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策を弄しすぎた秋川やよい

策を弄しすぎた秋川やよい - カステラ3世(ベネ=カステラ)の小説 - pixiv
策を弄しすぎた秋川やよい - カステラ3世(ベネ=カステラ)の小説 - pixiv
5,054文字
無防備栗毛シリーズ
策を弄しすぎた秋川やよい
栗毛は淫乱
全部秋川やよいが悪い

第二期栗毛週間、始まりました。
最初の走者はなんと、トレセン学園理事長、秋川やよいです。
序盤中盤終盤と、隙のないレース展開を見せて欲しいですね。

twitter/vene_castella
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2021年7月5日 22:00


夕暮れの理事長室。溶けるような陽射しを浴びて、その少女の髪は金色に輝く。

あるいは黄天に垂れる流星のように、一筋の白い髪が淫らに薄光る。

彼女の名前は秋川やよい。

ご存知、トレセン学園の理事長である。

学園の多くのウマ娘と同じように栗毛の髪を持った少女は、窓の外を眺めて愉悦の表情を浮かべていた。

「ふふ……くくく……!!あっはっは!!!」

その笑い声を聞いた秘書のたづなは、記入していた書類から顔を上げて怪訝そうにこう尋ねた。

「理事長……どうしたんですか?急にバカみたいに笑っちゃって……」

「っバカとはなんだ、バカとはっ!!」

地団駄を踏んで怒り出す理事長に、たづなは瞑目した。……実際、バカみたいな笑い方なのは間違いないのだ。だが、ここで理事長の気分を害しても話が前に進まないので、たづなは一応謝っておくことにした。

「ごめんなさい、つい。……でも、本当にどうしたんですか?」

「よくぞ聞いてくれたっ!!これだ!」

「……?」

少女が机の下から取り出したのは、なんとも大きな翡翠の瓶。半透明で、中には液体がたっぷりと入っている。

「あら。……それは」

「フフ、分かってしまったか。流石は、酒豪のたづなだ!これは、至福の味ながらも飲んだものの頭を破壊し、あっという間に理性を喪わせてしまうと言われる伝説のアルコール・脳斬テイストだッ!!」

「脳斬……そのお酒、本当に強いですよ?しかも理事長、全然お酒飲めませんよね……?」

「私は飲まないから大丈夫だ」

ちゃぷちゃぷと瓶の中身を揺らしながら、ニコニコと笑みを浮かべる秋川理事長。その無垢な笑みに、逆にたづなは懸念と少しの違和感を覚えた。

「……理事長、あなたまさか……」

「そうだ、これをトレーナーに飲ませるッ!!」

「……」

秘書の少女は絶句した。

「いや、ダメですよ!!トレーナーさんも、お酒弱いんですから!!」

「既知ッ!!!だから飲ませるのだ!」

「の、飲ませるって……そんなもの飲ませたら、あっという間に……」

「酔いつぶれるだろうな」

「……まさか、トレーナーさんを酔い潰させるつもりですか……!?」

「……」

どこ吹く風と言わんばかりに、ぷひょーと音程の外れた口笛を吹く少女。

こんなナリでも、一応はこの学園の最高責任者なのだ。

たづなは、怒りと呆れの感情がごちゃ混ぜになって、頭を抱えたくなった。

「理事長!!そんなこと、許されないですよ!」

たづなは少女の座る机をバンと叩いた。一瞬身体を後ろに逸らして怯えを見せたやよいであったが、負けじと机を叩き返す。

「……だって、トレーナーが振り向いてくれないんだもん!!」

「理事長かわいい……!ですけど、ダメです!!!」

「止めるな、たづな!!私は何がなんでもやる!!!」

「理事長!!」

「まずはトレーナーを、明日の会議内容の前相談という理由で定時後に呼び出す!」

「サビ残じゃないですか!?せめて定時内に呼び出してあげてください!」

「定時だと、学園内にウマ娘が残っている可能性があるからなっ!」

「自分都合!!そんなことしたらいけませんよ!!」

「うるさいうるさいうるさいうるさーいっ!!!乱用!!!理事長権限だッ!!!」

「職権乱用の自覚があるなら自重してください!!」

……それからたづなは理事長の説得を続けた。

だが理事長の意思は固く、堂々巡りの話し合いとならざるを得なかった。

やがて、やよいがキャビネットから別の日本酒の瓶を取り出すと、それを受け取ったたづなは、トレーナーの未来について考えるのをやめた。



「これで、邪魔者はいなくなった」

秘書がいなくなった部屋は静寂に包まれる。秋川やよいは、やや日が落ちて、暗くなりかけた空を眺めた。

「……私は、やるぞ……!今日、ここで、決めて見せる……!」

その小さな身体に抱えた大きな酒瓶が、ちゃぷりと音を立てた。





こうして、日々の残業に疲れて判断能力の鈍ったトレーナーを呼びだした秋川やよいは、会話の自然な流れで【例の酒】を惚れる男に供することに成功した。

「理事長推薦ッ!元気の出るエナジードリンクだ!」

「ありがとうございます……ごくごく………………うぐっ!?」

「陥穽ッ!!人のいう事を、容易く信じるべきではないぞっ!!」

―強力過ぎるお酒は、酔いよりも強く眠りを誘う。眠りとは、体内異常に対する自動防御機構だからだ。

そうして、糸が切れたように、ふらふらとトレーナーは倒れた。



「ぐぅ……ぐぅ……」

「トレーナー、おきろー」

「……うぅん……」

「おーい」

ユサユサと身体を揺するが、トレーナーは起きない。

―占めた、少女はそう思った。

「こんなところで寝ると、風邪引くぞ―」

口ではそう言いながらも、勿論むざむざと起こすつもりはない。

机に突っ伏して眠る男の肩を軽くゆすり反応が無いのを見ると、やよいは笑みを口角に浮かべた。

「……業務、終わりっ!帰宅ッ!!」







「トレーナー……君が悪いんだぞ」

「ウマ娘ばかりかまって、全然部屋にも来てくれないし」

「私が勇気を振り絞ったアタックを、悉く全スルーするから……」

自らよりよっぽど大きな体躯のトレーナーを抱えたやよいは、空を見上げながら、独り言ちた。

見上げた空に輝く、狂おしいほど光を放つ満月。

その魔力に充てられてゆっくりと帰路を進む少女。

普段は車を使う。だが、今日は使わない。

向かう先は家ではなく、繁華街のホテルだからだ。

「……フフ」

……こんな強硬策、出来れば取りたくはなかった。

ありのままの自分に振り向いて欲しかった。

だが……もう、止まれない。

追い詰められた秋川やよいが取れる手段は、もうこれしかなかったのだ。







―そうして。

「むぐぐぐぐぐぐぐッ!?」

……戦慄。

秋川やよいは、戦慄した!

トレーナーに、度数のキツいお酒を飲ませて。

そのままホテルに連れ込んでイタズラしようと画策していたら、いつのまにか自分がトレーナーにロープで縛られていたからである!

「理事長……」

縛られたまま床に転がった少女を、立ったまま見下ろすトレーナー。

やよいには、その顔が怒りに紅潮しているように見えた。

「むぐ―!」

どうしてこんなことをするんだ、とばかりに口をもごもごと動かす少女に、それを見下ろす男。

男は少女が何かを次ぐよりも先に、抗議に身体をくねらせる少女の口元を、手で力強く抑えこんだ。

「……!!」

原初の感覚が少女の脳をよぎった。

このまま乱暴に扱われるかもしれない。

……少女がそう考えるほどに、微かな痛みが反響して、頬から何倍も痛みを感じている気がした。

―秋川やよいは目の前の見知った男に対して、ここで初めて、恐怖を覚えた。









……頭が痛い。

……たしか、理事長が出してきたお酒を飲んで、クラクラとして……

ああ、お酒、飲み過ぎたかな。

どうやら、……今の今まで、俺は眠っていたらしい。

そうして歪んだ視界が落ち着きを取り戻すと、そこで漸く、俺は今自分がホテルらしき部屋の一室にいて、目の前に誰かがいることに気がついた。

「……理事長……?」

「むぐ……」

視線の先には、アイ〇ルのCMばりに目元をうるつかせた、理事長が一匹。身体の自由を奪われた状態で、カーペットの床に転がっていた。

……いや、夢だな。あの理事長が、ロープでぐるぐるに縛られて、床に転がっているわけがないからな。

「……でも、そうか……夢か……」

俺は理事長の首を掴むと、近くに置いてあった半透明の緑の瓶の中身を、思いきりその口に流し込んだ。

これが夢なら、あの幼児体型の少女に対する劣情を晴らす絶好の機会だからだ。

「むーっ!?むむむーっ!?」

少女は体を捩って逃げようとするが、縛られているが故にこちらのなすがまま。

力を入れずとも、その身体を固定することも、弄繰り回すことも、容易いものであった。

「理事長、お酒大好きなんでしょ……?なら、ほら、もっと飲まないとね」

「むぐっ!?むぐぁっ!?」

ぺりぺりとガムテープを剥がして、少女の上の口から、たっぷりとお酒を流し込む。

もがく少女の口から酒瓶が外れるたびに、こぽこぽと酒が溢れて、喉をつたって服を濡らした。

それが、どうしようもなくみだりがわしい。

「や、やめ……ッ……!!?」

だらだらとお酒を体内に注ぎ込み、……やがて、酒瓶は空っぽになった。

俺が3割ほど飲んだ気がするから、残り7割は理事長に飲んだ計算になる。



……果たして、理事長は。とろんとした顔付きで、床にぺたんと座り込んでいた。

「ふっ……はっ……ふっ……はっ……」

「理事長……俺を酔わせて、何をするつもりだったんですか?」

「ふぁっ……な、何も、しゅ、するつもりなんてっ……」

まだ抵抗するか、この色ボケ栗毛娘。

俺は理事長の上半身を軽くまさぐった。とはいっても、こしょばせる程度ではあるが。

「んんんぁぁぁッ!?や、やめりょぉぉぉッ!?」

悶える少女の体躯を足で押さえつけて、ホテルに備え付けられた冷蔵庫を開けた。

―仕方ないからもっと飲ませてやろう。

床に張り付く理事長の口に、再び酒瓶を突っ込む。今度はバーボンだ。

「んぐ……んぐっ……!?」

先ほどよりも抵抗はずっと弱い。

首を左右に振るだけだが、それすら片手でガシリと抑えるだけで、その所作を掌握できる。少女の身体は、完全に俺にコントロールされている状態だ。

そうして全てのバーボンを注ぎ終わると、だらりと少女の身体が垂れた。

最早何かに寄りかからないと、座ることすら難しいようであった。

「ちょれえ、にゃっ……おまぇっ……」

呂律の回らない口で、余計に地に這いつくばりながらも、それでも尚、拒絶……あるいは、抵抗の意思を見せる秋川やよい。

「お酒飲み過ぎちゃったね、それなら酔い止め飲まないとね」

それならと、ポケットから白い粉を取り出す。

それを口元に近付けると、少女の表情は、見る見るうちに強張った。

「にゃ、にゃんだ……しょれは……」

「危ない薬とかではないので、安心してください」

「ぜ、ぜっちゃい、酔い止めじゃないだりょっ!!!……」

「うるせえ、飲め!オラッ、媚薬!」

「むぎょっ!?……ッッッ!!!??」

ドンキホーテで買った白い粉もとい媚薬を、少女の口に押し付けた瞬間。

カエルが潰れたような声を挙げて、床の上に転がる少女のカラダが、大きく跳ねた。





その後、秋川やよいとの間に何があったかは、語るべくもないだろう。

一晩が過ぎて朝になり、酔いから醒めて完全に意識が覚醒した俺は、恍惚の表情で寝転がる秋川やよいを見て、非常な後悔を覚えた。

結局、大人二人が、脳から理性を断たれて狂いに狂ったのが昨晩の事。

「あの、……秋川、理事長……?」

「ちょれえにゃ……♡もっちょ、もっちょ……♡」

「……」

現実を認識し頭を抱える俺と、未だシアワセの微睡みの中にいる少女。

夢から醒めたとき、彼女は何を思うのだろうか。幸福か、はたまた、自分と同じ、後悔か。

目の前の表情を眺めていると、彼女に限って言えばどう考えても後者はあり得ないだろうと、そういう結論が沸き上がる。

……秋川やよいは、俺を酔い潰して、イタズラをするつもりだった。

そしてそのうえで、少女は策を弄し過ぎた。策に溺れたのだ。

……だが、結果的に負けたのは、この俺だ。

少女は今と未来の幸福を勝ち取り、俺は今後の人生の窮屈を迫られる結果となった。

「栗毛は、淫乱……」

無意識のうちに、口を衝いてでた言葉。

栗毛……ああ、理事長が淫乱ドスケベな栗毛のウマ娘だったら、多少は責任転嫁もできるのかもなあ……

そんなことを思いながら、俺はふと、少女の長く伸びる、明るい栗色の髪の根元に視線を移した。

「—え?」

靄のかかった夕焼けのような色の髪のスキマから、——の耳が、見えた気がした。

策を弄しすぎた秋川やよい
栗毛は淫乱
全部秋川やよいが悪い

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序盤中盤終盤と、隙のないレース展開を見せて欲しいですね。

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