全琫準(読み)ぜんほうじゅん

日本大百科全書(ニッポニカ)「全琫準」の解説

全琫準
ぜんほうじゅん
(1854―1895)

朝鮮、李朝(りちょう)末の1894~95年に戦われた甲午(こうご)農民戦争の指導者。地方下級官吏の出身で、郡守の横暴に反抗して殺された父親の仇(あだ)を討ち、また塗炭の苦しみにある農民を救おうとして94年2月全羅道古阜郡衙(こふぐんが)を占領。各地の農民や民族宗教である東学道徒らもこれに呼応して蜂起(ほうき)した。全は輔国(ほこく)安民の布告文、逐滅洋倭(ようわ)、滅尽権貴などの四大綱領を発表し、各地で官軍と戦い、一時は全州を占領した。これに驚いた李朝政府は農民軍に和議を申し入れるとともに清(しん)国に援助を求め、一時休戦状態にあったが、朝鮮に向ける日清両国の利害対立が激化して、同年7月末、日清戦争が始まった。全は9月ふたたび忠清道で蜂起したが、日本軍と政府軍の弾圧で敗退し、12月淳昌で捕らえられて翌95年3月処刑された。

 慶 植]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「全琫準」の解説

全琫準
ぜんほうじゅん
Chŏn Pongjun

[生]哲宗5 (1854)
[]高宗32 (1895).漢城府
朝鮮,朝鮮王朝(李朝)末期甲午農民戦争(東学党の乱)の指導者。全羅北道井邑郡古阜面出身。字は明叔。別名は彔豆将軍。吏属出身で書堂の教師を業としたが,東学の下級幹部である古阜地方の接主になった。高宗31(1894)年2月古阜郡の農民を率い蜂起したことから,全羅道各地で農民軍が決起した。同年 5月孫和中,金開南と提携して,輔国安民,除暴救民,逐滅倭洋のスローガンを発表した。5月31日には全州城を占領。6月に政府と全州和約を結んだのち淳昌に本拠を置き,全羅右道を轄した。同年 7月末に日清戦争が始まり,圧倒的な日本軍と政府軍に敗退。11月同志金敬天の密告で逮捕され,翌年 3月漢城府(現ソウル)で死刑にされた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus「全琫準」の解説

全琫準 チョン-ボンジュン

1856*-1895 朝鮮王朝の農民軍指導者。
哲宗6年12月3日生まれ。1894年甲午(こうご)の年,東学党の幹部として農民の困窮をすくうため決起し(甲午農民戦争),全羅道の道都全州を占領し,政府軍と全州和約をむすぶ。鎮圧のため日清(にっしん)両国が出兵すると,再度決起するが密告により日本軍に捕らえられ,高宗32年3月29日(1895年4月23日)処刑された。41歳。全羅道出身。字(あざな)は明淑。愛称は緑豆将軍。

全琫準 ぜん-ほうじゅん

チョン-ボンジュン

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精選版 日本国語大辞典「全琫準」の解説

ぜん‐ほうじゅん【全琫準】

朝鮮、甲午農民戦争(東学党の乱)の指導者。全羅道古阜郡の人。古阜郡守の虐政を怒り、東学道の信者や農民を率いて郡役所を襲撃した。これをきっかけに、南朝鮮一帯の農民が蜂起し、李朝政府軍を破り全州を占領。日清戦争の勃発によって一時休戦したが、日本軍の討伐を受けて刑死した。(一八五四‐九五

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世界大百科事典 第2版「全琫準」の解説

ぜんほうじゅん【全琫準 Chŏn Pong‐jun】

1855‐95
李朝末期の朝鮮南部で起こった甲午農民戦争の指導者。全羅北道の泰仁で生まれ,古阜に移った。わずかな土地を耕しながら農村子弟の教学に従事していたといわれる。1893年,農民を率いて郡守の暴政に抗議したがいれられず,翌94年2月,郡庁を襲撃した。5月には各地の農民に呼びかけて決起し,農民軍の総大将に推された。彼は東学の地方幹部の地位にあったが,〈地上天国〉の実現という教理を実践的に解釈して蜂起の理念にまで高め,東学の組織を媒体とすることによって反乱の地域的拡大に成功した。

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世界大百科事典内の全琫準の言及

【甲午農民戦争】より

…圧政に苦しむ農民の間に広まった東学は,1890年代に入ると活動を公然化するようになった。こうした情勢のもとで,94年2月,全羅道古阜の農民は,規定外の税をとるなど暴政を行った郡守趙秉甲(ちようへいこう)に抗議し,全琫準を指導者として郡庁を襲撃した。彼らはいったん解散したが,政府が参加農民への厳しい弾圧策をとったため,東学組織を通じて各地の農民に檄をとばし,決起を呼びかけた。…

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