中国の「極超音速ミサイル」開発が示唆する“米中軍事同盟”という意外すぎる近未来

心配すべきことは他にある
近藤 大介 プロフィール

心配すべきはシンギュラリティ

シンギュラリティとは、「AIが人類の知能を超える技術的特異点」のことだ。この時代には、量子コンピュータでビッグデータを処理する時代になり、チェスや将棋だけでなく、人類は何もかもAIにかなわなくなる。

もちろん、軍事技術も最新鋭のAI兵器に取って代わられる。AI兵器を動かすのも、AIの判断だ。そうなると、すでにSFの世界ではお馴染みだが、「AIの反乱」が起きることは容易に想像がつく。

おそらく人類は、「AIの反乱」を恐れて、緊急時には電源を切ったり、AI器機を爆破させたりできる装置を、AI器機の中に埋め込むだろう。だがそれによって、AIの側からすれば、「人類は自分たちの生存を脅かす危険な敵対勢力」と見なすことになる。そのため、AIが人類を襲ってくる確率も高くなるというわけだ。

ましてやシンギュラリティの時代には、われわれ人類の脳内に、半導体チップが埋め込まれている。つまりAIからすれば、そのラインを使って、一気呵成に人類を「洗脳」し、支配下に置くことができる。

いまのところ、世界でこうした議論は盛んには行われていない。その最大の原因は、主に米中ロの3大国が、独自に研究している最新鋭のAI兵器の軍事機密を秘匿しているからだ。

 

だが早晩、シンギュラリティは人類全体にとって、抜き差しならない問題になってくるはずだ。いま英グラスゴーで、地球温暖化防止を話し合うCOP26が開かれているように、シンギュラリティを話し合う世界会議が頻繁に開かれるようになるに違いない。

そうなると、会議の主役はアメリカと中国なのである。私が「米中軍事同盟の時代」を予見するのも、そうした理由からだ。アメリカから見て、「敵は中国」ではなく、「敵はAI部隊」となる。中国も同じことだ。

これは100年先の未来ではなくて、20数年先の未来である。だから日本人も、「中国製極超音速ミサイル」の心配をするよりも、シンギュラリティの心配をすべきではないかというのが、私の結論である。


【今週の新刊推薦図書】

自民党政権はいつまで続くのか
著者=田原総一朗
(河出新書、税込891円)

日曜日に総選挙が終わった。で、感想は?「自民党政権はいつまで続くのか」。多くの人がそう思ったのではないか。87歳にして第一線で政権取材を続ける田原氏は、そんな素朴な疑問を新著のタイトルにした。
田原氏はいまからちょうど半世紀前、宮澤喜一氏(後の首相)からこんな話を聞く。「日本人は自分の身体に合わせて洋服を作るのが下手だ。押しつけられた洋服に身体を合わせる方が安全だ」。つまりアメリカの庇護のもとにいるのがよいということだ。田原氏はジャーナリストとして半世紀間、この言葉を反芻してきた。そしてコロナ禍のいま、岸田文雄政権が発足したいま、総選挙を終えたいま、再びこの言葉を問いかける――。
具体的には、現在の日本が抱える「6つの課題」について斬り込んでいく。この矍鑠とした老ジャーナリストは、今日も剛速球で勝負する。


【今週の東アジア関連新刊推薦図書】

中国「国恥地図」の謎を解く
著者=譚璐美
(新潮新書、税込968円)

ある時期、旧知の譚璐美さんが、もぞもぞと弊社(講談社)の地下資料室に潜り込んでいた。そして「見つけた!」と電話をくれた。下りて行くと、長机いっぱいに古地図を並べていた……。本書は、中国モノのノンフィクションを書かせたら右に出る者はいない譚さんが、渾身のエネルギーを注いで解き明かした「国恥地図」を巡る探索物語である。たかが「地図」だが、それは「国家の縮図」でもある。過去に類書はないし、これからも出ないだろう。まさに「中国の本質」をえぐり出した執念の一冊だ。

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