「ガード下」それは安くて旨い飲み屋の宝庫である、線路下のスペース。繁華街以外では公園や駐車場として使われていることも多く、狭い日本の土地を有効活用するためには切っても切れない存在であることは間違いないだろう。
ところが大阪に絶対に活用ができないほどに低い、桁下1.2mの現役ガード下があるらしい。1.2mと言えば、小学生低学年の子供がようやく屈まずに通れるぐらいの高さってことだ。
それってどんな形をしているんだ? 歩行者は通れるの? じゃあ、車は?? ……そんなの実際に見に行きたくなるに決まってるじゃないか!
・身長156cmでも屈んで歩きたくなる低さ
それは大阪市淀川区にある。JR塚本駅で降り、北へ向かって徒歩15分ほど。住宅街の向こう側に見えてきた。そう、ここが……
日本最低級を争っている低すぎるガード下だ。
間違いなく、「1.2m」の標識がついている。
「低い」と言葉では聞いていたのだが、実際に目の前に立ってみるとほぼ目線の高さに位置する線路に笑うしかないのだ。低い! 低すぎるぜ!! ……だが、写真ではどれぐらい低いのかが伝わりにくいだろう。
身長156cmの筆者が中に立ってみると、この通り。
たぶん1.2mっていうのはいくらか余裕をもって計測しているのだろう。場所によってはギリギリ直立することはできるが、頭上を電車が通過するのは怖すぎてとても耐えられない! というぐらいだった。つまり実測155~158cmぐらいじゃないだろうか。
そんなギリギリの高さなもんだから、中を歩く際は徒歩にも関わらず屈んでゆっくり進みたくなってしまう。
もちろん場所によっては線路を間近に見ることができる。こんな場所はきっと全国にも数えるほどしか存在しないだろう。
・地元民は爆速で通過
ところが、だ。撮影を始めてわずか10分ほどで気が付いた。これほどまでに通りにくいにも関わらずこのガード下、かなり人通りが多い。それも歩行者ではなく、自転車。
1分間に3台以上は通っているかもしれない。驚くべきことに皆自転車に乗ったまま身を低く屈め、スピードを落とすことなく通過していく。そのため真ん中でボーっと突っ立っていようものなら通行の妨げになってしまうほどだ。
そして自転車だけならまだ現実味があったのだが、
おい! 原付まで行くのかよ!!
しかも爆速だな!!!!
信じられないのだが、こんな道でも車両通行禁止ではないらしい。つまり原付が通行するのは法的には特に問題なし。(さすがに車は通らないようだが)
減速なしに突っ込んでいくその姿は、まるで滑走路を空へ向けてフルパワーで進む飛行機のようだった。それもそのはず。地元の方に話を聞いてみると、ガード下を一気に抜けきらなければ線路で頭を打ってしまうこともあるんだとか。
・地元の男性の証言
勢いよくガード下へ突入していく自転車たちを見ているうちに筆者が気になったのは「怖くないのか?」「なぜここまで人通りが多いのか?」といったことである。
それなら本人たちに聞くのが早いだろう。さっそく自転車で通りかかった方に声をかけてみるが……
筆者「すみませぇーーーん……」
気づいてもらえなかったのか怪しい人物だと思われたのかはわからないが、そのまま走り去ってしまった。実際怪しく見えるとは思うが、速すぎて誤解を解く間もねえ……。
途方に暮れていたところに偶然通りがかったのは徒歩の男性。ここぞ! というばかりに食い気味に話しかけたにも関わらず、有難くも足を止めてインタビューに答えてくれた。
──突然すみません。この低すぎるガード下について地元の方のご意見を教えていただきたいのですが。
男性「構いませんよ」
──ありがとうございます! まず、道の規模に対して通行人が多いように感じるのですが、なんででしょう?
男性「ここはショートカットなんです。もうちょっと東側に行くと踏切があるのですが、みんなそこまで迂回をするのが面倒くさいからこのガード下の通路を利用しています」
後ほど見に行った踏切。低すぎるガード下より東へ徒歩10分ほどの場所にある。
──なるほど。それにしても皆さんこんなスピードで走って怖くないんですか?
男性「慣れかもしれませんね。でも、時々怪我をする人もいるんです」
──け、怪我!? それは穏やかじゃないですね。
男性「南側の方は急な上り坂になっているでしょ? あそこで勢いを殺されちゃって、線路の下から抜けきっていないうちに頭を上げちゃう人が時々いるんですよ。で、ガツーンって頭をぶつけて血が出て、救急車で運ばれることもあるんです」
写真じゃわかりにくいが、出口付近は短くも急激な上り坂。
──だいぶ痛そうですね……。ちなみに実際に救急車が来ているところを見たことはありますか?
男性「ありますよ! なんなら僕が救急車を呼んだことまであります。額から血を流している人に助けを求められて」
──ひえ~っ。それはホラーすぎます!!
・今後の無事故を祈るしかない
男性「昔はこの道も砂利道で、あと20cmぐらい地面が高かったんですよ」
──全体的にこの縁石分ぐらいの高さまであったということなんですね。
男性「ところがある日線路に頭をぶつけて亡くなった方がいて、その親族の方が掘り下げて今の低さになり、その後舗装をされたと聞いたことがあります」
──悲しい出来事ですし対策も必要ですが、その結果出入口の勾配が急になってしまったという。どちらが通行しやすいのかはわからないですね……。
以上が地元の方のお話だ。線路で起きた事故に関しては調べても正確な情報が出てこなかったため、噂の域を出ない。しかしスピードが出ていればそういった事故が起きてもおかしくないと思わされるほどに桁下が低く、線路が近かったというのは事実だ。
できれば自転車を降りて歩いて通行してほしいと思うが、毎日のことだから面倒くさくなってしまう気持ちもよくわかる。どうか頭をぶつけないよう気を付けて通ってもらえるよう願うばかりである。
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
▼取材中1度だけ電車が通過したが、怖すぎて最後は逃げてしまった
▼線路と一緒に記念撮影することだってできちゃうぞ!
▼不法投棄を禁止する旨が強い口調で書かれているが……
▼そのすぐ隣がこの状態である。ちょっと怖かった。