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無知がすぎるサイレンススズカ

無知がすぎるサイレンススズカ - カステラ3世(ベネ=カステラ)の小説 - pixiv
無知がすぎるサイレンススズカ - カステラ3世(ベネ=カステラ)の小説 - pixiv
5,510文字
無防備栗毛シリーズ
無知がすぎるサイレンススズカ
栗毛は淫乱
全部スズカが悪い

というわけで始まりました、栗毛特別週間。
先頭ランナーはサイレンススズカです。

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2021年5月31日 23:00




その日、俺は戦慄を覚えた。

「んしょ、っと……」

学園の更衣室が改修中で使えないため、

担当ウマ娘のスズカには、別の場所で着替えるように指示を出したのだが……

「ジャージ、ジャージ……」

「……」



「……おい、スズカ」

「はい、何でしょうか?」

「……なんで普通に、トレーナー室で着替えてんの?」



どうやらスズカは、ターフに羞恥心を落としたらしかった。



「え?でも……朝、トレーナーさんが、更衣室は改修工事中だって」

「確かに、そう言ったけど。……女子トイレとか教室とか、幾らでも着替えるところあるよな?」

「ここが一番、都合が良くて。混まないですし」

「そうだね、そうだろうね。だけど、俺がいる前で着替えるのは、おかしいよな?」

「……おかしいんですか?」

「おかしいよ!?」

きょとん、として本当に何もわかってなさそうな様子の少女。



―俺は、担当ウマ娘の教育を間違えたのだろうか。

男の目の前で下着姿を晒すような子に育てた覚えはないが、現実問題、スズカの無駄にアダルティにすぎる黒の下着が目の前に晒されている。……というか俺も、スズカが着替え終わってから話しかけるべきだったろ。というかスズカも、話しかけられて着替えを中断するんじゃないよ。ばかぼけあほ栗毛。

「……とにかく、男のいる前でみだりに着替えるもんじゃないからな」

「え……?」

「え、ってお前……」

本当に何もわかってなさそうな顔のスズカに、俺は頭が痛くなった。情操教育も性教育も致命的だ。

三年間一緒にいて、こんな重大事に今まで気が付かなかったのか。何やってんだ、俺。……そして大丈夫か、この栗毛。俺が知らない間に、パドックで全裸になったりとか、していないだろうな。

……

「スズカ、お前……パドックで脱いだりしてないだろうな?」

「何を、脱ぐんですか……?」

「勝負服」

「ぬ、脱ぐわけないじゃないですか!」

痴女扱いしないでくださいと言わんばかりに、顔を染めて声を荒げるスズカだが、パンツは黒だ。

パンツは、黒なのだ。

……

「なあスズカ。俺は、トレーニングに拘り過ぎるあまり、お前に情操教育が十分にできなかったように思う」

「きゅ、急にどうしたんですか」

「良いか。男ってのはな、目の前で黒パンを当然のように晒す女がいたら、捕まえて食べちゃうんだ」

「捕まえて、食べちゃうんですか?」

「そうだ、エッチなことされちゃうんだ。だからスズカ、もう少し羞恥心、持とうな……」

「羞恥心は、それなりに持っていると思うんですけど……」

サイレンススズカは、いつにもまして真剣な表情で、考え込んでいる。

下着姿で。

「……とりあえず、早くジャージ履いてくれない?」

「あ、はい」

本当に、大丈夫なのだろうか。のそのそと着替えを始めるスズカを見て、俺の不安はマシマシだ。

……流石に、このままじゃ不味いよな。

寮の同室は……スペシャルウィークだったか。走ると食う以外てんでポンコツそうな奴だし、フォローを期待しても無駄か……。

うんうんと頭を悩ませていると、ようやく着替えを終わらせたらしいスズカが、こちらに近付いてきて、不安げな表情で、こう訊ねてきた。

「トレーナーさんは、私を見ても、食べたくなったりしないですよね?」

「……は?」

「だから、さっきの話です」

「……」

いや、普通に食べたくなっちゃうよ?

ばかなの?栗毛なの?頭タンポポなの?

しかし、一方でスズカの表情が大層、曇ったままなのも気になる。

……これ、もしかして。ひょっとすると。

「スズカ……お前、その『食べる』って、どういう意味で使ってる?」

「食べちゃうんですよね」

「食べちゃうんですよ」

「むしゃむしゃ、って」

「むしゃむしゃ、とね」

……。

解らん。

解らんが、たぶん解ってない。

サイレンススズカには、性知識がない。

「……スズカよ。男と女の違いは説明できるか?」

「ええと、お父さんが男の人で、お母さんが女の人ですよね」

「……」

「それで、私が女で、トレーナーさんが男ですよね」

「……そうだね……」

なんてこった。ジェンダー(社会的性差)どころかセックス(身体的性差)すら怪しいじゃないか。

そんな思想でいるからいつまで経っても絶壁なんだ。反省せよ!

……スズカは、ウマ娘だ。

ウマ娘という以上ウマ男はいない。幼い頃から男性と関わる機会が極端に少なく、そのせいで性知識に欠けているであろうことは容易に想像できる。

今度、理事長かたづなさんに、学園での性教育カリキュラムを拡充して貰えるよう相談してみるか……?

……いや、やめておこう。変な印象を持たれそうだし、ここは自分で対応した方が面倒が少なくて済む。

「……」

「……トレーナーさん?」

「―スズカ。着替えてもらったところ悪いが、今日の練習は中止だ。今日は座学をする」









からからからから。

スズカをソファに座らせた俺は、ホワイトボードを見易い位置に移動させた。

ちなみにこのホワイトボードは一切使わなかった。

「それで、座学って、なんの座学ですか?」

「セックスについてだ」

「セックス……?」

「世間一般ではうまぴょいだのなんだのと言われているが、そんなものは【閲覧規制】を【閲覧規制】するための手段に過ぎない。それにうまぴょいでは隠語が過ぎる。正直興奮しないしピンとこない。いいか、まずはスズカにはセックスという単語をしっかりと覚えて欲しい」

「セックス、……はい、わかりました。セックスですね、覚えましたよ」

「うむ」

まずはこれでいい。誤った性知識からは悲惨な結果しか生まれない。

純情なスズカに下手に隠語で教えてしまうと、URAファイナルズのウイニングライブで乱交パーティを始めかねない。

危険なのだ。



「そして、セックスというのは身体的性差そのものを指す言葉でもあり、ある行為を指す言葉でもある」

「ある、行為……?」

「人体錬成だ」

「人体、錬成……!」

ごくりとスズカが喉を鳴らす。

「そしてこの人体錬成という行為は、性差、すなわち男と女の間でしかできないんだ」

※諸説ある

「そう、だったんですか……!」

良いことを知ったとばかりに手元のメモを取るスズカだが、メモの内容がセックスについての知識だと思うと普通に興奮じゃなかったげふんげふん虚しい気持ちになる。

スズカ本人は賢さ練習のつもりなのだろうが、残念ながらこんな知識を幾ら蓄えても賢くはならないのだ。

「だから、人間には男と女の二種類がいるんですね……」

スズカの言葉を聞いていると本当に頭が痛くなってくるが、ここは根気強く行こう。……

「まあ、そうだな。……先ほど身体的性差をセックスと言ったが、具体的には男女でどこがどう違うか、分かるか?」

「男女で、違う場所……」

天井を眺めながら、ぼんやりと考え込む栗毛の少女。

そもそもこの一連の流れがやらせじゃないかと心配になるほどの間。

「……ええと、身体の大きさ?男の人が大きくて、女の人が小さい?」

「うん、まあ一般的には、それで正しいな」

「そうですよね……!」

正解したことが嬉しかったのか、ニコニコとかわいらしい笑みを浮かべる担当ウマ娘。

……

「え?終わり?……他には?」

「他にも、あるんですか……?」

……。

「ある!!!!」

「きゃっ!?」

「たとえば、胸の大きさ!!!」

「む、胸……だ、だけど私とトレーナーさん、そんなに変わらないように見えますけど」

「……。」

勢いあまって立ちあがった俺は、スズカの言に再び座り直した。

……どうしよう。急に、辛くなってきた。

セックスに対して無知が過ぎたから壁になったのか、

壁だったからこそセックスを意識する機会がなさ過ぎたのか。

卵が先か鶏が先か、……ガチでわからんやつだ、これ。



「……ほら、スペピッピとかもう少し膨らんでないか?」

「スペちゃんは、ほら、よく食べますから……」

「確かに脂肪だけどね、あれ別に食べ過ぎて太ってるわけじゃないからね」

スペ、お前今までスズカにただのデブだって思われていたみたいだぞ。その論理で行くならタイキシャトルとかもはや横綱じゃねーか。……どうでもいいんだけどさ。

「それじゃ、男女を見分ける時には胸の大きさも判断材料に入れられるんですね」

「……」

なんだかおかしい気もするが、とりあえず頷いておく。

「だけど、……どうして私は、胸がこれだけ小さいのに、女の子なんでしょう……?」

「……」

気が付いてしまったか。

しかし、ここは敢えて触れないで行こう。

俺は顔を逸らし、次の話題に移った。



「……さて、男女の身体の違いは色々とあるが、その中でも、もう一つ大きい所は陰部の違いだ」

「いんぶ?」

「……つまり、身体についているのがおまんまんか、あるいはおちんちんかという違いだな」

「……。」

さっぱりわかってなさそうな顔してるな。

「スズカについているのは、おまんまんだ」

「うーん、……あ、もしかして、……これ、ですか?」

「!?ちょ、弄るんじゃない!触るな触るな!!」

「あ、はい。……プニプニしてますよね、ここ」

……危ない、危ない。ギリギリセーフ。なんだか不穏な擬音語が聞こえたが、聞かなかったことにしておこう。ぷにぷに。ぷにぷにぷに。

「それじゃ、……トレーナーさんは男性の方ですから、おちんちんが付いているってことですか?」

「そうだな」

「……あ、私、たぶんおちんちんは見たことあります」

「!?!!????どこで!!????」

「この前、トレーナーさんと一緒に着替えているときに」

「今日が初犯じゃねーのかよ!!??というか全然気が付かなかったよ!!!」

「あの、股下についている印鑑みたいな形のものですよね」

「印鑑!!???いいいいいいや、ペットボトルの方が喩え的には適切じゃないか!?」

「で、でもサイズ的には印鑑くらいで……ペットボトルだと少々、大きすぎる気がします」

「」

俺は崩れ落ちた。このメスガキが……自分も貧乳の癖に!K2北東壁ルートがよ!

「ト、トレーナーさん、大丈夫ですか……?」

床に伏す俺を心配したのか、スズカが立ち上がって駆け寄ってくる。

「……ああ、大丈夫。まあ、男女の違いは、こんなところだ。……」

「つまり、胸と、股下の印鑑のあるなし、ってことですよね?」

「……印鑑じゃなくて、おちんちん……ああ、もういいや。印鑑でいいよ印鑑で」

「あ、そうでした、おちんちんとおまんまんでしたね。ごめんなさい」

申し訳なさ気な顔でぺこりと頭を下げるスズカ。

「どっちでもいいけど、あんまり人前で連呼しないようにな」

「?……はい」

どうにも心配だ。

このままだと、中途半端にハイリスクな性知識を教え込んでしまったような気がしてならない。

「明日も、続きやるか」

「!はい。よろしくお願いします」

スズカも不安だったのだろう、俺の提案にすぐに頷いてくれた。

これで、少しでもスズカの無知が緩和されて、将来に繋がれば良いが……。















夜。俺は布団に入って天井の木目を数えつつ、思考をまとめていた。

「はあ……性教育ったって、何すればいいか分らんよ……」

「―んしょ、んしょ」

「というか、語彙から教えたのは失敗だったような気がしてきた……」

「うんしょ、よいしょ、っと」

「うーむ……」

「ふぅ。……トレーナーさん、悩み事でしょうか?」

「……は?」

「もしかして、私のことですか……?」

隣に目をやると、そこには栗毛娘の顏があった。

……。



「スズカ、……どうしてお前が、ここにいる!?」

「外泊申請、出してきましたよ……?」

「ロジックを八艘飛びした話をするんじゃない!!義経かお前は!!!」

「玄関の前でうろうろしていたら、大家さんが開けてくれたんです」

「だから!!!!セキュリティ!!!!!どうなってんだ!!!!!!」

「ここの人とどんな関係?って聞かれたので、男と女の関係ですって言ったら、じゃあいいよって……。」

「エロババア!!!!そんでもって、やっぱハイリスクだったじゃねーか!!!!」

「それで、……トレーナーさんが寝ているのを見て、つい……潜りこみたく、なっちゃって」

「そうか、潜り込みたくなっちゃったか!……ゲートだけじゃ飽き足らず、布団にまで潜り込むとは。うーん、……かわいいね♡」

「きょ、今日勉強したことを復習しようと思って」

「偉い!!予習もやっていくか!!」

「!ぜひ、お願いします!」





―栗毛は、淫乱。

やはり下手に手を出すべきではなかった。

「すんすん、……これが男の人の、トレーナーさんの、匂い……」

男の身体に顔を擦り付け、機嫌が良さそうにごろごろと喉を鳴らすスズカを見て、俺はそう悟ったのだった。……





無知がすぎるサイレンススズカ
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先頭ランナーはサイレンススズカです。

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