2013.04.12
<患者背景>
薄毛に悩んでおり、以前よりプロペシアやリアップの使用を希望していた。プロペシアの使用に関しては皮膚科Drより問題ないと返答があったが、経済的理由から使用を断念。
リアップは腎排泄のため、使用に関しては主治医に相談中。今回、薬局でも使用可能かどうか調べてほしいと依頼があった。
<患者情報>
血清クレアチニン値=3.38
体重=54~55kg
上記情報より、クレアチニンクリアランス(Clcr)は約19ml/minと算出
<メーカー確認>
・経皮吸収はほとんど無いが、腎排泄の薬であるためお勧めできないとの返答であった。
<日本人の健常人を対象に、反復塗布時の体内動態を調べた文献>
・経皮吸収は塗布量の約1%であり、七日間の反復投与による蓄積性は認められなかった。
<腎障害患者へ単回経口投与し、ミノキシジルの体内動態を検討(海外の文献)>
・投与量はミノキシジルとして5mg。(ミノキシジルは経口投与直後、直ちに、そしてほとんど完全に吸収されることが報告されている。)
Clcr(ml/min) |
半減期(hr) |
|
Group 1 |
>80 |
1.38±0.16 |
Group 2 |
50~80 |
1.99±0.45 |
Group 3 |
30~49 |
2.42±0.53 |
Group 4 |
<30 |
8.87±6.12 |
健常人への経口投与時、半減期は1.38(hr)とする報告もあることから、Group1~3までの腎障害患者では、使用に問題はないと推察できる。
Group4ではミノキシジルの代謝が有意に遅延され、個体差も大きいことがわかる。(今回の相談者は、Group4に該当すると思われる)
通常、リアップは一日二回、一回1mlと用法用量が定められている。日本で市販されている製品は、1%(10mg/ml)製剤、5%(50mg/ml)製剤の二規格。塗布量の1%が吸収されることから、それぞれ0.1mg/回、0.5mg/回が体内へ移行する。
また、リアップの使用で問題となるのは、ミノキシジルの降圧作用(血管拡張作用)であるが、ヒト循環器系に影響を及ぼす濃度は10ng/mlといわれている。
リアップ投与時の血清中ミノキシジル濃度との比を示した表があるため、下に引用する。
単回投与 |
リアップX5(5%製剤) |
リアップ(1%製剤) |
Cmaxの平均値 |
0.51±0.48ng/ml(1/20倍) |
0.39±0.76ng/ml(1/26倍) |
Cmaxの最高値 |
1.57ng/ml(1/6倍) |
2.65ng/ml(1/4倍) |
長期投与 |
リアップX5(5%製剤) |
リアップ(1%製剤) |
Cmaxの平均値 |
0.429~0.660ng/ml(1/15~1/23倍) |
0.195~0.255ng/ml(1/39~1/51倍) |
Cmaxの最高値 |
3.30ng/ml(1/3倍) |
1.42ng/ml(1/7倍) |
上記情報より、腎機能がかなり低下した患者がリアップを使用する際は、減量が必要であることがわかった。しかしながら、減量しても安全であるとは言い切れない。実際、主治医は「安全であると保障はできないため、それでも使用したいのであれば、自己責任のもとで使用してもらうことになるだろう」との回答であった。
ミノキシジルのヒト循環器系への影響として、最も感受性の高い指標は心拍数であり、用量依存的に増加することが報告されている。
仮に使用することになった場合、心拍数の変化を副作用発現の確認に利用すると良いだろう。
<参考文献>
・中村方人 他.「ミノキシジルの男性型脱毛症における反復塗布時の体内動態」新薬と臨床、第41巻 第9号、平成4年9月
・Charles E:Disposition of Minoxidil in Patients with Various Degrees of Renal Function. J Clin Pharmacol 1989;29:798-802
・Floishaker JC:The pharmacokinetics of 2.5 to 10 mg oral doses in minoxidil in healthy volunteers.J Clin Pharmacol 1989;29:162-167
・リアップX5 製品説明書(医療関係者用).大正製薬
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