それはふとした一言から始まった。

芽依「ねえ、悠さぁ、女装させたら似合うんじゃない?」

奈津紀「あっ、面白そう!
うんうん、似合うと思う!」

俺『三島悠基』は高校一年生。
自分では、勉強もスポーツも人並みと思っている。
背は低めで160ちょっとだ。
容姿はというと、自分で言うのもなんだが可愛い顔をしている。
男なのに女の子みたいと昔から言われ続けてきた。
そのせいで小さい頃はよくいじめられていた。


今日も幼なじみの『永野佳織』に誘われて、彼女の姉でメイクの仕事をしてる『美咲』さんのマンションに遊びに来ている。

他に佳織の女友達が二人、『黒木芽依』と『川内奈津紀』がいる。

芽依の突然の提案に佳織も笑いながら賛同する。

佳織は家が隣で同級生ということもあり、物心つく頃から一緒に遊んだ仲だ。
背は悔しいことに俺より十センチは高い。
性格は大ざっぱで負けず嫌い。
男に混じってサッカーとかやってるし、俺より男友達が多い。
しかし何故か女友達と遊ぶ時は俺を誘う。

その佳織に俺は頭が上がらない。
俺が小学校高学年までオネショしてたこと、そしてそのお仕置きとしてお尻叩きを受けてることなど知っている。

他に、いじめっ子から俺を助けてくれたりしてくれた。

佳織「よし、悠、お前女装しろ。
お姉ちゃん、何か要らない服と悠にメイクお願い。」

その言葉に芽依と奈津紀も興味津々で囃したてる。

何て事を言い出す…
と毒づきながら、美咲さんが止めてくれるのを期待した。

美咲「よーし、メイクならまかしといて!

カツラもあるし、服は…
私のじゃ、悠君には大きいかな~。」

俺は乗り気の美咲さんにガッカリした。
なんで女装なんか…。

断ればいいだけなのだが、佳織は、オネショの罰でお仕置きされてる俺の写真を持っている。

クラスの連中にバラすかもしれないという恐怖が俺の中にある。
小学校の時の話と言えばそれまでだが、やはり同級生には見られたくないし、知られたくない。

それにいじめられっ子の俺を庇ってくれてたこともあって、佳織に逆らわない習慣が身についていた。


美咲「佳織、押し入れに私の高校の制服があると思うから探してきて。
その間に悠君にお化粧するから。」

佳織「うん、分かった。」



芽依、奈津紀、美咲さんは、愉しげにはしゃいでいるが、佳織はムッツリと黙ってしまった。

マズい。
佳織の心は手に取るように分かる。
想像以上に俺が可愛いかったから、女としての自尊心が傷ついたのだろう。

芽依「じゃあ、これに着替えてよ。
早く、早く。」
と言って美咲さんの制服を渡す。

「着替えるってどこで…」
佳織「この部屋に決まってんだろ。
着替えろ、さっさと。」

佳織の語気の荒さに、俺は戸惑った。
佳織の機嫌の悪さに気づいた奈津紀が、
「そうだね、ここで着替えてよ。」
と相槌を打つ。

冗談じゃない、女子の同級生や幼なじみのお姉さんのまえで着替えられる訳がない。

佳織「早くしろよ~。」

いかん、佳織がイラついている。
「分かったよ、着替えるよ…。」

俺はしぶしぶと服を脱ぎ始めた。

佳織「まずパンツ一枚になるんだぞ。
そして制服着ろよ。」

奈津紀「そうそう、私達だけだから恥ずかしくない。」

4人が凝視する中、トランクス一枚の裸になった。

恥ずかしい…何でこんな目に会わないといけないんだ。

美咲「悠君、顔も女の子みたいだけど、体も色白で華奢ね。」

褒め言葉になってない。
そう思いつつ、俺は制服を急いで着る。

美咲「うわぁ~、どっから見ても女の子ね~。」
芽依「本当、可愛い~。

…」

ふと4人の表情が同じ不機嫌な色へと変わる。
佳織と同じ心境になったのだろう、冷たい視線に変わってきた。

俺は身の危険を感じた。

佳織「ねえ、ゲームやらない?
罰ゲーム付きの。」

奈津紀「何?どんなゲーム?」

佳織「トランプでも何でもいいよ。
トップの人が4人の中から罰ゲーム受けさせる人を選ぶの。」

芽依「いいね、賛成~。」
美咲「罰は何でもいいの?
どの程度までか決めとく?」

予感は的中した。
間違いなく俺が標的にされるだろう。
ゲームとは名ばかりで、俺に罰ゲームさせるつもりなのは明白だ。

佳織「そうねぇ~、
一人二枚づつ罰ゲームの内容を書いて、受ける人がその中から一枚引くってのはどう?
分からないように小さく折りたたんだ中から選ぶの。」

芽依「面白そう~。
じゃ、ポーカーにしよ。
すぐ終わるし。」

奈津紀「賛成~、早くやろ。」

俺が無言でいる間、有り難く無いことに話はサクサク進んでいく。

佳織「おい、悠っ、早く座れよ。
お前も二枚書け。」

断るタイミングは完全に逃している。
尤も、佳織に逆らえはしないが…。

それぞれ書いた紙を折り曲げて、コンビニの空き袋に入れる。

一回目、勝ったのは美咲さん。
「よし、エースのスリーカード。
私の勝ちね。」

そして俺の方へと視線を走らせる。

美咲「罰ゲームは悠君~!
じゃ、一枚引いて。」