知ってほしい! 避難の妨げになる「正常性バイアス・同調性バイアス」 ACTION!防災・減災ー命のために今うごくー

9月1日は防災の日。そして8月30日から9月5日までは国の定めた防災週間です。日本赤十字社はこれらに合わせて、災害時に働く2つの心理について、啓発キャンペーンを展開します。「災害時、ある心の働きが避難を遅らせる」…誰にでも起こり得る災害時の課題を一緒に乗り越えましょう。


まずは簡単な診断テストに答えてください。

Q. 職場や学校、外出先で非常ベルが鳴っているのを聞いた時、あなたはどうしましたか?

A.
(1)点検だと思って何もしなかった
(2)皆が避難していないので、大丈夫だと思った
(3)煙が出ていないし、大丈夫だと思った 
(4)安全な場所に避難した

これは、簡単にできる「正常性バイアス」と「同調性バイアス」の診断方法です。
この中でバイアス(先入観・偏見)がないのは(4)のみ。(1)〜(3)には下記のバイアスがあります。

「これくらいなら大丈夫」 正常性バイアス

上の質問で回答(1)は「非常ベル」=「点検」という過去の先入観から自分にとって危険な状況と認識できない正常性バイアスが働いています。また、(3)は「非常ベル」=「火事」=「煙が見える」という固定観念から、火事以外の危険の可能性があることを認識しない正常性バイアスが働いています。正常性バイアスは、異常なことが起こった時に「大したことじゃない」と落ち着こうとする心の安定機能のようなもの。日常生活では、不安や心配を減らす役割があります。しかし、緊急事態では逃げ遅れなど、危険に巻き込まれる原因にもなります。

「皆と一緒だから大丈夫」 同調性バイアス

上記の回答(2)は非常ベルが鳴って危機的状況が知らされているにもかかわらず、周囲の人の行動に合わせる同調性バイアスが働いています。同調性バイアスは、集団の中にいるとついつい他人と同じ行動をとってしまう心理で、日常生活では協調性につながります。しかし、災害時には周囲の人の様子をうかがっているうちに避難が遅れる原因にもなります。その反対に周囲に率先して避難する人がいれば、より多くの人を避難に導くことも可能です。

災害時に働くこの2つの心理を知っておくことが、逃げ遅れを防ぎます。

●キャンペーン監修者インタビュー●

tokusyu_komoto.jpg葉大学 大学院 環境防災研究科
准教授 河本 尋子 さん

「私の専門は災害心理学で、地震などの災害時に人間がどのような心理になり、どう行動するかを研究テーマにしています。
 2011年の東日本大震災発生から3年後に、被災された方々へのインタビュー調査を行い、大津波発生時の心理や行動についてお話をうかがいました。その際に、地震発生後に海の様子を見に行った男性が、沖合から津波が迫ってくるのを目撃し、慌てて自転車で内陸に逃げながら『津波が来る!今すぐ逃げろ!』と大声で呼び掛けたにもかかわらず、多くの住民は聞く耳を持たない、中には『うるさい』などと言い返された、という体験談を聞きました。
 あれほどの大津波は予測できなかったので、それは仕方のない反応だったのかもしれません。でも一方で、地震の後にすぐ高台に避難した住民の方々や、上司のひと声で工場の全員が避難した事例など、素早い避難行動で助かったという体験談もありました。
 さきほどの自転車の体験談は『正常性バイアス』の事例の一つです。この『正常性バイアス』は、さまざまな災害の場面でみられ、東日本大震災だけでなく、水害などのように、少しずつ状況が変化して徐々に危険度が増していくような災害でよく見られます。危険が迫るなか、『まだ大丈夫』となかなか避難せず、逃げ遅れてしまうことがあります。
 もう一つの『同調性バイアス』も含めて、大切なことは、こういった心理が働き、今の自分は危機を認識できていないかもしれない、避難が遅れているのかもしれないという意識を持つことです。
 人間の深い心理を、今日明日で変えることは難しいので、まずは二つの心理があることを知り、身近なところから少しずつ備えの意識を高めていくことが、防災・減災の総合力強化につながると考えます。」

●啓発キャンペーン動画紹介●

心が落ち着く特別なメガネ。でも、掛けていることを忘れると…。あなたも掛けている「不安が見えなくなるメガネ」。

ある男性が仕事の失敗で落ち込んでいると、不思議な男が特別なメガネをすすめてくれました…

メガネのおかげで不安が見えなくなった男性。ところが災害が発生すると…

メガネを掛けた男の運命やいかに!?
「正常性バイアス」「同調性バイアス」の理解がすすむキャンペーン動画はコチラから!

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