クレジットカードの支払い方法には複数の選択肢がある。毎回、手数料のかからない1回払いをする人がいる一方で、いくら使おうと毎月の支払額が一定になる「リボ払い(リボルビング払い)」というものがある。決して安くはない金利手数料を払ってまで、なぜリボ払いにするのだろうか。利用者たちの話を聞くと、単に「お金がない」というだけではない心理や事情が見えてきた。
現在は広告代理店で働く男性会社員・Aさん(30代)は、25歳のときに新卒で入った会社を辞め、一時期フリーランスとして過ごしていた。その時に財布を落としてしまい、クレジットカードを紛失したことがすべての始まりだった。
「海外旅行で財布を落として、すべてカードを止めたのですが、再発行できず……。メイン口座を変更したのに、カード会社に振替口座を切り替えたことを連絡し忘れ、返済が延滞。それが続いて、どうやらブラック認定されたみたいです」
いわゆる“ブラックリスト”に入り、かつ当時の収入の不安定さから、クレジットカードを作ることができなくなったAさん。しかし、“運命のカード”と巡り合うことになる。
「消費者金融系のカードで、リボ払いしか支払いの選択肢がなかったんです。当時の僕は深く考えず、『神がいた!』という気持ちでした。約1か月以内で全額支払うことができれば、手数料がかからないというので、余裕かなって。でも、それが油断を生んだみたいで、パソコンやスマホ、食費や光熱費などといった生活費まで、ほとんどリボ払いで支払うようになっていました」(Aさん)
経費はもちろん、生活費でもカードを利用していたAさんは、再び会社員になった現在、ボーナスなどで返済を続けて、1年がかりで完済したと話す。
「リボ払いばかりしていると、正直、全然残額が減らない。それどころかあれよあれよと膨らんでしまい、気づけば100万円くらいに。そうなると、月の利息だけで1万円以上にもなっていて……。さすがにこれはヤバイと思って、会社員になってから地道に返済を続け、ようやく完済させました。もう2度とリボ払いは使いません」(Aさん)
SNSで見栄を張りたくて…
ウェブ業界で営業をしている男性会社員・Bさん(20代)は、自分へのご褒美のつもりで、ソシャゲのガチャで無理な課金をしたことがきっかけで、リボ払いにハマった。
「いつもは2万円くらいで出なかったら撤退するのですが、どうしてもほしいキャラがいて、それが出るまで12万円くらい課金したことがありました。その後も、プレイする複数のゲームで期間限定キャラのラッシュがあった時、むきになって、2か月くらいで30万円以上課金。もっとも、キャラを手に入れたことには満足していました」(Bさん)
後日、「Appleから領収書です」という何通ものメールに書かれた金額に驚愕したBさん。さらに支払う段階になり、口座引き落とし額にあらためてショックを受けたという。Bさんの手取り月収は、約20万円程度だったが、学生時代に貯めた預金が減ることを恐れるあまり、「後からリボ払いにする」という選択肢を選んだ。
「最初、この仕組みを考えた人は、天才だと思いました (笑)。だって、毎月定額でガチャができるみたいなものですから。しかも、預金額は減らないということで、心の安定にもつながっていました。
ただ、最新のスマホに買い替えるために“端末課金”をするようになると、ガチャ代とともにそれが積み重なっていって……。いまはガチャを自粛して、毎月3万円ずつ返済しています。10万円の給付金は我慢できなくてガチャに溶かしてしまいましたが、それも5万円で済んだので、もう5万円は返済に回そうと思っています」(Bさん)
都内の私大を卒業後、アルバイトしながら実家暮らしを続ける女性・Cさん(30代)は、在学中に新卒でマスコミを受けるも全滅。以降、人材系やIT企業などのアルバイトを転々としている。
外出自粛前はホテルのカフェやバーが好きでよく通っており、飲食に月3万円、エステ代にも月3万円、衣服には月5万円以上をつぎ込んでいた。そうした暮らしぶりを頻繁にSNSに投稿していたという。
「私の大学同期はほとんどみんな正社員として、大手企業に就職しました。ボーナス額も半端じゃない……。日々、贅沢な海外旅行や、プチプラといいつつ高いものも混じっているコーデがSNSに投稿されていました。それが悔しくて、私もリア充アピールをしたかったのかもしれません。
恥ずかしい話、彼氏がいるふりもしたし、式場を探しているみたいな投稿もしていました……痛いですよね。でも、外出自粛期間にいろいろと考える時間があったことで目が覚めました。50万円くらいリボ払いが残っているので、就活しながら地道に返していけたらと思っています」(Cさん)
リボ払いを利用するきっかけは人それぞれだが、金利手数料は実質年率13〜15%が一般的だ。目先のお金にとらわれて後から苦しむことのないよう、くれぐれも注意したい。