カラコンやサングラスなど、目全体を美しくしてくれるアイテム。店頭には様々な商品が並んでいるけれども、どんなポイントで選び、またどんなケアをしたら良いのかは正直わからないですよね。そこで、前回と同様に、眼科医の村上沙穂先生に、美しく健康な目を保つための正しいアイケアについてお聞きしました。
●色の濃いサングラスが紫外線をカットしてくれるわけではない?
――昔に比べて紫外線が強いと言われていますし、秋冬の季節も紫外線は心配です。紫外線対策としてサングラスを装着している人は多いですが、より紫外線をカットするためには、濃い色のサングラスを購入した方が良いのでしょうか?
村上沙穂先生(以下、村上):サングラスの色の濃さは、目に見えない紫外線ではなく、目に見える光、可視光線(400nm~800nm)のカット率で決まります。ですので、紫外線カットとサングラスのレンズの色は実は実は無関係なんです。
可視光線そのものは、余程強くなければ目に害があるわけではありませんので、サングラスの色の濃さはまぶしさを軽減する効果は期待できても、紫外線から目を保護する目的とは関係がありません。
――それではどのようなレンズであれば、目を保護する効果が期待できるのでしょうか。
村上先生:“紫外線防止加工処理”がきちんと施されているレンズを選ぶと良いでしょう。それであれば、透明なレンズでも問題ありませんよ。
店頭で紫外線防止加工(UVカット加工)処理が施されたレンズを見ると、いくつかの種類の表示があると思います。例えば、「紫外線カット99%」、「紫外線透過率0.1%」、「UV400」といった表示です。このうち、紫外線カット99%はそのままで分かりやすいと思いますが、他の2つについて説明させてください。まず、紫外線透過率0.1%というのは、99.9%の紫外線を通さないということです。つまり、「紫外線透過率0.1%」というのは、「紫外線カット99.9%」と同じ機能を意味しています。次に、「UV400」というのは、400nm以下のUVA(紫外線A波)、 UVB(紫外線B波)、 UVC(紫外線C波)の3種類全ての紫外線をカットすることを示しています。
ここで、UVA、UVBという一般的にあまり聞き慣れないかと思う用語がでてきたので、更に説明させていただきますと、紫外線には何個かの種類があります。紫外線のうち、地表に届くのはUVAとUVBという種類の紫外線です。UVAは波長が長く、肌の奥まで届くため、シミやシワ、たるみなどが気になる人は要注意。一方で、UVBは波長が短く表皮に届くため、日焼けやシミなどのダメージを引き起こしやすいと言われています。
サングラスはおしゃれ感覚だけではなく、しっかりと紫外線防止加工処理の表示を見極めて選んでみてくださいね。
●カラコン使用者の約8割が定期検査未受診!
――目のおしゃれで言うと、今や働く女性の間でも当たり前になったカラーコンタクトがあります。カラコンを選ぶ際の注意点はありますか?
村上先生:実は、日本コンタクトレンズ学会の調査では、2012年7~9月で395人がコンタクトレンズによる眼障害を負ったそうです。また、カラコンを始める際に眼科を受診した人はわずか13.4%しかおらず、定期検査も約80%が未受診という結果でした。
さらに視力障害が残る可能性があると判断されたのは、調査をしたカラコン利用者の2.8%(約36人に1人)にまでのぼりました。カラコンは手軽に装着することができますが、適正使用ができていないと、後から取り返しの付かないことになることもあります。
そこでコンタクトレンズやカラコンを使用する際には以下のことに注意しましょう。
・眼に充血、痛みなどの異常を感じたら、無理に装用せずに眼科を受診する(コンタクトレンズを着けている間は、眼の痛みもカバーされてしまうことがあり、「着けると痛みがなくなるから大丈夫だ」と使い続け重症化してしまうパターンもあります)。
・通信販売や雑貨店で購入するのではなく、初めて使用する場合は事前に検査を、そして定期的な検査を必ず受けてから購入する。
・使用方法や使用期限を守る。
・メイクをする前に装着、そしてメイクを落とす前に外すようにする(メイクを落とすときにコンタクトレンズを着けていると、メイク落としの成分がコンタクトレンズに付着してしまう危険があります)。
・カラコンを選ぶ時は、価格ではなく安全性を重視する。また選ぶ際には、カラコンの色素が直接瞳に触れない構造になっているかどうか(レンズの内面や外面に着色されていないか)を確認する。
瞳に直接触れるものだからこそ、安全な用法で健康な眼を保ってほしいです。
●まつ毛の育毛剤に潜む落とし穴
――その他に、目に関するアイテムで注意したいポイントはありますか?
村上先生:最近、厚生労働省から認可されている「睫毛貧毛症(しょうもうひんもうしょう)」に対する治療薬「グラッシュビスタ」を、まつ毛の育毛剤として使用している方が増えています。これは驚かれるかもしれませんが、なんと緑内障治療に使う点眼薬「ルミガン点眼液0.03%(ビマトプロスト)」と同一成分・濃度の薬です。そのため、眼科に受診に来た緑内障治療中の方のまつげは、男性であってもフサフサであることが多いです。
この「グラッシュビスタ」を使うことで、確かにまつ毛は長く・濃くなります。また、つけまつ毛やまつ毛エクステンションによるアレルギーやかぶれで悩む人には新しい選択肢かもしれません。一方で、この薬は保険適用外であり自由診療処方ということは要注意です。
使用する際に知っておいてほしい副作用が、まぶたにくぼみが生じてしまうこと。長期間使用すると上まぶたにくぼみが生じ、加齢によるくぼみのように見えてしまうことがあります。これは目の周りに脂肪ができるのを抑制されることによって起こるもので、中止してもすぐには治りません。
また、妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦や妊娠の可能性のある方、授乳中の方は使用できません。
「グラッシュビスタ」を使用したい場合には、しっかりと医療機関で相談し、使用方法や副作用を理解した上で使用してくださいね。
(秋山悠紀)
<プロフィール>
村上沙穂
眼科医、日本医師会認定産業医、着物着付け師範。1987年生まれ、宮崎県出身。京都大学経済学部、岡山大学医学部を卒業。ハーバード公衆衛生大学院への短期留学、医療系コンサルでのインターン、文部科学省の起業家育成プロジェクトでのイスラエル派遣等、国内外で幅広く活動する。予防医学、ヘルスケア事業、スタートアップ界隈などでアクティブに活動する中で、「人間が生きる時間の満足度や幸福感、日々の生活の快適さを最大限に高めたい」との思いから、「美しい世界を見ることのできる喜び」に関わりたいと決意し、眼科医の道を選択。医師免許取得後、岡山県倉敷市の「日本一救急車の多い病院」で2年間臨床研修。現在は都内病院にて、患者さんに見える喜びを提供すべく眼科医として日々奮闘中。趣味は温泉、美味しいもの、ヨガ、散歩。