そんな中、三重大学の野中寛教授は、ストローを「木」から作ることに成功しました! それだけでも画期的なのに、野中教授はプラ製品を全部「木」から作るという野望を抱いているようで……?
木の粉を固めて、プラスチックの代わりに
──先生の専門分野を教えてください。
森林資源環境学講座(学部は森林資源環境学教育コース)の木質分子素材制御学研究室で、木材繊維、木材成分の利用の研究を行っています。
現在、木材は木の柱や紙の原料、合板などに使われています。木材は付加価値があまり高くないため、なかなか売れず、林業に従事する方々は困っています。
私たちの研究室では、木材から有用成分を取り出し、通常あまり価値のない木粉に高付加価値をつけることができれば、問題解決の助けになるのではないかと考えて研究を行っています。
特に私は、木材から抽出した成分の一部だけにとどまらず、すべての成分を使うということを重視しています。
木材の成分を細かく分け、変換や加工を繰り返して、最後にプラスチックのようなものを作る研究をしていたところ(重要な研究ですので今も行っています)、木粉をそのまま固めてプラスチックのようなものを作れば同じではないかと考えました。
世の中にある複雑な形状のプラスチック製品を木や紙で代替しようとすると、作り方の革命を起こさなければいけません。石油由来のプラスチックと同じような作り方で、木や紙が原料の製品を大量生産できるような素材を作りたいと思い、プラスチックの代替品となるものを木や紙から作る研究をはじめました。
環境にやさしい「ウッドストロー」
──「ウッドデザイン賞」を受賞されたウッドストローとはどのようなストローですか?
木粉と増粘剤(木材由来)と水を混ぜてできる粘土状のものを、ストローの形に成形したものです。木粉の他にも、たとえばコーヒーカスや竹の粉などを使用しても同様のものができます。
私が作っている木粉粘土は、型に入れ圧力をかけた際にきちんと角まで形成される柔らかさと、押し出した際にところてんのように形がキープされるかたさの両方を兼ね備えている点がポイントです。
この木粉粘土は、乾くと完全に形が形成されます。一方で、水にしばらく浸せば形が崩れてくるので、また別の形に成形することができます。なので、これは究極のリサイクル材料といえます。
もしこのウッドストローが海へ流れてしまったとしても、すぐに木粉へと解体され、いずれは微生物の働きで朽ちて、二酸化炭素と水に変換されます。