いずれ「米中軍事同盟」が実現する
今回の極超音速ミサイルによって「ゲームが変わった」と言うならば、これからの世界は、「ゲームが変わり続ける世界」になるだろう。そして度重なるゲームチェンジの結果、アメリカと中国という2大国の軍事力は拮抗していくに違いない。
それでは、昨今言われている「米中新冷戦」が、米中による第三次世界大戦のような悲劇を生むのか? 私は生まないと思う。
それどころか、米中2大国はこの先、ある時点までは、互いに最大のライバルとして角逐するだろうが、ある時点を境に、逆に「米中軍事同盟」を結ぶ気がするのだ。
まさか! と言われるかもしれないが、私がこのことを最初に感じたのは、おととしの夏である。やはり深圳にあるファーウェイ(華為技術)の本社及び隣の東莞にある研究本部を訪れた時だ。
ファーウェイという会社は、周知のように世界最強国のアメリカが、国を挙げて潰そうとしている中国の民営企業である。中国は今年8月の時点で、「5G(第5世代移動通信システム)基地局をすでに全国に99.3万台設置済みで、これは世界の7割強にあたる」と誇った。このように、中国を世界一の5G大国に押し上げた最大の功労者がファーウェイである。
そのファーウェイは、すでに2年前の時点で、6Gと7Gの開発を進めていた。正確に言うと、彼らは決して「企業機密」を明かしてくれなかったが、様々な状況を勘案して、以下のように見込まれたのだ。
移動通信システムの「世代」(Generation)というのは、約10年毎に進化している。4Gを搭載したiPhoneが初めて発売されたのが2007年夏で、4Gは2010年代に世界中に浸透していった。同様に、現在の2020年代は、5Gが世界の隅々まで浸透していく時代である。
そうなると2030年代は、6Gが浸透していく時代ということになる。5Gから6Gになると、何がどう変わるのか?
もちろん、演算処理能力の容量やスピードが格段に進歩するのは言うまでもないが、最大の変化は、形態にあるという。すなわち、現在われわれが持ち歩いているスマホが、メガネ型になるというのだ。すでに腕時計型のウエアラブルな器機が誕生しているが、そうしたものも含めて、スマホの機能はメガネに集約されていく。
6G時代においては、世界中の人々が、「スマホを持ち歩く」のではなく、「スマホを掛ける」時代に変わっていく。私たちはそのメガネの中で、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の世界を楽しむようになる。
それでは、続く2040年代の7Gの時代には、何が到来するのか? それは、人間の脳に半導体チップを埋め込む時代になるというのだ。つまり、いまわれわれが手にしているスマホが超小型化して、直接脳内に置かれるイメージだ。
それによって、人類は飛躍的に賢くなる。例えば、日本人は英語学習など不要になる。アメリカ人が英語を話すと、脳内チップで同時通訳してくれて、日本語として脳内に入ってくる。もちろん、こちらが日本語で話すと、アメリカ人は英語として理解する。これは世界中の主な言語に応用できるから、世界中の人々が、自分の母国語を使って世界中の人々と意志疎通を図れるようになる。
英語だけでなく、あらゆる教科の知識を脳内に埋め込める。例えば、日本史の教科書ソフトを脳内にインストールすれば、その瞬間から教科書1冊分の日本史の知識が頭に入る。一流ピアニストの指の筋肉の動きをインストールすれば、理論上は初心者でも、一流ピアニストの「再生」ができる。
子供は学校へ行く必要がなくなり、かつ「世界の誰もが賢者」という、一見するとバラ色の時代が到来する。いま問題になっている認知症も、大幅に軽減されるだろう。
だが実際には、それは「地獄へ向かう門」である。なぜなら2045年前後に、シンギュラリティ(Singularity)を迎えるからだ。