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この作品「スズカ「深夜のナイショの話」」は「ウマ娘プリティーダービー」「ほのぼの」等のタグがつけられた作品です。
スズカ「深夜のナイショの話」/ふればの小説

スズカ「深夜のナイショの話」

2,783 文字(読了目安: 6分)

深夜のパーキングエリアっていいですよね。

2021年6月16日 13:39
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深夜、もうじき日付が変わるか変わらないか、そんな時間。
パチッとふと目が覚めてしまった。
隣のベットのスぺちゃんは…ふふっ、寝てますね。
「もう食べられないよぉ…」なんて、夢の中でも食いしん坊さんですね。
そっと掛け布団を直します。

どうしましょうか… 今から寝直すとなると少し時間が掛かるような気もしますし
と言っても特にすることも…いや、一つ思いつきました。

「これでよし…っと」

ジャージに手早く静かに着替えて、ベットには丸めた毛布を身代わりにするかのように膨らみを作って
こっそりと深夜にランニングに出かけようと思います。
たまには…いいよね?

とにかく物音を立てないように、スぺちゃんにも気づかれないようにそーっとドアを閉めて
誰にも見つからないように…コソコソと 
表の入り口から出ると見つかっちゃいそうなので裏の通用口からそーっと出ます。

ここまで、誰にも見つからずに無事寮を抜け出すことに成功しました。
さながら、忍者の様に。
これ実はトレーニングに活かせるんじゃないんでしょうか?
トレーナーさんに相談してみようかしら…

空気が澄んで、少しひんやりとします。
日中の蒸し暑さがウソのような感じです。
都内とはいえ、周りに高いビルも少なく星もよく見えます。
この景色を独り占め。…それだけでなんだか心が躍ります。


軽くストレッチをして、走り始めようと思ったら
思わぬ人物に会いました。

「げっ、スズカ!?」

「と、トレーナーさん!?」

そう、私のトレーナーさんに。

辺りをキョロキョロと見まわして、コソコソとしてるトレーナーさん。

「…こんな時間に何やってんの」

「ちょっと…目が冴えちゃいまして…せっかくなので走ろうかなと」

「さいですか…」

呆れた表情をしてるトレーナーさん。こんな時間になにやってんだと言われてしまえばそこまですが…
というよりも

「トレーナーさんこそ、こんな時間に何してるんですか?」

「寝付けないからちょっとクルマ転がそうと…」

「…トレーナーさん?それ私に対して怒れることなんですか?」

「…大人だからいいもーん」

「むっ」

思わず頬がむくれてしまいます。そういう時だけ大人だからという理由で何でもかんでも良いということにするのはずるいと思います。

「まあ、むくれるなって美人が台無しだぞ?」

「むぅ…///」

そういうことをしれっというのもずるいと思います。全くもう…この人は

「じゃあ、ケガだけ気を付けてな」

「えっ?止めないんですか?」

「好きでやってることを止めるのは俺の方針じゃないからな」

そう言って、ひらひら手を振って自分のクルマを止めている近くの駐車場へと歩いていくトレーナーさん。
てっきり止められて寮に連れ戻されると思っていたので意外でした。
トレーナーさんの背を見送って、私もいつものランニングコースを走ります。
人がいなくて、静かなで星空の元走る景色はどこか新鮮で楽しめました。

でも、あの後トレーナーさんはどこにぷらっと出掛けてしまったのでしょうか?
翌日のトレーナーさんは少し眠そうでしたが、でもいつも通り。

…また、同じ時間帯に行けば会えるのでしょうか?

「おーい、スズカさん?」

「…またぐるぐると左回りしながら考え事してる」




_____また別の日

また、深夜に目がパチッと覚めた。
時間はこの前とほぼ同じ。
…今夜も、この前と同じように。そーっと抜け出して。
ただ、今回はジャージじゃなくて私服で。


「こんばんは、トレーナーさん」

「…スズカ」

「ジャージじゃなくて、私服ってことはついてくる気満々って事?」

「はい、ダメですか?」

「別に面白い事ではないんだけどな」

うーんと腕を組んでしばらく考えて。
ふぅとため息一つ

「…今回だけだぞ?」

「ふふっ、ありがとうございます」

(ニコニコで尻尾もぶんぶん振られてたら断れないよな…)

「スズカも結構頑固というかそういうところ譲らないよな…」

「ん?どういうことですか?」

「…なんでもないよ」

_____高速道路のとある小さなPA

1時間ほど車を走らせたでしょうか。
トラックの車列に交じりつつ、時には追い越したり
私たちが全力で走るスピードよりも速いスピードで
街灯とテールランプに照らされて、なんだか普段見ることの無い景色の中を進みます。

付いたのは小さなパーキングエリア。 トラックはそれなりにたくさん止まってますが
普通車と書かれたゾーンにはクルマの数もまばらでガランとしています。
人気もなく、ただ自動販売機の明かりだけがついています。

「スズカ、コーヒー飲めたっけ?」

「はい、大丈夫です」

そう言って、缶コーヒーを1本渡されます。
ブラックではなく微糖の缶コーヒー。

「あれ?甘い方が良かった?」

「いえ、それはいいんですけど…」

「ここからまたどこかに向かうんですか?」

「いや、次のICで降りてUターンしてまた戻るよ」

「えっ」

「…だから面白くはないって言っただろ?誰にも理解されないしコレ」

「ただただ、ガソリン代と高速代を使って少し遠めのパーキングで自販機でコーヒーを買って」

「しばらくゆっくりしてまた戻る」

「めちゃめちゃ高いコーヒーを飲むだけなんだけどな」

そういって、苦笑いするトレーナーさん。

「…本当にそれだけなんですか?」

「うん」


「まあ強いて言うなら、周りに明かりがないからよく星が見えるんだよな」

「星座もそこまで詳しいわけじゃないけど、何も考えずにぼーっと見つめてさ」

空を見上げると、星の明かりが学園の近くより強く見えてとても綺麗です。

「確かに、本当によく見えますね。」

そういって、どことなく楽しそうに話すトレーナーさん。
そんな姿を見て思わずふふっ、と笑みがこぼれます。

「な、なんだよ…」

「いや、いつもより楽しそうに話すトレーナーさんが珍しくて」

「でも、意外な一面を知れて今日はよかったかもしれません」

「そうか?つまらなかっただろ?」

少し考える仕草をして
トレーナーさんから2~3歩距離を取ってくるっと振り向いて笑顔でこう言いました。

「夜中に寮をこっそり抜け出して、コーヒーを飲むだけでしたけどトレーナーさんとのデート楽しかったですよ?」

「スズカもワルに染まっちゃったかなぁ…」


「かも知れませんね?」


ポリポリと頭をかいて「こりゃ参ったなぁ」という表情をしているトレーナーさんが
かわいらしく見えたのは私だけの秘密です。
































コメント

  • アセロラ

    良い……

    6月28日
  • tyakoF2.8

    これホントいい小説 好き

    6月18日
  • まさと

    最高じゃあないですか⋯

    6月18日
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