葬儀屋と同じく、
着物業者は消費者を騙しやすい
「は? どういうこと?」と首をかしげる方のため、まずはセレモニービジネスの問題点からご説明しよう。
「明朗会計」が謳われ、数万円程度の家族葬などが普及した今でも、葬儀にまつわる消費者トラブルは後を絶たないのはご存じのとおりだ。筆者も十年ほど前、悪質な葬儀会社や、その被害者によく取材をしたものだが、悪質業者がなくならない理由は、葬儀が「一生に一度のセレモニーだから」という一点に尽きる。
葬儀サービスを何度も利用するわけではないので、質の良し悪しや、価格の相場がわからない。契約や支払いなど、何もかもが初めてなので、業者側に言われるまま。どのあたりがそんなに高いのかと尋ねても、「普通はそれくらいしますよ」と説明されると、納得せざるを得ない。
優良業者ならばそれでもまったく問題ないが、世の中には必ず、こういう構造を悪用する業者が現れる。要するに、悪意さえあれば簡単に消費者を「カモ」にすることができてしまう業態なのだ。
実は「着物」も、これとまったく同じ構造になりつつある。
2015年、経済産業省繊維課がまとめた「和装振興研究会」の資料の中にある「きものの着用頻度」という調査では、着物着用経験のある人の83.6%が「儀式で何度か着た程度」と回答して、「日常的に着用」する者は0.3%程度となっている。つまり、現代における着物は、成人式や結婚式という「一生に一度のセレモニー」に付随する「儀式用品」と言っても差し支えないレベルなのだ。
あまり良いたとえではないが、一般人からすれば、「着物」はお葬式で使う棺桶や祭壇と同じく、質の良し悪しや相場もよく分からない「ナゾの商品」なのだ。
だから、ユーザーである十代女性はもちろん、その保護者も、すすめられた晴れ着がいくらくらいなのか、見極められる人はほとんどいない。「これで20万円は相当お得ですよ」と言われれば、それを信頼するよりない。