第4話 シャットダウン
「私は兵器ではない。」
私は反抗した。
「では聞くが、なにか君の見ている世界で絶対的なものを一つでもいいから言えるかね?最大多数の社会構成員と客観現実を共有できる我々には直ちにわかるが、そうではない君にはわからないはずだ。さらに言えば、我々が君に絶対的なものがなにであるかを説明したところで、君はそれを理解あるいはそもそも認知することが原理上できない。」
初老の紳士は続けた。
「それからもうひとつ。君の夢は叶ったかな。すべて完全に叶ったはずだ。叶うように君はほぼすべての社会構成員の認知を歪めたわけだから。自らの望んだ最難関と呼ばれる大学に進学し、今は、やはり自らの望んだ、入職するのが最も難しいとされる研究所で働くことができているのではないかね。だが、君がみんなの認知を歪めるまでは、それらは存在しなかった。」
初老の紳士は私の目を強く見つめた。
「では、過去の私が、それまでは存在しなかった、最難関と呼ばれる大学を始めとする熾烈な競争社会であるアカデミアの存在を無から造り出し、それらの存在を思い込み、そこで自分で勝手に研究していると?」
私は主張する。
「そうだ。そして今まさに君は自らが生物兵器であることと、その思い込みの構造に気づいてしまった。そして何より以前から君はみんなのことをとても嫌っている。ここに来て君はアカデミア、一般化すれば、競争社会の存在を強く疑い始めた。だから、一度確かに現実化されたはずの、この客観事実の集合は、今、土台から存在理由を失いつつある。今この社会を構成している人々から見るとまさに死活問題だ。」
初老の紳士は穏やかな口調で単調に話した。
「じゃあどうしろと?」
私はほとんど吐き捨てるように呟いた。
「せめて、今の社会を構成している、みんな、とは仲良くしてほしいよ。」
初老の紳士は強い決意を表したような口調ではっきり述べた。
「僕がこうなってしまったのは、全部、みんな、つまり社会全体が悪いんだ。そのみんなのほうから一方的に命令が来るのはおかしいぞ。私がそのように思い込んで全体の認知を歪めているなどと妄想しているのは、あんたたちのほうだ!!!!」
私は声を大きく荒げて怒鳴ってしまった。
「残念だが、君にはもう一度初めから研究(Re-search)を繰り返してもらう。」
初老の紳士は机の裏に隠されたボタンをサッと押した。
すると・・・
・・・
・・・とても、とても静かにドアが開いた。
・・・そして。
手に注射器を持った美しい看護師がどこか現実のものではない笑顔を浮かべながら部屋に入ってきた!!!!
既に注射器の先端から薬液がわずかに滴り落ちている。
今気づいたが、身体中を器具で拘束されていて身動きがとれない!!!!
薬液の侵入を感じる間もなく、頭の働きが酷く鈍くなっていく。
(以下、第一話へ戻り、リピート)
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