ニゲラってた季節①

私と彼との出会いはツイッターだった。

当時私は26歳。なぜか、全然知らない人のツイッターをフォローしまくる時期が私にはある。その時は植物が好きそうな人たちを片っ端からフォローしていった。彼の名は「おこめつぶ」。フォロワーが0だったのと、紹介文が面白かったのでなんとなくフォローをした。

私の何気ないツイートによくいいねをしてくれたし、彼がツイートするのも面白い文章だったので、わたしは「はじめまして!」なんて形式ぶった挨拶もせず、普通にしゃべり言葉で彼のツイートでしゃべりかけた。

そしていいねをしたりコメントで軽く絡みあったりしながら少しの時間がたったとき、私は「文通友達募集!だれか気軽に文通をしよう!」と投稿した。3人くらいのボーイが私に住所を教えてくれた。その一人が「おこめつぶ」。つまり元カレである。

 

「28歳の独り身の男ですがよかったら文通しましょううううぅぅっぅぅぇっうぇっうぇ」みたいな感じでコメントをしてくれた。正直、私はこの人と文通をしたいからあんなツイートをした気がする。よっしゃー!って思った。そしてその日からしばらく、文房具屋に行くのが好きになった。いつもは素通りする便せんコーナー。しかし手紙を書きたい相手がいると、めちゃくちゃ楽しいコーナーになる。かわいいやつや素材がいいやつ、いろんなものを買った。毎回違う便せんで相手に読んでほしいし、手紙を書く自分もそのほうが楽しいからだ。

 

だけど見知らぬ相手に送る手紙って、最初は全然何書けばいいかわからないものだ。なんとか書き終えて送った。三日後くらいに返事が来た。最近はLINEとかでやり取りをしてる時代だから、男の人が書く字をなかなか見れない。だからとても楽しみにしていた。だけど開けてびっくり!手書きじゃなくてわざわざPCで打ったやつを便せんに印刷したやつを送ってきやがった。なんでやねん。と最初は思ったけど、やり取りをしていくうちに慣れてきた。だけどやっぱり手紙って手書きのがいいと思う。

 

3通目くらいの手紙。その中にプレゼントが入っていた。外国の切手のプレゼントだった。すごくうれしかった。そのころツイッターでも頻繁に絡むようになっていた。私の好きな気持ちは爆上がりだった。彼にコメントをもらうためにツイッターをするようになった。私は切手のお返しに、うちわレターを送った。夏になるとよく販売される、ちょっとした贈り物にぴったりの品物だ。わたしと文通をするようになってから、きっと彼も私と同じ気持ちで文具屋に足を運んでる。だから、どこにでもあるようなこのうちわレターを送るのはなんとなく嫌だった。けど、まぁいっか!きもちだし!と思って送った。

そして手紙で、私のこと好きだって言ってくれてね、とてもうれしかった。そんで私も大好きだって送った。そして、いつか会おうよ!てなった。でもその前に電話しようと思って、電話番号を書いた手紙を送ったんだ。それから電話をするようになった。初めての電話で、切る間際に「好きだよ!」と言われてすごく嬉しかったのを覚えてる。

 

文通・電話・ツイッターで絡む の三種類。鬼絡み。

しかも電話は毎晩。9時までに風呂入って、そこから11時くらいまでずっと。彼はかけ放題だったからずっと電話をしてた。1か月くらい電話して、丁度お盆の時期になった。具体的に遊ぶ日時を決めようってなったとき、はじめて彼から「今夜電話しよう」と誘われた。うれしかった。

夜、電話で話した。なんだかいつもと少し違う雰囲気。確かこの時点で、もうすでにこの日に遊ぼうというのが決まっていた。けど「実は今発情期でして、今Mちゃん(わたしのこと)に会うと何をしちゃうかわからないから、やっぱりこの日に会いたいんだ。」と言われた。なんじゃ発情期って!野良猫かい?!と思ったけど、もう一つ、言わなきゃいけないことがあると言われた。「俺実はタトゥーがバンバン入ってるんだ。腕にも足にも胸にも。今から写真送るけど、それでも大丈夫かな?」と言い、写真を送ってくれた。正直今まで付き合った人にタトゥーを入れてる人はいなかった。写真を見ると本当に左腕、肌色が見えないくらいにびっしり入っていた。だけど別にタトゥーくらいいいっしょ!と思い、「わたし全然大丈夫だよ」と言った。そしてどうしてタトゥーを入れたのか教えてもらった。

 

タトゥーを入れたのは高校二年の時。学校に行かなくてもなぜか勉強ができたから、中学のころからあんまり学校には行ってなかった。そして家の近くに車屋があって、すごくぼろいやつを譲ってもらい、エンジンとかいろいろいじっていた。

高校になるとバイトを始めた。姉の友人がタトゥースタジオで働いててバイトを募集してたらしく、そこを紹介してもらった。仕事は楽だし月に16万くらい稼げた。だけど違法な店だったらしく摘発され、給料払えないから道具一式やるよ!と言われ、道具を手に入れた。そしてアメリカ人のラッパーに憧れて、自分でデザインをして自分で彫っていった。だけど慶應大学卒業で頭はめちゃくちゃいいんだぜ!

 

というような説明をしてもらった。いろいろな疑問があったけど、とりあえず恋は盲目。好きで早く会いたくてたまらなかった。

そして約束の日、「ごめん。仕事行かなきゃいけなくなっちゃった。。相手のミスだけど来てほしいって言われて・・・」と連絡が来た。すごく落ち込んだ。やっと大好きな人に会える!と思ってたから、ガーンだよ。

 

彼はある会社で役員をしているらしかった。28歳で課長!?とすごく驚いた。けど、世の中にはそういう人もいるんだろうって感じで思っていた。

そして次の週に会うことになった。

 

当日、出発したってラインをもらい、私も早めに家を出た。彼との距離は車で高速使って3時間ちょっとの距離だ。わたしの地元に来てくれることになっていた。そして駅に集合し、観光をする。川魚を食べるというデート内容だった。ちゃんとランチの予約もした。

駅に着く前に連絡が入った。「ごめん10時すぎる><」とのことだった。まあ待っても1時間以内だろう!と思い、駅の駐車場にお金を払って、近くの喫茶店で時間をつぶすことにした。しかし30分すぎても何も連絡がこなくて不安になった。運転中かな?と思ったら連絡しすぎるのも危ないし・・・と思い、不安でドキドキする心臓を抑えて週刊誌を読んだ。だけど1時間待っても何も連絡がない。喫茶店を出た。

その時もう11時半くらい。本当だった10時集合で、11時半にランチをする予定だった。電話をして、ランチの時間を一時間ずらしてもらった。おこめつぶに電話をしたら出た。「ごめん。お盆のせいか、渋滞はしてないけど車の流れが遅い!どこかで高速道路おりて下道で行ったいいかな?」と言われたので、調べてまた電話するねと答えた。母さんに聞いたり調べたりして、「高速は下りずにある程度こっちに来たほうがいいよ」と伝えたけど時すでに遅し。変なところで降りたらしく、私はさらに3時間ほど待つ羽目になった。もう駐車場で待つのもしんどくなって14時くらい、一人で泣き叫んだ。駅の周りを歩いたりしたけど、怒りとかむなしさとか不安感でどうにもならなかった。電話をちょくちょくしていたけど、途中充電が亡くなったのか、「電源が入っておりません」というアナウンスが聞こえたころには、もう死にたくなっていた。

 

家族に「なにしとるんや!」なんて言われるのが嫌であんまり家に帰りたくなかったけど、こめつぶと連絡が取れた時、駅にいるよりも私の家に集合にしたほうが近いと分かったので、家の住所を教えてこっちに来てもらうことにした。案の定父親に「何やっとるんや!ドタキャンやろそんなん!」と言われた。

電話ではあと5分で着く!と言われたのに、10分過ぎても来なかった。また電話して、早くしてよ!!!と言ったら、白い車がゆっくりと家に向かってきてるのが見えた。はやくはやくはやく!!!と言い、家の前でやっと止まった。

 

おこめつぶと会う前、もちろん顔写真を交換してたんだけどね、その時肌がすごくきれいでかっこよくて、それにこのカッコよさで身長が183センチでしょ!?なんでモテないんだろう!?って思ってたわけ。けど車から降りてきたおこめつぶは、私とそんなに変わらない高さの身長で、本当に28歳?!と思うような風貌だった。え?!?と思った。本当に驚いてしまった。もしかして私が待ち続けた6時間、彼は葛藤をしていたのじゃないだろうか。身長・顔の詐欺。ありえない。183センチを楽しみにしていたのに。別に低身長がダメってわけじゃない。嘘をつくのがよくないってこと。

だけどせっかく遠くから来てくれたし、しばらく家の近くの誰も来ないところで話をした。卒アルとかお土産とか持っていくねって言われてたのに全部荷物を忘れたらしい。

 

実は頻繁に電話をしてる時、もう付き合っちゃわない?!と言われてたんだ。そして私もノリノリで付き合おうって言うでしょ。会うとき絶対に指輪持って行くからね!!なんて言われてたんだけど、それも忘れたらしくてがっかりした。

もうその日は夕方で、母さんがわざわざ夕ご飯を準備してくれたからそれを食べて、こめつぶが乗ってきた高級車の運転を少しさせてもらって、そして解散した。

 

次の日、もう関係を終わろうといった。6時間の遅刻、顔・身長の詐欺。なんかがっかりしたからだ。そして終わろうと伝えると、彼はあっさり。ツイッターもやめてしまった。でも私、時間がたってふと思った。切手のプレゼントをしてくれたし、遠くからはるばる会いに来てくれた。それなのに私は・・・なんてね。

そして電話を掛けた。ありがとうと伝えた。帰ってきた返事は「愛してる。もう一度だけちゃんとデートしようよ!」だった。私はそうすることにした。

 

だけど一つ、私はミスを犯してしまっていた。それが最後までずっとずっと、私たちの関係を悪くするのに付きまとった。 

 

続く

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