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稲葉〈侍ジャパン〉監督“モンスター妻” 日ハム後輩夫婦にパワハラ180分

「週刊文春」編集部
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「旦那たちで結構話し合っているけど、なんでこういうことが起きたのか。俺は一番それを聞きたかった」

 札幌市内のカフェでそう切り出したのは、稲葉篤紀(48)。暗い表情で座る2組の後輩選手夫婦に、A夫人(34)が声を荒げる。

「本当に可愛がっていた後輩なのに、中学生みたいないざこざで旦那さんたちまで巻き込んで頭下げさせて」

 侍ジャパンの監督夫婦による説教が始まった――。

◆ ◆ ◆

 来年に控える東京五輪で野球日本代表(侍ジャパン)の監督を務める稲葉。

「2005年にヤクルトから、札幌に本拠地を移転したばかりの日本ハムに移籍。06年の日本シリーズでMVPを獲得し、44年ぶりの日本一に貢献。北海道に野球を根づかせた“日ハムの顔”です」(スポーツ紙デスク)

 14年に現役を引退。15年から日ハムで社会貢献活動などを行うスポーツ・コミュニティ・オフィサーを務めてきた。

 その稲葉が脚光を浴びたのは、17年7月。侍ジャパン監督に抜擢されたのだ。

「もともと日ハムの監督候補と目されてきた。五輪が終わったら、来オフに栗山英樹監督がフロント入りし、稲葉監督が誕生すると見られています」(同前)

 そんな稲葉が「僕にとっては最高の贈り物」と公言するのが、現在の妻であるAさんとの出会いだった。

「稲葉にとっては再婚です。知人の主催する食事会で、札幌出身でモデルのAさんと知り合った。ガツガツしていない純朴さに惹かれたそうで、12年に結婚。現在2人の子供がいます」(地元記者)

 おしどり夫婦だった2人の関係に変化が生じたのは、稲葉の現役引退後のこと。

「以前はAさんが苦手なりに家事をしていましたが、引退後は稲葉さんが子供の世話や送迎、料理をするようになった」(Aさんの友人)

グループLINEで不倫を赤裸々に…

稲葉夫妻の結婚式(妻の友人のブログ)

 プロ野球選手にとって、妻の存在は大きい。メジャーリーグには「奥様会」が存在し社会貢献活動などを行っている。日ハムにも妻たちによるグループがあり、選手のキャンプや遠征について行くこともある。

「選手の序列は、妻たちの関係にも持ち込まれる。Aさんのように日本代表監督の妻となれば、別格になります。その頃から、Aさんが“モンスター妻”となっていったのです」

 こう声を潜めて語るのは、球団関係者だ。

「稲葉の引退後もAさんは選手の妻たちと交流し、ランチしたり、試合観戦するなどしていました。当初は、先輩、後輩関係なく付き合いたいと、後輩にも『敬語なしでいいよ』と話していましたね」(同前)

 そのうち、Aさんは親しい仲間に、“ぶっちゃけトーク”をするようになる。

「グループLINEに、不倫相手とベッドの前で撮影したツーショットを投稿。他にも赤裸々に不倫について語るので、妻たちも困惑していました」(同前)

グループLINEに投稿した不倫相手との写真

 LINEによれば、お相手はサッカー選手で、次のような投稿も。

〈エッチはまだまだやな〉

〈旦那な方がやっぱり合う〉

「別の不倫相手と別れた後は、『パパにもう一度恋できたら一番なのに』とも言っていました」(同前)

グループLINEで不倫を赤裸々告白
グループLINEで不倫を赤裸々告白

 そんな奔放なAさんと、特に仲良くしていた妻が3人いた。吉川光夫投手(32)、大野奨太捕手(33)、宮西尚生投手(35)といずれも日ハム(当時)の中心選手の妻たちだ。

「当然、Aさんがリーダー格でした。16年冬、吉川が日ハムから交換トレードで巨人へ移籍することになります。そこで、宮西の妻が中心となり、東京へ引っ越す吉川の妻の送別会を開くことになった」(同前)

 だが、直前になって、Aさんが「蕁麻疹が出ていけない」と連絡してきた。

「それに対して、宮西の妻が『!』をつけたメールを返信。するとAさんは『先輩の奥さんに生意気だ』と激怒したのです」(同前)

 次第にAさんの言動はエスカレートしていく。宮西の妻の友人が明かす。

「彼女に『宮西君が夫のことを先輩だと思っているかを確かめたいから、今すぐ電話をかけさせて』と、夫も巻き込む発言が飛び出すようになった」

 さらに、ネットの掲示板に自分の悪口を見つけると、宮西の妻の仕業だと決めつけ、「9時までに名乗り出なければ警察に行く」とLINEを送ったという。

「送別会の数カ月前まで、宮西の妻は稲葉の自宅で昼から夜まで過ごすなど、仲よくしていたんです。それだけに急変ぶりに困惑していました」(同前)

夫たちは「嫁同士の問題だから」

 その次に標的となったのが、大野の妻だった。当時、大野の妻から相談されていた友人が証言する。

「彼女は宮西の妻の双子の妹で、姉をかばったところ目をつけられた。子供を小学校受験させるつもりだったが、Aさんに知られたら何をされるかわからない。密かに準備を進めていましたが、どこで知ったのか、Aさんは彼女に『受験するんでしょ? うちは教育委員会だから』と意味がわからない脅しをしてきた」

 夫たちはトラブルが始まった当初、「嫁同士の問題だから、仲よく解決して欲しい」と話していた。

「稲葉がコーチを務めた17年3月のWBC代表に、宮西と大野も選出された。3人はプライベートでも一緒にゴルフへ行くほど親しかった」(前出・球団関係者)

 だが、稲葉は、大野にこんな電話をかけてくるようになった。

「いまどうなのか。(大野の妻は)謝罪もできないのか」

 そして、17年冬、“事件”が起きる。

 大野が11月、FA権の行使を表明。日ハム残留か、中日移籍か悩んでいた頃、大野はAさんからこう告げられた。

「FAだよね? 私は谷繁(元信・元中日監督)さん、森(繁和・当時中日監督)さんとつながっているから。揉め事、言おうかな」

 前出の友人が話す。

「大野は、移籍を妨害しようとしたと受け止めた。大野はAさんに脅されたことがショックで、泣くほど追いつめられたそうです」

 結局、大野は2球団との交渉の末、12月9日に中日入りを決断する。

「大野や宮西の妻はAさんからずっと謝罪を迫られていた。大野や宮西はとにかく妻に謝らせて事態を収めようと、稲葉に時間をとってもらい、妻たち同席で“謝罪会”を行なうことにしたのです」(前出・球団関係者)

 そして、12月18日、稲葉夫妻、宮西夫妻と大野夫妻が札幌市内のカフェに集まったのだった。それが冒頭の場面だ。その続きを再現しよう。

中継ぎで活躍する宮西

 Aさんは、発端となった宮西の妻のメールについて、

「突っかかってきたよね。びっくりマークで。なんでつけてきたの?」

 宮西の妻が「誠意を持って謝りに来ました」と言うと、Aさんは、

「誠意持っているなら遅すぎない? 宮西君、調子よすぎ。日ハムに残るからでしょ。だから謝らせておきたいんでしょ」

 宮西の妻がトラブルを言いふらしたと思っているAさんは怒りが収まらず、

「(夫たちは)同じところに泊まって練習して試合して悔しい思いもして、絆は私達以上にある。だから、ここの仲は偽物だと思った。上下関係をあなたはわからないし、痛すぎる」

 大野の妻が「申し訳ございませんでした」と謝っても、“口撃”は収まらない。

 大野の妻と宮西の妻に、

「毛虫みたいな血が流れてるんじゃない? 人の心なさすぎ」

「小学生より未熟。子供の方が大人なんじゃない?」

 などという発言も。

 稲葉は、そんな妻を制止することなく、擁護した。

「選手辞めてから大変なのよ。コーチに残れるかどうかわからないし、選手じゃなくなった瞬間に上辺だけの付き合いをしている人は離れていくから」

「(妻は)ずっと一人で我慢してきた。俺に言ってくるけど、WBCもあったし、一緒にやっていきたかったから必死でかばってきた。1年かかってストレス抱えて、いま爆発しちゃった。そこはわかってほしい」

 ただ、大野のFAを巡るAさんの発言だけは、

「言っちゃダメ。Aが本当に悪い」

 結局、後輩夫婦への“パワハラ説教”は3時間に及んだ。

 実はAさんの被害者は、彼女たちだけではない。

「吉川選手の妻は連絡をとらなかったら、『実家に連絡する』と脅された。彼女に対しては過去に『夫が監督になったらクビにできる』とも言っていたようです。日ハムOBの妻はAさんから『先輩神様、後輩奴隷、同期は平民』と頻繁に聞かされています」(選手妻グループの一人)

 そして、今年8月。Aさんの怒りが再び爆発する。

「ある選手の妻がインスタにグループLINEの画面を投稿。そこでは宮西の妻らが『おつカレーライス』という他愛もないやりとりを楽しんでいた。それを見たAさんは自分が好んで使っていたフレーズを馬鹿にされたと思い、インスタグラムでいじめられていると投稿したのです」(同前)

 これを「女性セブン」が匿名で報道。日ハムファンの間では、稲葉夫人がいじめられていると噂が広がっていたのだ。

「本当はAさんが加害者なのに、被害者を装っている。後輩妻たちは悔しそうでした」(同前)

「野球詳しくないんですけど」

2016年の日本一に貢献した大野

“奥様会”で、何が起きているのか。宮西の妻を直撃すると、

――Aさんとトラブルがあり、謝罪会をした?

「すみません。何もお答えすることができないので」

――嫌がらせを繰り返し受けたのか。

「……パワハラは実際にありました。稲葉さんが侍ジャパンの監督になった頃から、妻の立場を利用した言動が増えました」

 大野の妻は、自宅から出てきたところを直撃した。

「勝手に話すことができないので」

 としつつも、FAを巡るトラブルについてだけは、こう答えた。

「FAの最中に谷繁さんと森さんの名前を出されて脅されたのは事実です。夫に電話が来て通話の声をスピーカーにし、二人で聞きました。『これってパワハラだよね』と夫と話しました」

 一方のAさんは、電話取材にこう反論する。

――Aさんからパワハラを受けているとの証言がある。

「その件は全否定です。もう和解という形をとって、奥様ともお話をしました」

――大野のFAの際、谷繁、森の名前を出して脅した?

「谷繁さんと森さん? ごめんなさい、私、野球詳しくないんですけど。一切ないです。私がお口をきけるようなお相手ではないので」

――「監督になったらクビにできる」と言ったか。

「噂で聞きました。うちでは笑い話で『そんな話してたら、パワハラだよね』って。選手を決めるのはGMさんとかですよね」

――「先輩神様、後輩奴隷」とよく言っているのか?

「昔はあったって主人に聞いたことがありますけど。今の時代、日ハムは特にないと思います」

――不倫については?

「(写真が)トリミングされてます。LINEも違う人の話。夫のおかげで芸能人の方に会ったときに発言した言葉を、男性に会ったときにときめいたかのように切り取られています」

 夫の稲葉は、日ハム広報を通じ、こうコメントした。

「私自身に至らない点もあったと真摯に受け止め、反省しております。不倫はなかったと認識しております」

 代表監督といえども、妻のマネジメントは簡単ではなかった。

source : 週刊文春 2020年10月1日号

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