初めに
当記事は非常にデリケートです。中立性を持った編集を心がけてください。
現在では騒動から月日が経ち、複数の解釈が生まれ必ずしも中立性を保っているわけではなく、一部には攻撃的な感想をぶつけずにはいられない編集者が含まれている場合もあります。
当記事で初めてこの騒動を知る方々は、その事を踏まえた上で、閲覧して頂けると幸いです。意見、不満、感想等は、当記事の掲示板でお願いします。
概要
『Fate/GrandOrder(FGO)』がアニメ化された際に発生した蔑称。
次の3節の組み合わせから成る。
- 「イキリ」は「粋がる」に由来する関西弁で、この当時は「分不相応な待遇を受けている」といった意味合いが付加される蔑称として使われていた。
- 「鯖」はFateシリーズの用語「サーヴァント→"サーバ"ント→鯖」に由来する略称で、シリーズ初期から一般的に用いられており蔑称ではない。
- 「太郎」は「○○太郎」というネットスラングの派生で、この当時は1.との組み合わせで「客観的にはそうは思えないのに作中ではやたらと評価される主人公」といった意味合いの蔑称として使われていた。
『FGO』の主人公「藤丸立香(ぐだ男)」は作中で「マスター」と呼ばれる存在で、上記「サーヴァント」を使役して戦闘を行うことから、この場合は「自分自身は戦わないくせに当事者のサーヴァントから逆にちやほやされる主人公の屑」の意味合いとなる。
なお、「主人公がマスターなら「イキリ鱒太郎」になるのではないか?」という意見も一部では挙がっていたが、あまり定着はしなかった。
「○○太郎」の起源である「スマホ太郎」がスマートフォンを使っていたことに由来するのだから、サーヴァントを使う主人公は「鯖太郎」で問題無いという反論もあった。
内容
元々「○○太郎」が流行していた時期であったため、『絶対魔獣戦線バビロニア』第1話放送時からネット掲示板やSNSにて当単語が呟かれ、その中でもなんでも実況Jに建てられた「【悲報】FGOの主人公さん、イキり鯖太郎だった...」というスレッドを複数のまとめサイトが取り上げ拡散したことが決定打になったものと考えられている。
具体的な要因
- 「○○太郎」の系譜に違わず、このアニメでも主人公が他のキャラクターから不自然に賞賛される展開が多く目に付いた。ソーシャルゲーム由来の作品では珍しい話ではないのだが、『FGO』はシナリオ重視と銘打ってはいたものの、それに見合わない実際のシナリオ内容の躓きも相まって二重の失望感が蔓延した。
- 主人公は先述の通り戦闘能力を持たず、また「サーヴァント」は女性比率が高い。アニメではこれを工夫なくそのまま描写した結果、ヒロイン達を盾にするゲス野郎と捉えられかねないシーンが目立ってしまった
- その他、ゲームでは通常あり得ない「サーヴァントが主人公(=プレイヤー)の判断を待たず自己判断で戦う」という描写も度々挟まれた結果、通常の「○○太郎」以上に主人公のいらない子扱いが加速していった。
- 元来Fateシリーズはキャラクターを蔑称で呼んだりネタにする事を許容しがちな作風であり(例:乳上、ランサーが死んだ!)、『FGO』の原作ゲームにもそのような展開や選択肢が実装されていた。その為、それらの蔑称は許容するのにこれは許さないというのはおかしい、という意見も通りやすかった。
- そもそも、アニメの出来があまり良くなかった。このアニメ化は、FGOの第七章をいきなりアニメ化した物なのだが、初見に対する配慮が有ったとは言い難く、キャラへの愛着を非常に持ち難い構造となっていた。
- また、そもそもFateシリーズとしては「戦闘能力のないマスター」と「女性の多いサーヴァント」はお約束であり、アニメに限った話ではない。だが、他の作品がそれらを上手く工夫して描いており、マスターとしての役割をきちんと示しているのに対し、アニメはこれを何の工夫もなく描いてしまったため、主人公の役立たずぶりがより強調されてしまった。
そして、ゲーム内でそこまで描写がされていない指揮能力やコミュニケーション力などがファンによって過剰に盛られ評価された。
公式ライターもそれに便乗し、上手く描写できていないにも関わらず、周りに褒めたたえさせる描写だけは過剰にするためかえって出来の悪いシナリオが頻発し、ヘイトを買う結果にしかならなかった。
更には主人公が、お人好しや善人として設定されているものの、ゲーム内の描写でキャラにセクハラやパワハラ、相手に遠慮の無い言動、空気の読めない行動などを多々する事があり、特別主人公に思い入れの無いプレイヤーや従来のファン達からはその中身の無い主人公性に不快感を感じてしまっている。
ストーリーの基本として主人公が善人気取りとして行動し、お人好しに振る舞うも基本的には人任せであり、口だけである。何もできないためにご都合主義の様な表現や展開が目立ち、こと戦闘の際に関しても主人公は何もせずに他人任せが多く、我が物顔で物語の進行役となるため癪に触ってしまう。アニメ絶対魔獣戦線バビロニアではゲーム内の様な紙芝居では無く映像となったことで、これが顕著となり主人公が何もせずに目立っている事に嫌悪感を抱く視聴者が増えてしまった。
そして、大衆向けのソシャゲ特有の、女キャラが主人公に対して脈絡もなく恋慕を抱く要素が強調されており、今までのfate作品のヒロインまでも対象となってしまった事は、従来のファンからは受け入れ難いものであった。さらに、ド素人作品同然の安っぽいハーレム展開を嫌う従来のファン、女性ファン層や、百合という目線でゲームをプレイしていた層は女性主人公であるぐだ子を望んでいたため、これも男性主人公であるぐだ男にヘイトが向く原因となっている。
炎上
通常この手の炎上はアニメの放送が終われば「燃料」の供給が途絶えるため、遅かれ早かれ鎮火に向かうものである。
だが今回は、むしろそこからが本番と言っても過言ではない展開を見せた。
特筆すべき状況であるため、ここで同時に解説しておくこととする。
そもそもファンの初動が大変悪手だった。
煽りや荒らしに遭遇した時の鉄則は構わないことである。
相手は嫌がる反応が見たくてやっているのだから、それさえ見せなければ単なる時間の無駄に終わるはずである。作品自体にもその場のダシとして適当にしか向き合わない為、徹底的に無視を決め込めば、放送終了すら待たずに風化することも珍しくはなかった。
事実「○○太郎」シリーズも「○○に入る言葉を決める時が全盛期」という例は決して少なくない。
ところが『FGO』では、それらに逐一ブチ切れて過剰反応しマジレスする人が多発してしまった。
言いたいことは多々あるだろうが、それらは外部からやって来る一見さんにはどうでもいいことである。
ただ反応するかしないかが全てで、してしまった以上は「音の出るおもちゃ」でしかなくなるのである。
反論の中身も良かったとは言えない。レスバトルに興じるならまだマシな方で、中には「お前らに世界が救えるの?」などと内容を笠に煽り返す例まで出てきてしまった。
これによりファン自体が「イキリ鯖太郎」であるという大義名分が生まれ、原作ゲームに遡ってさらに粗探しを続ける動機(楽しみ)ができてしまった。
このあたりから「イキリ鯖太郎」と揶揄される対象がアニメの主人公から現実世界の所謂「信者」へと変質したとも言え、「○○太郎」系統と言うよりは「イキリト」系統に近い文脈で語られるようになってゆく。
第三者からの同情意見も出てきたものの、
- 「○○太郎」と呼ばれる作品の多くが出自としている「なろう系」ではないことから、「一緒にされるのが気に食わない」というような反応がしばしば見られたこと。
- 逆に「××の主人公だって同じ非戦闘員だ」などと無関係な他者を巻き込んで被害の軽減を図るような態度も多々見られたこと。
では、原作ゲームへの延焼は不当なものだったのか。これもまた完全には肯定できない。
- 前述した悪ノリしがちな作風やシナリオ毎にライターが違う性質から、力を借りているサーヴァントに対して失礼となる選択肢も多々見られた。
- 特にアニメ前後はプレイヤーに媚を売る目的もあったのか、過剰に主人公を持ち上げる展開も目立っており、ファンの中でも賛否両論分かれ始めていた。
- シリーズものにありがちな事として作品ごとの派閥も存在し、個々の作品で結んだキャラ間の絆と何もしてないのに同等以上の好意を得やすい傾向を「精神的NTR」と捉え毛嫌いする者も多かった。
しかしそれ以上に問題視されたのは、内輪性の高さと攻撃性の強さを併せ持った、プレイヤーそのものの民度であろう。
元々、批判的意見や好みじゃない描写に対して攻撃的になる「厨坊」が湧くのは、あらゆる作品が有する問題点だが、「型月厨」とも呼ばれる当界隈はその沸点が特に低いという悪習が存在し、FGOについても「否定はほぼ許されず、辛うじて(公式もネタにしている)ガチャの渋さや爆死、マラソンなどについてなら言及程度は良い」というような論調が定着していた。
また、これも他のゲームにまま見られる現象であるが、評価や売り上げの高さに比例して態度も尊大になってゆく傾向も抱えていた。
そうした環境が長年に渡り続いたことで、FGOユーザーは「極端な作品への称賛的執着と、否定的意見への著しい耐性の無さ」を両立させてしまったと思われる。
逆に、前々からFGOプレイヤーやFGOそのものに対してヘイトを溜めていた者達にとっては、今回の騒動は今まで溜まりに溜まった鬱憤を発散するチャンスとして映ったわけである。
こうした経緯により、これまでの「○○太郎」とは桁違いの大炎上に発展。その様子が一層面白おかしく取り上げられ拡散されるという負のループが成立し、益々多くの人を巻き込んでゆくこととなった。
そして上記過激派ユーザー層が同様の手法による鎮火を試みた結果、それまで以上の数の暴力で押し返され、最終的にいつまでも「お互いに対する嫌い・ムカつき」が収まらない泥沼の殴り合いに陥ってしまったのである。
現在
完全に終息したわけではなく、未だに炎上が続いており終息していない、とも取れる。
そしてこの単語や新しい蔑称によりまた再燃する可能性も大きく残っている。
もちろん否定意見に反論する事全てが問題とは言っていない。
攻撃に攻撃で応え続けた結果、実際に収拾の付かない事態になってしまったという戒めである。
ファンにしろ、批判派にしろ、相手が問題行動を取っていたからといって自身が行き過ぎた行いをする事を正当化する理由にはならないと肝に銘じるべきだろう。
そしてもちろん、『FGO』のファン全てが問題行動を起こしているわけではない点に留意したい。
関連タグ
Fate/GrandOrder 型月厨 炎上 ○○太郎
ベリル・ガット:作中で本蔑称と同じ意味合いの感想を口にしたため、更にそれを使い槍玉に挙げられる事態となった。
スマホ太郎:最初に「○○太郎」と呼ばれるようになった作品・主人公。
イキリツカ:こちらは二次創作においてメアリー・スー的な描写をされた藤丸立香を指す言葉。『FGO』第二部第1章辺りで増えたとされる。古くはU-1やスパシン、Hachimanなど、型月作品でもSHIKI、EMIYA、SHIROU、ZABIKOなどと呼ばれるものが流行っており、系統としてはそれらの後継だと言える。
ネット流行語100:2019年の単語の一つにノミネート。奇しくも前年の「藤丸立香」と同じ55位であった。なお、本来ならば蔑称であるために「流行語としてノミネートされてしまうこと」自体が異常である。
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外部リンク
ニコニコ大百科 :主戦場の一つとなった。
ガジェット通信 アニメ流行語大賞2019:作中では一度も使用例が無いにもかかわらず、銅賞を受賞している。この年は同様のノミネートが多く見られ、火に油を注ぐ結果となったことは言うまでもない。
日本名門酒会 いきなりサバ太郎!:木の屋石巻水産製造の鯖の加工品。名前繋がりでしばしばダイレクトマーケティングが行われていた。この炎上唯一の勝利者とも言われていたが、実際に購入した人はほとんどいなかったようで、2020年4月に製造を終了している。