっ。しらばっくれないでよ。子供だからまだわからないとでも思ってる?」
トレーナー「だから、何のことを言ってーー」
パサッ。
彼の膝に、さっき見つけた物を放り投げた。
トレーナー「……‼︎…スカイ、これは」
スカイ「それ、赤ちゃん出来ないように身につけるやつでしょ。」
いつの間にか外は雨が降り出していた。
雨粒の跳ねる、バタバタとした重苦しい音が車内に響いている。
スカイ「……誰としてるのか知らないけどさ、未成年の担当バに見つかるようなとこに置かないでよね」
トレーナー「違う、話を」
スカイ「話?彼女ではないけど、僕にはそういうお友達が居るって話?…まぁ、トレーナーさんも大人で、男だもんね。別に良いんじゃない?それ使うくらいにはちゃんとしてるみたいだし」
スカイ「…でもさぁ…それならそれで、教えてくれたって良いじゃん。関係をもった、意中の相手が居るってさ。」
スカイ「恥ずかしいなら言わなくたっていいよ。でも、匂わせるくらいはしてよ。今日みたいに休日なのに、私の釣りに付き合ったりしてたらさ。トレーナーさんにはそういう人は居ないんだって、勘違いしちゃうって」
トレーナー「!」
スカイ「私さぁ。私、わたし…」
ポロポロと涙が頬を伝う。
スカイ「ばかみたいじゃん。放課後になったら、がらにもなくウキウキしてトレーナー室に行ったりしてさ。トレーニング以外でも一緒にいたくって、こうやって釣りとか、他のとこにお出掛けに誘ったりしてみてさ。」
スカイ「『好感度が上がった』なんて冗談めかして、ホントのことはずっと言えなかった。だって勇気が出なかったから。…それでも…それでもトレーナーさんにはそういう相手が居ないって思ってたから、だから気長に頑張ればいいかなって」
スカイ「でも…でも!全部、ぜんぶ、意味無かったじゃん!最初から居るってわかってたら、こんなことしなかった!こんな気持ちにもならなかった‼︎……無駄な恋心なんて、抱かずに済んだ…‼︎」
スカイ「今日だって‼︎」
もう視界もぐしょぐしょでよく見えないけれど、それでも朧げにうつるトレーナーさんを睨みつける。
スカイ「今日だって…熊から助けてくれたり。私のことを本気で怒ってくれたり、慰めてくれたり…そんなことされてさ‼︎平気でいられるわけないじゃん‼︎」
スカイ「この人のことがやっぱり好きだって胸に刻みつけられて‼︎ まるで自分がヒロインみたいな感覚にさせられて‼︎…でも、実際は全部……‼︎‼︎」
だから私は覚悟を決める。
この恋を終わらせるために。
スカイ「ねえ、トレーナーさん。好きだよ」
スカイ「だから、私の担当はもう辞めてよ」
スカイ「…こんなの、つらい、よ……もう、終わりにしてよ……」
スカイ「…ふ、ぅ……っ、ひっく…ひっ…ぐずっ…ぅぅ…」
言っちゃった。
もう後戻りはできない。
でも、これで良い。だって辛すぎるよ、これから先も、こんな想いを抱えて一緒にやってくのなんて。
さあ、早く私を楽にして。
優しいトレーナーさんなら、私の気持ちを尊重してくれるよね。
トレーナー「……スカイ……」
トレーナー「……まず初めに断っておくけど、自分はまだ童貞だよ」
スカイ「……」
スカイ「は?」
トレーナー「だから、未経験者」
スカイ「…え?」
スカイ「ぐすっ…いや、じゃあその箱」
トレーナー「よく見てよこれ。まだ未開封。新品」
トレーナー「いや新品ていうのは語弊があるか…何年前のだこれ。大学の友達に、『男ならいざって時のために常備しとけ』って無理矢理押し付けられたんだよ。」
トレーナー「だから当然、彼女も、肉体関係にある女性も居ない」
スカイ「……」
……。
ええ……?
スカイ「じゃ…なに。今の、私完全に泣き損てこと?勝手に盛り上がって泣いちゃったイタイ子?」
トレーナー「だからさっき話をしようって言っでしょう…」
スカイ「……」
スカイ「……な・に・そ・れぇええええ‼︎‼︎もおおおおめっちゃ恥ずかしいじゃぁぁああん‼︎‼︎」
思わず両手で顔を覆い隠す。
穴があったら入りたい…‼︎
スカイ「あ、しかも私トレーナーさんに告っちゃったよね‼︎⁉︎」
トレーナー「うん、まぁ…」
スカイ「にゃぁぁぁああああああああ……」
スカイ「お願いします、記憶消して…」
トレーナー「好感度は本当に上がってたんだなぁ」
スカイ「ふんっ‼︎‼︎」
トレーナー「痛ったぁ‼︎‼︎ ウマ娘の脚力で足を踏むな‼︎‼︎」
スカイ「あーもう……あーーもう……」
トレーナー「…そんなに後悔しないでも」
スカイ「するでしょぉ⁉︎普通‼︎私これからどうやってトレーナーさんと接していけばいいのさ‼︎」
トレーナー「…自分がセイウンスカイを好きだとしても?」
スカイ「そりゃそうで」
スカイ「ん?」
トレーナー「だから。好きだよ、スカイが」
スカイ「……ライクってオチ?」
トレーナー「ラブ、が妥当」
スカイ「ふんっっ‼︎‼︎‼︎」
トレーナー「痛いっ‼︎‼︎‼︎え何で⁉︎」
スカイ「こっちのセリフだよ‼︎⁉︎ななな、なんで私のこと…好きなのさ⁉︎だったら先に私に言ってよ‼︎絶対オッケー出したのに‼︎そもそもこういうのは男の人からでしょお‼︎‼︎」
トレーナー「み、未成年相手にそんなこと言えるか‼︎‼︎一歩間違えればお縄だろう‼︎‼︎」
スカイ「ぬぐぐぐぐ…」
それもまぁそうだ。
未成年ウマに好意があるような発言をした訓練教官が逮捕だなんて、トレセンが大変なことになる。
スカイ「でも、釈然としない…」
トレーナー「…スカイの告白に正直に答えたんだから、そこは評価してくれよ。さ、帰ろう」
彼はシートベルトを閉めようとする。
スカイ「え ちょっと待って。これで話はお終いなの?」
トレーナー「もう寮の門限近いでしょ。続きは…まぁ、追々。」
スカイ「やだ‼︎まだ帰んない‼︎」
トレーナー「子供か‼︎」
スカイ「子供だよ‼︎ていうかトレーナーさんも正気⁉︎折角好き同士ってわかったんだよ!」
スカイ「……私!これでもけっこードキドキしてるんですよ。トレーナーさんに女が居ないどころか、私のこと好きって。」
スカイ「そんな人と車内でふたりっきり。夜だし、人も全然居ない。雨降ってて車の中の様子は絶対見えないし、聞こえない。」
トレーナー「…!…」
あ。今トレーナーさん動揺した。
間違いない。ここが、攻め時!
スカイ「…トレーナーさん。セイちゃんこー見えて今すっごくえっちな気分なんです」
トレーナー「は⁉︎」
スカイ「当たり前でしょ。だって、山の中で好きな人にほぼ全裸で抱き締められたり。おふざけで薬塗ってたら、その…だっち、してるの見えたり、とか。」
トレーナー「…スカイ、やっぱあの時気づいて…!」
スカイ「……ね、トレーナーさん。お薬塗るの、まだ中途半端だったと思うんで…続きしましょうか?」
スカイ「この…下の方とか、お薬でヌルヌルのおててで治療したら、きっと凄く効果あると思うんですよ」
スカイ「それで、山での時みたいに、かりかりーって引っ掻くのも同時にしてみたり…なんて」
右手を輪っかにして上下に動かして、左手の中指は引っ掻くようなジェスチャーをしてみせる。
トレーナー「……‼︎」
あはー。トレーナーさん動けないんだ。
すっごい迷ってる…もうひと押し、かな?
スカイ「それと、トレーナーさん…セイちゃんからお願いしたいこともあって」
トレーナーさんが持ってた箱を奪う。
その箱を両手で持って口元に近づけて…精一杯、あざとくおねだり。
スカイ「これ…使い方、教えて欲しいなーって。この『風船』どうやって着けて、どんな風になかに溜めるのか、見てみたいんです」
スカイ「いきなり本番は心の準備がアレなんですけど……でも、お薬塗りながら、トレーナーさんが『風船』を使ってみることくらいは、お手伝いできるかなぁ…と」
スカイ「どうですか?」
トレーナーさんは黙ったまま。
でも顔は真っ赤だし、あそこだって期待してるみたい。
スカイ「……一個、とりあえず出してみますねー。」
トレーナー「‼︎ ちょ、スカイ待って」
パキッ、パリ…カパッ。
カサッ、カサカサ。
スカイ「わ。…けっこう入ってるんですね。0.01…?」
何個も連なってる『風船』のうちひとつだけ切り取る。
ペリッ。
ペリペリ…。
スカイ「トレーナーさん、これをどうやってつけたら良いんですかぁ?」
トレーナー「……駄目だ、そんなの…」
スカイ「トレーナーさん……」
ギシッ、ギシッ。
車内に軋む音が響く。
私はトレーナーさんの膝のうえに移動した。
袋を咥えて、空いた両手を彼の下腹部へ滑らせる。
チャリッ…ジ…ジィ…ッ
スカイ「〜♪」
チャックを開けて、そのなかを指で探検してみる。
すぐに目当てのものを発見して、引っ張り出してお外の空気に触れさせた。
スカイ「わっ…これ、すっご……♡」
トレーナーさんは自分で口を塞いで、ただただ私のなすがまま。
スカイ「トレーナーさん、付け方教えて?」
首を横に振る。
ここにきて、彼はまだ迷ってるみたい。
スカイ「…ふーん…じゃ、やりながら自力で覚えるね」
トレーナー「⁉︎」
ペリペリ、ペリッ。
スカイ「ん〜…この丸いのを、真ん中に当てて…次は…あ、こうすれば広がるんだ!面白〜い。」
『風船』と、私の指が触れるたびに彼はピクピク悶えてる。
スカイ「よいしょ、よいしょ…こんな感じ、かな?まぁ、一回目はこれでやってみよっか」
トレーナー「……っ…」
トレーナー「…⁉︎ い、一回目⁉︎」
スカイ「そりゃ何回もトレーニングしてこそでしょ。幸い新品で何個もあるんだし。」
スカイ「セイちゃんは勉強家なのです♪」
言いながら、彼の膝から離れて後部座席の荷物へ手を伸ばす。
手に取ったのは、勿論さっきの塗り薬。
スカイ「じゃあ、お薬塗るね?」
彼の耳元に、ぴったり唇をくっつけて囁いてみる。
スカイ「たっ……くさん、治してあげるね。トレーナーさん」
クチュ…
クチュ、クチュ。
ジュッ、ジュッ、グチュ、グチュ。
ビュッ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
グチュ、
グチュ、ジュッ、
スカイ「あっつ…」
過度な運動と、雨による湿気で、気がついた時には車内は蒸し風呂みたいな気温になっていた。
スカイ「あ…また出そう?いいよ♡」
トレーナー「〜〜ッ‼︎‼︎」
ガクンッ、ビクッ、ビク。
スカイ「ふぅ……こんなに。まだまだ出来そうだね、トレーナーさん」
スカイ「あはっ、見てこれ。隣の座席、トレーナーさんの『水風船』でいっぱいになっちゃった。大漁だねぇ…♡」
スカイ「え?もう限界?しょうがないにゃあ…」
私はペットボトルを手に取って、ジュースを口に含んだ。
それをそのままトレーナーさんの唇へと流し込む。
スカイ「ほれーなー、ふむっ……ん…ちゅる…じゅるる……」
スカイ「ぷはっ…えへへ、セイちゃんジュース。美味しい?」
スカイ「それじゃ、続きしよっか。…あれ?もう風船無いカンジ?」
スカイ「……なら、さ。今度はトレーナーさんの、直接おててで受け止めたげよっか」
スカイ「ほら…トレーナーさん。ぎゅーっ…そんで、ぬりぬり〜。おむねもかりかり〜。」
スカイ「はぁ…♡出して、ねぇもっと♡トレーナー♡トレーナー♡」
トレーナー「(軽々しく告白なんてすべきじゃなかった…)」
トレーナー「(……この子は天性の淫魔だっ……‼︎‼︎)」
ー了ー