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依存しすぎるミホノブルボン

依存しすぎるミホノブルボン - カステラ3世(ベネ=カステラ)の小説 - pixiv
依存しすぎるミホノブルボン - カステラ3世(ベネ=カステラ)の小説 - pixiv
5,352文字
無防備栗毛シリーズ
依存しすぎるミホノブルボン
栗毛は淫乱
全部ブルボンが悪い

ここで第二走者のミホノブルボンにバトンが渡されました。
第一区が終了して栗毛チーム、後続に大きな差を付けています!

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2021年6月1日 23:00

「マスター、よろしくお願いします」

「ああ。ブルボン、一緒に頑張ろうな!」

「はい」

俺とミホノブルボンが担当契約を結んだのは、彼女が、トレセン学園の中等部に入学したばかりの頃であった。

トウィンクルシリーズで素晴らしい結果を残した今でこそ「サイボーグ」「坂路の申し子」「スパルタの風」などと呼ばれ、一流ウマ娘として讃えられるブルボンであるが。

トレーナーとして、最も身近で彼女と関わってきた俺から言わしてみれば、ミホノブルボンにはとにかく苦労をさせられた。別に苦痛ではなかったが、周囲が思っている以上に、その育成が大変であったのは事実だ。

レースにやって来る観客、関係者たちは、スポットライトに当たる彼女しか知らない。

故に、普段の彼女、日常の中の彼女については、まったくと言っていいほど、知らない筈なのだ。

……。



「ブルボン……どうして、お前はそんなにびしょ濡れなんだ……?」

「マスターの指示は外周のランニングでしたので、雨中トレーニングを実行していました……くちゅんっ」

―ミホノブルボン。彼女はまず、融通が効かない。

兎に角、効かない。

練習中に大雨が降って他の生徒が校舎内に避難しても、独りただひたすらにトレーニングコースを走り続ける程度には、融通が効かない。

「雨が降り出したら、室内トレーニングに切り替えような。風邪引いたら、練習もできなくなるだろ?」

「……ごめんなさい、マスター」

「怒ってるんじゃないよ、ただ、ブルボンが心配なんだよ……ほら、拭いてやるからこっちおいで」

「はい……」

びしょ濡れの彼女の髪をタオルでごしごしと拭ってやる。

まるで怒られた後の子どものようにブルボンがしょげているのが分かる。耳がぺたんと垂れているからな。

「……だけど、雨の中でも構わず走る程度には真剣に練習に取り組んでいるんだな。ご褒美に、今日ははちみつジュースを買ってやろう」

「!マスター」

「よく頑張ったな、ブルボン」

タオルの上から優しく撫でてやると、ぴょこんと耳が持ち上がり、アホ毛がふるふると左右に揺れる。ミホノブルボンが嬉しくなった時のサインだ。

顔にも笑みが戻って、これで漸く機嫌も元通り。

……と、彼女にトレーニングを指示する時には、人間のように融通が効くと思ってはいけない。プログラミングのように、ちゃんとIF構文(雨の日)を指示しておかなければならないのである。

まあ、こんなのは序の口だ。



「マスター、今の勝負服のマイナーチェンジ版をデザインしてみました」

「!!??エッチだからダメ!!!!!どうして胸元を開いた!!!???」

「……」

「そ、そんなに、しょげないでくれ……怒ってるわけじゃないんだ、ただ、その……ほら、こっちの方がかわいいぞ!」

「かわいい……マスターがそう仰るなら、二着目はこちらのデザインにします」

……ミホノブルボンは融通が効かない他に、性格の大きな特徴として、天然であることが挙げられる。それに、単純だ。褒めればすぐに機嫌がよくなるが、彼女を諫める時にはかなり気を遣う。

そして性格も天然だが当然おっぱいも養殖ではない、天然だ。

最近パッドを使い始めたグラスワンダーとは違うのだ。その情報を意図せず学園中に流布してしまったエルコンドルパサーはそのうち死ぬ。





「ブルボン……そのジャージ、どうしてそんなに汚れてるんだ?」

「転倒しました」

「……怪我はしてないか?」

「少し擦りむきました。ただ、軽傷なので、特に問題はありません」

「うん、消毒して絆創膏貼ってやるから、ジャージ捲ってくれ」

「ありがとうございます、マスター」

また、彼女はドジっ子である。よく転ぶし、廊下では頻繁に謎の衝突事故を起こすし、プールでは練習の度に足を攣っている。

ブルボンのルーティンと言っても過言ではないが、三日に一回は、擦り傷を作ってトレーナー室にやってくる。特に今日のような雨の日は、水たまりになっている場所で事故を起こし、ジャージを泥で汚してしまうのだ。

ケガをこさえてトレーナー室にやって来た場合は、都度消毒してケアしてあげているが、何もないところですてんと転ける彼女を見ていると、なんかもう色々と、不安になる。……

「着替えはあるか?汚れたジャージは洗濯しておくから、後で出しておいてくれ」

「はい……ウェアオフ、ウェアオフ」

「だから!ここで脱ぐんじゃない!!!」

……身体が成長しても肢体を晒すことをなんとも思っていないのも、トレーナーとしては大変に心配している。







「?……はい。特に予定はありません。この後は、寮に帰投する予定です」

「お茶?……予定はないので、構いませんが」

「ちょ、ちょっと待て!!」

そして、たとえ知らない人であっても、誘われるとホイホイ付いていこうとする。

自身が注目度の高いウマ娘だという自覚もないし、警戒心もない。完全にレッテル貼りで申し訳ないが、街中でガングロ集団にナンパされ、ついて行こうとしているブルボンを見かけた時には、心臓が止まるかと思った。

「……ブルボン、知らない人に話しかけられてもついて行っちゃダメだ」

「お父さんも同じような事を言っていました」

「じゃあ、なんでついて行こうとしたんだ?」

「私のファンだと言っていたので」

「…………」

その後は、ブルボンを懇々と説教する事になった。

見知らぬ人について行くのはとても危険である事。犯罪に巻き込まれることもある事。

ブルボンには警戒心がなさすぎるから、しっかりと考えて、自衛してほしい旨、など……

こうした話をしているうちにすっかりと垂れ下がってしまったブルボンの耳であったが、ここは少し強めにでも言っておかないと、同じことを繰り返してしまう。……

……少し涙目にはなっていたが、わかってくれただろうか。

最後に「わかったか?」と問うと、しょげてはいたが、コクンと頷いてくれた。彼女は素直なのだ。





と、言うように。

世間一般のもつ「二冠ウマ娘」ミホノブルボンのイメージと、俺の持つ彼女のイメージは、全く異なっている。

俺の知っているブルボンは、性格面だけで言うなら、天然で融通が効かなくて、危なっかしいドジっ子だ。育成途中は常に気を抜けなかったし、ハラハラさせられ続けた。心臓も数度と言わず数十回は止まりかけただろう。

こう言ってしまうと、あまりに悪い印象しかないかもしれない。

だが、それでも彼女は、それを補って余りある愛嬌を持っている。

人は彼女をサイボーグと呼ぶが、あくまでそれはレースの中だけの話。

感情に乏しいといわれるが、眼と耳とアホ毛さえ見れば何を考えているかはわかる。というか、ブルボンの場合は自身の感情表現に正直な分、他のウマ娘よりよっぽど分かり易いかもしれない。

そうだ。

現実の彼女は、美味しいものを食べてご機嫌になって、頭を撫でられて喜んで、怒られて悄気て、徹夜の後にソファで寝ている俺に毛布をかけてくれる……

かわいらしくも純情な、栗毛の女の子なのだ。

そんな彼女と、トレーニングやレース、何気ない日々を送る中で、深い絆を結べたことは。俺の人生で最も幸福なことだったに違いない。















―だが、担当契約を結んで、三年が経過した今。





「マスター……ごはん、食べたいです」

パジャマ姿のブルボンが、目を擦りながら、とてとてと寝室から現れる。

……俺の家の、寝室の中から。

「どうして、こうなった……」

「ますたー……?」

無駄に艶っぽい、鈴を転がしたような声色で、少女はこちらに近寄って来る。

「……はぁ……」

「マスターの朝ごはんを食べないと、日中のトレーニング効率が著しく減少します」

……。

天然だから、危なっかしいから。

そんな理由で、俺は彼女の世話を焼いた。焼き過ぎた。……その、結果として。

ブルボンは見事に、俺に依存してしまった。

「ブルボン……今日は、日曜日だ……トレーニングは、ない」

「……ひづけログを修正。ぴこぴこ……本日は、日曜日」

天然なのは結構。どこか抜けているのも結構。だが、……何故ニチアサに、俺の家にブルボンがいるんだ。

外泊申請、週七日間。

既にこの非現実が常態化してしまった今となっては、俺になすすべはない。

「マスターに、追い睡眠を提案……」

悩む俺を気に求めず、グイグイと腕を引っ張って来るミホノブルボン。どうやら、もう少し一緒に寝たいらしい。

「俺は、もう十分寝たから……ブルボンは、寝たいなら寝ておいで……」

「マスターがいないと、寂しくて、寝られません……」

急にサイボーグ口調やめるな。あざとすぎるだろこの栗毛。クソ●ッチが。

……思うに、最近のブルボンはどうも、サイボーグ口調とイヤシカを意図的に使い分けている気がする。

なお、イヤシカは栗毛に搭載されているコミュニケーション規格の一つだ。

ごめん、嘘。

「マスター、マスター」

リズム良く、グイグイと腕が引っ張られる。

……ブルボンはこの三年間で、すっかりワガママな子に育ってしまった。性格も、ボディもね。掴まれた腕が、彼女の胸部に当たって、浮いたり沈みこんだりを繰り返している。

……正直、未だに手を出していないのが不思議なほどに、彼女は無防備だし、無遠慮だ。だが、……やはり責任ある大人としては、こうして純粋に慕ってくれている彼女のキモチを裏切るわけにはいかない。

そんなことを考えていると、突然肩が重くなり、とても柔らかいものが押し付けられたのがわかった。みなまでいうぞ。ブルボンの胸部装甲。

「マスター」

……ブルボンの、媚び媚びモード、発動だ。

自身の身体を押し付ければ俺がたじろぎ、大概のお願いには頷いてしまう。

それを、ブルボンは学習してしまったのだ。もちろん、本人はそれがどういった行為なのか、どんな結果を起こしうるのか……そういったことを一切知らずに、ただ経験則として行っているのだろう。それは、理解できる。

……理解はできる、が。

「マスター」

「……」

―クソッ!なーにが、純粋に慕ってくれる彼女の気持ちだ!!このウマ娘のどこに、ピュアリー要素がある!?爛れマシマシじゃねえか!!闇堕ち魔法少女がよ!!!!

栗毛には、最初から気を許すべきではなかったのだ。

「……マスター」

「仕方ないな、……俺も、もう少し寝るか」

そして、俺も俺だ。……またしても、ブルボンに悪い学習をさせてしまう。

だが、肩に髪を擦り付けてアピールしてくる彼女を、無下にすることもできない。



アホ毛を跳ねさせるブルボンに寄り掛かられながら、俺は再びベッドに戻ることとなる。

……はあ、もう、考えるのも面倒くさくなってきたけど、ブルボンがご機嫌なら、別にいいか……寝よ……。

「すりすり」

「……ブルボン、別に擬音語は口から出さなくていいんだぞ?」

「ぎゅー」

「わかった、好きにしてくれ……」

そうして布団に入ると、中に潜り込み、俺の身体のあちこちに頭や頬をこすりつけてくるブルボン。

マーキングのつもりなんだろうか。それとも、単なる匂いフェチか。

何にせよ、普通に興奮するからやめて欲しい。



俺は目を瞑った。

だが、目を瞑ることで感性が研ぎ澄まされ、ブルボンが押し付けてくる柔らかい色々な部位を、無駄に濃く、強く感じ取ってしまう。頬、胸。太もも。……彼女の長い髪が肌を撫でるたび、実にエロティックな気持ちにさせられる。

「眠れねえ…………本当に、勘弁してくれ……」

「……マスターは、私が『嫌い』ですか?」

だから、聞き方が狡いんだよ。

「嫌いなわけ、ないだろ……」

「では、『好き』?」

そしてあざとい。……いつの間に、こんなやり方を学習したんだ。

「……好きだよ、そりゃ」

「私もです、マスター」

布団の中で、彼女の尻尾がぶんぶんと強く振れているのが分かる。

ブルボンのぴくぴくと動くウマ耳が、俺の頬上を掠める。

そうやって喜色を全身で表現してくる彼女を見て、俺も色々と、諦めることにしたのだ。……



「ごそごそ」

「そ、そこは駄目だ、ブルボンッ!!!!!!」

「マスターの、おっとせい……」

「おっとせい!!!???!!???謗られてんのかよくわかんねーなオイ!!!!!」



―危なっかしい彼女の世話を焼き続けた結果として、

ミホノブルボンは俺に依存し過ぎてしまった。

もう少し、距離感を保った関係を築くべきだったのだろうが、俺は何も、悪くない。



何故なら、栗毛は淫乱だからだ。

俺の理性が決壊して手を出してしまう日も、そう、遠くはあるまい……







依存しすぎるミホノブルボン
栗毛は淫乱
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