昨日、衆議院選挙の投開票が行われました。事前の予測は混乱しましたが、蓋を開ければ維新の大幅議席増だけが当たったような恰好でした。

 今回の件を共闘の敗北や失敗であるとみる向きもありますが、私はそうは思えません。今回の選挙はたった2週間の短い期間、低調な報道、投票時間の切り上げや在外邦人の投票の切り捨てなど、メディアと行政が一体となって自民党を支援したかのような有様でありつつ、無党派層では立憲が最も票を集め、議席としても食い下がった格好であるように見えます。もちろん、期待していたような勝利ではないとしても、共闘だったから傷は浅かったというべきでしょう。石原、甘利、平井といった問題ある候補を小選挙区で討ち取ったのも大きな成果ですし、流石の自民党もこの結果を無視できるほど面の皮は厚くないでしょう。自分の食い扶持がかかっていますから。

枝野交代論に飛びつくべきではない

 思うような結果ではなかったことから、野党第一党の枝野幸男代表の引責を求めるような声も聞かれます。枝野氏はいい加減長く務めてきたのでそろそろ交代、という考え方が出るのは当然と言えば当然かもしれませんが、枝野氏さえ変えれば野党共闘がうまくいくかのような安易な交代論に飛びつくべきではありません。

 こうした交代論は、2つの意味でむしろ野党共闘の意義を無視するものでしょう。1つには、気に入らなければ頭を挿げ替えればいいという安直なリセット願望。そしてもう1つは、地道な成果を無視して派手さばかりを追求するお祭り指向です。

 枝野氏は代表として批判すべき点もある人物です。特に選挙において、耳目を引くはったりをかませない振る舞いはよくありません。まぁ、それが堅実さという長所の裏返しでもあるんですが。とはいえ、彼が野党共闘を0から1へ作り、それを5くらいまでには育てた成果を軽視すべきではありません。

 野党共闘は元来、まっとうではない政治へのアンチテーゼとしての意味合いがあったはずです。まっとうではない政治とは、目立たないながらも地道で確実な成果を無視する類の、いうなれば維新的な振る舞いを含むはずです。選挙が気に入らないからと言って頭を挿げ替えろという主張に飛びつくような態度は、維新を呼びこんだ態度と何が違うのでしょうか。

 野党共闘を深化させ、より支持を広げるのであれば、必要なのは不確かな神風などではなく、確かな地盤と体力であるはずです。今回の共闘に改善点があるとすれば、その根っこを作る時間をとれなかったことでしょう。それは、頭を挿げ替えれば一挙解決などという生易しい課題ではありません。

れいわが想像以上にすごかった

 今回の選挙で驚いたのが、れいわ新撰組が3議席を獲得したことです。正直、1議席とって山本太郎が国会に帰ってくる程度だと思っていたので、素直に侮っていたと認めなければいけません。参院と合わせて5議席を有する国政政党となり、彼らが一時の勢いだけの政党ではないことを名実ともに証明したかたちになります。

 このことは、もしかしたら維新を打破するヒントになるかもしれません。維新の強さは節操のないイメージ戦略にあることは明白でしょう。一方、れいわも山本太郎を中心とするタレント性とテレビ慣れが大きな役割を果たしたことは言うまでもありません。維新のような不誠実に陥ることなく、しかし、イメージ戦略を成功させるうえでれいわのこれまでの作戦は参考になるところが大きいのではないかと思います。

 もちろん、れいわのようによく言えば自由で勢いがある、悪く言えば安定感に欠ける政党にばかりおんぶにだっこというわけにもいかないでしょう。れいわはれいわで、地盤を固めて堅実に活動する術を共産党などから学んで骨太な政党になってほしいですし、そういう協力ができるのも野党共闘の利点だと思います。

維新をどう崩すか、まっとうさをどう広げるか

 まぁ、いろいろ書きましたが、ぶっちゃけ、一市民で一有権者にすぎない立場の人間が選挙戦略を云々することにあまり意味は感じません。それは私たちが選べることではないし、考えたところで断片的で恣意的な推測の域を出るものでもないからです。そういうのは政党が考えることでしょう。あまり戦略的なモノに耽溺しすぎると、ただのネット軍師に陥るという問題もあります。

 それよりも重要なのは、一市民の立場でどうやって動くのが、まっとうな政治を取り戻すのに有効かということです。これも別に答えは出ていません。動画とか作ってみましたが、専業YouTuberではないのでそう頻繁にアップロードできるわけでもありませんし。

 ただ重要なのは、地に足をつけた方法でまっとうさを広げ、眠っている有権者を掘り起こして野党に投票してもらうということです。何か奇跡が起きて表が一気に増えることはない以上、あの手この手を使って「自民に入れないでおこう」とか「野党に入れよう」と思う人を少しずつ増やすほかないのでしょう。

 票にはまだ繋がっていませんが、社会は確実にまともな方向に傾きつつあります。でなければ、主要な論点としてジェンダー平等も挙げられることはなかったでしょう。少しずつまっとうさを広げれば自民や維新を追い落とせると信じて進むほかありません。