二枚貝の飼育
ここでは、タナゴの繁殖に必要不可欠である「二枚貝」の飼育法を紹介します。二枚貝の長期飼育は、タナゴの飼育よりはるかに難しいです。
というのも、二枚貝が水質や水温にややうるさく、餌である植物プランクトンを水槽内に充分供給することが難しいからです。現在、二枚貝の
長期飼育を可能にするために様々な方法が考案されていますが、未だ効率の良い方法は見つかっていません。ここでは、現在までに行われ
てきた飼育法や管理法、僕が行っている方法などを紹介しますが、あくまで二枚貝を少しでも長生きさせるための方法です。とは言っても何も
しないよりはマシですから、タナゴ繁殖を狙っている人も是非実践してください。
・淡水産二枚貝とは
二枚貝とは、海産のアサリやハマグリ、淡水産のイシガイ類など、殻を一対(??)持つ貝類のことを言います。二枚貝の多くはプランク
トン食(濾過食とも呼ばれる)ですが、海産のシャコ貝類のように体内に褐虫藻を共生させ、その光合成による栄養分を摂るものもいます。
ここでは、タナゴの産卵に必要不可欠な淡水産二枚貝(イシガイ類)について説明しようと思います。現在、日本には17種(イシガイ類
のみ)が確認されているそうです。淡水産二枚貝と海産二枚貝の大きな違いは、繁殖形態と幼生期間にあります。淡水性二枚貝の幼生
は放出されるとすぐに宿主に寄生する必要があります。なんとその宿主は魚です。魚の体に寄生した幼生はそこで変態を完了して稚貝と
なり、底生生活に移ります。
・淡水産二枚貝の飼育が難しい理由
よく「水槽内での二枚貝の長期飼育は無理」といわれますが、これには淡水産二枚貝(以下、二枚貝とする)の食性が大きく関わってい
ます。まず、二枚貝は植物プランクトンやその他の原生生物を入水管から取り入れ、餌としていますが、水槽内ではこれらの生物を充
分供給することが難しく、生産量も極僅かだからです。これは、水槽についている濾過器によってそれらが漉し取られてしまったり、室
内では様々な自然現象(天候や太陽光、温度変化など)を受けにくいからだと思われます。二枚貝はこれら微生物群しか餌として吸収
出来ません。つまり、これらの微生物群が充分供給できなければ、長期飼育はほぼ不可能となるわけです。先述した通り、水槽内でこ
れらの微生物群を二枚貝が満足するだけの量、供給することが大変難しいことが、二枚貝飼育を難しくさせているのです。最近は二枚
貝を少しでも長く生かす方法も考案されていますが、未だ、確実に長期飼育を実現させる方法は無いに等しく、ましてや繁殖など個人で
成功した例はまだ一握りです。
・二枚貝を長く生かすための方法(屋内水槽での管理編)
二枚貝を少しでも長く生かすために考案された方法を紹介します。
方法その①> 植物プランクトン(珪藻類)を確保して与える
二枚貝の本来の主食である植物プランクトンを与える訳ですから、一番ベストな方法だと言えます。といっても、こ
れを完璧になすのは至難の技です。まず植物プランクトンを確保しなくてはなりませんが、水を日に当てておけば
簡単に増える緑藻類は、細胞壁が頑丈で二枚貝が消化しにくいようで、もっぱら珪藻類を主食にしているようです。
ただし珪藻類は培養するのが難しく、ただ直射日光に当てておけば増えるわけではないため、培養にはある程度の
知識が必要です。しかも二枚貝は結構な量の餌を必要とします。野外での飼育であればプランクトン類が繁殖しや
すいですが、水槽内で、しかも屋内で珪藻類だけをまとまって供給するのは研究機関でもない限り難しいでしょう。
方法その①> 豆乳を与える
意外な方法に思えるかもしれませんが、効果はあるようです。というのも、二枚貝は植物プランクトンを主食にして
いますが、豆乳の成分も栄養として摂取できるとのことです。植物プランクトンは充分な量を供給することが難しい
ですが、豆乳であれば入手が簡単です。貝への与え方ですが、10リットル位入る容器に水で濃めに薄めた豆乳を
入れ、そこに二枚貝を入れて豆乳を充分吸い込ませます。豆乳の濁りがなくなるまで貝を入れて置いてください。
ただし、結構頻繁に与えないとあまり効果がないようです。また、豆乳の代わりに豆腐をジューサーにかけ、水で薄
めて与えている人もいるようです。
方法その②> 酵母系消化剤を砂利に埋める
こんな方法誰が考えたのでしょう。しかし、ちゃんと効果はあります。詳しくは分かりませんが、これを砂利に埋める
ことで、砂利中で微生物生産が活発に行われるようになるからだと思われます。使い方ですが、60㎝水槽に1~2
粒埋めるだけで充分です。この方法である程度二枚貝を長生きさせることが可能ですが、数年の長期飼育となると
この方法オンリーではまだ難しいです。
方法その③> 海水無脊椎動物用の液体飼料を与える
要するにサンゴ用の餌ですが、淡水二枚貝の餌としても使えるようです。スポイトなどでサンゴに直接吹きかけるタイ
プと、水槽に添加して使うタイプがあります。前者は二枚貝が取水管を開いているときに静かに取水管あたりに吹き
かけ、後者は定期的に二枚貝のいる水槽に適量添加するだけです。それなりに効果はあるようですが、餌やりにロ
スが多いのと、やりすぎると水を汚してしまう欠点があります。
・・・・以上の方法が有名ですが、これらの方法を単独で使っても確実な効果は期待できません。ということで、以上の方法を組み
合わせてみてはいかがでしょうか。ただし、水槽という、閉鎖的で自然とかけ離れた環境で以上の方法をうまく組み合わせて行っ
たとしても、多種多様なプランクトン類が繁殖でき、天候や温度変化がある自然界にはかないません。
ということで、なるべく自然環境に近づけるために、二枚貝の飼育槽を野外で管理するという方法があります。この方法は、飼育
槽内の環境が整い、二枚貝の数と餌の要求量と、プランクトン類の生産量が釣り合うと、比較的楽に二枚貝を長期飼育出来るよ
うになります。次はその方法を紹介しようと思います。
・野外飼育で二枚貝をストックする方法
ここでは、二枚貝の野外管理法の紹介をします。
1.野外管理法の利点と有効活用法
先も述べた通り、屋内の水槽では天候や温度変化などの自然現象を受けにくいため、プランクトンやその他の微生物が
発生しにくいですが、屋外であれば屋内よりもこれらの自然現象を受けるため、プランクトン類の発生が促進されます。
つまり、屋外に飼育槽を設け、プランクトン類の発生の元(荒木田土や種水となる河川の水、適度な日光と水温変化など)
で環境を整えることによって、二枚貝の餌となるプランクトン類が自然に生産されるようになり、二枚貝を長く生かせるよう
になる訳です。この屋外飼育槽を設ける事によって、屋内水槽では難しかった二枚貝をキープして出番までストックするこ
とが比較的容易になり、二枚貝をいくつかのグループに分け、産卵水槽と屋外水槽の間で定期的にグループの交換をす
ることで、二枚貝への負担を少なくする事が出来ます。また産卵期以外にはこの屋外水槽で二枚貝を長くキープすること
も可能です。もちろん、屋外水槽に二枚貝とタナゴを入れ、そのまま繁殖に持ち込む事も可能です。
2.屋外飼育槽の制作に必要な物

←野外飼育槽においては三種の神器とでも言える用品です。(?)
容器 ・・・・・水槽や大きめの衣装ケース、発泡スチロールの箱など、何でもよいですが、なるべく大きい物を使いましょう。
50リットル以上入る物がベスト。最低30リットル以上入る物を選んでください。
荒木田土 又は ビオソイル ・・・・・荒木田土は栄養分が多く含まれており、プランクトン類が発生しやすい環境を作ります。
園芸店で容易に手に入ります。また、アクアデザインアマノから発売されているビオソ
イル(ビオトープ制作への使用を目的とした商品)も、同様の効果が得られるようです。
パワーサンド・スペシャル ・・・・・アクアデザインアマノから発売されている商品で、多孔質の軽石をベースに有機栄養素を
豊富に含んだ底床栄養源です。水草水槽に使用される商品ですが、微生物群の発生を
促進するため、二枚貝の飼育にも効果的だと言えます。荒木田土やビオソイルの下に敷
いて使用します。無くてもよいですが、効果はあるので是非使いたいアイテムです。ただし
少々高価です。
水草育成用肥料 ・・・・・これらの商品は水草の生長を促進させるだけでなく、植物プランクトン類の発生も促進します。液体
の物と固形の物があり、併用すると効果が上がります。様々な物がありますが、藻類の生育を妨げ
る成分が保有されている物は避けてください。
水草類 ・・・・・水質の安定、水中への酸素の供給などの面で入れておきたいアイテムです。丈夫で、低~高水温まで耐え、
よく増える種類がいいでしょう。そういう面では、オオカナダモやコカナダモがおすすめです。また、ホテイアオ
イなどの浮き草は、水中のリンや余分な有機物を吸収し、水質を良く保つのに役立つ他、二枚貝やタナゴに
日陰を提供します。その他、余分な肥料の養分を吸収し、水が富栄養化してしまうのを防ぎます。
エアーポンプ 又は 循環ポンプ ・・・・・水中に酸素を送ります。二枚貝は意外と酸欠に弱い生物です。特に高水温期は酸素
要求量が高くなるため、エアーポンプで酸素を送ってあげましょう。循環ポンプで水流
を作ってあげても良いでしょう。タナゴを直接この飼育槽に入れる場合は、これらの器
具で酸素を送った方がいいです。
3.屋外飼育槽を立ち上げる
屋外飼育槽の準備、立ち上げ法について説明します。↑の物は用意できましたか?
手順①> 容器の置き場所を決め、設置する。
容器は水を張ってから動かすことが難しいので、最初に置き場所を決めておきます。
置き場選定のポイントですが、なるべく明るい場所に置きましょう。ですが、この「明る
い」所の基準が微妙なところで、一日中直射日光がガンガン当たるようでは、餌であ
る珪藻類よりも緑藻類ばかりふえてしまい、さらに夏期は水温上昇を招いてしまいま
す。逆に日陰すぎると植物プランクトンがなかなか増えません。簡単に言うと、「直射
日光にさらされず、日陰にならず、一日中明るい場所」といった所でしょうか。まあ半日
位直射日光に当たったほうがいいような気もしますが、「一日中」はNGです。
手順②> パワーサンド・スペシャルを敷く

パワーサンド・スペシャルをいれます。量は規定量が基本ですが、自分で加減してもか
まいません。
手順③> 底土を入れる

用意した荒木田土、もしくはビオソイルを容器に敷き詰めます。深さは最低7,8㎝くら
い敷きましょう。浅すぎると二枚貝が砂中に潜れず、ストレスになります。
手順④> 固形水草育成用肥料を埋める
水草育成用肥料を規定量、もしくは少し多めに底土に埋めます(パワーサンド・スペシャルを使った場合規定
量より少な目、もしくは入れなくても良い)。深く埋めなくてもよいです。
手順⑤> 水を入れ、河川等から採取した種水を入れる。
水を入れます。その後、カルキ抜きを行ってください。さらに、河川等から採取した種水を入れます。種水の量
は1リットルあれば充分です。なお、種水となる水の採取場所は、当たり前ですが排水の流れ込んでいない、な
るべく綺麗な所を探しましょう。池を持っている人は、その池の水を使ってもいいでしょう。
手順⑥> 水草を入れる

水草を入れます。直接、底土に植えても良いですが、ここでは植木鉢に水草を植え、
それを容器に入れました(容器内の管理が楽、二枚貝に水草を抜かれないなどの利
点がある)。使用した水草はマツモとコウホネです。
写真の時点ではコウホネしか入ってませんが・・・
これで屋外飼育槽の設置は終了です。あとは充分日に当てて、植物プランクトン類や微生物群が増えるのを待ちます。早けれ
ば数日で、遅くとも1週間ほどで水が緑褐色になってきます。これは植物プランクトンが増えた証拠です。ここまで来たら、二枚
貝を投入しましょう。こうなる前に二枚貝を入れてしまうと植物プランクトンの発生が遅くなります。
4.容器の容量と適した二枚貝の数
容器内に植物プランクトンや微生物群が増えたら二枚貝を投入しますが、投入する二枚貝の数は、容器の水量によってある程
度制限されます。というのも、二枚貝はその体に似合わず(?)結構な量の餌を必要とします。また、植物プランクトンは、水量に
応じて一定の生産限度があります。つまり、水量に合った数の二枚貝を投入しないと、場合によっては餌である植物プランクトン
の量が不足してしまい、結果的には屋内水槽で飼育しているのと同じ状況になってしまいます。そうならないために、投入する二
枚貝の数はよく考える必要があります。また、二枚貝の種類によっても餌の要求量が違います。イシガイなどは少な目ですが、ド
ブガイやカラスガイはかなりの量を必要とします。この件に関しては僕も明確な答えがでていません。各自で水量に見合った二枚貝
の数を見つけて欲しいと思います。この件に関して情報を提供して頂ける方はどうかご一報下さい。
5.立ち上げ後の管理
基本的に、水が完全に立ち上がってプランクトン類が自然と発生するようになれば、面倒な管理は必要ないです。ただし、
肥料の量が多すぎたり、日光が不十分だったりすると、植物プランクトンの発生量が少なかった場合、一時的に水質が悪
化する場合があります。特に立ち上げ直後は植物プランクトンの量が少ないため注意する必要があります。この場合は、
適量水換えを繰り返せば対処可能です。順調に植物プランクトンが繁殖すると、水が緑褐色~深緑色になってきます。こ
こで最適な量の二枚貝を投入することで、プランクトン発生量と二枚貝の捕食スピードが合い、プランクトンの大量発生に
よる水質悪化や、二枚貝の餌が不足するということが無くなります。あとは、定期的に液体肥料と固形肥料を添加してくだ
さい。水換えは1ヶ月位に1回程度行ってください。量は4分の1~3分の1位で良いです。あまり換えすぎると植物プランク
トンの量が減ります。逆に増えすぎてしまわないか心配する人もいるかもしれませんが、二枚貝はかなりの濾過能力を持っ
ていますから大丈夫です。
6.屋外飼育槽にタナゴを入れて繁殖させる
室内に水槽の置き場が無い、繁殖水槽が不足しているなどといった場合、直接二枚貝の屋外飼育槽にタナゴを入れて飼
育・繁殖させることも可能です。この場合、屋外飼育槽内にタナゴの隠れる場所(水草を密植したり、石や流木などを用い
る)を設け、魚が酸欠にならないよう水中ポンプ等でエアーレーションします。また、タナゴの生息環境に合わせて、底土の
上に川砂を敷いても良いでしょう。これでも充分タナゴは繁殖することが出来ます。
この方法には利点があります。まず、室内水槽でタナゴを繁殖させようとした場合、二枚貝を屋外飼育槽と定期的に交換
しないと貝が弱ってしまい、さらに室内水槽にいるうちは餌が少なく二枚貝にとって負担となりますが、常に屋外飼育槽に
いれば二枚貝への負担を最小限におさえることが出来ます。タナゴは元気な貝に好んで産卵しますから、二枚貝も元気で
あることがポイントとなるわけです。また、室内飼育の場合、室内の人の足音やその震動、その他の物音などでタナゴが怯
えてしまい、産卵しなくなる事も多いですが、屋外の人通りの少ないところであれば、タナゴが安心して産卵行動に移れます。
さらに、適度な太陽光に当たることで、タナゴの体色が良くなる効果もあります。そういう面で、手軽にタナゴの飼育・繁殖を
やってみたい人にもお勧めです。また、ゼニタナゴやカネヒラなど、秋産卵型のタナゴの場合、孵化した稚魚が冬の間ずっと
貝の中にとどまっていますが、この間二枚貝はかなり体力を消費します。つまり、この間充分な餌が必要となるため、屋外
飼育槽は重要な役目を果たします。
7.夏と冬の間の管理
夏場は水温が上昇するため、生物の酸素要求量が高まります。よって、エアーポンプで酸素を送りましょう。特に植物プラン
クトンが多い環境では、夜間水中の酸素濃度が低くなり、二枚貝が酸欠を起こす可能性があります。特に魚を入れる場合は
酸素供給は欠かせません。また、二枚貝は高水温に弱い生物です。関東以西の地域の場合、夏場、気温が30度を越える
ことも普通なので、水温が30度を越えるようなら、一時的にクーラーの効いた水槽に移すなどしたほうがいいでしょう。
冬場の管理ですが、関東以西なら冬の寒さはそれほど気にする必要はありません。ただし、北陸、東北地方以北の場合は
冬は雪が降るような土地です。河川など、常に水が流れている環境ならいいのですが、容器の場合水面に氷が張ることもあ
ります。氷が張るようなら、エアーレーションして容器内の水を回すようにしてください。関東以西で気温が氷点下にならない
のならほったらかしでもいいです。(爆)
・二枚貝の繁殖
ここまで述べたとおり、二枚貝の飼育法は色々と考案され、長期飼育も可能になってきましたが、二枚貝の繁殖となると個人ではなか
なか成功例を聞きません。やはり、長期飼育すら難しい二枚貝を閉鎖的環境で繁殖させるのは至難の業のようです。しかし、野外管
理法で実際に繁殖した例はあります。僕も二枚貝の繁殖に挑戦中ですが、皆さんも是非挑戦してください。
二枚貝の繁殖形態
二枚貝は雌雄同体ではなく、きちんと雄個体と雌個体があるそうです。雄個体から水中に放出された精子は何らかの過程を経て雌の卵
と受精し、受精卵は雌個体の鰓の中で発生を続け、孵化した幼生(グロキディウム幼生と呼ぶ)は水中に放出されます。幼生はヨシノボリ
などの魚の鰓や鰭に寄生し、変態を完了した後、稚貝として底生生活に移ります。
繁殖のポイントは?
↑から分かるとおり、二枚貝の幼生はヨシノボリなどの魚に寄生する必要があります。よく、「タナゴは二枚貝に産卵し、二枚貝の幼生
はタナゴに寄生する共生関係がある」といわれますが、タナゴは二枚貝の幼生の寄生に対し抵抗する性質があるようで、寄生したとし
ても、変態がうまくいかず途中で幼生が死亡してしまうようです。ということで、幼生はヨシノボリなど他の魚に寄生することになります。
ヨシノボリの他にも、オイカワやカワムツ、モロコ類、ヌマチチブなどにも寄生するようで、結構色々な魚に寄生することが出来るようで
す。ここから分かるように、二枚貝を繁殖させるには寄生相手である魚を同居させる必要があります。あとは成熟した雄個体と雌個体
も必要です。雌雄の判別は難しい(というか無理?)ので、複数個体を同居させて、その中に雌雄がいることに賭けましょう。最後に植
物プランクトン豊富な環境も必要です。これは環境の整った屋外飼育槽を作る必要があるということです。
二枚貝繁殖のポイント 3条
1条 寄生宿主を入れる(ヨシノボリ等の魚)
2条 健康で成熟した二枚貝の雄個体と雌個体
3条 プランクトン豊富な良好な環境
・・・・以上の条件すべてを満たすことが出来れば、繁殖も決して夢ではないでしょう。
・賢い二枚貝の利用法
・用が済んだ二枚貝を生息地に帰す
ここまで二枚貝の飼育法を紹介してきましたが、二枚貝にとって快適に飼育できる方法が確立していない今、人の手によって飼育され
ている限り、二枚貝には何らかの負担がかかります。ということで、タナゴの産卵が終わったら、二枚貝をもと居た場所に帰したほうが
いいです。元の生息地なら、二枚貝にも負担はかからないでしょう。ただし二枚貝を生息地に帰す際、注意することもあります。
注意点①> 二枚貝内にタナゴの卵、稚魚が居ないことを確認してから帰す
タナゴの産卵に利用した二枚貝の場合、貝の体内に卵や稚魚が残っているかもしれません。もし、二枚貝の
体内に卵や稚魚が残された状態で放流した場合、二枚貝が生息地でそれらの稚魚を放出してしまうことが予
想されます。こうなると、その稚魚がその地域に生息しないタナゴだった場合、生態系を破壊する要因となっ
てしまいます。また、そこに在来種であるタナゴがいた場合、その種の保存に大きな影響を与える可能性があ
ります。特にタイリクバラタナゴや外来種などは絶対放さないようにしなくてはなりません。つまり、産卵水槽に
入れておいた二枚貝は、産卵期が終わっても1~3ヶ月キープし、タナゴの卵や稚魚の有無を確認する必要
があります。また、秋産卵型タナゴの産卵に使用した貝の場合、稚魚が浮上するのは春ですから、使用した
貝を放流するのは夏以降にしましょう。
注意点②> 二枚貝をその生息地以外の場所に帰さない
二枚貝はデリケートな生物で、生息条件をきちん満たしていない場所でないとうまく定着出来ないことが多いで
す。つまり、二枚貝を放す際は、その貝の採集場所に放す必要があります。ただし、ここで問題になることが、
ショップなどで購入した、その地域に生息しない貝や、遠方に生息している貝だった場合は大変です。二枚貝も
種類によって分布域が違います。これを分布外の地域に放したら問題ですよね。ショップで購入したのなら、最
後まで面倒を見るのが常識です。それでも放す場合は、大変でも具体的な生息地を調べて放しに行くしかない
でしょう。それが出来ないなら、やはり最後まで責任もって飼育してください。
※ 「賢い二枚貝の利用法」を公開してから、ある方からいくつかのご指摘と助言を頂きました。
まず、貝の体内に稚魚が残ったまま放流してしまう恐れがあることです。これによって起こる事態は先述した通りです。
貝が生きている状態で稚魚の有無を確認するのは難しいですし、また、飼育条件によってはタナゴが産卵期以外にも
産卵する可能性があるため、放流する際には、充分な期間タナゴと隔離した状態を経たあとに行う必要があります。こ
こは管理人の記述が甘かったためお詫び申し上げます。
また、水槽内の様々な細菌類を自然界にばらまいてしまう可能性もあるとのことで、それが一般に自然界に存在しない
ものだとしたら環境に悪影響がでる恐れもあるそうです。
管理人自身もこの件に関して個人的整理を行っています。皆様も上の記述に対し考えを下されば光栄です。
二枚貝は移動能力が低く、それでかつ環境変化に弱い生物です。そのせいか、河川改修や水質悪化でどんどん数を減らしていま
す。タナゴを守ろうと言う人は多いですが、二枚貝を守ろうと言う人は少ないです(タナゴを知ることで二枚貝の重要性を知ったと言
う人は多いですが)。しかし、タナゴを守るためには二枚貝も守らなければなりません。今、タナゴ飼育がブームとなり、二枚貝の需
要が上がっています。しかし二枚貝もタナゴ同様、数を減らしています。つまり、二枚貝を無駄に消費しないためにも、タナゴ飼育者
は二枚貝の飼育法を確立する義務があると思います。そして、タナゴ同様に二枚貝も繁殖を考える必要があると思うのです。二枚
貝は地味で観察してもつまらないかもしれませんが、タナゴを残していくには二枚貝のこともタナゴ同様考える必要があるのです。
参考文献
二枚貝の生態、飼育に関して勉強させて頂きました。
個体群生態学研究室
日本淡水魚タナゴ保存会
日本の水草-タナゴと二枚貝-