2018年9月30日、歴史的な水族館が閉鎖しました。その名は「東京タワー水族館」です。
1978年に日本初の“観賞魚専門水族館”として設立された由緒ある当水族館。
一般客の評価は低く、マニアの評価はうなぎ登り…かなり個性的な水族館でした。
昔を懐かしみつつ、自分の回顧録として東京タワー水族館の歴史を振り返らせて頂きます。
その水族館らしからぬ異端さ?についても詳しくお伝えしましょう!
東京タワー水族館がマニアを惹きつけ続けた魅力
大前提として“東京タワー水族館”は余程の熱帯魚マニアでない限り「金返せ!」のレベルです。「過度な期待はしない」「確実につまらない」これは我々が一般層に発信して来た言葉です。デートスポットに選ぶなど問題外です。
もちろん、決して貶める意味合いではありません。
むしろその真逆です。
知識がないと、その余りの凄みが分からない。そんなコアな場所でした…
ではマニアも垂涎する“凄み”とは一体何だったのでしょうか?
水槽に値札が貼られている
嘘の様な本当の話です。
私は10回以上通い詰めましたが、確かに水族館の水槽には値札が張られていました。噂ですが飼育員との価格交渉もできたそうです。
ただ当時高校生だった私には、ウン十万円もする魚は雲の上の存在でした…
いない熱帯魚がいない
謎かけの様な表題ですが、事実です。ワシントン条約や国家単位で保護されている個体以外は全て拝めたと言っても過言ではありません。
しかもただ種類が多いだけではないんです。
魚の最大サイズを維持し、最も健康な状態で大切に飼育されています。
そんな東京タワー水族館の「主(ぬし)」達をいくつかご紹介しましょう。
ワニガメ
規制がかかる前はあちこちのペットショップにワラワラいた巨大ガメ。
一味違うのはその圧倒的なサイズです。目測で甲長60cmはゆうに越すであろう巨大個体は、幼い私に危険動物を正しく飼う礼節・礼義?を教えてくれました。
プロトプテルスエチオピクス
肺魚といった方が伝わりますね。幼魚にはウーパールーパーの様な外鰓(がいさい)があり、4本の手足…にしか見えないヒレを持つ魚、それが肺魚です。
当水族館で見た個体は、勘ですが20歳は下らない個体でした。後にも先にもあれほど巨大な個体は目にしていません。ちなみに2m近くはあったと思います。
デンキウナギ
ともすれば人を死に至らしめる程の電圧・電流を持つデンキウナギ。
後にも先にも東京タワー水族館を超える巨大個体を見たことがありません。その長さは何と2m(私見です)。
デンキウナギは口の下に肛門があります。つまり頭部付近のほぼ全てが内臓で、後は全て豆腐の様な発電器官です。
最大級の放電魚に最大級のサイズ…。これはもう育て上げた飼育員さん達に脱帽でした。
イベリアトゲイモリ
東京タワー水族館では行くたびに、その数が増えることで有名です。必ず入り口に鎮座しており、1匹2000円の値札に惑わさせたものです。
このイモリ、ヨーロッパ産ですが水棲イモリの最大種です。
その当時地元ではお目にかかれなかった本種。お持ち帰りしたら家族のブーイングが容易に想像できます…夢を叶えたのはそれから10年後のことでした。
併設されるペットショップ
「東京タワー水族館」閉館の真相について
通常水族館の本来の目的は生体研究です。絶滅に瀕している生き物の保護や、自然界での生態解明などが主目的となります。
そのため公的機関が運営したり、民間会社に協力しているケースが殆どです。要は学芸員がいる研究施設なんです。
研究費用や飼育費用のために、一般公開し入場料を取ります。
ところがその点、東京タワー水族館はかなり異質です。
館長さんが一人で立ち上げた”個人経営”の水族館
先ほど登記上の話をしました。小売業が事業内容です。
発足当初は個人経営…つまり館長さん一人で立ち上げたという記憶があります。
飼育個体も自身の愛魚や、知り合いに協力を仰いでいます。つまりは個人経営のペットショップなんです。
その規模であれほどの生き物を最高の状態に飼育している…本当に魚が大好きだったんでしょうね。
賃料未払いで閉館に…
残念ながら東京タワー水族館は現在は存在しません。原因は賃貸料の未払いです。
月間賃料370万円を払えるほど、客の入りは芳しくありません。
最終的に2100万円の未納に至り、遂に貸主の『(株)日本電波塔』との法廷闘争が起こります。
裁判は負け、東京タワー水族館は遂に2018年9月30日にその歴史に幕を下ろします。
(株)日本電波塔の「賃料さえ払ってくれればなあ…」との嘆きも有名です。東京タワー完成当初から共に歩んできた同士、本心は望まない結末でした。
マニアにとって楽園だった「東京タワー水族館」
東京タワー水族館はマニアにとって楽園のような水族館でした。ただ悪く言えば昭和時代の遺物でもあったのでしょう。
東京近郊はオシャレで広々とした水族館が立ち並びます。時代の流れに負けずに、いつまでもそのスタイルを見て行きたかったものです…
東京タワー水族館閉館当日、東京タワーも長年担ったテレビ電波塔の役割を終えています。