千五百七十七年 七月下旬
静子たちが藤次郎(後の伊達政宗のこと)の
安土にある静子の屋敷から四半刻(30分ほど)ほど歩いたところに存在する不自然に広大な牧場を、みつおは先ほど知り合ったばかりの少年を伴って歩いていた。
本来尾張で妻子と共に生活しているはずのみつおが安土に来ている理由こそが、この巨大な牧場にある。
尾張に於いてみつおと言えば畜産業の権威であり、領主である静子が
静子とみつおの長年に亘る尽力のお陰で、尾張領民の食生活水準は他の追随を許さない領域に達しており、安土に移り住んだ信長にとっては自分のお膝元の体たらくに
そこで安土にも畜産業を根付かせるべく信長主導による広大な牧場が作られ、各種家畜と共に技術指導をするべくみつおまでが
みつおと少年との出会いは偶然だった。静子の屋敷に来客があるとのことで、精肉してあるアグー豚の肉を収めに行った。
用事を済ませたみつおが勝手口から牧場へ戻ろうとした折、見たところ十歳前後の少年が庭石に腰掛けて所在なさげに池の魚を眺めているのを見つける。
少年は小綺麗な
と、その時だった。少年の腹が盛大に空腹を訴えた。少し離れていたみつおにも届く豪快な腹の音と、下腹を押さえて嘆息する少年の姿にみつおは一計を思いつく。
「坊や、お腹が空いているのかい?」
「え? おじさんはこの家の方ですか?」
「うん。まあ関係者と言えるだろうね。坊やは時間あるかな? ちょうどおじさんもお腹が空いたから、揚げたコロッケを食べようと思っていたんだ。一緒にどうだい?」
「ころっけですか? あ、私は藤次郎と申します。散策していたら道に迷ってしまい、途方に暮れておりました」
「藤次郎君か。年若いのにしっかりしているね、それじゃあ腹ごなしをしたらおじさんが一緒にご家族を探してあげるよ。まずはコロッケを食べよう、美味しいよ?」
藤次郎はみつおの優し気な風貌と、何やら美味しいらしい食べ物をご馳走してくれるという親切心に甘えることにする。
「ありがたく存じます。世話役の小十郎も気を揉んでおりましょう、恐れ入りますが食後にご案内頂けますか?」
「いいよ。しっかりしたお子さんだ。ともあれ、まずは腹ごしらえしようか。少し歩いたところにおじさんの屋敷があるから、そこで一緒にご飯を食べよう」
みつおはそう言うと藤次郎の前に屈んで手を差し伸べ、彼もまた恐る恐るみつおの手を取ると連れ立って歩き始める。
先にみつおが述べたように、安土の静子邸とみつおの屋敷は目と先ほどの近さにあった。静子邸の勝手口からみつお邸の正門が見えているのだから、ご近所さんと言っても差支えない距離感だ。
みつおは藤次郎少年を伴って帰宅すると、何故か屋敷の入り口に存在する
「おじさんはね、色んな家畜のお世話をお仕事にしていてね、家畜と人との間に病気を持ち込まないように気を付けているんだ。面倒だとは思うけど、指示に従って貰えるかな?」
見るもの全てが珍しい藤次郎は無言で頷き、金属と樹脂製の土落としマットで草履を擦り、金属製の蛇口から絶えず少量の水が流れる手水鉢で手洗いをする。
みつおは藤次郎を応接間に座らせると、厨房へ赴いて大皿に揚げたてで湯気を立てているコロッケを山盛りにして提供した。
藤次郎は小山のように積み上げられた小判型の物体に圧倒されていたが、直ぐにコロッケの香ばしい匂いに魅了される。
「はい、どうぞ召し上がれ。揚げたてで熱いから火傷しないように気を付けてね。こんな感じでそのまま齧っても……うん、美味しい。このソースに漬けても美味しいよ?」
みつおは手を付けようとしない藤次郎の為に、率先して一つコロッケを齧って見せた。断面から覗く中身はマッシュポテトと玉ねぎに豚肉がゴロゴロと入った贅沢なしろものだ。
次にみつおは小皿に取り分けてある濃い茶褐色の液体ことソースに付けて齧ってみせた。スパイスの豊潤な香りと、適度な塩気が足されたコロッケもまた絶品で思わず唸ってしまう。
その様子を見て思わず喉を鳴らした藤次郎少年は、おずおずと箸でコロッケを摘みそのまま何もつけずに一口頬張った。ザクリという心地よい食感と共に衣が破れ、中からホクホクのジャガイモが口に溢れ、その甘さに驚いてしまう。
香ばしい衣と対照的なホックリと甘い中身、そして塩味の利いた豚肉が溢れるほどの旨みを吐き出し藤次郎を魅了した。
揚げたてのコロッケというのはただでさえ旨いものだが、このコロッケにはアグー豚の肉が使用されており、揚げ油もまたアグー豚から取られた脂肪から精製されたラードが用いられている。
通常の豚肉のコロッケでさえ充分旨いというのに、遥かに濃厚な旨みを持つアグー豚のコロッケは別次元の味わいであり、藤次郎は年相応の子供らしい旺盛な食欲を見せた。
「ははは。気に入ったみたいだね、急がなくても沢山あるからゆっくりお上がり。喉を詰めると危ないからお茶を置いておくね」
みつおはそう言うと湯呑に少し温めのお茶を満たして渡してやった。コロッケに魅了された藤次郎はと言えば、当初の大人びた様子など姿を消してしまい、握り箸でコロッケを突き刺して齧っている始末。
その様子を微笑ましく眺めながら、自分もコロッケを食べてみる。およそ戦国時代とは思えない味の逸品に目じりが下がり、厨房からこっそりとこちらを窺う妻の鶴姫にサムズアップサインを送る。
このコロッケは鶴姫が手ずから揚げてくれた物であり、彼女の得意料理の一つにもなっている。彼女は別室にて長女である葵と、長男である椿丸と共に食事をとっていた。
そうしているうちにも、みつおは藤次郎が静かなことに気が付いた。視線を向けると腹が満ちたためか、こっくりこっくりと船を漕いでいた。
みつおは苦笑しつつも、倒れると危ないために藤次郎から箸を取り上げて横にならせる。彼の面倒を鶴姫に託すと、藤次郎の家族を探すべく静子邸へと向かっていった。
静子は土地鑑もない幼い藤次郎が動ける範囲など知れているとたかをくくっていたのだが、彼の行方は
このまま見つからなければ信長を
「静子様、みつお様がご面会を求めておられます」
「え!? みつおさんが? 何かしら、お通しして下さい」
小姓に告げられた来客の報せを受けて、即座に会うことに決めた。目撃者も無い状態であり、静子邸を中心に放射状へと周囲に人を向かわせているのだが、今のところ待つ他に手の打ちようもない。
そうして通されたみつおから告げられた内容は衝撃的であった。必死に捜索していた人物を、他ならぬみつおが保護しているというのだから驚きだ。
みつお邸に関しては、余りにも近すぎるために盲点となっていた。
「それで藤次郎君は、みつおさんのお宅で眠っていると?」
「ええ、今は妻が様子をみてくれております。何やら大事になっていますが、あの子って何処のご子息なんですか?」
静子はみつおの言を聞いて肩透かしを食らった気分になった。一般人であるみつおに取って、有名な戦国武将である伊達政宗の幼名など知らない方が普通である。
「ええと、みつおさんが保護して下さったのは未来の伊達政宗公ですよ。お手柄です」
そう言われてみつおは大層驚いていた。彼のイメージにある伊達政宗は刀の
実際の藤次郎といえば、後世に伝わっている肖像画の通り右目が白濁しており、眼帯など付けてすらいない。
それは政宗が眼帯、主に刀鍔型を付けているというのは創作だからと言われている。彼の姿を伝える一次資料には、彼が右目を覆っているという記録は無い。
「ええ! 政宗の眼帯って後の創作だったんですか? 歴史ドラマとかでもばっちり眼帯しているから、あれが正式なものだと思ってましたよ」
「とりあえず、見つかったことを周知させますね」
そう言うと静子は小姓を呼んで、関係各所に連絡をするように頼む。みつおにはお手柄と言ったが、先に知らせて欲しかったと思ってしまうのが人の常。
静子の遣いが伊達家に着いた頃、小十郎を含め何人かは腹を斬るための準備なのか上半身裸になっていた程だった。
不可抗力が重なった結果であり、誰かが責任を取らねばならない程の事態にはなっていないため、静子は一連の騒動について無かった事として処理すると決める。
「それにしても、みつおさんの子供たらしは流石ですね。子供を食べ物で釣って言葉巧みに連れ帰るなんて……」
「いや、本当に申し訳ない。そんな大物だとは思わなかったので……これも言い訳ですよね。すみません」
「ごめんなさい、私もつい当て擦りをしてしまいました。ともあれ遣いを出したので、伊達家の方々も集まってこられるでしょう。案内を頼めますか?」
「恐らく眠っているでしょうから、今からひとっ走り戻って背負ってきますよ。こちらで晩餐の予定でしたでしょう?」
「そうですね。それじゃあ、よろしくお願いします」
その後、みつおが眠り込んだ藤次郎を背負って戻り、予定通りの歓迎の宴会が催された。藤次郎は小十郎から知らない人について行かないようきつく言い聞かされる。
伊達家の面々が静子邸の料理に舌鼓を打つ一方、藤次郎はよほどコロッケが気に入ったのか小十郎相手にしきりにそのことを話していた。
騒動から一夜明け、流石に反省したのかすっかり聞き分けの良くなった藤次郎に伊達家の者たちはホッと胸をなでおろした。
しかし、それが数日も続くと別の意味で心配になってきた。何しろ彼らは今まで藤次郎の奔放な振る舞いに振り回されており、急激な変貌に体調でも悪いのでは無いかと危惧する始末。
それとなく小十郎が聞き出してみると、藤次郎はなんとか時間を捻出してみつお邸に行きたいと考えており、些事を最速で終わらせるために聞き分けが良くなっていただけであった。
今までは自分が納得いかないことがあれば「何故だ?」を連呼して大人を困らせていたのだが、とにかく早く終わらせることを最優先にしているが故にスムーズに物事が進む。
用事を終わらせた途端にみつお邸へと駆け出してゆき、門限すれすれに帰り着くと夕餉の折に何をしたのかを皆に語って聞かせるのが日課となってしまっていた。
この日はみつおがゴム鉄砲を披露してくれたらしく、すっかりゴム鉄砲に魅せられた藤次郎は自分でも欲しくなってしまった。
すると面倒見の良いみつおは一緒に足満作の凝ったゴム鉄砲ではなく、構造が単純で自分でメンテナンスも出来る簡易的なゴム鉄砲を一緒に作ってくれたのだそうだ。
それを使って日が暮れてゴムが見えなくなるまで二人で撃ち合いをしていたと言う。まるで宝物であるかのようにゴム鉄砲を見せてくれる藤次郎に、小十郎は眉根を下げて微笑ましく思いながらも、ゴムという未知の素材が持つ可能性に戦慄していた。
すっかりみつおに懐いてしまった藤次郎だが、彼は安土ではなく尾張で人質生活を送らねばならない。つまりはみつおとの別れが迫っていることを自覚していた。
しかし、彼の予想は良い方向に裏切られることとなる。ちょうど安土での作業が一段落していたみつおは、渡りに船とばかりに静子たちの尾張行きに同道することとなり、喜色満面の藤次郎を含めた静子たち一行は尾張へと向かっていった。
静子たちが尾張へと向かっている頃、関東に於いては信忠軍と
理由は単純かつ深刻であり、間諜から齎された織田軍の進軍予定を基に応戦準備を整えていたところへ、突如として港湾に現れた船団が水軍の拠点となる設備や船舶を片っ端から破壊し尽くしたためだ。
物的な損失は壊滅的ではあるが、人的損失は殆どなく熟練の水兵も残されていたのだが、当主である里見
義弘が撤退を選んだのは臆病風に吹かれたからではない。如何に織田軍の奇襲が成功したとはいえ、全ての船舶が使用不能になったわけではない。
予備の船舶や、改修中の船舶などを回せば十分に船団を形成できる。そして一度水上に出てしまえば精強で鳴らした里見兵ならば、そう簡単に後れを取ることはないだろう。
しかし、義弘は他ならぬ自分の両目で見てしまったのだ。敵船の姿が水平線に僅かに見えるという超遠距離から、自軍の港湾に雨あられと砲弾を降らせてくる織田軍の姿を。
対して自軍の兵器と言えば、
名前こそ火矢となっているが、実際には弓の射程に遠く及ばない。それに対して敵軍の船団は噂に聞く大砲を装備しているらしく、轟音と共に遥か遠くから炸裂する砲弾を次々に撃ち込んでくるのだ。
日ノ本に鉄砲が伝来したときの衝撃が再び繰り広げられる悪夢の光景だった。このままでは勝負にならないと見た義弘は、全ての兵に撤退を命ずるしか無かった。
出だしから制海権を奪われた里見だが、義弘としては降伏を検討するような状況ではないと考えていた。その背景には里見家の領地である
里見家の本拠地である
敵の大砲はなるほど大した長射程を誇っているが、それでも海岸線から居城である
複雑に隆起した丘陵地帯は間を縫うように走っている一本道を進軍するしかなく、攻めるに難く守るに易い難攻不落の地形であった。
しかも丘陵の谷間の多くは湿地帯となっており、踏み固められた道を一歩外れれば膝まで沈みこむような湿原であり、大軍を布陣させることすら不可能という数の優位性を覆せる立地だ。
里見家はこの地形を活かし、何度も国の窮地を耐え抜いてきたのだ。今回も陸戦に持ち込めれば守り切る自信があった。義弘は佐貫城を起点として、織田軍へと反攻するべく軍を編成するよう命じた。
一方、里見領への奇襲を成功させ、里見家が誇る里見水軍の要である港湾機能を壊滅させた信忠は、配下から寄せられる報告を吟味していた。
「若様、里見軍は港湾を捨て籠城の構えに入ったと報告が届いております」
「伊豆水軍(北条家の擁する水軍)はどうだ?」
「先ほど九鬼様より定時連絡があり、里見水軍同様に先制攻撃にて船舶及び港湾を破壊して制海権を確保したとのことです。北条側も同様にこちらの射程に入ることを恐れて撤退しております」
「里見攻めの最中に北条が動くと面倒だからな。北条の手足となる水軍を潰しておけば、大規模な援軍も出せまい。九鬼に命じよ! たとえ漁船であろうと、海に浮かぶ船舶はその
「はっ」
制海権さえ掌握してしまえば、海上からの補給線が確立できる。陸上部隊に問題が発生したとしても、沿岸部より支援砲撃等で援護できるし、最悪の場合には退路としても利用できる。
「早く手柄を立てたいだろうが、もう暫く我慢してくれ。なに里見には陸から攻めると
信忠は敢えて強襲上陸作戦を行わなかった。織田軍の船団は港湾より距離を置いて海上に留まっており、このため義弘は織田の水軍には陸上戦力が無いのだと誤認してしまった。
事実、義弘は織田軍が港湾施設を確保した後、陸上部隊を搭載した船団と合流して上陸してくる手はずだと考えた。
戦国時代の常識に照らせば、決して義弘が愚鈍だと言うわけではない。むしろ前例のない強烈な先制攻撃を受けたにもかかわらず、配下に反撃を禁じた上で撤収させた手腕は見事とさえ言える。
損害を受け入れた上で善後策を取るというのは理想だが、これを実行できる国主は多くない。感情に反する非情な命令を配下に守らせる指導力と、私情を排した冷徹な計算が出来なければならないからだ。
その難しい舵取りを為し得た一事だけを以てしても、義弘が非凡な武将であることが窺える。
「現状はこちらが優位で推移しているが、油断は出来ん。兵器の性能差で圧倒しているだけで、白兵戦に持ち込まれれば我らとて危うい。故に警戒は常に厳にせよ! 里見は決して侮って良い相手ではない」
「はっ」
過去に油断を突かれて足を掬われた経験を持つ信忠は、どれほど有利な戦況にあっても油断をしないよう自らを戒めている。
自らを律するだけにとどまらず、ことある毎に口に出すことで家臣にまで浸透させようとする姿勢からも注力具合が窺えよう。
そうして海上封鎖を続けながら信忠は
そして遂に時が満ちる。
「勝山城を攻めよ!」
「はっ!」
勝山城は房総半島の南部にある里見家が支配下に置く城の一つである。三浦半島と房総半島に挟まれた浦賀水道に面する沿岸部に位置し、天然の入り江を軍港として抱える山城だ。
周囲をぐるりと山に囲われた入り江というだけでも地理的に優位なのだが、ここ勝山城には更に防波堤ともなる浮島が勝山城沖に存在する。この浮島の存在が外部から湾内を目隠しするため難攻不落の軍港となっていた。
更に付近には連携をとれる距離に金谷城と岡本城が存在し、立地上海からしか攻められない勝山城を攻めようとすれば、両城から派遣された船団と勝山城の船団で挟み撃ちの憂き目を見ることになる。
逆を言えば勝山城さえ落としてしまえば、織田軍は房総半島に強固な前線基地を構えることが出来、里見家と北条家の喉元に刃を突きつけることが出来るのだ。
「金谷城と岡本城の予備兵力が佐貫城へ入った今こそが勝機よ! 狙いは大まかで良い、手当たり次第撃ちまくれ!」
信忠は自軍の船団に対し、勝山城のある峰に向けて
後に山を削る勢いと言わしめることとなる集中砲火が勝山城へ降り注いだ。季節柄樹木が乾燥しておらず、山火事にこそ至らなかったものの、あちこちから黒煙が立ち上る状況になると、信忠は主力艦隊を入り江に侵入させて勝山
残る艦隊を浮島付近に配備して、金谷城及び岡本城からの援軍を牽制させる。万全の体制となったところで、上陸部隊を派遣して既に半壊している勝山城を一気に攻め立てた。
「海上は警戒しているゆえ、陸路からの援軍に注意せよ。後詰が到着すれば高所に位置する籠城側が有利となる」
いかに半壊していようとも、城がそう簡単に落ちることはない。また草木の生い茂る峰に建っているため、夜闇に乗じて城を脱出する者すべてを捕縛することなど不可能だ。
如何に金谷城と岡本城の予備兵力が手薄になっているとはいえ、本隊は変わらず詰めている。それらの半数程度をそれぞれから派遣されれば、一気に戦況が苦しくなるのは明白だ。
信忠としては一刻も早く勝山城を落城させ、逆に勝山城を起点に金谷城と岡本城に圧力を掛ける状態へ持って行くことこそが勝利への第一歩となる。
「敵の船団が海上に出てこないようなら、金谷と岡本両城へ海上から艦砲射撃を叩きこめ!」
信忠の号令一下、一気に里見に対する攻撃が加速した。金谷城、勝山城、岡本城の全てが攻撃を受け、火の手が上がっているという一報は、義弘の心胆を寒からしめたであろう。
惜しむらくは義弘が援軍を派遣しようにも既に手遅れとなっていることだろう。彼らが防衛の要としていた湿地帯が逆に、援軍の派兵を遅らせてしまうからだ。
自らが頼みの綱としてきたものが足枷となる状況に、信忠は一人ほくそ笑む。
「若様、地上部隊の上陸が完了しました。今は敵船舶の破壊を行っています。これで浜上げされていた船も使えなくなります」
「上出来だ。では我ら本隊は佐貫城を目指すぞ! 沖合に姿を見せて、連中の度肝を抜いてやろうではないか」
「承知しました」
「先駆けは静子から預かった隊に任せよ。最も手柄が立てられるであろう勝山城には参戦させなかったのだ。そのぐらいの華は持たせてやらねばなるまい」
静子軍から預託された部隊は、才蔵と彼の配下である。現在勝山城を攻めているのは、信忠の家臣達が率いる部隊であり、才蔵たちは待機を余儀なくされていた。
才蔵たちに問題があった訳ではなく、外部の軍である才蔵たちを起用すれば、信忠配下の将兵たちから不満が出るためであった。
まずは内部の者に存分に手柄を立てさせて、優遇されていると思わせなければ士気を保つのは難しい。作戦の成果ではなく、小さな手柄に固執する文化は根強く、信忠を以てしても意識改革は果てない道のりだ。
「よし、
信忠の号令が船上に響き渡った。
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