平井卓也前デジタル相の大口献金者、荻原紀男社長が平井氏を擁護する動画を削除
2021年10月27日 22時05分 文春オンライン
2021年10月27日 22時05分 文春オンライン
2021年10月27日 17時00分 文春オンライン
平井卓也前デジタル相 ©共同通信社
10月31日投開票の衆院選で、香川1区に出馬する自民前職の平井卓也前デジタル相(63)。その大口献金者で、IT関連企業「豆蔵K2TOPホールディングス」(東京都新宿区)の荻原紀男社長(63)が、平井氏が受けた民間企業からの接待などについて擁護する動画を投稿し、その後、削除していたことが、「週刊文春」の取材でわかった。
香川1区からは平井氏のほか、立憲民主党前職の小川淳也氏(50)、日本維新の会新人の町川順子氏(62)が出馬している。小川氏は公示前、日本維新の会に対し、町川氏の出馬取り下げを要請。こうした行動を受け、日本共産党は県委員会の支持に留めている。現在、平井氏と小川氏が激しく争う展開だ。
平井氏と荻原氏は20年来の付き合いで、豆蔵HDは2013年から2017年にかけて毎年60万円、計300万円を平井氏が代表を務める自民党香川県第1選挙区支部に献金してきた。
さらに、平井氏と豆蔵HDを巡っては、平井氏が保有していた同社の株式8400株を2020年3月までに豆蔵HDのMBO(経営陣による自社株買い)に応じる形で全て売却したにもかかわらず、売却益を申告していなかった問題も明るみに出た。平井氏はその後、修正申告を行って所得税を納付した。
そうした中、荻原氏は10月20日、平井氏の公式YouTubeチャンネルに〈荻原さんによる平井卓也が落選したらどうなる? 考察〉と題する動画を投稿。要点を記したスケッチブックをめくりながら、荻原氏が6分近くにわたり、持論を述べていく内容だ。
まず、〈マスコミ報道のウソ〉として、主に以下のように語った。
「平井さんは2005年から弊社の株主でありました。それは別に、お願いしたわけでも何でもございません。我々のやっている開発の在り方に、非常に共鳴していただいた結果でございます。その間に(株を)持っていただいたんですが、その時はすでにマザーズに上場しておりましたので、未公開株ではございません。マスコミのウソ報道でございます」
「週刊文春」は、平井氏の豆蔵HD株売却について取り上げてきたが、「未公開株」とは一度も報じていない。
■恫喝発言、接待を擁護
続いて、〈恫喝発言→経営者ならやむを得ない〉として、主に以下のように語った。〈恫喝発言〉とは、五輪アプリの発注を巡り、平井氏が「NECを干す」などと内閣官房の官僚に指示したことを指すと見られる。
「一連の恫喝発言でございますが、私はおかしいとは思っておりません。と言いますのは、平井さんもともと経営者なんですよね。だから彼がデジ庁を経営する、あるいは国を経営するという立場になってモノを考えた時には、税金がいかに重要なものであるかということで、使えもしないソフトウェアにお金を払うことができない、だから払えない。これが当たり前の話なんですね。で、私はその税金を節約したことに関して、なぜこれだけ叩かれなければいけないのかと、私にはさっぱり意味が分かりません。ある意図が、ある意図が動いているとしか思えません」
そして、〈接待について〉として、主に以下のように語った。〈接待〉とは、平井氏が大臣在職中にNTTから受けた接待を指すと見られる。
「続きまして、接待について、でございます。国会議員で民間人と会食していない人、1人もいないと思います。まあ共産党は別でしょうが。そうでないと生の情報は取れません。政策にも生かせません。皆さん、食事します。食事したら、さすがに民間の人は『先生、いいですよ、今日は私の方で持ちます』と皆さん言います。これ、普通です。決して異常なことではありません」
さらに、荻原氏は日本のデジタル化の進展にあたり、平井氏がいかに重要な人材かということを訴え、以下のように動画を締め括った。
「平井さんが落選するとこの国の進歩はまた遅れます。これは香川1区の問題だけではありません。これはこの国の未来のためにも、平井さんの当選は絶対に必要だと思います。香川1区のみなさまご清聴ありがとうございました。平井卓也をよろしくお願い致します」
その後、この動画は10月25日夜までに、削除された。
■平井氏、豆蔵K2TOPホールディングスの回答は…
平井氏に動画公開の経緯などを尋ねたところ、その点について言及せず、10月26日、以下のように回答した。
「選挙期間中の報道は、すべての候補について平等に報じるのが決まりです。他候補の評価もなく、特定候補のことだけを報じるのであれば、公平公正な報道とは言えません。選挙妨害と言われないよう慎重な対応を求めます。また、公選法は、新聞や雑誌が虚偽や歪曲した事実を報じ、選挙の公正を害することを罰則をもって禁じています。報道機関として法令を遵守された報道をお願います」
一方、豆蔵K2TOPホールディングスは10月26日、以下のように回答した。
「(動画公開の経緯について)YouTubeにはIT業界の多くの仲間が投稿しています。これはデジタル庁の井戸を掘った平井氏が自分の宣伝の為に映画に出演している小川氏と比較され、かつ予想では負けている状況は何とかしたい、せねばならないという思いからであります。
(動画削除について)消した理由はこれを見た何人かの友人から面白く気持ちはわかるがマスコミや相手候補を刺激することになるので迷惑になる可能性があるので止めた方が良いということで削除いたしました」
10月27日(水)16時配信の 「週刊文春 電子版」 および10月28日(木)発売の「週刊文春」では、「緊迫176選挙区徹底予測 衆院選『最終当落』」と題し、各党・各紙の情勢調査や独自取材を基にした激戦区176の当落予測を掲載。そのほか、落選の危機に瀕している大物議員の近況、逆効果になる甘利明幹事長の選挙応援、安倍晋三元首相や菅義偉前首相らへの直撃取材、自民党が大苦戦している大阪の現地ルポ、“無敗の男”と呼ばれる中村喜四郎元建設相へのインタビューなど、10ページにわたって総選挙の終盤情勢を詳報している。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年11月4日号)
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