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サクラバクシンオーが温泉旅行で学級委員長を休む話。 - 要の小説 - pixiv
サクラバクシンオーが温泉旅行で学級委員長を休む話。 - 要の小説 - pixiv
12,163文字
サクラバクシンオーが温泉旅行で学級委員長を休む話。
欲望しかない。お目汚しをバ。
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2021年6月8日 09:44

商店街の福引で当てた旅行券を使い、担当バのサクラバクシンオーと1泊2日の温泉旅行に来た。

バスを下車し、旅館を目指して山間の道を歩いている。

トレーナー「バクシンオー。やっぱり友人の誰かと来た方が良かったんじゃないか?」

バクシンオー「何をおっしゃいますやら!トレーナーさんと当てた旅行券ならば、トレーナーさんと来て当然でしょう!」

バクシンオー「さあさあ、旅館が見えてきましたよ!バクシィィン!」

トレーナー「転ばないようにねー」

いくら担当同士だからって、未成年の女生徒を連れて2人旅は不味いのでは…。

そう思って秋川理事長など上の方々にもこっそり相談したのだが、「本人が行きたがっているのなら特に問題はない」とあっさり許可されてしまった。

トレーナー「自分がビクビクし過ぎてるだけなんだろうか…」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



トレーナー「いややっぱ駄目でしょうこれ」

呆然と立ち尽くす自分を他所に、「ごゆっくりおくつろぎ下さい」とにこやかに挨拶をして中居さんが襖を閉めて去ってしまう。

十畳ほどの和室とその奥に広縁があり、さらに奥の、一面のガラス窓から檜づくりの露天風呂が見える。

所謂、露天風呂付き客室タイプだった。

たかだか商店街の福引でこういう豪華な部屋に泊まれるなんて…などの驚きもあるが、そんなことよりも今は別の問題を考えるのが先だ。

サクラバクシンオーは早々と手荷物を下ろし、ガラス窓にべったりと張り付いて目を輝かせている。

バクシンオー「トレーナーさん!すごい部屋ですね!」

バクシン「こんなところに泊まれるなんて…初めての体験です!」

トレーナー「(なんで相部屋なんだ‼︎⁉︎)」



トレーナー「(だ…大誤算だ。温泉旅行券は当選してすぐバクシンオーが預かって、ギリギリまでその状態だったから知らなかった…)」

いくら何でも相部屋は駄目だろう。

自分が社外的に死んでしまいかねないし… バクシンオーの立場にだって十分に関わる問題だ。

トレーナー「バクシンオー。悪いけど、ちょっと静かにしてて」

床板に備えつけられている電話のもとへ移動し、受話器を取る。

バクシンオー「? どうかなさいましたか?」

トレーナー「フロントに別室を用意して貰うように頼んでみる。バクシンオーはこのまま泊まって大丈夫だから。流石に一緒の部屋はーー」

刹那。

トレセン屈指のスプリンターである彼女が 瞬きのうちに駆けてきて、自分の手元から受話器を奪い取って元に戻した。



トレーナー「……ば、バクシンオー?」



両手で電話を押さえつけたまま静止する。

呆気にとられ、自分も暫く動けなくなってしまう。

バクシンオー「……折角ですし。一緒でも良いじゃありませんか。えへへ……」

トレーナー「…いや、でも…年頃の女の子と、自分みたいな奴が同じ部屋で寝泊まりっていうのは。」

バクシンオー「私は気にしませんよ」

トレーナー「バクシンオーの親御さんにだって申し訳が立たないし…」

バクシンオー「両親は関係ありません」

トレーナー「いや関係ないってこと

バクシンオー「ありません」

彼女にしては珍しい頑なな態度。

下向きで髪にも隠れているため表情は伺えないが、それでも「譲らない」という強い意志が感じられる。

トレーナー「(ど…どうしたものか…)」

なんとかしてバクシンオーを説得する方法を考えていると、彼女は電話から手を離し、こちらへ向き合った。

すると、正座になってピシリと姿勢を正し、そのまま深々と頭を下げた。

トレーナー「バクシンオー…?」

バクシンオー「お願いします」

バクシンオー「トレーナーさんの立場のことも、私の立場を心配してくださっていることもわかっています。」

バクシンオー「それでも私は今日、この部屋で一緒に泊まりたいんです。トレーナーさんと思い出をつくりたいんです。旅行券で相部屋のことを知っていながら黙っていたことは……本当に、ごめんなさい」

顔を上げれば、悪戯がバレて叱られた幼児のごとく、弱々しく涙を浮かべていた。

バクシンオー「でも…でもっ、私は!今日のこと、とても楽しみで。今まで、トレーニングとか、偶にお買い物くらいしか、トレーナーさんと一緒に居られることなんてありませんでしたから。」

バクシンオー「だから…今日くらいは、1日丸ごと、トレーナーさんと楽しめたらと…思いまして………」



頭を強く打ち付けられた気がした。

大人の都合ばかりを並べて、自分は彼女のことを考えているようで、その実何も考えられていなかったのだ。

彼女はただ純粋にこの日を楽しもうとしていただけだった。

トレーナー「(未成年が、立場が、どうのこうのと…自分の方がかえって不純じゃないか)」





バクシンオーと同じく正座になり、額を畳に付けるほどに謝罪する。

トレーナー「……申し訳ない。バクシンオーのこと、全然考えられていなかった。部屋はこのままでいよう」

トレーナー「君の純粋な気持ちを踏み躙るところだった。本当に、ごめん」

バクシンオー「〜〜‼︎ あああああの!頭を!上げてください!ワガママを言ってるのは私の方でして」

トレーナー「ワガママなもんか。担当バが楽しい思い出をつくりたいって言ってるのに、それに応えられないなんてトレーナー失格でーー今まさにそうなるところだった。」

顔を上げて彼女と目を合わせる。

トレーナー「沢山楽しもう。さっきバクシンオーが言ってたように、折角だから。」

バクシンオー「!…はい……はい‼︎ありがとうございます‼︎」

ぐしぐしと涙を拭って立ち上がると、真に普段通りの彼女の笑顔に戻った。

バクシンオー「それではトレーナーさん!早速ですが、旅館の周辺を見てきませんか?近くに大きい川や、何やらお店もありました!」

トレーナー「それは気になるね。よし、行こうか」

バクシンオー「ええ、行きましょう!バクシン、バクシィン‼︎」

そうだ、沢山楽しもう。

滅多にない機会なんだ。

それに、他ならぬ彼女の願いなんだから、自分に叶えられることなら、全力で叶えよう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

旅館の外をひと通り見て回るとちょうど日暮れになったので、中に戻って夕食前に温泉に浸かることにした。

部屋にある温泉は当然入ることが躊躇われるため大浴場の方に入り、自分もバクシンオーもそれぞれ日頃の疲れを癒した。





浴衣に着替えた自分と彼女の前に豪華な夕食が並べられている。

プルプル震えながら感嘆の声を漏らすバクシンオーの様子が可笑しく、可愛らしい。

湯上がりで頬はほんのり紅くなり、額はいつにも増して輝いている。

両の掌を合わせたあとは贅沢極まる料理たちに存分に舌鼓をうった。

バクシンオー「もいひいれふ‼︎」もぐもぐ

トレーナー「ああ、久々にこんなに美味しいもの食べたなあ」もぐもぐ

少しして、彼女がジッとこちらを見つめてきた。

バクシンオー「……」もぐもぐ

トレーナー「…どうかした?」

バクシン「(ごくん)…トレーナーさん、お酒は飲まれないんですか?仲居さんがそこに置いていきましたけど」

トレーナー「うん、まぁバクシンオーも一緒だからね。今日は控えとこうかと」

バクシンオー「飲みましょう!」

トレーナー「今の話聞いてた⁉︎」

バクシンオー「私はトレーナーさんにも存分に楽しんで貰いたいのです!私と一緒だからと、遠慮する必要はありません!」

バクシンオー「それともお酒は苦手なのでしょうか?」

トレーナー「人並みには好きだよ。ただ、ちょっと酔いやすくはあるから…」

バクシンオー「ならば適量で楽しみましょう‼︎」

しまった。

正直に答えず酒は苦手だって言えばよかった。

バクシンオーは膝立ちで移動してきて、ビール瓶を手に取れば、手際良く栓抜きで蓋を開けてしまった。

トレーナー「もしかして慣れてる?」

バクシンオー「うちのお父さんがお酒好きだったもので。よくお酌していました!さささ、グラスをこちらへ」

トレーナー「〜〜しょうがないなあ、うん。」

開栓されては仕方ない。

などと頭では合理化しながら、瓶からトクトクと注がれる様を眺めて、内心ではこの料理たちと共に酒を飲めることに喜びを抑えきれずにいた。

グラスに8分目まで注がれ、彼女に会釈した後はそのまま喉に流し込んだ。

トレーナー「(ゴク、ゴク、ゴク…)〜〜〜ッ、プハァ」

トレーナー「……美味い…!」

しみじみと。

バクシンオー「それは良かったです‼︎」





また少しして料理を大方食べ終えた頃。彼女はおもむろにスマートフォンを取り出した。

バクシンオー「トレーナーさん!トレーナーさんのお写真を撮っても宜しいですか!」

トレーナー「自分の?それはまたどうして」

バクシンオー「お酒でお顔が真っ赤なトレーナーさんの姿は貴重なので!」

先程話した通り、酒は好きだが少しばかり酔いやすい。顔には結構出るタイプだった。

トレーナー「ちょっと恥ずかしいなぁ」

バクシンオー「ぱしゃー」パシャリ

トレーナー「え もう撮っちゃったの⁉︎」

バクシンオー「いただきました!」

トレーナー「まったく…」

撮れた写真を手元で確認しながら微笑んでいる。

そんなに面白いくらい赤くなっているのだろうか?

後で鏡見よう…。





バクシンオー「……えへへ。可愛いです」ボソッ









仲居さんに夕食を下げて貰い、敷き布団も用意して貰ったあとは、テレビを観たり、部屋のお茶と茶菓子をつまんだりしながら話に花を咲かせた。

ふと、窓の外に目を遣る。

暗くなって照明が点き、昼間よりも一層美しく湯気をたたせる檜の湯。

…正直、ちょっと入りたい…。

トレーナー「(でもなあ…ガラスで丸見えだから、バクシンオーが居るこの状況では…)」

バクシンオー「入っても良いんですよ」

トレーナー「ちょわっ!」

バクシンオー「ちょわわ?」

心を読まれた。

バクシンオー「大丈夫です。私はお気になさらず!」

トレーナー「でもほら、丸見えだしさ」

バクシンオー「縁側にふすまがあるじゃないですか。閉めればこっちの部屋から見えませんよ」

ほら、と襖を掴んで引っ張り閉めてみせる。

トレーナー「…だけど…なぁ…」

たしかに見えない。問題は無い。

けれどやはり躊躇われる。

バクシンオー「迷ったらまずバクシンですよ!」

トドメに謎のバクシン理論。

しかし妙な説得力を感じてしまう。…彼女との長い付き合いでバクシン道に染められてしまったからだろうか。

トレーナー「……じゃあ、入らせていただきます……気遣わせてごめんね」

あえなく誘惑に負けてしまった。

バクシン「いえいえ、ごゆっくり!では、こちらは閉めておきますね!」

ぴしゃり、襖同士が音を立てて閉じられた。

彼女を差し置いて大人の自分がはしゃいでいるようで、少しばかり恥ずかしい…。

トレーナー「……折角だし、なぁ。うん。入らなきゃ勿体無いもんな」







ガチャ

ガラガラ…

バタン



ふすまに耳をつけてトレーナーさんが露天風呂に行ったことを確認します。

この向こうで、トレーナーさんが。は、裸になって…。

いえ!そんなことに照れてしまってどうするのですか!

バクシンオー「……覚悟を決めなさい、サクラバクシンオー。私ならばやれます。」

URAのレース前よりも緊張します。

だけれど、することはいつだって同じです。

バクシンオー「バクシンあるのみ、です。」

スマートフォンを手に取り、UMAINのグループに報告します。

バクシンオー『行ってきます‼︎』



スズカ『頑張ってね』

フクキタル『幸運を〜‼︎』

タイキ『レッツゴー‼︎グッドラック‼︎』

タマモ『かましたれ!』

クリーク『いってらっしゃい〜』



他にもたくさんの仲間たちから応援メッセージが。

バクシンオー「ありがとうございます、みなさん…。」

全て読んで、画面を閉じて机の上に置きました。

バクシンオー「さあ、行きましょう!」







トレーナー「あ゛ぁ〜……」

気持ちいい。

温泉はやはり素晴らしい…。

トレーナー「それに、凄くいい雰囲気だ…」

風呂のへりにもたれかかり、外を眺めれば木々に囲まれ、それがこの露天風呂にーー旅館によって暖かに照らされていてなんとも言えず幻想的な景色が広がっていた。

風呂の大きさ以外は、全ての要素が大浴場の露天に勝るとも劣らない。

トレーナー「足を伸ばせるくらいには大きいから、個室で露天ならこれで十分だけどね」

檜風呂良いなあ。

こういうの自宅につくるとしたら幾らくらいするんだろう。

そもそもつくれるものなのか。



そんなことを考えながら露天風呂を満喫していると、背後からバクシンオーの声が聞こえてきた。



バクシンオー「トレーナーさん、お湯加減は如何ですか!」

トレーナー「ああ。おかげさまで凄く気持ちいいよ!」











…背後から、聞こえてきた。

室内から…だよな?

それにしてはハッキリと。

室内にいて、それもガラス窓と襖を隔てて、その奥から大きく呼び掛けたとして。こんなにもハッキリ声が伝わるなんてあるのだろうか。

トレーナー「(そんなはずはない…そんなはずは…)」

恐る恐る背後へと振り向いた。







サクラバクシンオー「…お邪魔します」



露天の入り口に彼女は立って居た。

普段のポニーテールよりも短く後ろにまとめられた髪。

大きめのタオルで前のみ隠して、ほかは一糸纏わぬ裸体だった。

入浴しにきた以外には考えられないようなその姿をまえに、暫し固まってしまう。

なぜここに。

否、そんなことより今すぐにここから出なければ。

違う!まずは目を伏せて彼女を見ないようにーー。

様々な思考が瞬時に駆け巡ったものの、つい口が勝手に動き彼女に問いかけてしまう。

トレーナー「なんで…入って…」

バクシンオー「……それは、まあ」

バクシンオー「私も入りたいなあ、って。思いまして。」

トレーナー「……自分が出た後でも」

バクシンオー「トレーナーさんと一緒の方が楽しいですから」

話しながらペタペタと歩いていき、木製の腰掛けに座ってシャワーを浴びる。

体を軽く洗い流したら、再び立ち上がってこちらへ近づいてきた。



バクシンオー「……」

何も言わず右足のつま先から湯に入り、そのまま膝下まで浸かってへりに腰掛けた。

そこまででようやく呆然としていた意識が戻り、彼女が視界に入らないよう体ごと外の方へと向ける。

バクシンオー「……ふぅ……」

バクシンオー「…気持ち、良いですね」



トレーナー「…バクシンオー。こればっかりは、本当に駄目だ。」

バクシンオー「何がですか?」

如何に純粋な彼女であろうと、家族でもない男女がひとつの風呂に裸で浸かることの異常さくらいはわかるだろう。

それでもなお我関せずといった態度をされれば、少し腹が立ってきた。

トレーナー「悪ふざけが過ぎるぞ」

バクシンオー「……」

バクシンオー「ふざけてなんかいませんよ」

水かさが増すのを肌で感じる。

バクシンオー「私はいつだって本気です」

湯をかき分けてこちらへ近づいてくる気配がする。

バクシンオー「どんなレースであろうとずっと一着を目指して頑張ってきました」

バクシンオー「それはこの旅行でも…今のこの状況でも同じことです。私は、全身全霊をもって一着を勝ち取りたい」



バクシンオー「ーーあなたの。」



背中にふたつの柔らかな感触。

両肩には手が置かれ、耳元で彼女の息遣いが聞こえてくる。

トレーナー「ばッ、クシン…オ……⁉︎」

トレーナーとして、大人として、直ちに咎めなければならない。

だけれど身体が動かない。

バクシンオー「……トレーナーさんって…んっ」

バクシンオー「けっこう…逞しいんですね。男のヒトって、感じ…」

トレーナー「⁉︎ う、わ…!」

肩から肩甲骨、あばらの下をくぐって胸元へと彼女の両手が滑らされる。同時に、先程よりも一層強く柔らかなものが押し当てられてしまう。

しなやかな指の動きに驚き、つい情けの無い声が漏れてしまった。

トレーナー「や…やめ……‼︎」

バクシンオー「……トレーナーさん。好きです」

バクシンオー「大好きです。トレーナーさんになら、私の体を見られたっていいです。触られたっていいんです。」

彼女の息遣いが荒く、甘く変化する。

バクシンオー「……いいえ。触られ、たいです。このまま。トレーナーさんに。」

ハァッ、ハァッ、

バクシンオー「トレーナーさんに、愛して、欲しいです。」

ハァッ、フゥッ、

バクシンオー「…トレーナーさん」

バクシンオー「トレーナー、さんっ」











バクシンオー「……さわって?」











限界だった。

これ以上彼女の甘い誘惑を受ければ理性が保てなくなってしまう。

そうなる前に、この場から抜け出さなければならないと、回された彼女の手を強引に振り解いて立ち上がる。

バクシンオー「ひゃっ⁉︎と、トレーナーさん?」

バクシンオー「……あ……」

立ち上がってしまったことをすぐさま後悔する。

自分の腰には何ひとつ巻かれていなかったからだ。

咄嗟に隠そうとするものの、彼女の攻めによって両手では収まり切らないほどに屹立してしまっていた。彼女は頬を真紅に染めながらこちらのものをジッと見つめ続ける。

完全な失態だが、しかしここで止まるわけにはいかない。早く露天風呂から出なければ。

急ぎ片足を湯から出してヘリを踏みしめる。 そのまま全身を持ち上げてあがろうとするーー。



トレーナー「あれ?」



突然の湯からの解放。急激な体温の低下。所謂ヒートショックが白い霞の如く襲いかかり、自分の思考と視界を奪い去る。

平衡感覚を失い体重を掛けていた足を滑らせて、そのまま背後から倒れてしまう。

露天風呂の天井が見えたのも束の間、すぐに視界が大量の湯に侵された。





【サクラバクシンオー視点】

ザバァン‼︎‼︎

バクシンオー「トレーナーさん‼︎⁉︎」

急いであがろとしたトレーナーさんが、足を滑らせて頭から湯に転けてしまいました。

トレーナーさんが溺れてしまいます!早く、早く彼の体勢を戻してあげなければ!

お湯が波立って中がよく見えません、私は大きく息を吸って顔をお湯につけました。

バクシンオー「(トレーナーさん、腕、腕を‼︎)」

こういう時にウマ娘であって良かったと心から思います。ヒト以上の筋力で、たとえ彼のような成人男性であっても湯から引っ張り上げることは造作もありません。

トレーナーさんの腕をしっかりと掴み、直ちに引き上げました。

トレーナー「ブハァッ‼︎‼︎ゲホッ、ェホッ‼︎」

バクシンオー「トレーナーさん‼︎大丈夫ですか⁉︎」

トレーナー「ゲホッ‼︎ハァッ、ハァッ、ごめんバクシンオー、ゴホッ、助かった」

バクシンオー「どこか打ったりは」

トレーナー「フゥッ…ゲホッ、大丈夫。ありがとう」

バクシンオー「はぁぁぁ…よかったです」

ホッとひと息。

じゃない!謝らなければ!

バクシンオー「ごめんなさい。私がその…変なことしたせいで、トレーナーさんを慌てさせてしまいました。危うく、おケガをさせてしまうところで……。」

深く頭を下げて謝罪します。

トレーナー「いや、今のは自分が悪い。大人のくせに、バクシンオーの……色々…に、みっともなく動揺してしまったから。足元がおぼつかなくなって。」

トレーナー「ははは…凄く格好悪いところを見られちゃったな…恥ずかしい…。」

カッコ悪い?とんでもない!

むしろ、私に動揺して…ドキドキしてくれたのでしょうか?

バクシンオー「……それは…その、嬉しい、です。」

ブクブクとお湯に口をつけて、その下で小さくガッツポーズをします。

トレーナー「……」

バクシンオー「……」ブクブク



しまった!

ドタバタして、すっかりさっきの良い(?)フンイキが中断されてしまいました。

お互いに黙ってしまいます。

な…何か切り出さなくては…!



トレーナー「バクシンオー」

バクシンオー「ブハッ。は、はい!なんでしょっ!」

考えるより先にトレーナーさんから切り出してくださいました。

トレーナー「…さっきの、返事…なんだけど」

バクシンオー「!……はい…」

そうでした。

さっき私はトレーナーさんに、好きだとお伝えしていました。

心臓が再びバクシンします。

痛いくらいに鼓動が激しくなってきます。

バクシンオー「……トレーナーさんは、私のこと…」

トレーナー「……」









トレーナー「……自分も、好きだ。バクシンオーのことが。」

バクシンオー「〜〜〜ッ‼︎」



やった…やった‼︎

トレーナーさんも、私を!私のことを‼︎

バクシンです!バクシンします!

幸せな気持ちがとめどなく溢れてきます!



バクシンオー「い!いつからなのか!いつから私のことをっ…なのか!お聞きしても⁉︎」

嬉しさに身を任せて質問してしまいました。

トレーナー「ええと、その…URAの辺りから、ジワジワと」

トレーナー「高校生相手に駄目だろうと思って忘れようとして…最近は調子よかったんだけど」

なるほど。だから相部屋も避けようとしていたのですね。

トレーナー「ここにきて本人から攻められるとは思いもしなくて……ホント、やってくれたなバクシンオー。」

バクシンオー「ふぎゅっ…えへへ…」

鼻を摘まれます。

嬉しいです。

トレーナー「バクシンオーは?いつから?」

バクシンオー「私は、一年目の頃から…」

トレーナー「え、そんな早くから?」

バクシンオー「じ、自覚したのは今年に入ってからです!でも…思い返せばあの頃からずっと…」

トレーナー「…そっか…」

バクシンオー「今日のことはもちろん私の考えでしたけど、トレセンの他のみなさんにもアドバイスを頂いたりして」

トレーナー「(その子らの入れ知恵か…‼︎)」

照れて、またしばらく沈黙します。

バクシンオー「…じゃ、じゃあ、めでたく両想いってことで!……と、トレーナーさん、ね?」

トレーナーさんに目配せします。

好き同士ならば、もう互いに遠慮ことはありません。

トレーナー「……ああ、そうだね」





バクシンオー「さっきの続きを」

トレーナー「そろそろあがって寝ようか」







バクシンオー「は?」

トレーナー「え?」



バクシンオー「すいませんトレーナーさん。よく聞き取れなかったので、もう一度。」

トレーナー「あがって寝よう」

バクシンオー「はぁ⁉︎」

トレーナー「え なんで!」

何を考えてるんですかこの人は!

今の流れならば普通はこのままイチャイチャとするところでしょう‼︎

私にだってそのくらいはわかりますよ‼︎‼︎

バクシンオー「さっきの続き!しないんですか⁉︎」

トレーナー「いくら好きだからって未成年に手出しするのは御法度でしょう。風呂だってやっぱりアウトには変わりないんだから、早くあがろう。」

トレーナー「そういうことはバクシンオーが卒業してからね。」

バクシンオー「カッチカチですか‼︎⁉︎」

トレーナー「なに⁉︎」

バクシンオー「お堅いにもほどかあるでしょう‼︎カチカチ人間ですか⁉︎さっき私にくっつかれてあそこカチカチにしてたクセに‼︎」

トレーナー「は……はああ⁉︎そういうこと言う⁉︎君こそ頭バクシンし過ぎだろ‼︎そもそも学級委員長がこんなことして良いと思ってるのか‼︎‼︎」

バクシンオー「ああ‼︎今学級委員長のことを持ち出すのはずるいです‼︎」

トレーナー「ズルくない当たり前だ‼︎」

むっかー‼︎‼︎

トレーナーさんにここまで腹立たしさを感じるのは初めてです‼︎

どうあっても私に手を出さないおつもりなのでしょうが…そうはいきませんよ‼︎

私の覚悟をナメないでください‼︎‼︎



バクシンオー「わかりました‼︎そーゆーことなら私、今日ひと晩は学級委員長をお休みします‼︎‼︎」

トレーナー「えっ」

ザバッ、と立ち上がってお湯から体を出します。

タオルは傍に置いてあるので裸です。 

トレーナーさんが目を見開きます。

恥ずかしい。

バクシンオー「さっきも言ったとおり…ト、トレーナーさんになら触られたいと…思っているんです…‼︎」

トレーナーさんのすぐ前まで移動して、腕で胸元を寄せて上げたり、太ももを撫でたりしてみっともなくアピールしてみせます。

バクシンオー「こ…ここっ…とか!下のほうだって!どこでも!」

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。

バクシンオー「トレーナーさん、私の脇とかもっ、お好きですよね⁉︎ 勝負服のときチラチラみてるの、気づいてたんですから‼︎」

トレーナー「⁉︎ そん…えっ。嘘だろ、バレて……」

バクシンオー「バレバレですよ‼︎私だってトレーナーさんのこと見てたんですから‼︎」

でも、大好きなあなたが私の体に釘付けになってくれている。

バクシンオー「ほらっ…もっと、近づけてあげますねっ」

バクシンオー「鼻先に…んっ…くっつく、くらいに…」

トレーナー「バクシんぐっ…むぐ…」

それだけで、私の思考はより激しくバクシンしてしまいます。

バクシンオー「…ハァッ、ハァッ、」

バクシンオー「めちゃくちゃに、してくださいよ。私、覚悟して来たんですよ。トレーナーさんに、ぜんぶ、ぜんぶあげてしまっても、良いって。」

バクシンオー「今日だけでもいいですから…だから、トレーナーさん。」







バクシンオー「私のこと、好きに、してください。」





バクシンオー「ちょ、わ⁉︎」

先程とは打って変わって、怖い表情をしたトレーナーさんに抱き抱えられてしまいました。

お姫様抱っこというやつです。

わー。

ちょっとだけ感動していると、トレーナーさんは私を抱えながらお湯から出て、そのまま脱衣所へ向かいます。

トレーナー「……バクシンオーから誘ったんだからな」

バクシンオー「え?」

トレーナー「早く体拭こう。布団行くから」

バクシンオー「〜〜〜っ‼︎ ははははい‼︎了解ですっ‼︎」







バタンッ。



……。



あ、トレーナーさんっ、まだ髪まで拭ききれてない…。

え?そのままでいいから?

ちょわっ、トレーナーさっ!

あわわわっ!わかりました!行きます、行きますから‼︎

……。

……。



トレーナーさん…あの、おてやわらかに

あっ!ちょっ、まっ、まってくだっ









ふぁ…んっ、あ……

あんっ♡









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ねえバクシンオー。バクシンオーのカレンダー変じゃない?」

バクシンオー「そうですか?」

「だって、もとから休日のところに『お休み』って書いてあるじゃん。今日もそうだし。…意味被ってない?」

バクシンオー「いえいえ、『お休み』で合ってますよ。」

「?」

バクシンオー「では、出かけてきますね!」

「んー。いってらっしゃい。」

寮の部屋を出て、建物を出て。

『お休み』なので足取りも軽く、私服で遊びに行きます。







電車でひと駅と、徒歩数分というトレセンからアクセスの良い場所に彼のアパートがあります。

階段を登り、彼の暮らす部屋の前へ。はやる気持ちを抑えながらインターホンを押しました。

扉が開けば、私の大好きな彼の姿。

バクシンオー「…トレーナーさん。こんにちは。…」

バクシンオー「今日も、『お休み』しに来ました。」

これからこの部屋で起こる出来事を想像すると、ついたまらなくなって、下腹部がもどかしくなって…。

自然と太もも同士を擦り合わせてしまいます。

バクシンオー「あっ」

トレーナーさんの手が私の右頬に添えられました。

バクシンオー「……♡」

私も彼の手を握って、自分の頬にぐいぐいと押し付けるようにします。

私よりもゴツゴツしてて、私を可愛がってくれる、最愛の人の手。

バクシンオー「トレーナーさん…」





バクシンオー「…たくさん、遊んでください♡」



恍惚とした表情に、とても媚びた『女』の声。

これでは学級委員長として示しがつきません。

でも良いのです。

今日は『お休み』なのですからーー。



ー了ー

サクラバクシンオーが温泉旅行で学級委員長を休む話。
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