「あの方の言葉がなかったら将棋を辞めて金沢に帰っていました」田中沙紀女流2級が再デビュー

「デビュー戦を2度も指すのはなかなかないことですよね」と語った田中沙紀女流2級
「デビュー戦を2度も指すのはなかなかないことですよね」と語った田中沙紀女流2級

 将棋の田中沙紀女流2級(26)が20日、東京都渋谷区の将棋会館で行われた「再デビュー戦」の第2期女流順位戦D級1回戦・山口恵梨子女流二段(30)戦に臨み、先手の148手で敗れた。再出発の一局を勝利で飾ることはできなかったが、将棋史上類例のない再挑戦の一歩を確かに刻んだ。(北野 新太)

 敗れたが、あの頃とは指先に宿る意志が違って見えた。今期、2棋戦で4強入りする活躍を見せている山口を相手に好局を展開した田中は終局の5分前まで勝っていたが、受けを間違えて頓死した。勝つか、負けるか。一瞬で世界が変わる戦場なのだと、再出発の日に再び思い知らされた。

 終局直後は落ち込んだ様子だった田中だったが、対局室を出ると充実感を漂わせる表情に変わっていた。「頓死してしまって本当に情けないんですけど、課題を見つめ直します。終盤力を鍛えなきゃいけないなって。でも、明るい気持ちで指すことができました。勝ちたいということよりも、どんな将棋であれ、できるだけ良い内容の将棋を指せたら、と思ったことが山口さん相手にも何とか善戦できた理由なのかなと思います。それに…デビュー戦を2回も指すなんて、なかなかないことですよね」

再デビュー戦で敗れ、肩を落とす田中沙紀女流2級
再デビュー戦で敗れ、肩を落とす田中沙紀女流2級

 2018年6月、田中は女流棋士仮資格の女流3級として一度はデビューしたが「2年以内に規定の成績を挙げて正資格である女流2級に昇級しないと仮資格を失う」という当時の規定を満たせず、20年8月に資格を剥奪された。

 卒業していた女流棋士養成機関「研修会」に復帰して再挑戦する道が年齢制限ギリギリで残っていたが、最初は考えてはいなかった。

 「研修会には戻らないと決めていたので、もう将棋を辞めて(故郷の)金沢に帰ろうと思っていました。いろんな方々に挨拶回りをすると、大変ありがたいことに引き留めていただいたりもしましたけど、私としてはもう辞めると決めていたんです。辞めたと決めたので、マニキュアも塗り始めたりしていて…」

 別れを告げに行った一人の女流棋士からの言葉が転機になった。

 「VS(練習対局)でお世話になっていた加藤圭(女流二段)さんにご挨拶に行ったら『やろうよ』『続けようよ』って、ものすごく強く何度も仰っていただいて。挨拶の後、見送っていただいたと思ったら、駅で別れるまでずっと付いて来ていただいて『やっぱりもう一度、頑張ろうよ』って何度も…。電車に乗ってからもLINEで『田中さんのこと、応援してるから』って。正直、長くお付き合いさせていただいていたわけではなかったので、なぜここまで自分のことを考えていただけるか、なぜこんなに励ましていただけるのかが分からなかったんです。でも、圭さんに言っていただいて、もう一度ちゃんと考えたら、自分は最後の最後まで頑張った方がいいのかもしれない、と思えるようになったんです」

 加藤が田中の心に寄り添ったのは、かつての自分の姿を後輩の中に見たからだろう。22歳になって本格的に将棋を始めた超晩学ながら、努力を重ねて27歳で女流棋士デビュー。第1期女流順位戦では64人中4位に入る快進撃を見せた。可能性が残っている限りは挑むべきだということを、加藤は自らの経歴で証明していた。

 「あれから、師匠になっていただくことになる大野八一雄先生の教室も紹介していただいたりして、少しずつ力をつけることができました。だから今日、私が将棋を指せたのは圭さんのおかげなんです。心から感謝しています」

山口恵梨子女流二段(右)との再デビュー戦で敗れた田中沙紀女流2級
山口恵梨子女流二段(右)との再デビュー戦で敗れた田中沙紀女流2級

 これからのこと。

 「早く初段になることが目標です。あと、今まで金沢で女流タイトル戦が行われた時、聞き手を務めさせていただいたりしたこともありましたけど、女流3級の自分には対局室に入ることもはばかられたので、次は入ってみたいです。え! 対局者としてですか…いや、さすがにそれは夢です…。目標だなんて言えるわけもなく…。でも、夢は夢としてあります」

 ◆田中 沙紀(たなか・さき)1994年11月18日、金沢市生まれ。26歳。小学4年で将棋を始める。2014年、関西研修会入会。18年6月、女流3級(女流棋士仮資格)昇級。20年8月、女流棋士資格を失う。女流3級時代の戦績は10勝18敗。同11月、東海研修会入会。21年8月、女流2級昇級。伝説の三段・鈴木英春さん直伝の秘術「英春流」を指す居飛車党。女流3級時代は日本将棋連盟所属だったが、女流2級になってから日本女子プロ将棋協会(LPSA)に在籍している。「昨年、(LPSAが主催する)女子アマ王位戦で優勝できて感動したことが縁でした。連盟さんにもものすごくよくしていただいて感謝しています。また新しいことを勉強するためにLPSAにお世話になることにしました。地元の普及も頑張っていきたいです」

「デビュー戦を2度も指すのはなかなかないことですよね」と語った田中沙紀女流2級
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山口恵梨子女流二段(右)との再デビュー戦で敗れた田中沙紀女流2級
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