呉服市場は30年で
6分の1に縮小

 このように消費者を「カモ」にしやすいビジネスモデルこそが、利用客に最も精神的ダメージを与える成人式当日に夜逃げという、消費者軽視の極みともいえる「はれのひ詐欺」を招いた可能性が高い、と筆者は考えている。

 消費者軽視からなるトラブルというのは、先ごろ銀行取引停止が大きな話題になったマルチ商法大手ジャパンライフを見てもわかるように、その業界が傾けば傾くほど顕在化していく。そういう点では、着物業界は黄信号がついていると言わざるを得ない。

 前出「和装振興研究会」の資料によると、呉服小売金額は、1982年の約1.8兆円から右肩下がりで2013年には3000億円と、約30年間で6分の1にまで縮小している。

 その勢いはここにきてさらに深刻化しており、大手でも倒産や自己廃業が続いている。昨年4月には、着物学校「装道礼法きもの学院」を運営する「装いの道」が民事再生法の適用を申請した。15年には京都呉服や西陣織帯地の販売を行っていた「株式会社京都きものプラザ」も自己破産している。

 このような厳しさに拍車を掛けているのが、「はれのひ」のような、フォトスタジオやレンタル衣装などから参入してきたニューカマーである。市場が急速にしぼんでいくなかで、新旧のプレイヤーが熾烈な生存競争を繰り広げれば、脱落者の中には「はれのひ」のように「暗黒面」へ堕ちてしまう業者も出てくるはずなのだ。

 ただ、筆者がこれから「着物」をめぐるトラブルが増えてしまうと心配するには、実はもうひとつ理由がある。それは「着物業界」に根強く残る「ボッタクリ気質」だ。