自己破産歴のある夫に再び350万円の借金が。生活費も減らされて困っています

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、自己破産歴のある夫に再び350万円の借金が発覚。生活費を減らしたいと言われて、貯蓄ができずに困っているという46歳のパート女性。借金とギャンブル好きを知っていて結婚した自分にも責任がある……。迷える女性の味方、ファイナンシャル・プランナーの豊田眞弓さんがアドバイスします。
夫がギャンブルで作った借金が滞ってきているようです

夫がギャンブルで作った借金が滞ってきているようです


■相談者
さくらさん
女性/パート・アルバイト/46歳
関西/借家
 
■家族構成
夫(自営業・46歳)
 
■相談内容
夫に借金があります。結婚して、5年になります。一昨年、夫に350万円の借金があることが発覚しました。主な原因のひとつはパチスロです。夫は15年くらい前にも、ギャンブルで借金をして自己破産している経緯があります。しかも、年金も払ってきていません。離婚という考えも頭を過ぎりましたが、過去を知りながら結婚した私にも責任というものがあるので、生活費として月30万円を家計に入れ、それ以外は返済に充てるなり自分で考えてということで過ごしてきました。
 
しかし、ここにきて、家に30万円入れるのが厳しい、1年間は20万円にしてほしい、その間、返済の利息を減らしたいと言い始めました。どうやら返済で15万円、夫は配管の仕事を日払いでやっているので、交通費やらは自分持ちです。

現場で食べられる時はお弁当を持っていきますが、詰所がない場合、昼食は外食です。時には、パチスロにも行っていると思われます。お酒は飲みませんがタバコは吸います。

そりゃ足りなくなるだろうと、想像はしていましたが、お金の管理に無頓着な夫に代わり、以前は二人の給料から月10万円貯金していました。家に入れるお金が減ると貯金も難しくなります。私もあまり健康ではないので、仕事を増やすのは少し難しいです。夫はもう、債務整理などはしたくないと頑なに拒否します。確かに、借金がありながら貯金したいというのは、矛盾しているかもしれませんが、少しは手元にないと不安です。この先どのようにしていけばよいか、ご教示いただけますとありがたいです。よろしくお願いいたします。
 
■家計収支データ
相談者「さくら」さんの家計収支データ

相談者「さくら」さんの家計収支データ


■家計収支データ補足
(1)夫の借金について
総額が約350万円。自身で50歳までには完済したい意志はあるようです。以前よりパチスロに行く回数は減ったと言っていますが、自分が好きに使えるお金がなくなってきたらまた、パチスロで稼いでやろうという考えが少しでもある以上、きっぱりやめるのは難しいのではないかと思ってしまいます。病気ですね。新たに借り入れしている可能性はありますが、私に言わないので真実は分からず、把握しているのは下記の通りです。
 
○A銀行:100万円……毎月返済3万円
○Bカード:45万円……毎月返済1万5000円
○消費者金融C:100万円……毎月返済3万5000円
○消費者金融D:80万円……毎月返済3万円
○E銀行:30万円円……毎月返済1万円
 
(2)家計収支について
コロナの影響で、私の収入か半分に減ってしまったので、貯金できる月とできない月があります。黒字になった場合は、貯金に回しています。今はなるべくちょっとでも貯金しようと思っています。
 
(3)住居費とその他の支出の内容と夫の節約意識について
家賃は11万5000円、共益費は2000円。通信費2万円については、妻携帯6000円。夫携帯1万2000円、自宅Wi‐Fi 4000円。

趣味娯楽費1万円。美容室や書籍代、化粧品などです。月によって、使わない時もあります。雑費1万円はドラッグストアや病院代などです。これも月によって1万円もいかない時もあります。夫は、タバコはやめられないと言っています。パチスロも前のように頻繁には行かないと言いますが。節約に協力しようという気持ちはあるようです。
 
(4)加入保険について
夫/生命保険(無配当定期保険)死亡保障1000万円
毎月の保険料3480円
 
夫/共済(交通事故死亡2000万円 不慮の事故死亡1600万円 病気死亡800万円 入院1万円 手術や先進医療の保障なし)
毎月の保険料4000円
 
妻/共済(死亡保障10万円 入院1万円 手術や先進医療保障あり)毎月の保険料2000円
 
(5)働き方について
夫は自営ですので定年はなく退職金なし。私は、義兄の経営する飲食店でのパートなので定年等はなし。
 
(6)公的年金について
夫のは把握していませんが、年金をずっと免除してきたので無しに等しいかもしれません。私の老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額は77万円ほどです。
 
■  FP豊田眞弓の3つのアドバイス
アドバイス1 多重債務でギリギリの状態。一刻も早い決断を
アドバイス2 まずは借金の全体像を把握。公的窓口も活用して
アドバイス3 固定費の家賃とチリツモ節約で、年間72万円を捻出
 

アドバイス1 多重債務でギリギリの状態。一刻も早い決断を

まずはご主人の借金について、厳しいお話をさせてもらいます。現状、すでに借り入れと年収のバランスがギリギリの状態だと思われます。借金については、「総量規制」という法的な規制があるのをご存じでしょうか。これは、借り手を多重債務から守るために、消費者金融やカード会社は合計で、その人の年収の3分の1を超えてお金を貸してはいけない、というルールです(ただし銀行からの借り入れは対象外)。
 
ご主人の借金は現在総額で350万円。そのうち総量規制の対象となる借金は225万円です。年収675万円(売上)がギリギリのラインで、収入データは手取りしかないので確認できませんが、ひょっとしてすでに超えているのでは? となると、これ以上の借り入れはできません。無理に返済するために、返済のための借金をしようとすると、次は闇金融に手を出すことにもなりかねません。とても深刻な状況であることを、さくらさんにもご主人にも認識していただきたいです。
 
ご主人がパチスロをやめない限り、借金は減らないでしょう。穴の空いた鍋にいくら水を入れても意味がないのです。パチスロをやめるか、結婚をやめるか、ご主人にはこれくらい厳しい選択を迫ってもいいのではないでしょうか。さくらさんの選択肢としては、パチスロをやめてもらって一緒に返済していくか、離婚するか、のどちらかです。このままでは、さくらさん自身の老後も未来もなくなってしまいます。パチスロは続けたいし、自己破産もしたくない、となるとまったく先が見えません。
 

アドバイス2 まずは借金の全体像を把握。公的窓口も活用して

しかしご相談内容を拝見すると、さくらさんはご主人を支えて結婚生活を続けていきたいと思われているようですね。そうであればなおさら、自分のためにもご主人のためにも、真剣に話し合い、考え、決断するギリギリの時です。
 
一緒に返済していく覚悟を決めたなら、ご主人の借金の状況をすべて打ち明けてもらいましょう。さくらさん自身も察しているように、この他にも借り入れがあると思われます。その上で、自己破産するのか、あるいはそこまでいかなくても専門家に任意整理をしてもらうかどうかを考えましょう。同時にギャンブル依存症という病気であることを認識し、治療することも必要です。法テラスや消費者庁の多重債務者向け相談窓口など、公的な窓口に相談しましょう。
 

アドバイス3 固定費の家賃とチリツモ節約で、年間72万円を捻出

二人で力を合わせて返済するとなったら、債務整理をしてもらったあとに、金利の高いものから集中的に返済していきましょう。貯蓄のペースを下げても、高金利の債務から優先的に返済していくのが鉄則です。
 
現在の家賃は11万円。借金返済のためには一時的に安いところに引っ越しを。月5万円浮けば、年間60万円も返済に充てられます。さくらさんもぜひ、今よりは収入を増やす工夫をしてみてください。また、ご主人の通信費で5000~6000円浮かす、タバコはやめられなくてもせめて半分に、書籍は買わずに図書館で済ませるなど、「チリツモ」節約で家賃の圧縮分と合わせて、全体で月6万円を返済に充てたいです。返済にメドがつくまでは緊急事態と腹をくくって、これまでの生活を変えていくしかありません。
 
ちなみに現在の貯蓄150万円は、いざというときのための手元資金として、とっておきたいです。その場合、返済のアテにできないよう、ご主人に見えない形にしておくほうがよいでしょう。
 
過去にアドバイスをした相談者の中には、さくらさんよりも多額の借金をご夫婦で一念発起して短期間で返済された例もあります。そのご夫婦の場合は、奥様の覚悟と夫婦の協力が決め手となりました。お二人の未来が明るいものになるよう、まずはご主人としっかりと話し合ってみてください。
 

相談者「さくら」さんから寄せられた感想

全くもってその通りです。聞いてもいわない夫に対し、私は諦めと上から目線…夫に寄り添うことを無意識に放棄し、借金の事実だけを責めていたのだと思います。嫌な女ですね。先生から頂いたアドバイスは、順を追って実行に移していきます。相手を変えるなら、まずは自分からだと、改めて思いました。頑張ります。ありがとうございました。

教えてくれたのは……
豊田 眞弓さん
 
 

 


All About教育費・奨学金ガイド。FPラウンジ代表、大学・短大で非常勤講師を務める。子どもマネー総合研究会代表。1994年より、FPとして家計や保険、住宅ローン等の相談業務に従事しながら、講演や企業研修、記事の監修、コラム執筆などで活動。『親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本』『赤ちゃんができたら知っておきたい 教育資金の本』『他人には聞けない 夫が亡くなったときに読む本』など、著書多数



取材・文/長島美樹

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