①社会保険料を累進所得税方式にせよ
国民は、社会保険料は医療サービスなどを受ける権利を得るための対価であり、支払わなければ医療サービスなどを受けられないのは当然であると思い込まされています。これはつまり自己責任論です。
しかし、本来、社会保障は弱者救済のために行われるものであるからには、対価として社会保険料を支払うという考え方は矛盾しています。
なぜなら、全く保険料を支払っていなくても、民間保険会社ならいざ知らず、国家が、死にそうな者を見殺しにして良いことにはならないからです。
等価交換を基本とする民間の経済活動の考え方は社会福祉の弱者救済とは趣旨が合いません。
民間保険会社の考え方で貧乏人が自分の費用を支払わなければならないのならば、国家事業としての福祉の意味が無くなります。
私たちは貧乏には慣れています。しかし、限界があります。
病気や老齢になって働けなくなったり、失業して職が見つからなかったりしたときがその限界の時です。そのときに、助けの手を差し伸べてくれる人がいたら、どんなに有難いか判りません。
しかし、その代わりに、通常時において今の貧乏な生活をさらに貧乏にするような料金がかけられればどうでしょうか。
苦しいときに救ってやる代わりに、今、高い料金で苦しい生活をしなければならないのなら、私たちにとって、それは嬉しいことなのか、悲しいことなのか訳が判りません。
それでは、今の自分の生活は苦しいので社会保険料を支払わないという選択肢があるかというと、そういうものはなく、加入は強制であり、保険料を支払わなければ差し押さえをされます。よって、明らかに、社会保険料はただの保険会社の保険料ではなく、第二の税金なのです。
それならば、税金には税金にふさわしい考え方と言うものがあります。
実際、社会保険の給付は、通貨発行だけで可能であり、必ずしも徴収を必要としません。徴収が必要となって来るのは、支出を通貨発行だけで行えばインフレになるので、その対策として財市場から貨幣を回収するという理由と同じものであり、インフレ対策にすぎません。
したがって、どのような社会保険料の在り方が望ましいのかは、どのような税制が望ましいのかの問題意識と全く同じものなのです。
現在の日本の健康保険料と年金保険料を合計すると、次の各々の月額所得に対して(実際保険料、実際保険料率)になります。
表①現在の月額所得と(保険料、保険料率)
150,000円(42,735円、28.49%)
300,000円(85,470円、28.49%)
500,000円(142,450円、28.49%)
605,000円(172,365円、28.49%)
1,000,000円(212,615円、21.26%)
1,355,000円(248,790円、18.36%)
2,000,000円(248,790円、12.44%)
5,000,000円(248,790円、4.98%)
10,000,000円(248,790円、2.49%)
これがもし、住民税の所得割と同じくフラット税(比例税)方式で徴収すると、次のようになります。
表②フラット税方式にした場合の月額所得と(保険料、保険料率)
150,000円(15,000円、10.00%)
300,000円(30,000円、10.00%)
500,000円(50,000円、10.00%)
605,000円(60.500円、10.00%)
1,000,000円(100,000円、10.00%)
1,355,000円(135,500円、10.00%)
2,000,000円(200,000円、10.00%)
5,000,000円(500,000円、10.00%)
10,000,000円(1,000,000円、10.00%)
私は、生きて行くギリギリの所得に対して課税するのは間違いであるという立場から、所得控除額を200万円にすべきだと主張します。
表③所得から年間200万円を控除し、フラット税方式にした場合の月額所得と(保険料、保険料率)
150,000円(0円、0%)
300,000円(13,300円、4.44%)
500,000円(33,300円、6.67%)
605,000円(43,800円、7.25%)
1,000,000円(83,300円、8.33%)
1,355,000円(118,800円、8.77%)
2,000,000円(183,300円、9.17%)
5,000,000円(483,300円、9.67%)
10,000,000円(983,300円、9.83%)
さらに、これがもし、現在の所得税の累進課税方式で徴収すると、次のようになります。
表④所得から年間200万円を控除し、累進課税方式にした場合の月額所得と(保険料、保険料率)
150,000円(0円、0%)
300,000円(13,333円、4.00%)
500,000円(39,167円、8.00%)
605,000円(60,167円、10.00%)
1,000,000円(155,125円、16.00%)
1,355,000円(272,275円、20.00%)
2,000,000円(508.458円、25.00%)
5,000,000円(1,783,458円、36.00%)
10,000,000円(4,033,458円、40.00%)
表①から④までを見比べて下さい。いろいろな方式の選択肢があるにも関わらず、現在、低所得者や貧困層が一方的に負担を強いられる制度になっていることが理解出来ると思います。
表④のようにどの所得階層も一律年間200万円(勤労者で最低限の生活が出来る所得水準)の控除額とする所得累進課税方式にするならば、低所得者と貧困層の生活は現在よりはるかに改善し、しかも、国民年金だけで月額150,000円の給付が可能になります。まさしく薔薇色の年金制度になるでしょう。私たち日本人はそのチャンスを、フラット税プラス人頭税方式を採用する狂信者によって放棄させられているのです。