「日本赤十字社」と「中国赤十字社」 [2011年08月05日(Fri)]
北京空港でメディアに囲まれた郭美美さん 「日本赤十字社」と「中国赤十字社」 日本赤十字社は、東日本大震災で内外から受けた募金・約3000億円の被災者への配分の遅延をめぐり、厳しい批判にさらされた。 そもそも赤十字社とは1国1社、その国の政府からも独立した中立した機関として存在する。 ところが日本政府は、中立機関であるべき日赤に堂々と介入し、こともあろうに日赤の会議室ではなく、厚生労働省の会議室で泥縄式に配分額を決定して各県に丸投げし責任を逃れた。堀田 力議長以外、どのような有識者が出席したのか、いまだ筆者にとって不明である。勿論、丸投げされた県は更に市町村に丸投げしてお茶を濁した。 その後はメディアの追求も途絶えている。 メディアは、実際にどの程度被災者に届いたのか、1ヶ月に1回は定期的に報道する責任があるのではないか。なぜなら、日本国民はもとより、世界中からの善意の結晶であり、メディア自身も積極的に募金活動に参加したのであるから、世界中の寄付者に対する当然の義務であろう。ともすれば遅れているといわれる日本の寄付文化の醸成のためにも、可能な限り詳細で継続的な報道こそ、募金に参加した多くの寄付者へのメディアの責任でもある。 ところで当然のことながら、中国にも赤十字社は存在する。 こちらは「郭美美」なる謎の美人にまつわるスキャンダルに揺れている。 自称「中国赤十字商業会社社長」、若干20歳。中国版ツイッターで自分のリッチな生活ぶりを公開したのをきっかけに「郭美美疑惑」で炎上している。 車は白のマセラッティを乗り回し、趣味は乗馬でドイツ血統の馬に乗り、豪華な400平方メートルの別荘があり、ファーストクラスで旅行する。時計はパテック・フィリップ、エルメスのバーキンやルイ・ヴィトンで飾り、ブログにそのセレブな生活ぶりが分かるような写真を貼り出した。 何故20歳でそこまでセレブな生活ができるのか? 何故彼女が中国赤十字商業の社長なのか? 整形手術の写真までアップされ、その裕福な生活が次々にウェブにアップされた。 郭美美とはいったい誰なのか? 何故そんなお金が? それは赤十字としてはあり得ないだろう? ユーザーたちは疑問に感じ、「郭美美疑惑」が巻き起こったのである。 「郭美美」が中国赤十字副会長の娘であるとの噂が流れたり、深圳市天略発展集団の丘振良会長に関係があるとネットで騒がれ、疑惑が社会問題にまで発展した。 四川大地震以来、中国赤十字は寄付金を受け取る唯一の団体として急速に知名度を上げ、東日本大震災にも600万元(約7200万円)の義損金を提供してくれた。 しかし、赤十字の幹部が1万元(約12万円)の食事会をしたことが暴露され、飲食代の領収証のコピーがネットで公開されたことで疑惑はさらに広がり、ユーザーたちは人々の義援金がこんなことに流用されているのかと矛先を中国赤十字に変え、「我々のあの寄付金は一体どこにいったのか」という怒声に変わり、赤十字は前代未聞のスキャンダルにみまわれた。 真相究明に奮起した数千万のユーザーたちを前に、中国赤十字は「事実を調査したが、赤十字商業会社という組織は存在しないし、郭美美という人物とも関係ない」との声明を発表した。それでもおさまらないユーザーたちは、中国赤十字社に情報開示と会計公開を求めた。ところが赤十字は肝心な部分はノーコメントと消極的な姿勢を見せた。 あるメディアはこの赤十字の対応に「国民は一人のセレブの小娘の追求だけでなく、彼女の背後で慈善組織が不当な暴利をむさぼる商業的な組織が存在するのでは・・・」と追い打ちをかけた。 世論の風向きは、中国赤十字は全く信じられないとしている。CCTV(24時間TV)は6月25日夜の報道の中で、郭美美の身分についての追求と、中国赤十字の声明に対して「中国赤十字の声明には欠陥があり、国民が信じるための証明にはならないし、その社会的な責任は事実で証明するべき」とした。人民日報も読者の質問方式で見解を述べ、「郭美美疑惑は一つの引火点であり、根源的な部分で国民は信じられないし不満がある。国民の善意を傷つけることだ」とした。 6月27日、国家監査署も赤十字の2010年度予算の執行には多くの疑問ありと指摘。かつて赤十字に義援金を出した人の中には返還を求める声もあり、中国赤十字は史上最大の信用危機に陥った。 その後の報道では、郭美美は虚偽の事実で公共の秩序を乱したと、北京警察で調査を受けたらしい。 小娘のツイッターから発したこの事件。まだまだ一件落着とはいかないようで、中国赤十字の受けたダメージは深刻である。 |