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練習もオフの日曜日。
お昼を食べて、胃も落ち着いた時間にあたしはトレセン学園のトレーニングジム前で深呼吸する。
「……これってデートかな?デートだよね?」
日頃の恩返しも兼ねて一緒にトレーニングすることになった。 というかしちゃった。 ちょっと強引に。
邪な想いが無いとは言い切れない。 あたし達競技ウマ娘が鍛えるのは当たり前だけど、トレーナーさんもかなり鍛えている。 スーツやジャージを押し上げる筋肉を見逃すあたしじゃない。 普段はヒト用の器具が揃ったジムに通ってるらしいけど、忙しくてジムに行けないトレーナーさんのために、トレセン学園のトレーニングジムを使わせてもらうことにした。
3年間一緒に頑張って、越えたい壁を越えられて、これからも競技生活を続けられてるのは他の誰でもないトレーナーさんのお陰だ。
……これで惚れないってほうが無理があると思う。
それに、トレーナーさんも最近あたしと話す時匂いが変わった気がする。 近づいてみたり、わざとらしく抱きついてみたりすると、露骨に匂いが変わる。 パーマーやマックイーンが「男のヒトは興奮すると、匂いが変わる」なんて話をしてたし、もしかして、もしかすると、トレーナーさんもあたしのことを……。
「ライアン?なんか忙しそうだな?」
「はっ!!トレーナーさん!!!」
「なんかモジモジしてたけど……。」
「いっ…いえ!!なんでもないです!!!さぁさぁ早く入りましょう!!」
日曜とはいえ、自主トレに励む生徒やそのトレーナーで賑わうトレーニングジム。 もちろんウマ娘用の器具や、ウマ娘が扱う重量のウェイトばかりで、ヒトが使うことはほとんど無い。 みんなジロジロ見るわけじゃないけど横目でチラチラとベンチプレス台に寝転がるトレーナーを見ていた。 みんなの視線を感じながら、あたしはバーベルに重りを足していく。
「さぁ!どうぞ!まずは軽く200kgぐらいから!」
「……いや、ライアン?200kgは流石に……。」
「あ!軽すぎましたかね?じゃあ300kgくらいかな?」
「違う違う!重すぎるんだって!死んじゃうよ!」
「……えっ!?だって200kgですよ!?」
「……えーっと、俺、ベンチプレスのマックス120kgなんだけど。」
「えっ……」
ヒトがウマ娘より力がないって知ってたけど、まさかそんなに……? だって、200kgって中等部入りたての娘でも反復で扱う重量だよ!? 120kgなんて小学校の頃に遊びで挙げたことがあったのを思い出して、少しびっくりしてしまった。
「びっくりした?ヒトだとこれでも上げてる方なんだよ。」
「あっ、ごめんなさい!こんなに差があるとは思わなくて……って失礼でしたね!重量減らすので少しだけ待ってください!」
「ありがとう。10回くらい挙げたいから90kgぐらいで頼むよ。」
「……は、はい!」
ヒトが挙げる重量なんてほとんど知らなかったとはいえ、すごい失礼だったよね。 トレーナーさんは全然気にしてないし、気にする人じゃないって分かってるけど、少し自己嫌悪。 せっかくのトレーニングデートなのに、あたし最低だ……。 ちょっと凹みながらも重量を減らしてウェイトを元の場所にもどして、トレーナーさんの頭側に付く。
90kgのバーベルは本当に軽くて、あたしなら片手で扱える軽さだ。 もしかしてトレーナーさんが嘘ついてるのかな、なんて思いが生まれつつもトレーナーさんがラックに掛かったバーベルを持ち上げ始めた。
1……2……3…… 重そうに持ち上げてる。 本当に90kgが最適重量なんだ……。 90kgなんてあたし、アームカールでしか扱ってないよ……。
4……5……6…… トレーナーさん、あたしより背も高くて、強そうで頼もしいのに、こんな軽いバーベル上げるのに一生懸命になってて……。 男の人ってこんなにか弱いんだぁ……。
7……8……9…… はぁぁ……。 ここって特等席だよね……。 厚みがあって四角形な大胸筋……。 躍動する前腕、上腕、三角筋……。 好きな人のかっこいい筋肉をこんなにじっくり見れるなんてぇ……。 ……腕なんかあたしより二回りは大きいのに、全身あたしより大きくてたくましいのに。 なのに、こんなに軽い重量で必死になってて……。 ……かわいい……。 ……って!バカバカ!!何考えてるんだあたし!!
10…… 「ら、ライアン、もって……、バーベル……。」 「あっ!ごめんなさい!お疲れさまでした!」
膝立ちでトレーナーさんの上半身をじっくり眺めていたせいで、少し反応が遅れちゃった。 ふぅっと息をついて額に汗をにじませるトレーナーさんからは、いい匂いがした。
その後2セット行い、最後の1セットは90kgよりも更に10kg下げて、それでも全身汗だくになってるトレーナーさん。
あたしが扱うより遥かに軽い重量で必死になってるトレーナーさんをずっと見てるうちに、あたしの中で何か黒く湿った感情が渦巻いた。
もっと知りたい。 もっと体感したい。 トレーナーさんの力。 トレーナーさんの全力。
「ふぅ〜……。ありがとうなライアン、次は下半身を鍛えようと思うんだけど……」
「あ、あの!トレーニングジムから出ませんか?」
「え?マシントレーニングでいいじゃないか」
「い、いや、あの……ほら!周りの目線が気になるので!」
「あー……。」
トレーナーさんがあたりを見渡すと、横目で見ていた何人かがスッと目線を戻す。
「うん、そういうことなら……、トレーナー室でやろうか。」
「そうですね!それがいいです!早速行きましょう!」
トレーナー室に移動してる間、前を歩くトレーナーさんの匂いが濃くって、鼓動が早くなっていくのを感じた。 汗でトレーニングウェアに浮かぶ背筋郡、大きいのに、あんな軽い重量しか扱えないという事実にドキドキする。
トレーナー室に着く頃には鼓動の熱がお腹の辺りまで降りてきて、トレーナーさんに飛びつきたい衝動を抑えるので精一杯だった。
部屋に入り、後ろ手に鍵を閉める。
何しようか、なんて呑気なことを言ってるトレーナーさんに組み付く。
「おっ?どういうトレーニング?」
「あたしが押すので、押し返してください。」
「お、おう。お手柔らかにね。」
傍から見たら抱き合ってるように見えるのかもしれない。 肩と肩を合わせ身体を密着させると、トレーナーさんの匂いがまた少し変わった。 きっと異性と意識しちゃってるんだ、とウマ娘のあたしにしか知り得ない事実に口が緩む。
トレーナーさんは全身を使って押し返しているみたいだ。 眺めるだけとは違う、身体に感じる男のヒトのささやかな全力。 ベンチプレスを見たあとに感じた黒い感情が、お腹の熱と混ざっていくのを感じた。
「ありがとうライアン。もう壁に着いちゃうから向きを変えてもう1セット頼むよ。」
夢中で身体に返ってくる健気な抵抗を味わっていたら、いつのまにか部屋の反対側。 壁にトレーナーさんを押し付けてしまったみたいだ。 足りない、全然足りない。 もっと、もっと強く抵抗してくれないと。 姿勢を戻したトレーナーさんの厚い胸板に頭を付けて、壁にぐいぐいと押し付ける。
「ライアン?」
少し戸惑ったような声が耳に届く。 顔を上げると、姿勢を戻したトレーナーさんが不安そうにこちらの顔を覗いてくる。 その顔を見たら、なんだか味わったことのない感覚がゾワゾワっと肌を撫でてお腹の辺りがさっきよりドロドロ熱くなる。
「おい!?ライアン!?止まっ、止まれ!」
熱に浮かされたままトレーナーさんの口元に吸い付こうとすると、あたしの肩がグッと押される。 ……?なにこれ?これで全力?
「だ、だめだライアン!こういうのは卒業してから、もう少し待ってくれ!!」
……トレーナーさんは優しいなあ。 てっきり拒絶されたのかと思ったけど、あたしのことを想って自分よりずっと力が強いウマ娘に抵抗してるんだ。
「教え子と教師の一線を守りたいんですよね?」
「……もちろんだ、落ち着いて、少し離れてくれ……」
トレーナーさんは額に汗を浮かべたまま、あたしと壁に挟まれたトレーナーさんは息も絶え絶えって感じだ。
かわいいなあ、もっといじめたくなっちゃう……。
「じゃ、押し返してください♡」
すこーしだけ前に進む。 トレーナーさんの力がほんの少しだけ強くなったような気がした。
「ほらほら、もっと頑張ってください♪」
ヒトなのに頑張ってウマ娘に抵抗する姿が、なんだか楽しくって声が跳ねる。 トレーナーさんはもう返事をする余裕も無いみたいで、そんな必死な姿にゾクゾクする。
じわじわと追い詰めるようにあたしとトレーナーさんの距離は縮まる。 本当は焦らす必要なんてなくて、その気になれば抵抗なんてさせずに唇を奪える。
あたし、酷いことをしてるのかもしれない。 ささやかな抵抗を楽しんで、トレーナーさんの男としてのプライドを踏み躙ってるのかもしれない。 でも、楽しい。 今だってあたしの為を思って抵抗してくれてるんだ。 あたしの為なんだ。 それを、ぐちゃぐちゃにしたい。 逞しいのに、こんなに弱い。
唇まであと数センチ。 鼻と鼻が触れ合うような距離まで追い詰めた所で、トレーナーさんの抵抗が弱くなっちゃった。 ヒトは筋肉の出力も持続力もウマ娘に全然及ばない。 こんな短時間なのに、もうバテちゃったんだ。 頑張ったのに、全然押し返せなかったんですね。
……じゃ、もう頂いちゃっていいよね? だって好き同士なんですもん。
トレーナーさん、ごめんなさい。 でも、弱いトレーナーさんが悪いんですよ?
こんなにカッコいいのに、こんなにかわいいトレーナーさんが悪いんです。
キスの仕方なんて分からなくて、でもトレーナーさんは口をキツく結んでて。 映画で見たように舌でトレーナーさんの唇をこじ開ける。
自分でもこんな大胆なことができるなんて思っても無かった。
ぼーっとして、でも頭の奥とお腹の奥がビリビリして、トレーナーさんが苦しそうにしてるのも気づかなくて。 唇と唇の間に分厚い掌が差し込まれて、トレーナーさんが咳き込んでる。
キス、しちゃった。 しかも、あたしから。 もっと、男の人にリードしてもらうものだと思ってたのに……。
よっぽど苦しかったのか、涙を浮かべて肩で息をしてる。 なんだか、さっきまで感じてたのとは別の気持ちが膨れ上がっていくのを感じた。
もっと味わいたい。 もっともっと、感じたい。
壁により掛かって咳き込んでるトレーナーさんの肩に手を置く。 ゆっくり力を込めるとハッと気づいたようにトレーナーさんが顔を上げる。 トレーナーさんの顔は涙に濡れてて、必死で息を整えてる口の端からは涎が垂れてて。 自分の肩を下に下に抑え込む手とあたしの顔を交互に見る。 多分、全身に力を込めているんだろうな。 重いものを支えるようにしゃがみこんで、あたしの両腕を押し返そうと頑張ってる。 ……全然力いれてないのに。
片膝が着いて、両膝が着いた。 トレーナーさんの身体が地面に近づくにつれてあたしもしゃがみ込む。 ゆっくり床に押し倒して、見せつけるようにトレーナーさんに跨る。
いつも見上げていたトレーナーさんの顔が、あたしの下にある。 暴れないように両手を優しく捕まえて、吸い寄せられるように二度目のキス。 固く閉ざされた唇も、再び舌で優しくこじ開ける。 今度はトレーナーさんが苦しくないように、適度に間隔を空けて息継ぎさせてあげる。
息を整えてるのを眺めていると、ヒト耳が目に入った。 興奮して気づかなかったけど、トレーナーさんの顔と同じように真っ赤に染まるヒト耳。 ヒトって興奮すると耳まで赤くなるんだ。 毛も生えてないし、どんな触り心地なのだろう、と指を伸ばしてその外縁に指を伸ばしてみる。
触れた瞬間トレーナーさんの身体がピクっと軽く跳ねて、息を飲んだのをあたしは見逃さなかった。
形は全然違うけどヒト耳も敏感なんだあ……♡
ヒト耳にゆっくり口を近づけると、トレーナーさんも何をされるか気づいたのかさっきより激しくもがく。 逃げられないって理解ってるはずなのに、かわいいなあ。 クスっと漏れた息がヒト耳を撫でたようで、あたしの下に敷いてる身体が跳ねる。
指でなぞった外縁にかぷっと噛み付いてみる。
ビクッ!とひときわ大きく跳ねる身体。
モムモムと口に含んで歯で優しくなぞってみる。
さっきまで激しかった抵抗が嘘みたいに収まる。
口に含んでみると、口の周りよりしょっぱくて、男のヒトの匂いが濃い気がした。
一息ついた吐息が耳に掛かっただけで悶えてるのが身体を通して伝わってくる。 毛に覆われてない分ウマ耳より敏感なのかな? もし舐めたらどうなっちゃうんだろ?
無邪気な好奇心そのままに、面白い形をしたヒト耳の穴に舌を這わせた。
普段のトレーナーさんからは想像もつかないような、情けない、上ずった声。
へぇ……♡男のヒトでもこんな声出しちゃうんだ……♡
なんだか面白くなって跳ねるトレーナーさんの身体をギュッと抱きしめて遠慮なく味わう。
舐めすぎて味がなくなっちゃったら、もう片方。 舐めてるときもいい反応が返ってくるけど、溜まった涎を吸い取るのも刺激が強いみたい。 舐めて吸ってを繰り返して、両耳とも味がなくなって。
ゆっくりお腹に跨る姿勢に戻して、トレーナーさんの顔をもう一回捉えた瞬間、自分の中の何かが弾けた。 涙と涎にまみれて、少し怯えたような目、情けない顔。 普段の頼れる姿からかけ離れた、乱れた表情。 レース中に味わう興奮に近いけど、もっとドロドロとした、頭が真っ白になってお腹に響くような。
自分の息が荒くなってるのを感じる。
身体をズラしたときに、お尻になにか硬いものが当たった。
何か当たったかな、と思う前に本能で理解った。
プツン、と頭の中で何かが切れた音がして。
身体に纏わりつく服が邪魔で仕方なくって乱暴に脱ぎ捨てた。
こんな、襲っちゃう形になっちゃったけど。
……トレーナーさんが弱いんだもん、仕方ないよね♡ 教え子に迫られて興奮しちゃうトレーナーさんが悪いんだもんね♡
諦めたような目をしたトレーナーさんをよそに、あたしは彼自身を乱暴に受け入れた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
寒さで目が覚めた。
背中は包み込まれるように暖かくて、いつの間に羽織ったのかもわからない毛布がかかってる。 目の前には自分のものじゃない腕が伸びてて、誰かの腕枕で寝ていたんだと気づいた。 頭が冴えてくるのと同時に、昨日の出来事を全部思い出して飛び起きる。
やつれた顔のトレーナーさんが横たわってて、あたしも、トレーナーさんも生まれたままの姿で……。
胸の奥に冷たい水が差したようにキュっと締まる。
あたし、なんてことしちゃったんだろう。
熱に浮かされちゃったとはいえ、こんな、これってレイプだよね……?
トレーナーさん辞めさせられちゃうかもしれないし、あたしも退学?逮捕だって……。 申し訳無さやら、情けなさで視界がにじむ。 胸の奥からこみ上げてくる後悔が溢れ出して、嗚咽が漏れた。
泣くのはあたしじゃないのに、ひどいことしたのはあたしなのに。 すやすやと寝るトレーナーさんの顔を見てられなくって、顔を背けてしまう。
嗚咽を止められないでいると、暖かさが身体を包んで、誰かが頭を撫でてくれた。
トレーナーさんだ。
取り返しのつかないことをしてしまった、と謝るあたしをトレーナーさんは優しく許してくれた。
自分もライアンを思う気持ちがあったこと、ウマ娘には抑えきれない本能が出てきてしまうこともあること。 あたしさえ良ければ今後は一歩進んだ関係で居ようと言ってくれた。
涙と嗚咽が止まらないあたしが泣き止むまで、トレーナーさんは優しく優しく抱きしめてくれたのだった。
毎度のごとく逆ぴょいです。
逆ぴょい無理ぴょいなのに純愛です。
ライアンは良い子なので、こんなこと言わないし、こんなことしないと思います。
毎度毎度似たような話で申し訳ないですがご容赦いただければ……。
投稿ペースも遅く、性の癖をウマ娘にぶつける不届き者の三文文士ですが、これからも投稿は続けますのでご愛顧いただければ幸いです……。
10/19追記
2日連続でランキング入りしました、本当にありがとうございます。
毎回ブクマ・コメント・いいねをいただくと、自分の歪んだ性の癖が受け入れられたような気がして嬉しいです。
歪んだ癖をぶつけない作品も書けたらなと思ってますので、今後ともよろしくお願いします。