最終話 めざめ

学習机の上で私は眠っていたようだ。

何回も同じ事を繰り返す夢を見ていたのか。

私は、夢の中で、妄想していること自体を妄想していたようだ。


「ふっ、所詮、現実とは社会を構成する全員が共有している脆い夢なのだよ、その夢から覚めて何が悪い。だが、今、目覚めることができたこの確かな現実の中で強く生きていこう。」私は一人で呟いた。


起きて暫く経つと、夢の内容は急速に記憶から抜け落ち始めた。


「栄一、晩ごはんよー。」


母親の声がする。

そうだった、一瞬混乱したが、僕はまだ子供だった。小学生だ。母さんの声を聞くと、急に体が小さくなった気がした。


ダイニングに行くと、父さんも居た。

書類の束を机の上に置いて、いつもどおり考え事をしているようだ。

しかし、どこからか風が吹いたのか、そこから書類が一枚、僕の足元に静かに落ちた。

書類を拾おうとして、僕はタイトルに目が釘付けになった。

『客観現実の成立条件』とある!!!!

母さんが機械のようにこちらを静かに見つめている!!!!


「どうしたのかね。」

父さんは言った。


僕は、あの実在しないが美しい看護師のことを思い出した。


「なんでもない。今日の晩ごはんはオムライスだっ、やったー。」

『私』は、決意を込めて強く言い放った。

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