[第43回おうちラボで実験してみた]最凶猛毒!自然発火性!超危険物質・黄リンを作ってみた。

〈実験〉無機化学

みなさんこんにちは。
今回は黄リンという物質を作っていきたいと思います。黄リンは些細なことで発火し、数十mg体内に入ると死に至る猛毒である超激ヤバ危険物質ですが作ってみたいロマンには替えられないので作っていきましょう。

●リンについて
リンは原子番号15番、元素記号Pの元素です。1669年にヘンニッヒ・ブラントが錬金術で賢者の石を作ろうとした実験の過程で発見されました。ヘンニッヒ・ブラントは尿を大量に煮詰めてその残留物からリンを発見しました。リンは生物にとっても非常に重要な元素で、DNAやRNAを構成する単位ヌクレオチドにはリン酸が含まれていますし、生物の骨格の主成分はリン酸カルシウムで出来ています。農業においてもリン酸は窒素、カリウムと並んで肥料の主要成分となっています。
さて、リンには様々な同素体が存在します。
いくつかご紹介しましょう。
・白リン
白色ロウ状の固体である。発火点は約60℃で些細なことで自然発火するため、水中で保存する。強い毒性を持つ。日光にあたると赤リンに変化する。
・黒リン
黄リンを約12,000気圧で加圧し、約200℃で加熱するなど厳しい条件下で得られる。リンの同素体中でもっとも安定である。半導体であり、金属光沢を持つ。

・赤リン
紫リンを主成分とする白リンとの混合体で、赤褐色の粉末である。身近なところではマッチ箱の側薬に使われる。

・黄リン
化学の教科書ではリンの同素体として黄リンが紹介されてることもあるが、現在では黄リンは白リンの表面に赤リンの膜が析出した粗製で不純の白リンであるというのが通説。物理的、化学的性質は白リンに準ずる。

●黄リンの作り方
黄リンはリン鉱石(リン酸カルシウム)とケイ砂(二酸化ケイ素)とコークス(炭素)を混合して加熱して得られますが、赤リンの乾留(空気を遮断して加熱すること)でも得られます。今回は実験室的製法として後者を取ります。

●実験
※注意
黄リンは非常に強い毒性と自然発火性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

〜材料〜
・赤リン
・アルミホイル

〜器具・装置〜
・試験管
・ガスバーナー
・水槽
・脱脂綿
・窒素ボンベ

①アルミホイルで試験管に入るサイズの小さな舟を作る。

②アルミホイルの舟に赤リンを乗せる。

③試験管の奥まで入れて内部を窒素置換する。試験管の口は脱脂綿できつく閉めておく。

④試験管をやや傾けてクランプで固定してガスバーナーで赤リンを加熱する。液化した黄リンが試験管下部に溜まる。

⑤試験管が少し冷めたら水の入った水槽に試験管の口を入れて黄リンを水に沈める。

⑥生成した黄リンを回収する。黄リンは水に沈めて保管する。

⑦一部を空気中に晒すと自然発火することが観察される。

めでたく黄リンが得られました。猛毒と自然発火性を併せ持つ凶悪な危険物ではありますが、水中に保管してる限りでは安全です。でもまあ作ってもロクな用途が無いので作らないことが無難です。ていうか絶対真似しないでください。こればかりは。

えざお

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えざお

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記事執筆担当 アングラ化学部 バイオ部プロフィール
化学部・バイオ部のおうちラボケミスト兼バイオハッカー見習い。まだまだ勉強中の青二才。一応環境分析化学専攻だったりする。有機化学が好き。自信は無いのでどうかお手柔らかに!

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