---------------------------
----K----008---------
----a-----------------------------
----m-----------------------
----u------------------------------
----k-a-m-u-e-v-u-r-i-b-a-d-e-i-----------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
(ラジオ)「政府は 首相官邸で第14回 総動員審議会を開き生活必需品の統制などに関する6つの勅令案を諮問することを決定しました」。
(安子)あっ お父さん。なあ 今日 おはぎも あんころ餅もこれで おしまい?えろう少ねんと違う?
(金太)安子。
おめえ見合いせえ。
へっ?
うちと取り引きしょおる砂糖の生産会社の次男さんじゃ。
おめえも 年が明けりゃあ 16じゃ。ええ頃合いじゃろう。
ごめんなさい。 あんまり急で…。
(杵太郎)安子。はっきり言うて こりゃあ政略結婚じゃあ。
なっ お… 親父!何ゅう人聞きの悪いこと。
このままじゃ 思うような菓子が作れん。そねんなる前に砂糖の会社と手ぇ結んどこういう魂胆じゃ。
魂胆言うな。(ひさ)まあ 金太と小しずさんだって似たようなもんじゃった。えっ?
(ひさ)小しずさんは小豆農家の娘さんでなあ。このとおりべっぴんさんじゃし 気も利くしこりゃあ ええわいとおじいちゃんが金太に勧めたんじゃ。
こいつも 初みゃあ 誰が見合いなんかするか 言ようったけど会わせてみたらまあ 一目でポ~ッとなってしもうて。
い… い… 今そねえな話ゃあ ええじゃろうが!
ちなみに おじいちゃんとおばあちゃんは恋愛結婚じゃ。うん!
その話もいらん!安子! ええか よう聞け!
おめえは かわいい一人娘じゃ。
なんぼ 店のためじゃ言うてもしょうもねえ男に やる気ゃあねえ!
お人柄は 申し分ねえ。
こんな人が婿に来てくれて おめえと店を2人で もり立ててくれたらこねん頼もしいこたあねえ!のう 小しず。 のう!
(小しず)いや…。
ごめんな…。急に あねえなことに なってしもうて。
ううん。
安子。 お願えじゃから無理ゃあせんといてちょうでえよ。
みんな 安子に幸せになってもれえてえ思ようる。
じゃけど 何が安子の幸せなんかは安子にしか分からんのじゃからな。
うん。
♪~
(ラジオ)「『基礎英語講座』の時間です。講師の堀 英四郎です」。
・(小しず)安子~。ラジオ始まっとるよ。入るよ?
安子…。
お見合いのこたあ無理ゅうせんでもええ言うたんよ。
安子の幸せが一番なんじゃから言うて。
(きぬ)あほじゃなあ おばちゃん。
そねえなん余計 安子ちゃん 追い詰めるだけじゃが。
大丈夫じゃ。夜にゃあ ちゃんと帰ってくらあ。
きぬちゃん。
雉真 稔さんいう人のとこ?
何じゃ 知っとったんかな。
その人んとけえ行ったんかな? 大阪の。多分…。
(汽笛)
♪~
いろはにほへと ちりぬ!
ぬすと!待て~!
(くま)誰や?
あ~ もうまた鈴木君の女友達かいな もう。
しゃあないな あの子は取っ替え引っ替え。 もう。
あのな 悪いこと言わへん。やめときて。あ… あの…。
そやけど あんた 鈴木君の好みにしたらまた… ええ? 地味やな これ。
それに また 顔がおぼこいなあ。
あっ そうか。あの気ぃの きっつい女にひっかかれて顔に ばんそうこう貼んのん懲りたんや。フッフッフッフッ。
(稔)ただいま帰りました。お帰り。
(稔)安子ちゃん?
ええっ! 雉真君の女友達やったん?い~やっ 珍しや。
はあ…。いや~ でも よかったわあ。
あんたは あんたで勉強ばっかりしてるやろ。 もう 私…。
(稔)どねんしたん? 急に。
配達で…。配達?
商店街の えっと… 荒物屋の清子さんの親戚が こっちで結婚されて。
紅白まんじゅうを届けるように頼まれたんです。
ハハッ せっかくじゃから稔さんの住んどる町 見てみとうて。
そう。 何にもねえとこじゃろ。
あ… お手紙に書いてあったとおり。ヘヘヘッ。
しゃあけど稔さんには会えんと思うてました。
ああ 今日は 午後の授業はねんじゃ。
そうですか。ああ。
よかった。
何時の汽車で帰るん?夕方… 5時半ごろのつもりです。
ああ…。
暗闇でしか 見えぬものがある。暗闇でしか 聴こえぬ歌がある。
(拍手)(口々に)モモケン!
黍之丞 見参!
(拍手)
♪~
て~い てやっ!うわっ!
や~!
うっ! うわっ…。
おい 行け!おりゃ!
♪~
(歓声)
ううっ てやっ!
てめえ! あっ!
(拍手と歓声)
♪~
よかったよ。やっと映画の約束が果たせて。
フフフッ はい。モモケン 勇ましかったですねえ。
なあ 本当によかったんかな。こんな学生用の食堂で。
稔さんがふだん行きょおる場所がええんです。
う~ん フフフッ おいしい!
わあ… 本当に似とるなあ 旭川に。そうじゃろ。
あっ 本当じゃあ。 潮の香りがする。
It smells like the ocean.
おっ!フフフッ 「基礎英語講座」で覚えました。
本当に毎日 聴きょうるんじゃな。
日が暮れたら寒いよ。
Sunset.
A beautiful sunset.
Do you see that beautiful sunset?
Yes, I do.
I see a beautiful sunsetover the river.
♪~
じゃあ 気を付けて帰ってね。
あっ…。ああ 着ていって。
それじゃあ またね。
はい。
ありがとうございました。
♪~
(汽笛)
(汽車の走行音)
(すすり泣き)
♪~
♪「君と私は仲良くなれるかな」
♪「この世界が終わるその前に」
♪「きっといつか儚く枯れる花」
♪「今、 私の出来うる全てを」
♪「笑って笑って」
♪「愛しい人」
♪「不穏な未来に」
♪「手を叩いて」
♪「君と君の大切な人が幸せである」
♪「そのために」
♪「祈りながら sing a song」
♪「祈りながら sing a song」
♪~
(駅員)岡山 岡山。
(すすり泣き)
すんません すぐ降ります。
何で…?
そねん 小せえ かばん一つで配達もねえじゃろう。
何で泣いてるん?
安子ちゃん。
何があったん?
(泣き声)