プールの授業が終わってから、二週間が経過したある日。4月もそろそろ終わる下旬。私は放課後に会う約束をした図書室へと向かっている。もちろん、私の右斜め後ろには神室さんが従者のように付き従っている。龍園なんかに襲われたらたまんないからね。
約束の時間からかなり早くついてしまったので、神室さんには図書館で適当に過ごしていいと言って、私は待ち時間お目当ての本を探すことにした。
この高度育成高等学校の図書室の本の保有量はかなりのものである。見渡せば本だらけ。しかも、デザインにも凝っていて居心地はいいから私はこの図書室によく訪れている。しかし、私はこの図書室でひとつだけ不満を持っていることがある。そう、目的の本が上にあるときに全く届かないのだ。台でも用意してくれてもいいんじゃないかと思うのだが、カウンターまで行って台を借りるのは少し恥ずかしいし、自分が背が低いと認めているような感じがして嫌だ。
今回のお目当ての本もかなり上の方にあり、ジャンプしても届かなそうだった。しかし!私は諦めない!
私が意地でも取ろうと頑張ってぴょんぴょんジャンプしていると、誰かから脇を持ち上げられて、私は浮遊感を感じた。急いで後ろを振り返ってみると、そこには会う約束をしていた椎名さんが私を生暖かい目で見ていて、私を持ち上げてくれている。明らかな子供扱いだ。
「あの、椎名さん?流石にこれは子供扱いされすぎていて恥ずかしいんですが…おろしてもらえませんかね?」
「いえ、坂柳さんが取りたい本があると思って少し手助けしているだけで子供扱いなんてそんなことしていませんよ」
にっこり笑っているが、その瞳からは少しからかっているような感じもした。ぐぬぬ、恥ずかしい…。
すると横の方でシャッター音がして、すぐに横を見てみると神室さんがスマホを片手に私の恥ずい姿を写真に収めていた。本人はニヤニヤと笑っていて、私は絶対ネタで使われることを確信した。
もう、神室さんのことはほっといて、たしかに持ち上げられると目的の本は取れるので、本を取る。そのあと、椎名さんにおろしてもらって、神室さんを尋問しようと思ったら、すでに逃げていたので諦めた。
「それにしても坂柳さんってとっても軽いのですね。また届かなくて困っているようでしたら、私を呼んでくださいね」
「………いえ、私は多分これから背が伸びるんですよ。だからその助けは必要ありません」
私がそう言うと、そうでしたか、と椎名さんが優しい目で私のことを見てきた。やっぱり子供扱いしてるよな?絶対身長伸ばしてやるからな?
椎名さんとは週に4回ぐらいの頻度で放課後に図書室で会って、本の話や一緒に読書したりとそれなりな交流を持っている。
そんな椎名さんが優しい目から真剣な眼差しに変わるのを見て大体の予想がついた。多分龍園くんだろう。
「いきなりですが、今朝龍園くんが坂柳さんとの交流をやめろと言ってきました。私が反対したら今日の放課後、図書室に坂柳さんを連れてこいと言われてしまって…。すみません、できれば私と龍園くんだけで済ましたかったのですが…」
「いえ、気にしないでください。それにしても龍園くんはもうこの学校の仕組みを理解しているのですね。たしかに自分のクラスの人が他クラスの、しかもリーダーとなる人と交流していたならばその交流をやめさせようとするのも当然と言えば当然ですね」
さて、そろそろ約束の時間だ。図書室のドアが開いて、入ってきたのは長髪で鋭そうな目をした、Cクラスの王、龍園翔。
私はにっこりと微笑みながら龍園くんに挨拶をする。
「こんにちは、あなたが噂のCクラスの王と名乗っている方でしょうか?私は、Aクラスの坂柳有栖と申します」
「ククッ、こりゃAクラスの女王様、坂柳有栖とはお前のことか?随分と貧弱そうな体だな」
私と龍園くんの視線がぶつかり合い、バチバチと火花を散らす。あ?貧弱そうな体だと?胸のことを言ってるのか?殺すぞ?
私が内心殺意マシマシで威嚇していると、
「いきなりだが、有栖、ひよりとの交流をやめろ。お前もわかってんだろ?この学校の仕組みをよ」
「はぁ、私はもう少し肝の座った人だと少しだけ期待していましたが検討外れだったようですね」
「なに?」
龍園くんは眉間に皺を寄せ睨みつけるようにして私をみる。流石にこんなところではどんぱちしようなんて考えていないと思うが念のため逃げられる準備をしておこう。
「私と椎名さんの関係は友達であり、スパイ関係ではないことを断言します。だから、クラス間の争いでは敵同士としてお互いに認識するとして龍園くんが思っている私が椎名さんからCクラスの情報を得るなんてことはあり得ません」
「クククッ、そうきたか。だが、お前の言葉だけじゃ信用にならねぇ。50万だ。明日の朝までに50万ポイントを俺に振り込むならひよりとお前との交流には口を挟まない」
龍園くんがおかしそうに笑うと、とんでもない金額を要求してきた。マジ?それは少し欲張りすぎではないだろうか?
「はぁ、あなたはかなりの臆病者なんですね。50万という大金をもらわなければ、信用できない。可哀想な人ですね」
私がそう煽ると龍園くんの笑っていた表情が消え、またしても睨みつけるような視線を送ってきた。
「そんな安い挑発に俺が乗るとでも思ったのか?お前こそお友達のためにすぐにお金を出すなんてしないのか?薄情なやつだな」
私、今龍園くんに一番言われたくないこと言われたんだけど。薄情なやつって笑。
まあいいや。その安い挑発に私が乗ってやろう。どうせ無人島試験でボコす予定だったからこれぐらいの出費痛くも痒くもない。
「いいでしょう。その挑発にのってあげます」
「はっ!最初からそう言えばいいんだよ。お前も大したことのないやつだったな」
龍園くんは不敵な笑みを浮かべたまま、図書室を出て行った。絶対無人島試験ではその顔にアホ面かかせてやる…!
「すみません、私のせいで…。私も少ししかありませんがポイント出させてください」
「いえ、50万ポイントはこちらから出させてもらいます。それに椎名さんが気にすることではありません」
椎名さんが不安そうな瞳で見てくる。私はそんな椎名さんを見ていたくなかったから、すぐに本の話にすり替えて別の話をするのだった。
☆☆☆
4月も終わりを迎えようとしている下旬。いつも通りの授業かと思いきや、小テストをすると真嶋先生が言い出した。科目は国数英理社であり原作でもあった小テストだ。
開始して解き始める。問題としては中学生の復習という感じでとても簡単な内容であった。しかし、最後の3問だけは異常な難しさであり、高2高3のレベルの問題がそのまま出てきた。まぁ、それでも余裕で解けるのがこのチートスペックの天才っぷりを表していますね(体力は見ないものとする)
☆☆☆
そして5月1日。いつもの朝ランニング(前と同じく体力に変わりはないようだ)で一之瀬さんに会い、10万ポイントが振り込まれていないという話になった。ちなみに、毎度毎度一之瀬さんは寮に帰るのをお姫様抱っこで運んでくれる。恥ずかしい。
今も私が抱き抱えられている状態で一之瀬さんと話している。
「やっぱり坂柳さんが言っていたことは間違いじゃなかったみたいだね。私のクラスでもそういう呼びかけをしたから結構みんな真面目に授業受けてくれたけどね。ありがとね、坂柳さん」
「いえ、お礼を言われるようなことは特に何もやっていませんよ。それよりもそろそろ降ろしてくれませんか?」
「やだ」
いたずらっ子っぽく笑って、私のお願いを拒否する。てか、このお願いを聞いてくれた日はなかったかもしれない。
そのあと、寮につき一之瀬さんとは別れたのであった。
☆☆☆
学校に着くとDクラスの教室が騒がしかったが、気にせず自分のクラスに足を踏み入れる。Aクラスは流石のさすが。みんな落ち着いて席についている。
しばらくして真嶋先生が現れ、Sシステムの本当の意味丁寧に教えてくれたが、Aクラスは980クラスポイントと他のクラスとは、大きく離れており独走状態だ。
Bクラスは700クラスポイントと原作より多くのクラスポイントを残すことに成功したみたいだ。Cクラスは490ポイントと変わらず、Dクラスも相変わらずの0ポイント。
さて、ここからがこの『よう実』の本番と言えるだろう。これからの計画を考えながら、授業を真面目に受けるのであった。
可愛い坂柳さんをたくさん書きたい。
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