---------------------------

----K----007---------
----a-----------------------------
----m-----------------------
----u------------------------------
----k-a-m-u-e-v-u-r-i-b-a-d-e-i-----------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------


・（吉兵衛）もなかがねえたあどういうことなら！
（金太）あっ　吉兵衛さん。えろう　すみません。
実は　当分もなかは作らんことにしたんです。
（吉兵衛）よう　そねえな　むげえこと！
吉右衛門の好物じゃで！（吉右衛門）お父ちゃん。
そねん　きつう言うたらいけんで。
考えてみられえ。　せんだって砂糖とマッチが配給制になったじゃろお。
菓子ゅう作るんも　ままならんはずじゃあ。
あの…　そのとおりなんじゃ。
とりわけ　もなかは砂糖を　ぎょうさん使う上にそねえに売れ筋でもねえもんじゃから。
吉右衛門を珍しい子供みてえに言うな！
お父ちゃん。あんころ餅３つ買うて帰ってお母ちゃんと３人で食びょうや。それで僕は幸せじゃあ。
吉右衛門。　おめえいう子は…。
（算太）ええ子に育ったのう　吉右衛門。ケチ兵衛の子たあ思えんで。
算太！（小しず）算太！（安子）お兄ちゃん！
誰がケチ兵衛じゃ。（吉右衛門）ああ　この人か。
うん？僕が生まれた時に　ラジオ盗んだん。
ハッハッハッハッ…。（吉兵衛）おい。
（吉右衛門）ハハハハハッ！子供に何ゅう教えとんなら。
お～　ろくに連絡もしてこん思うたら急に！
ヒヒヒッ。
♪～
♪「君と私は仲良くなれるかな」
♪「この世界が終わるその前に」
♪「きっといつか儚く枯れる花」
♪「今、　私の出来うる全てを」
♪「笑って笑って」
♪「愛しい人」
♪「不穏な未来に　手を叩いて」
♪「君と君の大切な人が幸せである」
♪「そのために」
♪「祈りながら　ｓｉｎｇ　ａ　ｓｏｎｇ」
♪～
♪～
♪～（スウィングジャズ）
♪～
…と　まあ　そねえなわけでわしゃあ　ダンスホールのダンサーらにダンスを教えるダンス教師となったわけじゃ。
（杵太郎）ほう。そねん　うめえ話があるもんか。
それがあったんじゃ。うそをつけえ。
要するに　要領よう世渡りしょうったっちゅうことじゃな。
ところがじゃ　そのダンスホールが閉鎖になったんじゃ。
（ひさ）閉鎖？閉まってしもうたんかな。
さいな。もともとな社交ダンスってのは欧米の享楽主義の権化だとか男女の乱れた交際を助長するのいうて当局から目ぇつけられとったからのお。せちがれえ世の中じゃ。
じゃあからいうてのこのこ帰ってきたんか。
おうおう　のこのこって何じゃ。
あれだけ　たんかあ切って　出といておめえ　骨のねえやつじゃのお。
小言は　もう　ええがんせっかく帰ってきたんじゃから。
そうじゃ　そうじゃ。言うたって　母ちゃん。
お兄ちゃん。うん？
お帰りなさい。
ただいま。
（菊井）そしたら　坊ちゃん菓子の修業に戻るんですね？
いや。　今は小休止じゃ。わしゃあ　ダンスで生きていく。
算太。
今更　戻りてえ言うても戻しゃあせんわ。
菓子ゃあ　そねん甘えもんじゃねえ。
菓子ゃあ　甘えじゃろ。
菓子職人の修業は甘うねえと言うとるんじゃ！
あ～　ややこしいのう。
ちょ…　算太　お行儀の悪い。食べてすぐ寝たら牛になるで。
そねんこと言うたら相撲部屋やこ　たちまち牛だらけじゃ。
（杵太郎）ハハハッああ言うたら　こう言う。
♪～（ラジオ）
（ラジオ）「ここまで　三根耕一の歌をお楽しみいただきました」。
（丹原）今のディック・ミネじゃねんですか？
（黒鉄）変えさせられたんじゃろ。ディックがな敵性語と見なされたんじゃ。
（算太）うん　うん　うん　うんそねんことを言ようったらエンタツ　アチャコのお笑い早慶戦どねんなるんなら。
（ラジオ・アチャコ）何をしゃべってんねんな。
（アチャコ）触れることならず。　安全　安全。
（エンタツ）それ　やっぱり政府の仕事ですか？
第４球　打ちました！大きな当たり　正打　正打。
人殺しや！
え～　伸びてます。中堅手　下がって　下がって。
分け目をつけずに髪を全部後ろになで上げる髪形。
君　さっきから何言うてんの？君もや。
ハハハハッ！…んなもん　さっぱりわやや。
（笑い声）
やっぱり　お兄ちゃんがおったら場が楽しゅうなる。
（きぬ）気ままな人じゃけど今の世にゃあ必要な人材じゃな。
それで？お正月は帰ってくるん？
勇ちゃんのお兄さん。稔さんじゃったかな。
あっ　うん…。　どうじゃろか。夏休みも帰ってこれなんだし…。
どうも。
（千吉）長男の稔です。大阪商科大学の予科２年です。
（神田）おう。稔。　こちらは海軍主計中佐の神田さんじゃ。
（稔）初めまして。父が　お世話になっております。
（神田）立派な息子さんですな。
神田さんが大阪にご用があると伺うてわしも来ることにしたんじゃ。
おめえを紹介してえと思うてな。
この度　神田中佐のお骨折りで雉真への軍服の発注数を倍増していただけることになったんじゃ。はあ。
雉真さんの製品は　足袋も学生服も丈夫なことで知られていますからな。
技術を存分に生かして帝国軍人にふさわしい軍服をどんどん作っていただきたい。
名誉なことです。　ありがとうございます。
いずれは　これに雉真を任せるつもりでおります。
若輩ですが　どうぞ　ごべんたつください。
何なら。うん？おめえが店番しょうったんか。
いや？　母ちゃんがちょっとの間　座っといてって。
じゃから　そりょう店番いうんじゃ。
こりゃあ！　売りもんぞ。
あ～　うめえなあ。当ったりめえじゃあ。
神戸でも大阪でもうちより　うめえ菓子ゅう食うたことがねえで。
おう　母ちゃん。　ほんなら。
やっぱり　分かっとるんですねえお菓子の味は。
あいつ　本当は戻りてんかなうちの仕事。
あいつのことじゃダンサーにゃあなれなんだ　諦めたいうて言い出せんのじゃねえじゃろうか。
♪～
（卯平）おっ　お～！　算太！？
ハハハハッ　久しぶりじゃのう！
ああ　豆腐屋のおっちゃん！　お～！え～　どうじゃった？
ああ　そりゃあ　モモケンが最高じゃ。おう　そうじゃろ　そうじゃろ。
わしゃあ　新人の頃から目ぇつけとったんじゃ。
こりゃ　阪妻もアラカンも超える逸材じゃいうて。
本当か？　アハハハ。おう。
おめえは調子がええんじゃから。じゃあのう。
（田中）ちょっと　すんまへん。おう。
この辺にたちばないう菓子屋ありまっか。
ああ　それじゃったら今そこに息子の…。
あ…　おりゃあせんわ。えっ？　おったんよ。
（定一）お～　頂きます。
うん！　うん　うめえ！
これ　うちのコーヒーにぴったりじゃ。アハハッ。
（健一）父さん　わしの分も置いといてよ。ご注文いただいて　うれしかったです。
しゃあけど　御菓子司　たちばなって安子ちゃん　もしかして　橘　算太って…。兄です。
はあ　い～やっ　似とらんなあ！
知っとられるんですか？小学校の２級上じゃった。
何か　ご迷惑おかけしたんじゃ…。
いや…　直接ってわけじゃ…。すんません。
ああ　えんじゃ　えんじゃ。あっ　どうも。
安子ちゃん　一人娘じゃねんじゃあ。はい。
よかったな。よかった？
うん。　稔のお嫁さんになれるがん。
そ　そ…そんな　おつきあいじゃあ…！
しゃあけど　初めてじゃったで。稔が　こけえおなごん子　連れてきたんは。　のう？（健一）うん。
えっ…。
（笑い声）
黒鉄さん！　映画館にはおらなんだです。
パチンコ屋でも見たという人はおりません。
もう　町ゅう出てしもうたんかもしれん。わしゃ　駅へ行く。おめえらは　バス停と隣町も見てけえ。
（丹原　菊井）はい。
（田中）因果な息子さん持ったもんでんなあ。わしは　金さえ返してもろたらそんで　よろしおますけど。
あっちこっちでいろんな人が泣き寝入りしてはりまっせ。
ダンスホールの支配人も前払いした給料　踏み倒されたいうし。
さんざん貢いだのに黙って姿消した言うて　泣いてるおなごも１人や２人やおまへんで。
食うた　食うた。　熱～いお茶が怖い。
ほな　これは確かに。
♪～
ちょっとでもあいつが菓子ゅう作る気になったと思うたわしが　あほうじゃった！
二度と　あいつにゃあこの家の敷居は　またがせん。
金太さん…。ええのお！
算太は　もう…　橘の人間じゃねえ。
＜算太は再びたちばなから姿を消しました＞