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朝起きると少し熱を帯びた身体に気だるさが襲ってきました。 これは────発情期です。机の引き出しを開け薬を取り出します。 ウマ娘は思春期あたりに発情期を迎え、その症状・重さは人それぞれです。今は夏ですが、季節もなにも関係なく一定周期で訪れます。 ただ共通して感覚が鋭敏になったり、活発になったり・・・ときには男の人を襲ってしまうこともあると聞きます。そのため薬で症状を抑え込むのですが、ライスは軽めの症状なので重い薬は必要ありません。ただ少々長めに続くのが難点ですが・・・。 軽めとは言えきついトレーニングはできないので、薬を飲み干したのち、携帯でお兄様にその旨の連絡をして部屋を出ました。
「ライスさん、お隣よろしいですか」 「あ・・・ブルボンさん、どうぞ」 お昼になり食堂でご飯を食べていると、夏服のブルボンさんが声をかけてきました。 ブルボンさんはそのままライスと迎え合わせに座り、喋り始めます。 「その、ライスさん。いつもより更に量が多いですね」 「はい・・・その、あの日なので、食欲が湧いちゃって・・・」 スンスンとブルボンさんは匂いを嗅いで、合点がいったようです。 「そうでしたか、大変ですね。私は重めなので」 「ライスは軽めだから、食欲が少し増すくらいで・・・それにちょっぴり楽しみがあるから」 ブルボンさんが腑に落ちない様子で少し首を傾げるのを見て、ふふっと微笑みました。
「お兄様、入るね?」 放課後、トレーナー室の扉をノックして、お兄様の「どうぞ」の掛け声を聞いて中に入ります。 お兄様はいつもどおり机に向かって事務作業をしているようでした。 「お兄様、その・・・ライスあの日だから・・・」 「わかってるよ、ライス」 そのままお兄様は立ち上がり、近くにあるソファーに腰掛けて、「おいで」と膝をポンポンと叩きます。 ライスは目を輝かせて早足で駆け寄り、ちょこんとお兄様に対して垂直に膝の上へ座ります。このままお姫様抱っこに移行できそうな体勢です。 そしてお兄様の胸に頬ずりします。──────はたから見れば即アウトな光景ですが、こうなったのには理由があります。
少し前ライスが発情期になったとき、トレーナー室に入るとお兄様の使用済みのジャージが置きっぱなしになっていました。 一瞬躊躇しましたがお兄様も不在で、その蠱惑的な匂いに理性は簡単に打ち破られ貪るように匂いをかぎ始めます。 時を忘れ没頭していると、「ライス・・・何をしているんだ・・・?」というお兄様からの声が聞こえはっと顔を上げると、困惑したお兄様がそこに佇んでいました。 その後のことは大変で、ただしどろもどろに言い訳をしました。「これは発情期で・・・」「つい魔が差して・・・」「こうするといつもより発情期が早く収まって・・・」 しかし最後はあながち嘘でもありません。実際お兄様と出会ってから中等部のときより発情期が短めになっていたのは事実です。 特にお兄様がいないときにトレーナー室で残り香を嗅ぐために深呼吸した日はてきめんに効果がありました。 そこでそのままの勢いで、「もっと濃い匂いだったら早く収まるに違いない」「だから直接嗅がせてほしい」と無茶な提案すると、お兄様は明らかに渋った様子で、「しかしコンプラが・・・」「だいたい俺自身我慢が・・・」とブツブツとつぶやき始めました。 無理がある弁明だと思っていましたが、もうひと押しで落ちるのでは?と考え、断るなら他の男の人に頼んでしまうかもしれない。ライス自身ありえないことを言うとお兄様は大慌てで承諾してくれました。 他の男の人では効果はないとお兄様もうすうす感づいていたとは思いますが、万が一そうなったらもっとまずいと考えてのことでしょう、それにもしかしたら嫉妬してくれたのかもしれせん。そうだったらいいなあ・・・。 その後一度お試しでやってみたところ、ライスの少し長い発情期が明らかに短くなりました。それからこの行為は発情期の恒例となっていきました。
クーラーのカタカタという音が静かに部屋に響きます。 ライスは胸に顔をうずめたまま、思いっきり匂いを嗅ぐと、脳がしびれるような感覚の後、多幸感が溢れ出します。はあ・・・・・・・幸せすぎる。このまま発情期がずっと続けばいいのに。当初の言い訳も忘れ、猫のように顔をこすりつけます。 その間もお兄様は優しく背中を擦ってくれました。ライスの逸脱した行動を咎めるわけでもなく、壊れ物かのように丁重にあつかってくれます。 いつもならここまでで我慢できるのですが、その温かさ、懐の深さについにライスの歯止めは効かなくなり始め、体勢を変えお兄様と向き合います。 「ライス?流石にこれは・・・・・・」とお兄様は眉をひそめ抗議しますが無視して首筋に噛みつくと「いっ!?」っと驚きの声を上げました。 流石にウマ娘の本気の咬合力では噛みちぎれてしまうので、ほどほどの力(興奮していましたがそこのブレーキは掛かっていたはず・・・です)で甘噛します。 汗の味、体温、息づかい、さっきよりはるかに濃い匂い、男の人らしい少し硬い身体の感触──────全身の知覚神経でお兄様を感じ、涼し気な部屋に反するかのように身体がどんどん火照っていきました。 はふぅ・・・おかゆになってとろけちゃいそう・・・。 最初こそ抵抗するかのような素振りをみせたお兄様でしたが、観念したのかライスを抱きしめて、また背中とそして頭もそっと撫で始めてくれました。 ああ・・・なぜライスにこんなに優しくしてくれるんだろう。こんなわがままを受け入れてくれる。ライスを拾い上げてくれて。ただウマ娘とトレーナーというだけの関係なのに。こんなにも愛おしい、愛らしい人。もう誰にもお兄様を渡したくない。ライスだけのものにしなければ。 噛み付きむしゃぶりついたまま危険な領域に思考が届きそうになったとき、ぶつりと意識が途切れました。
ぱちり、と目を覚まして起き上がり、周りを見渡すとどうやらそこは保健室のようでした。 「あら、起きたのね」 起きたときの音に反応したのか、カーテンを開け保険医であるウマ娘の先生がこちらに寄って来ます。 「あの・・・ライスは一体・・・?」 「どうやらいきなり倒れたらしいね、熱中症かなとは思うけど・・・」 だんだんと状況が把握出来てきました。どうやら興奮しすぎて許容量をこえオーバーヒートしてしまったようです。 「すごかったよ、トレーナーの人、さっきまでいたんだけどお姫様抱っこで運んできてねえ・・・あはは、顔真っ赤よ?」 思わず頬に手を当てると、顔が熱を帯びているのがわかります。あう・・・ 「大事ないようで良かった。そうそう、トレーナーさんが携帯に連絡メッセージ入れておいたってさ、まだ寝ててもいいからね」 「はい・・・ありがとうございます」 先生がカーテンを閉め直した後、携帯をつけると確かにお兄様からのメッセージが届いていました。 『ライス、大丈夫?今後はもう少しスキンシップとか薬の重さも考えていこう』 うう・・・と落ち込みながらも読み続けます。 『ただ、気落ちしてると思うけどライスと契約解除だとか、そんなことはありえないから安心して、それに・・・』 スクロールするとお兄様の首筋をアップした自撮りが添付されています、そこにはライスの歯型が──────── 『マーキングされちゃったからね』 あぁぁ~とうめき声をあげてシーツに顔をうずめます。鏡は見ていませんが、きっとライスは生涯で一番顔が赤くなっていたと思います。
久しぶりにSSを書いた上にpixivでは初投稿なので至らぬ部分も多いと思いますが悪しからず。
もう少し過激にしようかとも思いましたがライスには健全でいて欲しいので・・・