CROWN 3 L5: The Biggest Event in Human History...Or the Last? (1)

人類史上最大の、もしくは最後の出来事?

機械が人間のように考え行動する可能性はあるでしょうか?
銀行やホテルでは、人型ロボットが人間に挨拶をしています。
スマートフォンは、あなたが近くの素敵なレストランを
見つけるのを手伝ってくれます。
またあなたは、コンピューターが囲碁の世界チャンピオンを
打ち負かしたことを聞いたことがあるかも知れません。
自動運転の車は、すでに路上に現れ始めました。
これらのすべての技術的成果は、人工知能つまりAIを使った
コンピューターシステムによって可能になります。

通常コンピューターシステムである機械が、
問題解決や学習のような人間の認知機能を模倣する時に
AIという用語が使われます。
AIのもたらす利益は大きなものです。
しかし、今やAI技術は非常に高い水準まで進歩したので、
懸念を表す人々もいます。
AIの現状を見て、なぜそれが将来性だけでなく
懸念の材料にもなり得るのか考えてみましょう。

Section 1
「人工知能」という用語は、
1956年ダートマス大学に集まった科学者グループによって
初めて使われました。
彼らは、人間の知能のあらゆる面を模倣する機械を作るという
アイデアを発想しました。
それ以来ずっと、
科学者たちはそのような機械を作ろうと努力し続けています。
東京大学のAI専門家である松尾豊によると、
AI研究には3つの段階で発展してきたそうです。
1950年代後半から1960年代にかけて、研究者たちは
パズルを解いたりボードゲームができる
コンピュータープログラムの開発に関心がありました。
1980年代には、彼らの関心は、
専門知識をコンピューターに組み入れるよう設計されたプログラムである
「エクスパートシステム」の制作に移りました。
2010年代、研究者たちの興味は、自分自身で学ぶことができるシステム、
つまり「機械学習」の能力を持つシステムを作ることに変わりました。

機械学習は今、「ディープラーニング」の開発によって
新しい段階に達しています。
ディープラーニングは、
人間の脳内で起こっていることを模倣しようとします。
言い換えれば、コンピューターシステムは、
より人間の脳神経ネットワークのようになっています。
私たちが神経ネットワークを使って学習するのと同じ方法で、
コンピューターシステムは膨大なデータを理解することを学習し、
パターンを見つけ出し、やがてそれをさまざまな仕事に応用します。

ディープラーニングを使うコンピューターシステムは、
全く、30年前には夢見ることもなかった
多くの偉業を成し遂げました。
物体認識とは、例えばネコを見てネコと認識する能力で、
人間の不可欠で本質的な機能です。
私たち人間にとって、これは明らかに非常に単純な作業ですが、
コンピューターにとってはそうではありません。
どの2匹のネコも正確には同じでないという事実を考えてみて下さい。
大きさ、重さ、色あい、しっぽの形がさまざまに異なっています。
だからコンピューターシステムがネコを認識できるためには、
ネコを特徴づける本質的な容貌に焦点を当てながら、
いくらかの差異を無視できなければなりません。

Section 2
実際、2012年にグーグル社の研究者たちは、
コンピューターシステムにネットから1000万枚の猫の画像を集めて、
ある実験を行いました。(※実際にはユーチューブから集めた)
システムのニューラルネットワークは、
ネコの画像から作られる一定の共通したパターンを自主的に抽出し、
それから全く新たにネコの画像を創出しました。

もしあなたが下の(二つの)肖像画を描いたのは誰かと尋ねられたら、
もっともありがちな答えは「レンブラント」でしょう。
しかしその答えは、完全には正しくありません。
実際は、一つはレンブラントの作品ですが、
もう一つはコンピューターシステムによって描かれたものです。
あるオランダのチームが、
完全に「新たな」レンブラント風の作品を
創作できるディープラーニングのプログラムを造ったのでした。

まず最初に、コンピューターシステムは
レンブラントの346枚の絵画をすべてスキャンし、
それらをディープラーニング技術を用いて分析しました。
次に、コンピューターは
どのような特徴を絵に組み入れるかについて指示を受けました。
その絵の題材は、帽子をかぶりひげを生やした
30代から40代の男性であるとされました。
それからコンピューターはデータを処理して、
完全に形どられたレンブラント風の
顔と上半身像を創作しました。
最後に、ディープラーニングプログラムを用いて、
3Dプリンターが作品を描きました。
2016年春、この「レンブラント」の新作は、
世界中の美術愛好家を驚かせました。

もう一つのディープラーニングの偉業は、
ボードゲームの分野で起こりました。
2016年3月、デミス・ハサビスが作った
AlphaGoという碁のソフトウェアが、
韓国のチャンピオンのリー・セドルを4対1で破り、
世界を驚かせました。
この革新的なソフトウェアは、
事前にプログラムされておらず(碁の技術を教えられておらず)、
また、いわゆる「ブルートフォース(総当たり)」で試すことに
たよった訳でもありませんでした。
ハサビスは、このように説明します。
「ほとんどのAIプログラムは、直接的に解法をプログラムされていて、
 それからその解法を実行しています。
 AlphaGoでは全くそれとは異なります。
 AlphaGoに学習させるのに、ニューラルネットワークを使います。
 それにはまず最初に、プロの勝負を見せて、
 プロの人間の打ち手の作る様々なパターンを学習させます。
 するとAlphaGoは、self-playを通して練習することにで、
 人間の打ち手よりも上手になろうとします。
 (self-playとは)古いバージョンの自分自身と対戦し、
 自分のしたミスから学習することです。
 劣勢につながるようなミスをすると、
 そのミスをその後に挽回できる機会を作るため、
 自身のシステムを僅かに変化させます。」