日本海のサザエはあまり大きくならず、成長しても殻長10cmほど、太平洋側のものは非常に大きくなり、殻長12cmを超えるものがある。殻に5本内外の螺肋(筋)があり、成長すると管状の棘を伸ばすものと伸ばさないものとがある。[棘のあるタイプ]
サザエの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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魚貝の物知り度
★
知らなきゃ恥食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門腹足綱前鰓亜綱古腹足目サザエ科(リュウテンサザエ科)リュウテン亜科リュウテン属サザエ亜属外国名
Spiny top-shell学名
Turbo sazae Fukuda, 2017漢字・学名由来
漢字/栄螺、栄螺子、佐左江 Sazae
由来・語源/『本草和名』(901〜923)より。本来「さざえ」ではなく「ささえ」。「エイラ」、「ササイ」、「サダエ」とも。
えいら 漢字「栄螺(「えいら」)とも読む」は「栄(さかえ)」がサザエに近い音なのでつけた。
小家 「ささえ」=「小家」の意。「ささ」は「小」、「え」は家。
ささえ 小さな柄のようなもの「ささえ」を多くつけた貝の意味。
物類称呼 〈相州三浦三崎辺にて○つぼつかい と云 さゞえのふたを同所にて○とうもいち と云〉。
佐左江 〈腸・尾を取り去って切って醤油にまぜ、再び殻に盛り煮熟して食べる。これを壺やきという。〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)Fukuda
福田宏(Fukuda Hiroshi)。岡山大学地方名・市場名
生息域
海水生。浅い岩礁域。
琉球列島・小笠原を除く北海道南部から九州。朝鮮半島、黄海。生態
産卵期は夏。
浅い岩礁域に棲息。藻を食べている。夜行性。
生殖腺(いちばん貝殻の奥にある渦巻き状の部分)の色が雌は緑、雄は灰色(成熟期にはクリーム色になる)。基本情報
琉球列島、小笠原を除く日本各地の浅い岩礁域に普通。
サザエは巻き貝の仲間でも漁獲量はもっとも多いもののひとつ。古くから塩漬け、すしなどになり、馴染み深い巻き貝の代表格。
季語は春で、観光地で焼きながら売るつぼ焼きは人気抜群である。流通の場にも常に見られ、スーパーなど小売り店でもよく見かけれれる。やや高級なものではあるが、非常に馴染み深いもの。
雛の節句にハマグリとともに飾られ、祭った後に食べる。たくましい男性の握り拳をサザエに例えるなど、人気の高さからか、日常祭事に欠かせないものだ。
角(ツノ)のあるものと無いものがある。水産基本情報
市場での評価 年間を通して入荷してくる。入荷は安定しており、値段もやや高値で安定してる。
漁法 刺し網、潜水漁(海女、海士)、見突き漁(船から竿を使ってとる。「かなぎ(金木)、「いそみ(磯見)」ともいう)
主な産地 長崎県、山口県、島根県、石川県、新潟県、千葉県選び方
ー味わい
旬は春
ただし季節によって味は大きく変わらない。
味の点では角の有る無しは関係がないようだ。
大小での味の違いもなく、用途によって大きさを使い分ける。
栄養
ー寄生虫
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
サザエの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、セビチェ、なめろう・みそたたき)、焼く(壺焼き、エスカルゴ風)、煮る(しょうゆ煮、塩ゆで)、ご飯(炊き込みご飯、ピラフ)、揚げる(天ぷら)
サザエの刺身 蓋の隙間からサザエ開などを突き通して口の少し奥にある貝柱を切り、取り出す。身は適度にもみ洗いしてできるだけ薄く切る。生殖巣などのワタは塩ゆでにして氷水などに落として熱を取り、水分を切り、適宜に切る。甘味のなかに磯の香りが強く、こりこりとした食感も実にいい。貝らしい味に富む。
サザエのなめろう(みそたたき) 身を取り出してワタ(内臓)を塩ゆでにし、冷水に落として砂などを流す。みそ、ねぎ、冷ましたワタと足(筋肉)を細かくたたく。好みで辛い唐辛子などを加えるとさっぱりした味になる。酒の肴にもなるし、お茶漬けなどにもいい。
サザエの壺焼き 表面についた汚れや海藻などを採り、直火で焼き上げる。強火で短時間で火を通すといい。水分が吹き上がってきたら酒、しょうゆを合わせたものをたらして出来上がる。エスカルゴのようにニンニク風味のバターで焼いてもいい。
サザエの醤油煮 姫サザエは小振りのサザエのことで別種ではない。サザエは小さくても味が変わらない。これをしょうゆ、酒、水を合わせたもので煮る。煮汁に姫サザエを入れて火をつけて短時間で煮上げる。サザエならではの磯の香りと苦みが楽しめる。
サザエの炊き込みご飯 炊き込みご飯はいずれの産地でも作られているもので、昔はサザエをたくさん加えて米の節約をしていたのかも知れない。サザエの蓋の隙間からサザエ開などを差し込み身を取り出す。足の部分を適宜に切って置く。炊飯の用意をし、ここに酒、しょうゆ、塩で味つけ。ゴボウとニンジンを適宜に切ったものとサザエの足を加えて炊きあげる。味つけは酒、塩だけでもいいし、少しオリーブオイル(バター)を加えて塩、少量の白ワインで味つけローリエを入れて炊飯してピラフにしてもおいしい。
サザエの天ぷら サザエの剥き身(足)を細かく切り、小麦粉をまぶし、かき揚げにしたもの。短時間高温でさっと揚げるのがコツ。好みで玉ねぎなど甘味のある野菜を加えるとよりおいしい。見た目が悪いのが難点であるが味はとてもいい。
好んで食べる地域・名物料理
さざえ飯 島根県など各地で作られる。サザエの身(足)を入れて炊き込む。
さざえの混ぜご飯 日本各地。野菜などとサザエを甘辛くにて、ご飯に混ぜ込む。
長崎県雲仙市小浜のさざえ飯炊き込みご飯 サザエは足(筋肉)だけを使う。ていねいにぬめりを取り、適当に切る。これをご飯に炊き込む。味つけは雲仙市のかなり甘い薄口しょうゆだけ。サザエの香りが強く、とても味わい深い。長崎県雲仙市小浜のさざえ飯混ぜご飯 サザエは足(筋肉)だけを使う。これを砂糖と濃い口しょうゆ(雲仙市のものは甘い)でからめるように火を通す。甘いしょうゆに砂糖なのでとても甘い。そのまま置き。炊き上がったご飯に混ぜ込む。甘辛いサザエと炊きたてのご飯を合わせただけだが、サザエの食感とうま味が生きる。五島のサザエのひや汁 郷土史家の越中哲也(1921年長崎生)が1945年の敗戦直後、五島列島有川太田で食べたとされるもので、今でも作られているかは不明。サザエやミナ(磯の巻き貝)を剥き身にし足などを青じそと刻み、すった味噌と混ぜ、水を加えて汁にする。これを炊きたての麦ご飯にかける。『長崎学・續食の文化史』(越中哲也 長崎純心大学博物館)
サザエカレー 1960年代〜1970年代くらいまで、漁港のある町などでは食肉(牛肉・豚肉)よりも、サザエが安かったようだ。また食肉は購入しなければならないが、サザエは採取すればまかなえたということもある。だからカレーの食肉をサザエで代用していたようだ。作り方は肉を炒めるのをサザエを炒めて作るだけで、市販のルーだったというのから、初期はカレー粉を使ったと言うのまでいろいろ。ここではサザエのワタとワタ周辺の筋肉を玉ねぎと炒めて、カレー粉を加えて炒め、水を加える。仕上げに足を加えて少し煮た。醤油やソースを隠し味にする、最近ではスイートチリを加える。またコンソメキューブを加えるなど家々で工夫をしている。[島根県隠岐、石川県能登、千葉県外房などで聞取]加工品・名産品
サザエカレー サザエを使ったカレー。古くは漁村ではサザエよりも肉の方が高くて、カレーをサザエで作った。近年各地でレトルト食品として販売されている。
飛島名産 さざえの塩辛 サザエを剥き身にして足の部分を塩漬けにし熟成させたもの。塩辛いなかにサザエならではの磯の風味があってとても美味。瓶入りなのも面白い点。[村井善教 山形県酒田市飛島]
さざえべし 石川県輪島の朝市で売られていたもの。サザエの剥き身を塩漬けにして寝かせたもの。強いうま味と風味があり、好き嫌いがでそうだがとても日本酒に合う。未来に残して置きたい伝統食品のひとつ。[冨水和美 石川県輪島市]
ゆでさざえ 島根県隠岐西ノ島などで作られているもので、サザエを塩ゆでにしたもの。非常に単純な加工品なのにサザエのうま味と磯の香りが楽しめてとてもおいしい。[島根県隠岐郡西ノ島]
さざえ糀漬け サザエの身を塩漬けにして、糀(麹)に漬け込んだもの。塩辛よりも塩分濃度が低く、麹の甘さも感じられて食べやすい。[大積海産物 石川県輪島市]
さざえ味付 サザエの筋肉部分を甘辛く煮つけたものを缶詰にしたもの。甘さがほどよく柔らかい。[島根県隠岐郡西ノ島]
冷凍サザエ 砂抜きして生のまま冷凍したもの。東京都、山梨県などではバーベキュー用などとして売られている。神奈川県、三重県産、鳥取県、山口県産、長崎県産が多い。韓国産もある。
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
姫栄螺(ヒメサザエ) 小さいサザエを「ヒメサザエ(姫さざえ)」という。
歳時記・季題 「春」。
東海道中膝栗毛 十返舎一九 文化7〈1810〉〜文政5年〈1822〉に「それより由井川を打越、倉沢といえる立場へつく。爰は蚫栄螺の名物にて、蜑人(あまびと)すぐに海より、取り来て商ふ。爰にてしばらく足を休めて、爰もとに賣るはさざゐの壺焼きや見どころおほき倉沢の宿。倉沢は現静岡県清水区由比倉澤
ひな遊び 〈真紅に映えるモウセンの上に内裏雛・五人囃子……。白酒、さざえ、蛤、桜餅などを供える。〉『あかばね昔語り』(石川倫 近代文藝社 1988)
雛の節供 深川(現東京都江東区)では雛の節供にサザエの壺焼きを作る。『古老が語る江東区の町並みと人々の暮らし〈上下〉』(江東区ふるさと文庫5 江東区)
参考文献・協力
協力/佐藤厚さん(長崎県雲仙市)
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『広辞苑』、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)、『歳時記語源辞典』(橋本文三郎 文芸社)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)