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2008.08.28 Thursday 18:02 カテゴリ:プチ鹿島のプチコラム by プチ鹿島

とろろ芋係長とはなにか

いわゆるおバカ・タレントたちの「突拍子もない」バカ発言がウケているが、私などはやはり何かこう、その人柄やおとぼけぶりが伝わってくる、ニュアンスが「かすっている」バカ発言のほうが好み。

先日、「芋洗坂係長」のことを「とろろ芋係長」と言っていた社長がいた。ずっと。
最初は何を言っているのか一同怪訝な空気だったが、どうやら「芋洗坂~」のことらしいとわかり、一気に場が緩んだ。緊張と緩和。ニュアンスがなんとなく合っていて、真面目だからおかしい。

以前、マキタスポーツのお母さんがハチミツ二郎のことを「ミツバチ二郎」と呼んでいた。これもニュアンスは合っている。気持ちはわかる。昔のクイズの司会者だったら大甘で正解にしてくれたかもしれない。
これも「かすっている」からこそ、その近さと真面目なおとぼけぶりがおかしいのだ。

真面目さが必死さになると、さらに笑いに昇華する。
舞台の公演での話だ。新人は舞台脇で先輩に小道具を渡したり着替えを手伝う。新人にしてみればかなりのプレッシャーであり大仕事。
案の定、いっぱいいっぱいになった奴がいて、小道具の銃(ピストル)を手渡しするシーンで緊張して固まってる。すんなり渡されるはずの銃が出てこない。
先輩が「銃ある!?」と聞くと、何を思ったかそいつは「自由はありません」とキッパリ言い放った。

連日の舞台準備で新人には自由や安息がない。緊張と疲労と混沌で、ついそう聞かれたと思ったのだろう。本番中にそんなこと聞くわけねえだろ。
冷静で優しい先輩だったので、「うん、わかってる。ところでピストルあるかな?」と言い方を変えてくれたので本人はやっと気づいた。もし私がその先輩の立場だったら「このクソ忙しいときに仕掛けてきやがった」と首をシメていたかもしれない。器の違いである。

学生時代、百貨店でバイトをし始めた時、売り場に内線がかかってきてわけもわからず必死で電話に出たら事務室からだった。「メール便が届いています」というのを「ビール瓶ですか?」と答え、後でアイツは誰だということになった。売り場のお姉さんたちは腹を抱えて笑っていたが。
たぶん、余裕のある状態ではあのバカっぷりは出なかったと思う。

同じ「バカ」でも、無知の人を笑うのは、それもひとつの趣味なんだろうけど、やはり私はそれより、その人のおかしみが垣間見えるバカ、おとぼけぶりを探していきたい。

それは「無制限の自由」より、「制限があるなかでの自由」のほうに魅力を感じるのに似ているのかもしれない。

「自由はありません」と言われたら困るけど。





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