2011.10.10
自分の脳だけでは扱いが難しい量/複雑さの資料を取り扱う方法
1.アタマを使わなければならない場面では、アタマだけで考えていては答えにたどり着かないことが多い
人のアタマのささやかなワーキングメモリは、あきれるほど小さい。
同時に取り扱うには多すぎる事態にすぐに陥る。
考えるためには補助用具(ワーキングメモリの補助)が必要だ。
といっても、紙とえんぴつがあれば足りる場面が結構多い。
2.なぜ考えているとはいえないか?
逆に手を動かさないならば、
自分では「悩んでいる」つもりでも、それではただ「困っている」に過ぎない。
考えるとは、頭に浮かぶ連想をただ追いかけることではない。
3.一般的な忠告としては「考えるかわりに手を動かせ」
一般的忠告としては、「行き詰ったら、手を動かせ」
しかし忠告というのは、一般的過ぎて、何をすべきかを知らせてくれるが、どのようにすべきかについての情報は含まれない。
忠告はそれだけでは、ほとんどの場合、役に立たない。
補完することが必要。
4.多くの場合使えるであろう、考えるための4つの手作業
いくつか具体的な提案を行う。
アタマだけで考えるには複雑すぎる問題(=考えるに足る問題)や素材を取り扱うのに役立つ。
4つの作業はそれぞれ、他の作業の前処理に使える。
これらの手作業は、「知人にあったら会釈する」のと同じレベルで、習慣化すべき。
一覧する=扱っている情報すべてを一目で見ることができるようにする
1,一覧づくりは、分析のアルファにしてオメガである。
2.まずすべての情報をともに見ることができるようにすることが、分析のスタートになる。
ここで予断を入れて、最初からグループ分けすると、気付くものも気付かなくなる。
3.一覧は、分析の終着点でもある。
分析した結果は、一目で見ることができるように/一枚にまとめられる。
4.しかし扱っている情報/資料の数が増えれば増えるほど、一覧性は損なわれる。
一目で/いっしょに見ることは難しくなる。
5.リストにして並べて一覧できるのは、せいぜい2~30個である。
それを越えると一次元に並べるよりも、二次元上に展開する方が見やすくなる。
6.さらに数が増えると、各項目をカードにして、壁に貼り付ける/床にばらまく方が取り扱いやすい。
しかしこれも、数百個ぐらいになると一望できる範囲を越えていく。
7.短期記憶だけでなく、周辺視の点からも、一望できる域を越えていくと、いよいよ圧縮する=グルーピング、ラベル(タグ)付けを導入しなくてはならなくなる。
圧縮する=要約する、ラベル(タグ)をつけるなどを含む
1.多い目の情報を扱うと、すぐに一望可能限界を超える。
2.なんらかの圧縮によって、一望可能性を回復する。
3.要約=大意をとりまとめる。枝葉を切り落とし幹(主だった内容、重要な点)だけを残す。
何が重要かは、その情報を見るだけではわからないときがある。
他の情報との関係が見えてきてから、時には他の情報をつき合わすことによって、重要性が明らかになることもある。
こうした場合は、変形する、突合するを先に行う。
4.ラベル(タグ)つけ=複数の情報をひとまとめにする=情報の個数を減らす
変形する=〈写し〉かえる、並び替える(ソートする)、再配置するなどを含む
1.先の「一覧する」では、とにかく全部が見えるようにせよ、というばかりで、どのように並べるかについては踏み込まなかった。
2.分類から変形へ
一望することで関係が見えてくれば、発見された関係を軸に、情報を再配置することになる。
3.変形から分類へ
逆に、情報の配置を変えることで、今まで見えなかった関係が見えてくることもある。
4.変形から突合へ
複数の系列を突合するためには、それぞれを系列として整序する必要がある。
5.機械的にソートする
たとえば「出来事」的な情報は、時系列で整理できる。
複数の情報源から得た雑多な情報を、年表(タイムライン)にまとめる。
時間的前後関係は、因果関係の必要条件になる。
整序することで、他の整序した情報と突き合わせることも可能になる。
6.分類(ラベル、タグ)に基づきソートする→同種のものが集まる
7.平面(2次元)に配置する
二項対立から4分割へ
共変関係は、因果関係の条件
8.意外に役立つのが、ただ写す(写しかえる)こと
同じ配置(並べ方)で写しても、アタマを一度通してみると
関係や分類や配置(並べ方)が思い浮かぶことがある。
アウトラインにまとめたら、コピペでなく、あえて書き写してみる。
KJ法だとKJ-A(平面上でグルーピング・プロット)からKJ-B(文章にする=1次元上に再配置)に写すところが肝
突合する=合成する、比較するなどを含む
1.分析の要
新しいものが生まれるとしたら、このプロセス以外にない。
これ以外の作業は、この作業の準備か後始末(フォローアップ)でしかない。
2.異なる情報源からの情報を結びつけ、以下の処理を行う。
3.対比する
どこが同じか? → 共通点を抽出する
どこが違うか? →相違点を抽出する
4.合成する
同じ部分でつなぐ
多面的な見方
5.マトリクスにまとめる
一面では合成のため
一面では比較・対比のため
再び一覧する=圧縮、変形、突合の結果を、人目でみることができるようにする → 必要なだけ繰り返し
(関連記事)
人文系の書き方/資料志向と論旨・構成志向を往復する

人のアタマのささやかなワーキングメモリは、あきれるほど小さい。
同時に取り扱うには多すぎる事態にすぐに陥る。
考えるためには補助用具(ワーキングメモリの補助)が必要だ。
といっても、紙とえんぴつがあれば足りる場面が結構多い。
2.なぜ考えているとはいえないか?
逆に手を動かさないならば、
自分では「悩んでいる」つもりでも、それではただ「困っている」に過ぎない。
考えるとは、頭に浮かぶ連想をただ追いかけることではない。
3.一般的な忠告としては「考えるかわりに手を動かせ」
一般的忠告としては、「行き詰ったら、手を動かせ」
しかし忠告というのは、一般的過ぎて、何をすべきかを知らせてくれるが、どのようにすべきかについての情報は含まれない。
忠告はそれだけでは、ほとんどの場合、役に立たない。
補完することが必要。
4.多くの場合使えるであろう、考えるための4つの手作業
いくつか具体的な提案を行う。
アタマだけで考えるには複雑すぎる問題(=考えるに足る問題)や素材を取り扱うのに役立つ。
4つの作業はそれぞれ、他の作業の前処理に使える。
これらの手作業は、「知人にあったら会釈する」のと同じレベルで、習慣化すべき。
一覧する=扱っている情報すべてを一目で見ることができるようにする
1,一覧づくりは、分析のアルファにしてオメガである。
2.まずすべての情報をともに見ることができるようにすることが、分析のスタートになる。
ここで予断を入れて、最初からグループ分けすると、気付くものも気付かなくなる。
3.一覧は、分析の終着点でもある。
分析した結果は、一目で見ることができるように/一枚にまとめられる。
4.しかし扱っている情報/資料の数が増えれば増えるほど、一覧性は損なわれる。
一目で/いっしょに見ることは難しくなる。
5.リストにして並べて一覧できるのは、せいぜい2~30個である。
それを越えると一次元に並べるよりも、二次元上に展開する方が見やすくなる。
6.さらに数が増えると、各項目をカードにして、壁に貼り付ける/床にばらまく方が取り扱いやすい。
しかしこれも、数百個ぐらいになると一望できる範囲を越えていく。
7.短期記憶だけでなく、周辺視の点からも、一望できる域を越えていくと、いよいよ圧縮する=グルーピング、ラベル(タグ)付けを導入しなくてはならなくなる。
圧縮する=要約する、ラベル(タグ)をつけるなどを含む
1.多い目の情報を扱うと、すぐに一望可能限界を超える。
2.なんらかの圧縮によって、一望可能性を回復する。
3.要約=大意をとりまとめる。枝葉を切り落とし幹(主だった内容、重要な点)だけを残す。
何が重要かは、その情報を見るだけではわからないときがある。
他の情報との関係が見えてきてから、時には他の情報をつき合わすことによって、重要性が明らかになることもある。
こうした場合は、変形する、突合するを先に行う。
4.ラベル(タグ)つけ=複数の情報をひとまとめにする=情報の個数を減らす
変形する=〈写し〉かえる、並び替える(ソートする)、再配置するなどを含む
1.先の「一覧する」では、とにかく全部が見えるようにせよ、というばかりで、どのように並べるかについては踏み込まなかった。
2.分類から変形へ
一望することで関係が見えてくれば、発見された関係を軸に、情報を再配置することになる。
3.変形から分類へ
逆に、情報の配置を変えることで、今まで見えなかった関係が見えてくることもある。
4.変形から突合へ
複数の系列を突合するためには、それぞれを系列として整序する必要がある。
5.機械的にソートする
たとえば「出来事」的な情報は、時系列で整理できる。
複数の情報源から得た雑多な情報を、年表(タイムライン)にまとめる。
時間的前後関係は、因果関係の必要条件になる。
整序することで、他の整序した情報と突き合わせることも可能になる。
6.分類(ラベル、タグ)に基づきソートする→同種のものが集まる
7.平面(2次元)に配置する
二項対立から4分割へ
共変関係は、因果関係の条件
8.意外に役立つのが、ただ写す(写しかえる)こと
同じ配置(並べ方)で写しても、アタマを一度通してみると
関係や分類や配置(並べ方)が思い浮かぶことがある。
アウトラインにまとめたら、コピペでなく、あえて書き写してみる。
KJ法だとKJ-A(平面上でグルーピング・プロット)からKJ-B(文章にする=1次元上に再配置)に写すところが肝
突合する=合成する、比較するなどを含む
1.分析の要
新しいものが生まれるとしたら、このプロセス以外にない。
これ以外の作業は、この作業の準備か後始末(フォローアップ)でしかない。
2.異なる情報源からの情報を結びつけ、以下の処理を行う。
3.対比する
どこが同じか? → 共通点を抽出する
どこが違うか? →相違点を抽出する
4.合成する
同じ部分でつなぐ
多面的な見方
5.マトリクスにまとめる
一面では合成のため
一面では比較・対比のため
再び一覧する=圧縮、変形、突合の結果を、人目でみることができるようにする → 必要なだけ繰り返し
(関連記事)
人文系の書き方/資料志向と論旨・構成志向を往復する
2011.09.20
もう迷わない→勘が役に立たない状況での意思決定のツールとステップ
世の中には、そして人生には、そもそも正解があり得ないような問題がたくさんある。
問題がきちんと定義できなかったり、それぞれ別の面で他よりも優れている解決策が並立したり、どうすれば望ましいのかが今後の自分ではコントロールできない不確定要素に左右されたりする場合がそうである。
そうした場合、少なからぬヒトは、意思決定をやり過ごす。
「人生ってこんなもんさ」とか「悪い状態も今だけだ」とか「いずれ運が向くだろうさ」とか「いくら考えたって答えなんて出ない」などと自分に言い聞かせて、選択することを先送りにし現状維持を決め込む。
しかし本当は、リスクを取らないこともまたそれなりにリスキーであるのと同様に、「選択することを先送りにする」こともひとつの選択であり、しかも悪い選択であることが多い。
未来はどこまで行っても不確実だが、それは意思決定しない理由にはならない。
むしろ不確実だからこそ、意思決定の余地が残されているのである。
以下は、複数の評価軸が考えられるような複雑な問題、すなわちひとつの評価軸さえ考慮すれば間に合うでヒトの直感がそこそこよい結果をあげるような単純な問題ではないものについて、意思決定を改善するステップとツールである。
(下の方法が大変すぎるという方はこちら→いますぐできる→世界一シンプルな意思決定のやり方 読書猿Classic: between / beyond readers
)
1.意思決定のスイッチを入れる
(1)つぶやきの中に問題に直面しているサインを見つける
(2)問題に対して「どうすることもできない」「やり過ごしたい」と思うのは当然のことと捉える
(3)それでも意思決定することを〈決定〉する(スイッチを入れる)
「もういいや、現状維持でいこう」や「もう考えるのはやめよう」「いくら考えたって答えなんて出ない」などと心のなかでつぶやいたら、自分が複雑な問題に直面しているサインである。
ヒトが問題の存在を認めたがらないのは、その問題が自分にはどうすることもできないと感じるからである。
感じること自体はどうしようもない。
できるとしたら、どうすることもできないと感じるものだという事実を知っておくこと、そしてそう感じたとしても、問題と向き合い、解決策を注意深く探れば、失敗を回避したり、不快や不安を軽減できると知ることである。
「どうすることもできないと感じるものだという事実」は知識として知ることができるが、「そう感じたとしても、問題と向き合い、解決策を注意深く探れば、失敗を回避したり、不快や不安を軽減できる」ことを知るには、体験する以外にない。
「スイッチを入れる」ことを〈儀式化〉しておくのも手だ。
つぶやきの中に問題に直面しているサインを見つけたら、間をおかず、
・赤いペンで手帳に書きこむ
・最期までやるという自己契約書を書く
・誰かを証人に立てる
といった所作を決めておくといい。
2.問題を定義する
(1)問題を具体的な言葉で表現できないか?→what: 何が問題か?
(2)問題が生じる/切迫度を増す時があれば、それは何時か?→when: いつ問題は起こるのか?
(3)問題が生じる/目立ってくる特定の場所があれば、それはどこか?→where: どこで問題は起こるのか?
(4)この問題は自分の行動の中でどのように現れてくるのか→how: どのように問題は起こるのか?
(5)この問題はどうして生じるのだろうか?→why: なぜ問題は起こるのか?
問題の存在を認めたら、問題を定義しよう。
定義は詳細なほど、あとのステップがやりやすくなる。
ここでは、よく使われる4W1Hのフォーマットを使おう。
汎用性が高く、他の場面でも活用可能であり、また現に使われているので改めての習得も不要である(あるいはその手間は少なくて済む)。
3.当面の目的を明確にし、同時にいくつかの案を出す
(1)why分析
問題または解決案について「それは何故か?」を問い、より上位の/より根本的な目的を明らかにする。
(2)how分析
問題または解決案について「それを(解決)するにはどうしたら?」と問い、解決策を具体化し、また解決策の選択肢を増やす。
一旦より上位の/より根本的な目的を検討してから、具体的な解決策へと再度降りていくやり方は、解決策の幅を広げ、行き止まりになるのを避けやすくなる。
例とそのツールを示そう。
下の図は、赤い矢印がwhy分析の経路、青い矢印がhow分析の経路を示す。
太枠の四角「学校がつまらない」が最初の問題である。
ここからすぐにhow分析で解決策へ進む(青い矢印)と「退学する」「転部する」といった解決策にたどり着く。
これに対して、まずwhy分析を行い、より上位の/より根本的な目的へ向かうことで、選択肢の幅を広げている。
またさらに上位へ進んだ後、how分析へ進むと、先程の具体性を持たず宙ぶらりんだった「転部する」という解決策も、他の職種→カウンセラー、弁護士、映画監督という系列が結びつき、取り上げるに足る解決策に転換される。

4.案を絞り込む
トベルスキーの属性値による排除法 Tversky's elimination by aspects (EBA) を一部変更した方法で、解決策の数を取り扱い可能なまでに(5つ程度に)減らす(絞り込む)。
(1)検討すべき条件(側面)をリストアップする
(2)リストアップされた条件(側面)を、「これだけは欠けていてはならない条件」と「あれば望ましい条件」とに分けて、「これだけは欠けていてはならない条件」
(3)欠けていてはならない条件のうち一番に重要な条件について、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(4)欠けていてはならない条件のうち二番目に重要な条件について、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(5)以上を、欠けていてはならない条件がなくなるまで繰り返す。
オリジナルのトベルスキーの属性値による排除法 Tversky's elimination by aspects (EBA) は次のようなものである。
(1)もっとも重要な、これだけは欠けていてはならない条件を決め、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(2)二番目に重要な条件を決め、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(3)三番目に……(以下略)、残る解決策がひとつ、もしくは取り扱い可能な数になるまで繰り返す。
EBAは非補償型の意思決定法である。補償型の場合はいわば総合点で評価するので、ある属性の評価が低くても、評価が高い属性があれば、その欠点は補われる。非補償型の場合は、そうした補いはできない。つまり、ある属性の評価が低いだけで、他の属性での評価がいくら高くても(総合評価なら最上位に来るものであっても)排除されてしまい、必ずしもベストの選択にならない。
5.案を評価する
次の4つの側面について、プラス面とマイナス面を、残っている解決策すべてについて、リストアップする。
つまり解決策ひとつについて8つの評価の側面があるが、まず問題についての考慮項目を8つの評価の側面について考える。
たとえば職業選択という問題だと、「自分にとっての実利的評価」には〈収入〉や〈仕事の難易〉〈安定性〉などが、〈自分の価値観による評価」には〈自負心プライド〉〈メシの種以上のものか?〉などが考慮項目として挙げられるだろう。
どれほどよい解決策であっても、いくらかの短所/欠点を含んでいる。
言い換えれば、どのような解決策であっても、代償は不可欠である。
代償を折込み済みにするためにもマイナス面の評価は不可欠である。
損得や有利不利についての実利的評価とは別に、価値観からの評価を行うのは、解決策の実施と持続に大きな影響を与えるからである。
どれだけ利益となるものであっても、意にそぐわぬ、価値観に背く解決策では、やる気が起こらず、取りやめる理由を探し続けることにもなりかねない。
自分にとっての評価だけでなく、(自分にとって重要な)他人にとっての評価も考慮するのは、決定された解決策を実施するにあたって、そうした他人は実施の妨げにもなり、後方ないし側面支援にもなるからである。
決定された解決策が実施されない、または実施されたとしても途中で頓挫する大きな要因のもうひとつが、自分にとって重要な、周囲の他人からの働きがけである。
これは強い意志を持っていればなんとかなるといった類いの問題ではない。
しかし、あらかじめ折込んでおけば、対処しようがないものでもない。
我々は人の間で生きている。問題解決も意思決定も、人の間で行われる。それを捨象してはうまくいかない。
6.ひとつの案に決定する
(1)それぞれの解決策についての評価を見直す。
(2)どの解決策の評価にも登場する考慮項目は、解決策を選択することには役に立たないから、線を引いて抹消する。
(3)評価のうち、もっとも重要だと思われるものには7点を、もっとも重要でないと思われるものには1点を与える。
(4)それぞれの解決策について、プラスの得点の合計からマイナスの得点の合計を引き、合計点を計算する。
(5)もっとも得点が高いものが、決定すべき解決策である。
(関連記事)
・問題解決を導く50といくつかの言葉/IDEAL(理想)の問題解決5ステップ 読書猿Classic: between / beyond readers

問題がきちんと定義できなかったり、それぞれ別の面で他よりも優れている解決策が並立したり、どうすれば望ましいのかが今後の自分ではコントロールできない不確定要素に左右されたりする場合がそうである。
そうした場合、少なからぬヒトは、意思決定をやり過ごす。
「人生ってこんなもんさ」とか「悪い状態も今だけだ」とか「いずれ運が向くだろうさ」とか「いくら考えたって答えなんて出ない」などと自分に言い聞かせて、選択することを先送りにし現状維持を決め込む。
しかし本当は、リスクを取らないこともまたそれなりにリスキーであるのと同様に、「選択することを先送りにする」こともひとつの選択であり、しかも悪い選択であることが多い。
未来はどこまで行っても不確実だが、それは意思決定しない理由にはならない。
むしろ不確実だからこそ、意思決定の余地が残されているのである。
以下は、複数の評価軸が考えられるような複雑な問題、すなわちひとつの評価軸さえ考慮すれば間に合うでヒトの直感がそこそこよい結果をあげるような単純な問題ではないものについて、意思決定を改善するステップとツールである。
(下の方法が大変すぎるという方はこちら→いますぐできる→世界一シンプルな意思決定のやり方 読書猿Classic: between / beyond readers
1.意思決定のスイッチを入れる
(1)つぶやきの中に問題に直面しているサインを見つける
(2)問題に対して「どうすることもできない」「やり過ごしたい」と思うのは当然のことと捉える
(3)それでも意思決定することを〈決定〉する(スイッチを入れる)
「もういいや、現状維持でいこう」や「もう考えるのはやめよう」「いくら考えたって答えなんて出ない」などと心のなかでつぶやいたら、自分が複雑な問題に直面しているサインである。
ヒトが問題の存在を認めたがらないのは、その問題が自分にはどうすることもできないと感じるからである。
感じること自体はどうしようもない。
できるとしたら、どうすることもできないと感じるものだという事実を知っておくこと、そしてそう感じたとしても、問題と向き合い、解決策を注意深く探れば、失敗を回避したり、不快や不安を軽減できると知ることである。
「どうすることもできないと感じるものだという事実」は知識として知ることができるが、「そう感じたとしても、問題と向き合い、解決策を注意深く探れば、失敗を回避したり、不快や不安を軽減できる」ことを知るには、体験する以外にない。
「スイッチを入れる」ことを〈儀式化〉しておくのも手だ。
つぶやきの中に問題に直面しているサインを見つけたら、間をおかず、
・赤いペンで手帳に書きこむ
・最期までやるという自己契約書を書く
・誰かを証人に立てる
といった所作を決めておくといい。
2.問題を定義する
(1)問題を具体的な言葉で表現できないか?→what: 何が問題か?
(2)問題が生じる/切迫度を増す時があれば、それは何時か?→when: いつ問題は起こるのか?
(3)問題が生じる/目立ってくる特定の場所があれば、それはどこか?→where: どこで問題は起こるのか?
(4)この問題は自分の行動の中でどのように現れてくるのか→how: どのように問題は起こるのか?
(5)この問題はどうして生じるのだろうか?→why: なぜ問題は起こるのか?
問題の存在を認めたら、問題を定義しよう。
定義は詳細なほど、あとのステップがやりやすくなる。
ここでは、よく使われる4W1Hのフォーマットを使おう。
汎用性が高く、他の場面でも活用可能であり、また現に使われているので改めての習得も不要である(あるいはその手間は少なくて済む)。
3.当面の目的を明確にし、同時にいくつかの案を出す
(1)why分析
問題または解決案について「それは何故か?」を問い、より上位の/より根本的な目的を明らかにする。
(2)how分析
問題または解決案について「それを(解決)するにはどうしたら?」と問い、解決策を具体化し、また解決策の選択肢を増やす。
一旦より上位の/より根本的な目的を検討してから、具体的な解決策へと再度降りていくやり方は、解決策の幅を広げ、行き止まりになるのを避けやすくなる。
例とそのツールを示そう。
下の図は、赤い矢印がwhy分析の経路、青い矢印がhow分析の経路を示す。
太枠の四角「学校がつまらない」が最初の問題である。
ここからすぐにhow分析で解決策へ進む(青い矢印)と「退学する」「転部する」といった解決策にたどり着く。
これに対して、まずwhy分析を行い、より上位の/より根本的な目的へ向かうことで、選択肢の幅を広げている。
またさらに上位へ進んだ後、how分析へ進むと、先程の具体性を持たず宙ぶらりんだった「転部する」という解決策も、他の職種→カウンセラー、弁護士、映画監督という系列が結びつき、取り上げるに足る解決策に転換される。
4.案を絞り込む
トベルスキーの属性値による排除法 Tversky's elimination by aspects (EBA) を一部変更した方法で、解決策の数を取り扱い可能なまでに(5つ程度に)減らす(絞り込む)。
(1)検討すべき条件(側面)をリストアップする
(2)リストアップされた条件(側面)を、「これだけは欠けていてはならない条件」と「あれば望ましい条件」とに分けて、「これだけは欠けていてはならない条件」
(3)欠けていてはならない条件のうち一番に重要な条件について、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(4)欠けていてはならない条件のうち二番目に重要な条件について、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(5)以上を、欠けていてはならない条件がなくなるまで繰り返す。
オリジナルのトベルスキーの属性値による排除法 Tversky's elimination by aspects (EBA) は次のようなものである。
(1)もっとも重要な、これだけは欠けていてはならない条件を決め、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(2)二番目に重要な条件を決め、それを含んでいない解決策をすべて落とす。
(3)三番目に……(以下略)、残る解決策がひとつ、もしくは取り扱い可能な数になるまで繰り返す。
EBAは非補償型の意思決定法である。補償型の場合はいわば総合点で評価するので、ある属性の評価が低くても、評価が高い属性があれば、その欠点は補われる。非補償型の場合は、そうした補いはできない。つまり、ある属性の評価が低いだけで、他の属性での評価がいくら高くても(総合評価なら最上位に来るものであっても)排除されてしまい、必ずしもベストの選択にならない。
5.案を評価する
次の4つの側面について、プラス面とマイナス面を、残っている解決策すべてについて、リストアップする。
つまり解決策ひとつについて8つの評価の側面があるが、まず問題についての考慮項目を8つの評価の側面について考える。
たとえば職業選択という問題だと、「自分にとっての実利的評価」には〈収入〉や〈仕事の難易〉〈安定性〉などが、〈自分の価値観による評価」には〈自負心プライド〉〈メシの種以上のものか?〉などが考慮項目として挙げられるだろう。
自分の | 他人の | |
実利的評価 | 自分にとっての実利的評価 | 他人にとっての実利的評価 |
価値観からの評価 | 自分の価値観による評価 | 他人の価値観による評価 |
どれほどよい解決策であっても、いくらかの短所/欠点を含んでいる。
言い換えれば、どのような解決策であっても、代償は不可欠である。
代償を折込み済みにするためにもマイナス面の評価は不可欠である。
損得や有利不利についての実利的評価とは別に、価値観からの評価を行うのは、解決策の実施と持続に大きな影響を与えるからである。
どれだけ利益となるものであっても、意にそぐわぬ、価値観に背く解決策では、やる気が起こらず、取りやめる理由を探し続けることにもなりかねない。
自分にとっての評価だけでなく、(自分にとって重要な)他人にとっての評価も考慮するのは、決定された解決策を実施するにあたって、そうした他人は実施の妨げにもなり、後方ないし側面支援にもなるからである。
決定された解決策が実施されない、または実施されたとしても途中で頓挫する大きな要因のもうひとつが、自分にとって重要な、周囲の他人からの働きがけである。
これは強い意志を持っていればなんとかなるといった類いの問題ではない。
しかし、あらかじめ折込んでおけば、対処しようがないものでもない。
我々は人の間で生きている。問題解決も意思決定も、人の間で行われる。それを捨象してはうまくいかない。
6.ひとつの案に決定する
(1)それぞれの解決策についての評価を見直す。
(2)どの解決策の評価にも登場する考慮項目は、解決策を選択することには役に立たないから、線を引いて抹消する。
(3)評価のうち、もっとも重要だと思われるものには7点を、もっとも重要でないと思われるものには1点を与える。
(4)それぞれの解決策について、プラスの得点の合計からマイナスの得点の合計を引き、合計点を計算する。
(5)もっとも得点が高いものが、決定すべき解決策である。
(関連記事)
・問題解決を導く50といくつかの言葉/IDEAL(理想)の問題解決5ステップ 読書猿Classic: between / beyond readers
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決定を支援する (認知科学選書) (1988/06) 小橋 康章 商品詳細を見る |
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2011.01.06
辞書を引くこと、図書館を使うことは「読み書き」の一部である
調べものや図書館について何回か書いた。
もっともっとやさしいもの、初心者向けのものを書け、という声が寄せられた。
本当に調べものに困って、図書館で「遭難」しているような人は、たとえば
*学術論文を読めと言われ、googleに「学術 論文」と入力して検索結果を見て途方にくれたり、
*文献リストをひとつずつ図書館のOPACに入力して、書籍しか見つけられずに「半分しか見つかりませんでした」と言ってきたり
*見て歩ける棚にあるのが図書館にある本のすべてだと思っていたり
する。そんな人に役立つように書け、というリクエストである。
辞書の引き方だとか図書館の使い方を学校で教えていない、教えるべきじゃないか、と書いてあるのを時々見かけるが、そう書く人が代わりに何か教えてくれる訳でもないらしい。
おせっかいな気がしていたが、そういうものを少し書いてみる。
取り上げるのは「読み書き」の一部であるから、「読み書き」がそれほど得意でない人にも読めるように書くべきなのだが、実はそういったことは得意でない。
せめて少しはましなように問答形式にして、答えも詳しいことはあれこれ言わず、短く言い切るようにした。言い足りてないことはもちろんあるが、「ないよりはまし」と思うことにする。
問:調べものはどうやってすればいいですか?
答:人に尋ねたり、ネットを検索したり、調べもののために作られた本をつかったりして調べます。
問:人に尋ねる時は、どうすればいいですか?
答:自分で調べられることは調べた上で尋ねます。
答:どこまで自分で調べたか、あらかじめ説明しておくと、相手と自分の時間を節約できます。
答:混み入ったことを調べている時は、「どこまで調べてわかっているか」「どこの部分が分からないから知りたいのか」を書いて、短くまとめておくとよいです。
問:誰に尋ねればいいですか?
答:知りたいことを知っていそうな人に尋ねます。
答:質問を受け付けて答えるのを仕事にしている人がいます。学校の先生、図書館の司書、メーカーのカスタマーズ・サポートなどがアプローチしやすいでしょう。
答:質問できる人もピンキリです(よい答えが得られる人もいれば、そうでない人もいる、という意味です)。普段から質問できる人、よい答えが得られる人をストックしておくとよいでしょう。
答:つまらないことばかり尋ねていると、本当に尋ねたいときに答えてくれなくなるかもしれないので注意しましょう。
問:忙しい人と暇な人、どちらに尋ねればいいですか?
答:忙しい人は、答えてあげようと思っても、その時間がとれないかもしれません。
答:暇な人は、教えて欲しいこと以外のことを、ながながと話す危険があります。
問:ネットで調べものをするには、どうすればいいですか?
答:とりあえず検索エンジンを使いましょう。googleだけでも結構間に合います。
答:検索につかうキーワードは2つ以上入力しましょう。
答:検索結果に探しているものが見当たらない時は、検索に使うキーワードを追加しましょう。
答:固有名詞を使えると、余計なものがヒットしにくくなるかもしれません。隠語、スラングも効果的ですが、いけないものを見つけるのにも使われるので、深くは触れません。
答:「探し方」という言葉を追加すると、うまくいくこともあります。
答:検索エンジンで探すときの考え方は、次の記事を参考にしてください。
googleで賢く探すために最低知っておくべき5つのこと 読書猿Classic: between / beyond readers
問:ネットで調べものをするのに、他によいところはありますか?
答:「リサーチ・ナビ」は使えるようになっておきましょう。
答:「インターネットで文献探索2013年版」と「ACADEMIC RESOURCE GUIDE」と「インターネット学術情報インデックス」はブックマークしておきましょう。
次の記事も参考になると思います。
すべての学問分野をネットで無料で探すための210個のリソースまとめー新入生におくる探し方その2 読書猿Classic: between / beyond readers

問:調べもののための本にはどんなものがありますか?
答:大きく分けると「答えが書いてある本」と「答えのある場所が書いてある本」の2種類があります。
答:「答えが書いてある本」の代表は、辞書(dictionary)と事典(encyclopedia)です。
答:「答えのある場所が書いてある本」の代表に目録(catalog)があります。
問:辞書(dictionary)と事典(encyclopedia)の違いはなんですか?
答:言葉を調べるものが辞書で、事実や出来事を調べるものが事典です。
答:しかし事典っぽい辞書や辞書っぽい事典が結構あって、しかも人気が高かったりするので、ややこしいです。
答:個人的には、索引のついてないものを(半ば蔑んで)辞書と呼んでいます。具体的には『広辞苑』や各種「ウェブスター辞典 Webster's Dictionary」 などは、百科事典的な項目を多く含みますが、辞書でしかありません。
問:辞書の使う時は、どうしたらいいですか?
答:一番大切なことは「定位置」を決めることです。
答:探さなくても自然に手が伸びて、意識しなくても辞書を開くことができるのが理想です。
答:聞き手や筆記具、体の大きさなどによりますが、机に座っているのであれば、両肘から半径70センチ以内に定位置を決めます。
答:本棚にしまうなど、もっての他です。必ず物理的に手が届く場所に、すぐ使える状態で置くこと。
答:辞書は箱から出しておくのは当然ですが、カバーなど少しでも邪魔になるものは外しておきます。
答:辞書が汚れる? 辞書は消耗品です。壊れるまで引いてなんぼです。
答:より楽に引ければより多く引けるようになり、より多く引けばより速く引けるようになります。
問:たくさんの辞書を使うので、定位置といっても机に置き切れません。どうしたらいいですか?
答:最も使う辞書を定位置に、それ以外の辞書は机の本立てに置きます。
答:これは一案ですが、上下逆さまに辞書を立てている人がいます。辞書を取り出す際に、90度回転するので、背表紙を受け止めると、すぐ引ける状態になるからです(図を参照)。

問:事典を使う時は、どうしたらいいですか?
答:索引を使いましょう。
答:紙の事典を使うには付箋が必須アイテムです。まず調べたいことを索引で引きます。ここに付箋を一つ。索引が指示する巻の該当ページをひとつひとつ開いて行き、該当項目にひとつずつ付箋を貼ります。不意の用事が入り、事典を閉じたとしても最初からやり直しにならないためです。
答:付箋が貼り終わったら、すべての項目をコピーするか、1項目ずつカードに書き写します。
答:たとえば『世界大百科事典』(平凡社)で「孫文」を索引で引くと20カ所の指示があります。すべてを書き写すと、孫文についての20枚のカードができることになります。
答:写し終わってから、すべての項目をかわるがわる読んでいくのです。
答:めんどくさい? でも、これが普通のやり方です。
答:電子辞書ならコピペするだけなので、もっと楽にできます。オススメです。
答:電子辞書の場合は合わせて、全文検索をすることをすすめます。インデックスの付け方が完全でない場合があって、普通の検索だと探し漏れする恐れがあるからです。
答:同じ事典でも、同じことについて書いていても、違う項目だと違うことが書いてある場合があります。違う事典でも調べる時には、なおさらです。
答:書き写したものを比べて共通する部分にマーカー等をつかって印を付けます。
答:その後、それぞれの項目で異なるところを見ていくのです。
答:複数の事典で同じ項目を調べ、ひとつにまとめる(引用するのでなく「自分の言葉」で書く)ことは、レポート書きの基礎トレーニングによいです。アカデミック・ライティングの(マニュアルでなく)トレーニング本にも出てきます。
問:辞書を引くのがうまくなるにはどうしたらいいですか?
答:毎日引きましょう。日課にするのがよいです。
答:手帳や日記やブログやライフログに「今日引いた言葉」をメモしておくと習慣化しやすいです。アイデアの呼び水にもなります。また後で読み返してみると意外におもしろいです。
問:「答えのある場所が書いてある本」はどんな時に使うのですか?
答:図書館を活用するために使います。「答えのある場所が書いてある本」を使い始めると、図書館が無料貸本屋でなくなります。すごい武器になります。
問:どうすれば使えるようになりますか?
答:調べたいことをノートに書いて、図書館のレファレンス・カウンターへ行って質問しましょう。どんな「答えのある場所が書いてある本」があるかを知るのもいいですが、知るだけでは単なる豆知識に終わります。体を使って自分で調べて覚えたことは、なかなか忘れません。
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もっともっとやさしいもの、初心者向けのものを書け、という声が寄せられた。
本当に調べものに困って、図書館で「遭難」しているような人は、たとえば
*学術論文を読めと言われ、googleに「学術 論文」と入力して検索結果を見て途方にくれたり、
*文献リストをひとつずつ図書館のOPACに入力して、書籍しか見つけられずに「半分しか見つかりませんでした」と言ってきたり
*見て歩ける棚にあるのが図書館にある本のすべてだと思っていたり
する。そんな人に役立つように書け、というリクエストである。
辞書の引き方だとか図書館の使い方を学校で教えていない、教えるべきじゃないか、と書いてあるのを時々見かけるが、そう書く人が代わりに何か教えてくれる訳でもないらしい。
おせっかいな気がしていたが、そういうものを少し書いてみる。
取り上げるのは「読み書き」の一部であるから、「読み書き」がそれほど得意でない人にも読めるように書くべきなのだが、実はそういったことは得意でない。
せめて少しはましなように問答形式にして、答えも詳しいことはあれこれ言わず、短く言い切るようにした。言い足りてないことはもちろんあるが、「ないよりはまし」と思うことにする。
問:調べものはどうやってすればいいですか?
答:人に尋ねたり、ネットを検索したり、調べもののために作られた本をつかったりして調べます。
問:人に尋ねる時は、どうすればいいですか?
答:自分で調べられることは調べた上で尋ねます。
答:どこまで自分で調べたか、あらかじめ説明しておくと、相手と自分の時間を節約できます。
答:混み入ったことを調べている時は、「どこまで調べてわかっているか」「どこの部分が分からないから知りたいのか」を書いて、短くまとめておくとよいです。
問:誰に尋ねればいいですか?
答:知りたいことを知っていそうな人に尋ねます。
答:質問を受け付けて答えるのを仕事にしている人がいます。学校の先生、図書館の司書、メーカーのカスタマーズ・サポートなどがアプローチしやすいでしょう。
答:質問できる人もピンキリです(よい答えが得られる人もいれば、そうでない人もいる、という意味です)。普段から質問できる人、よい答えが得られる人をストックしておくとよいでしょう。
答:つまらないことばかり尋ねていると、本当に尋ねたいときに答えてくれなくなるかもしれないので注意しましょう。
問:忙しい人と暇な人、どちらに尋ねればいいですか?
答:忙しい人は、答えてあげようと思っても、その時間がとれないかもしれません。
答:暇な人は、教えて欲しいこと以外のことを、ながながと話す危険があります。
問:ネットで調べものをするには、どうすればいいですか?
答:とりあえず検索エンジンを使いましょう。googleだけでも結構間に合います。
答:検索につかうキーワードは2つ以上入力しましょう。
答:検索結果に探しているものが見当たらない時は、検索に使うキーワードを追加しましょう。
答:固有名詞を使えると、余計なものがヒットしにくくなるかもしれません。隠語、スラングも効果的ですが、いけないものを見つけるのにも使われるので、深くは触れません。
答:「探し方」という言葉を追加すると、うまくいくこともあります。
答:検索エンジンで探すときの考え方は、次の記事を参考にしてください。
googleで賢く探すために最低知っておくべき5つのこと 読書猿Classic: between / beyond readers
問:ネットで調べものをするのに、他によいところはありますか?
答:「リサーチ・ナビ」は使えるようになっておきましょう。
答:「インターネットで文献探索2013年版」と「ACADEMIC RESOURCE GUIDE」と「インターネット学術情報インデックス」はブックマークしておきましょう。
次の記事も参考になると思います。
すべての学問分野をネットで無料で探すための210個のリソースまとめー新入生におくる探し方その2 読書猿Classic: between / beyond readers
問:調べもののための本にはどんなものがありますか?
答:大きく分けると「答えが書いてある本」と「答えのある場所が書いてある本」の2種類があります。
答:「答えが書いてある本」の代表は、辞書(dictionary)と事典(encyclopedia)です。
答:「答えのある場所が書いてある本」の代表に目録(catalog)があります。
問:辞書(dictionary)と事典(encyclopedia)の違いはなんですか?
答:言葉を調べるものが辞書で、事実や出来事を調べるものが事典です。
答:しかし事典っぽい辞書や辞書っぽい事典が結構あって、しかも人気が高かったりするので、ややこしいです。
答:個人的には、索引のついてないものを(半ば蔑んで)辞書と呼んでいます。具体的には『広辞苑』や各種「ウェブスター辞典 Webster's Dictionary」 などは、百科事典的な項目を多く含みますが、辞書でしかありません。
問:辞書の使う時は、どうしたらいいですか?
答:一番大切なことは「定位置」を決めることです。
答:探さなくても自然に手が伸びて、意識しなくても辞書を開くことができるのが理想です。
答:聞き手や筆記具、体の大きさなどによりますが、机に座っているのであれば、両肘から半径70センチ以内に定位置を決めます。
答:本棚にしまうなど、もっての他です。必ず物理的に手が届く場所に、すぐ使える状態で置くこと。
答:辞書は箱から出しておくのは当然ですが、カバーなど少しでも邪魔になるものは外しておきます。
答:辞書が汚れる? 辞書は消耗品です。壊れるまで引いてなんぼです。
答:より楽に引ければより多く引けるようになり、より多く引けばより速く引けるようになります。
問:たくさんの辞書を使うので、定位置といっても机に置き切れません。どうしたらいいですか?
答:最も使う辞書を定位置に、それ以外の辞書は机の本立てに置きます。
答:これは一案ですが、上下逆さまに辞書を立てている人がいます。辞書を取り出す際に、90度回転するので、背表紙を受け止めると、すぐ引ける状態になるからです(図を参照)。
問:事典を使う時は、どうしたらいいですか?
答:索引を使いましょう。
答:紙の事典を使うには付箋が必須アイテムです。まず調べたいことを索引で引きます。ここに付箋を一つ。索引が指示する巻の該当ページをひとつひとつ開いて行き、該当項目にひとつずつ付箋を貼ります。不意の用事が入り、事典を閉じたとしても最初からやり直しにならないためです。
答:付箋が貼り終わったら、すべての項目をコピーするか、1項目ずつカードに書き写します。
答:たとえば『世界大百科事典』(平凡社)で「孫文」を索引で引くと20カ所の指示があります。すべてを書き写すと、孫文についての20枚のカードができることになります。
答:写し終わってから、すべての項目をかわるがわる読んでいくのです。
答:めんどくさい? でも、これが普通のやり方です。
答:電子辞書ならコピペするだけなので、もっと楽にできます。オススメです。
答:電子辞書の場合は合わせて、全文検索をすることをすすめます。インデックスの付け方が完全でない場合があって、普通の検索だと探し漏れする恐れがあるからです。
答:同じ事典でも、同じことについて書いていても、違う項目だと違うことが書いてある場合があります。違う事典でも調べる時には、なおさらです。
答:書き写したものを比べて共通する部分にマーカー等をつかって印を付けます。
高木貞治 (たかぎていじ) 1875‐1960(明治8‐昭和35) 日本最初の世界的数学者として知られる。岐阜県に生まれ,三高を経て1897年東京帝国大学卒業。在学中藤沢利喜太郎のセミナリー演習録に《アーベル方程式について》を発表。98年より3年間ドイツに留学。ベルリンおよびゲッティンゲン大学に学び,ゲッティンゲンで始めた虚数乗法論に関する研究により,1903年理学博士の学位を得た。1900年東大助教授,04年同教授。第1次世界大戦中より,代数体のアーベル拡大の数論についての研究を進め,20年《東大紀要》に発表。それが〈高木類体論〉として世界に知られるようになった。今世紀の数論のもっとも重要な結果の一つである。東大では代数,数論のほか解析学についても講義し,名著《解析概論》(1938)がある。36年定年退職。1925年学士院会員。40年文化勲章。55年東京と日光で開かれた代数的数論に関する国際会議の名誉議長。26編の欧文論文は,《TheCollected Papers of Teiji Takagi》として73年岩波書店より出版されている。( from『世界大百科事典』平凡社) 高木貞治 (たかぎていじ) (1875―1960)数学者。岐阜県本巣郡の生まれ。岐阜県尋常中学校、京都の第三高等中学校を経て、1894年(明治27)東京の帝国大学理科大学数学科に入学し、菊池大麓{だいろく}、藤沢利喜太郎{りきたろう}のもとで学んだ。97年、卒業して大学院に進み、早くも翌年には、当時の日本としては水準の高い『新撰{しんせん}算術』『新撰代数学』という二冊の数学書を著した。同年から文部省の留学生としてドイツに渡り、ベルリン大学、ゲッティンゲン大学に学び、ことにヒルベルトに大いに刺激を受けて代数的整数論の研究を志した。そして「クロネッカーの青春の夢」とよばれる虚数乗法に関する未解決の問題について、基礎体がガウスの数体の場合に解決した。1901年(明治34)帰国、東京帝国大学理科大学助教授となり、03年学位を取得、翌年教授となった。高木の名を世界的にしたのは、14年(大正3)から研究を始め、20年に発表された「高木の類体論」である。相対アーベル体は類体であるという定理を中心とするその理論は、代数的整数論における20世紀最高の業績の一つである。36年(昭和11)東京帝国大学を退職、40年文化勲章を受けた。著書に『解析概論』『代数的整数論』がある。( from『日本大百科全書』小学館) |
答:その後、それぞれの項目で異なるところを見ていくのです。
答:複数の事典で同じ項目を調べ、ひとつにまとめる(引用するのでなく「自分の言葉」で書く)ことは、レポート書きの基礎トレーニングによいです。アカデミック・ライティングの(マニュアルでなく)トレーニング本にも出てきます。
問:辞書を引くのがうまくなるにはどうしたらいいですか?
答:毎日引きましょう。日課にするのがよいです。
答:手帳や日記やブログやライフログに「今日引いた言葉」をメモしておくと習慣化しやすいです。アイデアの呼び水にもなります。また後で読み返してみると意外におもしろいです。
問:「答えのある場所が書いてある本」はどんな時に使うのですか?
答:図書館を活用するために使います。「答えのある場所が書いてある本」を使い始めると、図書館が無料貸本屋でなくなります。すごい武器になります。
問:どうすれば使えるようになりますか?
答:調べたいことをノートに書いて、図書館のレファレンス・カウンターへ行って質問しましょう。どんな「答えのある場所が書いてある本」があるかを知るのもいいですが、知るだけでは単なる豆知識に終わります。体を使って自分で調べて覚えたことは、なかなか忘れません。
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